企業がただ利益のために営業していく時代は終わりを迎えつつあります。目的意識をもって社会にコミットしていくということが企業にも求められるようになってきているのです。パーパスという言葉でマーケティング業界を中心にこの言葉が吹き荒れています。しかし、このパーパスの何がポイントなのか。ここでシンプルに解説していきます。
この数年のマーケティングの大きなキーワードになっているのが「パーパス」です。ここ数年最大のバズワードとも言われていますが、これは「目的」という意味で、「なぜその企業は存在しているのか」という存在意義を問うものでもあります。
ブランディングをするという場合、ブランドコンセプトに基づいてブランドメッセージをアピールすると思います。ブランドにとってはユーザーに対して「どんなベネフィットがあるのか」と考えることが重要です。念のため説明しておきますとベネフィットとは「この商品を使うとこんないいことがあるよ」というようなユーザーが手に入れるメリットのことを指します。
とはいえ、ベネフィットを感じる部分は人それぞれです。そしてそれ以上に企業やブランドは利益を出すだけでなく、”〇〇という目的をもった集合体”であることに注目されるようになってきました。それが必要になってきた背景は様々あります。一方でビジネス的に有利という直接的な理由もこのワードの注目度を上昇させました。
本来であればパーパスという場合、その〇〇を飾り付けるように故意に設定するものではありません。むしろ、「一体なんのためにやっているのか」という自問自答に対する回答のようなものです。ある意味ではその目的を考えることそのものでもあるかもしれません。
パーパスは人や企業に「どう考えるか」「どう行動するか」を定義していきます。つまり、ブランディングで考慮するような「どう見せるか」という部分を超えて根源的なものとなります。本来、ブランディングもそうしたコアを持つべきですが、フォーカスがベネフィットであったり、ユーザーであったりすることで、揺らぐことがあります。しっかりブランディングをする場合、本来はブランドの持つ意志なども反映するため、実際にはそんなことはないのですが表層的なものになってしまうとそうした状況は起こりやすくなります。
パーパスは本来の意思の部分にフォーカスされており、それが「この企業はこうしたことを目指している企業」ということを明確にしているものになります。
企業風土として、日本ではまだまだ利益を優先します。そこで存在意義やこうあるために運営されているというような目的は一度脇に置かれてしまうことが少なくありません。それはブランドパーパスとしては後退を示すことになりますが、そこを超えていくことは簡単ではないのです。
「ソーシャルグッド」という言葉があります。これは「世の中のためになる」「社会貢献」を指す言葉と考えていいでしょう。企業でそうしたことに取り組むのがソーシャルグッドです。この場合、その活動は付加的なものです。しかし、これがパーパスと混同されてしまうケースが少なくありません。
余剰で自然保護活動に貢献したり、意見広告を出して社会的な物事へアプローチしていく場合、その多くはソーシャルグッドです。パーパスの場合はそのパーパスが目的になっていなければいけません。
たとえば、特定の商品を販売する会社だとします。それが世の中に影響を与えるrとして、その影響を与えていくことがパーパスです。これは世の中をよくしようということももちろん背景にありますが、そこにもっと使命があるということが言えます。
そう考えるともちろんパーパスであり、ソーシャルグッドでもあるということは少なくありません。しかし、すべてのソーシャルグットがパーパスになるわけではないのです。
ブランドコンセプトはブランディングではもっとも重要なものといえます。その中にブランドパーパスを持つことが可能です。また、そうすることでブランディングに強い方向性が出てきます。また、ブランドには様々な利害関係者がいます。株主や従業員、経営者、関連業者など少なからず人が関わっているのではないでしょうか。そうした人たちも含めてパーパスが明確化されることで方向性は乱れにくくなるはずです。それは目指すべき場所ですから、関わる人すべてが同じ方向を向くことができるようになるからです。
もちろんよく言われるようなZ世代、ミレニアル世代からの共感がビジネスに大きな影響を与えるということはわかります。しかし、それ以上にパーパスの設定がさまざまな人の充足感につながるということもとても重要なことになっていくことでしょう。
ブランディング的な部分でも、パーパスがブランドの世界観を作り、その上でブランドコンセプトやブランドメッセージがユーザーに浸透していくことがとても重要です。
パーパスはそこブランドが何を目指しているのかを示します。ブランディングにさらに深みを持たせることで、その共感は強まります。また、パーパスが軸にあることで、行動の際の明確なコンパスになります。「こうした作業は私たちのパーパスに向かっているものだろうか」と考えることができるということは物事を整理していくでしょう。
パーパスが多くの人に注目され支持される理由は、目的なくただ利益のために企業が営業をしていく時代は終焉を迎えようとしていることを示しています。
今一度一体そのブランドはどういった目的のもとに社会の中に存在しているのかを考え、明確にしてみてください。