ブランディングとは消費者が思う『ブランド価値やイメージ』
2017.12.14

ここでは「ブランディング」という言葉について考えてみましょう。ブランディングはブランドを広げていくことを意味する言葉ですが、さまざまな考え方や派生語があります。たとえばイメージブランディングなどはもっともブランディングを解説するうえでわかりやすいことかもしれません。
ここではブランディングの概念を中心に解説していきます。
CONTENS
ブランディングの前にまずブランドとはを考えてみよう
「ブランディング」という言葉の意味を知ろうと考えた時、“なにやらブランド”と関連がありそうだ”と気づいた方も多くいると思います。
ブランディングについてお伝えする前にそもそも「ブランド」とはどんなものかをしっかりみなさんに考えてもらう必要があります。
「ブランド」とは製品を売り出すメーカーやサービスを提供する事業体が、他社の製品やサービスと区別するために、自社製品やサービスに名称、ロゴマークを付け、デザインやキャッチコピーを考えたりして、売り出しているものを言います。
つまり、市場に並んでいる商品の全てが「ブランド」ということになります。
みなさんは「プライベートブランド」や「ナショナルブランド」という言葉を聞いたことはないでしょうか。
プライベートブランドとは、小売業であるスーパーやコンビニが商品の企画や開発を行い、メーカーに製造を依頼して自社ブランドとして売り出しているものをいいます。
セブン&アイ・ホールディングスのセブンプレミアム、イオングループのトップバリュ、生協のCO・OPなどがよく知られています
ナショナルブランドとは、有名メーカーが企画から開発、製造までを行い、小売業者に卸している商品のことです。
カルビーの「ポテトチップス」、日清の「カップヌードル」、花王の「アタック」など、多くの店で購入可能な商品をイメージしてください。
他にも、テレビCMの種類が比較的多い、自動車メーカーのダイハツを例にみてみましょう。
Mira(ミラ)、Mira Cocoa(ミラ ココア)、CAST(キャスト)、MOVE(ムーヴ)、Tanto(タント)、WAKE(ウェイク)など、これらは全て、ダイハツというメーカーから発売されているブランドの自動車です。
また、株式会社ユニクロのブランド『UNIQLO(ユニクロ)』、株式会社ジーユーのブランド『GU(ジーユー)』というブランドがあります。2つの株式会社はどちらも株式会社ファーストリテイリングの傘下にあるため、株式会社ファーストリテーリングの傘下ブランドということになります。
「ブランド」とは、このように市場に存在する全ての物を表す言葉です。
では、みなさんははじめに「ブランド」と聞いて、どんなものを思い浮かべたでしょうか。
それは『高級ブランド』や『ブランド物』といった用語でしょうか。それとも、エルメスやルイ・ヴィトンのバッグでしょうか。
私たちは“ブランド”という言葉から、高価な物をイメージしやすい傾向があります。
普段の会話の時点ですでにルイ・ヴィトンを『ブランド物』と言ってみたり、逆に有名ではないブランドを『ノーブランド』と表現したとしても、相手に意味が伝わります。
“ブランド”が本来、市場の全ての物をさす言葉であるにも関わらず、多くの人は、高級ブランドをイメージします。
実際、ブランドと聞くと「高価だ、上質だ、憧れる」といったように、良いイメージを持っていないでしょうか。私たちが思うブランドは、自分では買わなくてもプレゼントされたら大抵の人は嬉しいと感じる商品ではないでしょうか。
その理由は「ブランド」という言葉や、エルメスやルイ・ヴィトンに対して私たちが「価値のある物なんだ」というイメージをもっているからです。
そして、この「価値をもたせること」が「ブランディング」なのです。
ブランディングとは、消費者に、価値あるブランドというイメージをもってもらうことです。
「ウイルス対策にR-1!」のイメージが浮かぶことがブランディングである
私たち消費者は、どのような物が、価値のあるブランドだと思うのでしょうか。
自分に必要なもの、自分の好きなもの、自分を満足させてくれるもの…価値の感じ方は人それぞれです。
では、具体的に、ショッピングに出かけた自分を想像してみましょう。お店にはたくさんの物が並んでいます。どれにしようか迷ってしまいますね。
それではその時の目的の商品は例えば、ヨーグルトを買うとしましょう。市場、実際にお店に並ぶ、ヨーグルトブランドには、機能性のあるものが多くあります。あなたはたくさんあるヨーグルトブランドの中から、どのヨーグルトを選ぶでしょうか。
ヨーグルトを選ぶ時に、期待することは
- 便秘を解消し、肌荒れを改善したい
- 風邪やウイルスに対する免疫力を高めたい
- お腹の脂肪を減らしたい
- 胃炎や胃潰瘍、胃がんの発症原因とされるピロリ菌を防ぎたい
- 毎日食べたいから、価格の安いものが良い
- 果肉入りなら、子どもが嫌がらずに食べてくれそう
- カルシウム、鉄、ビタミンなどの含有量が多いものが良い
など、様々です。
もちろん味そのものや固まり具合など好みもあると思います。そこに多くの方は、自分が求める条件をプラスして選んでいるのではないでしょうか。
では、購入者はその条件に合うヨーグルトを、どのようにして知るでしょうか。
売り場で一番効果があるのは、ヨーグルトのパッケージでしょう。パッケージに、どんな効果があるのか、成分として、何がどれだけ含まれているのかが記されていると、選びやすくなります。
他にも、自分が選びたいヨーグルトを、テレビCMや広告、売り場の価格表示によっても知ることができます。
私たちは、さまざまな情報によって、そのヨーグルトがどんなものなのかを知り、そのヨーグルトに対するイメージを持ちます。
具体的な商品を例に考えてみましょう。みなさんは明治R-1ヨーグルトを食べたことがあるでしょうか。中でもドリンクタイプは、スプーンが要らないので、出先でも飲みやすく人気のようです。我が家では、おやつ時の、ジュース代わりに飲むこともあります。
この商品ですが、「冬はR-1ヨーグルト」のイメージが強くないでしょうか。インフルエンザや風邪などのウイルスが流行する頃になると、R-1ヨーグルトを買っているご家庭も実際に多いと聞きます。
我が家でも意識的に冬から春にかけて実際にR-1ヨーグルトを選んでいます。他の時期は、もう少し安価なヨーグルトに切り替えていました。
「冬はR-1ヨーグルト」のイメージをもった方が多いせいか、夏に流れていたR-1ヨーグルトのテレビCMには、「夏こそR-1」の文字が映り、ナレーションも「夏にもR-1」というようになりました。
実はそもそも、メーカーはR-1ヨーグルトを食べることが、インフルエンザ予防になるとは言っていません。パッケージやテレビCMでも、1073R-1乳酸菌は「強さひきだす乳酸菌」と謳っているだけです。
1073R-1乳酸菌は免疫力を高めると言われています。そのため、暑さや食欲低下などにより、弱った夏の体にR-1ヨーグルトを推奨するような内容のテレビCMを放映したとしても違和感はなく、不思議ではありませんよね。
R-1ヨーグルトは情報番組や、雪景色のテレビCMの影響により、冬のイメージがつきました。実際にR-1ヨーグルトを食べ続けて、元気に冬を過ごしている方もいるでしょう。
しかし、実際ににはR-1ヨーグルトに限らず、ヨーグルトを食べることで便秘解消や肌荒れ改善などの効果が現れて体調が良い方もいることでしょう。逆に「食べれば絶対に快調、病気にならない!」と言い切ることはできません。もちろん、ご自身の体質との相性もあると思います。
それでも私たち消費者は、頭に浮かんだイメージを頼りに、ヨーグルトを買うのです。
こうした実際に購入する場面で私たちの頭の中に「ウイルス対策にR-1ヨーグルト」というイメージが浮かぶことが“ブランディング”です。
ブランディングを進めることによってイメージが浮かび、多くのブランドの中から、消費者に選んでもらえるブランドとなっていくのです。
ブランディングはファンをつくり、勝てるブランドにする
今度は、服やバッグ、靴の買物を想像してみましょう。
みなさんは服を選ぶ時やバッグや靴なども含めたコーディネートを考えるとつい選んで買ってしまう好きなものや、こだわりはありますか。
好きな物や、ご自分のこだわりと合致したものは自分を満足させてくれます。「これが欲しい」「お金を出して買おう」と思わせるあなたにとって価値のあるものです。
また、お気に入りのブランドがある方もいらっしゃるでしょう。
“オシャレなデザインが好き”
“コストパフォーマンスに優れている”
“大事なシーンで恥ずかしくない”
“自分に自信や魅力を与えてくれる”
お気に入りのブランドには、その人にとっての価値があるのです。そして、消費者は、自分にとって、価値のあるブランドの顧客であるというだけでなくファンになります。
新作をチェックしたり、同じ商品を買い続けているという方もいるのではないでしょうか。
ファンの中には、そのブランドの持つ魅力を、他人に伝えたくなる方もいるでしょう。企業の宣伝効果だけでなく、ファンによる口コミも、ブランドの売り上げに影響があるはずです。
例えばInstagramで素敵なコーディネートをみて、同じ服が欲しくなったり、オンラインショップで何かを購入する時に、評価の☆の数や口コミを参考にする方もいらっしゃるでしょう。
ブランディングは、いまや市場で消費者に選んでもらうことと、ブランドのファンになってもらうためには欠かすことができません。
ファンが増えれば、ヒット商品やベストセラー商品となり、市場で勝てるブランドとなるのです。
ブランドイメージとインナーブランディング
ブランディングのためには、消費者に、一つでも多くの“良いブランドイメージ”を与えなければなりません。
では、私たちが思う“良いブランドイメージ”には、どのようなものがあるでしょうか。
いくつか挙げてみましょう。
商品では
- デザイン(美しい、かわいい、格好いい、おしゃれ、華やか、シンプル…)
- 使い勝手が良い(使いやすい、わかりやすい、お手入れしやすい…)
- 良い作り(素材、縫製、塗装、組立、丈夫さ、映りや音など性能の良さ、安全性…)
- みんなが知っている、人気がある
サービス面であげるとすれば
- 料金やシステムが明瞭である
- しっかり説明してくれる
- 対応が丁寧
- トラブルが起きない、またはトラブル対策がしっかりしている
- 希望を叶えてくれる
- 特典がある
- 更新しながら、時代に適した形でサービスが継続する
企業のイメージであれば
- 自社の製品、研究や技術の発展に努めている
- 嘘がなくクリーンである
- 安全面、保証面などで信用できる
- 問題や課題にしっかり向き合い、どんな時も誠実である
- 信頼できる確かな技術
- 企業やブランドが長く継続している
このように、私たちは、物やサービスといった商品はもちろんのこと、メーカーそのものに好感をもち、ブランドあるいはメーカーのファンとなることもあります。
他にも
- きちんと教育された社員
- きれいに掃除されたトイレ
- しっかり在庫管理がされたお店
- 待たせない努力
- オシャレなディスプレイ
- 雨の日のお客に対する気遣い
など、接客やサービス業では、そこで働く人によってもブランド価値の向上が期待できます。
こうしたものは「インナーブランディング」と呼ばれています。
「インナー」とは、内側という意味です。この場合はそのブランドで働く社員のことを指しています。
消費者にブランディングしていくのと同じように、社員が「うちのブランドは価値あるブランドだ!」というイメージをもち、ブランドのファンになることを目指すブランディングです。
ブランドの価値を理解し、ブランドにふさわしい働き方をする社員も、価値あるブランドというイメージを作る一員なのです。
ブランディングを継続しなければ、ブランドイメージは覆らない
消費者のブランドに対するイメージは、余程の事が起きない限り大きな変化はおこりません。一度好きになったブランドのファンを長く続けている方も多いのではないでしょうか。
しかし、消費者は、ブランドに対して、あこがれや好感と共に、時代に合った価値を提供してくれることや、共感できる進化を期待しています。
ですので消費者を無視したデザインの方向転換や、いくら良い素材とはいえ、古臭さを感じさせるものを身に着けたいとは思わないものなのです。
そのため、ブランディングは消費者に受け入れられる変化を必要とします。また、そのために継続することが大切なのです。
私たち消費者は、限られた時間の中で自分に必要な物や、自分にとって価値のあるものを選ばなければならない場面が少なくありません。
昔の情報、イメージだけでなく、“今、本当に良いもの”を知りたいからです。
ですので、メーカーのブランディングに対する努力次第で、ブランドのもつ力は変化します。その結果として市場で勝つブランドが入れ替わることは十分にあるのです。
ファッションの分野では「みんなが知っている」「人気がある」といった知名度によって売れるものが多くあります。
ではスニーカーを事例に考えてみましょう。皆さんのお宅にもスニーカーはありますか。
スニーカーは、殆どの商品に、ブランド名とブランドロゴがデザインされており、どこのブランドの物かが、本当にわかりやすくデザインされています。
そして、それぞれのブランド名やブランドロゴが多くの人に認知されている商品でもあります。
見るだけで「みんなが知ってるブランドだ」「オシャレな人が履いてるよね」「一万円ちょっとで買えそうかな」など、イメージが浮かぶことが、イメージブランディングですが、スニーカーはそれが進んでいる代表例といえます。
スニーカーを取り入れたオシャレは、分かりやすいブランドロゴ、店舗の多さや手ごろな価格で入手しやすい、服装に合わせやすくなった事などが要因でしょう。
特に、女性にとっては、服装に合わせやすくなったというのが、スニーカーにおけるブランディングの変化です。
昔は、職場の行事、子どもとの遠足など、限られた時にしかスニーカーの出番がなかった方もいたかもしれません。
スニーカーのデザインも、ゴツめの物が多かった印象です。それが、近年で、女性がスカートに合わせて履けるようなかわいらしい物やきれい目なデザインも豊富に揃うようになりました。
実際に人気のスニーカーブランドであるニューバランスは、デザインは違えど老若男女が履いているのです。このようにブランディングの継続でブランドのもつイメージは覆るのです。
価格競争に巻き込まれないことがブランディングの成功である
ニューバランスやナイキ、アディダス、オニツカタイガーなど、有名スニーカーブランドは、値下げが滅多に無いのも特徴です。
私たち消費者は、殆どの場合、自分の気に入ったスニーカーを、売り場の表示価格で購入しています。
コンバースなど、比較的リーズナブルなスニーカーブランドであっても、殆ど定価勝負です。あくまでも、デザインや履き心地などで、ブランディングを継続し、他ブランドとの差別化をはかっているのです。
ブランディングの大きな目的の一つは、消費者に価値のあるブランドだと認められ、顧客を獲得し、ブランドのファンになってもらい価格に関係なく、市場で選んでもらうことにあります。
その結果、値が高くても売れる、他との価格競争に巻き込まれないということがブランディングの一つの成功なのです。