ブランディングも企業が目指す先は顧客中心からサスティナビリティへシフトしている
2021.09.24
企業が自社の利益だけを追う時代は終焉しつつあります。その結果、ブランディングも顧客のことだけを考えていけばいいという時代ではなくなりました。ここではサスティナビリティと企業という視点でブランディングにどう手を加えていくのか、その背景をまずは解説します。
CONTENS
企業のターゲットは自社→顧客→地球へと変化している
90年代のバブル崩壊以降に日本のビジネスシーンでよく言われたことは「顧客」という言葉です。
顧客至上主義はもっと前の時代からありましたが、確実にこの30年で加速してきました。
- 顧客満足度
- ユーザービリティ
- ユーザーエクスペリエンス
まだまだ時間をかけて思い出せばこうした言葉はもっと存在します。こうしたこと言葉の群れが示すように時間をかけて「顧客への意識」は圧倒的な価値観となってきました。そうなった理由はまず「顧客」という意識が絶対ではなかた前時代がありました。
自社の利益以上に顧客にフォーカスしなければセールスにはつながらないという時代だったからです。2010年代後半までこうした状況だったのは実際に日本に限ったところではありません。
一方で、消費のみを中心にしてきた経済が多くの場面で地球の資源を削り取ってきました。そうしたことへのアンチテーゼとして環境主義は常に存在してきました。実際に80年代、90年代、そして00年代においても決して動きとして小さなものであったわけではありません。しかし、主流になることはありませんでした。
しかし、そうした下地があったことは時代が進むことで多くの人の価値観が変わり状況が変わってきました。80年代以降生まれの消費者のなかには「環境への配慮などがあるかどうか」など企業の姿勢でその企業やブランドの商品を購入するか決定するようになってきました。
現代は様々なブランドに溢れ、消費行動はインターネットが主流という世代は、それ以降の世代よりも時間の使い方や、情報の接種の仕方が変わってきています。
その企業がどういった思想を持ち、サプライヤーやスタッフとどういった関係性の中で企業活動をつづけているのかといったことに注目し、自分にフィットする企業を選ぶようになってきました。
継続性への意識向上は差し迫っている
こうした志向性と、もっと国際的、政治的な動きが連動してきています。それはSDGsという国連が提唱し、多くの国がその活動に参加する「継続的な開発目標」と和訳される取り組みです。
SDGsが支持される背景には様々な問題がありますが、ここ数年での世界的な異常気象などがムードを加速させています。実際に、農業に関する産業をメインにしている国では、気候変動の影響に関するニュースはトップニュースになることが少なくありません。
例えばインドネシアでは年々、雨季が短くなっており、農作物の収穫に影響が出ている地域が少なくありません。インドネシアは人口の多い国ですが、まだまだ第一次産業従事者が多い国柄でもあります。もちろん一部の発展途上国では、環境規制に対し異議を唱えている国もあります。そうした国ではまだ経済的な発展が求められているからです。
こうした問題に対してSDGsでは公衆衛生の整備などボトムアップで支持を得ようと画策しています。
ただし、海面の上昇などで沈んでしまう可能性が高いバヌアツやオランダのような国にとっては以前から死活問題でもあり、コミットしている熱量はとても高い国が少なくありません。
また、日本においてもこの環境や気候の状況には異変を感じている人も少なくありません。毎年の水害などについては多くの被害者を各地で出しており、他人事ではなくなってきているのです。
こうした状況もあり、地球環境の継続性を意識することは、個人にとっても企業にとっても重要視されてきています。そしてこうした部分への関心は行政も含めた動きとして大きな広がりをみせています。また、それに加えて早急に取り組むべき課題となってきました。
こうした動きはいうなれば価値観のアップデートと言えるかもしれません。世代交代することで世の中がガラッと変わることは歴史的によく起こることですが、長寿化する社会においてはそうした世代交代が起こりにくくなっています。しかし、状況に合わせた変化は必ず必要です。それが今、こうした形で表面化してきているということがいえるかもしれません。
サスティナビリティ(継続性)とはなにか
サスティナビリティとは、一過性の消費ではなく継続的に地球環境や労働環境の中から回収が可能なシステムやその利用を指します。
大規模な開発により熱帯雨林などを切り開いた農業や、作業従事者の健康を損なう資源採取など、実際に経済活動の多くは何らかの大きな負担のうえになりたっています。そうした負担の中でも回復不可能なものもあります。日本でも公害が問題になることが以前はありました。こうした話は国内ではあまり聞かなくなりました。しかし、実際には資源採取の現場や農業の現場ではいまだに問題になっています。
ある意味では、今までの文明的なくらしはそうした犠牲のもとに成り立っていたわけです。こうした状況を「サスティナビリティ」という言葉のもと見直していこうという運動が80年代から起こっています。
「サスティナビリティ=継続性」という訳が与えられていますが、この考え方の基本は循環型経済への意識にあります。自然環境の回復力を超えない消費であったり、労働従事者が継続的にかつ健全な暮らしを維持して働ける環境下で経済活動を行うことを指しています。
こうした動きで注目を集めたのがアメリカのポートランドです。ポートランドはアメリカの中でも比較的治安がよくのんびりした都市として知られていましたが、それがサスティナビリティやDIYなどに意識を向ける人たちに注目される都市となっています。その結果、アメリカでの住みたい都市ナンバー1となっています。
日本でも流行している直接産地から仕入れるコーヒーや、クラフトビールなどの情報発信基地でもあります。人種多様性は比較的少ない街ですが、様々なライフスタイルを許容し、その暮しぶりに憧れるアメリカ人が増えているというのは、こうしたサスティナビリティやSDGsへの関心の高まりを伺いしることができます。
サスティナビリティと科学
サスティナビリティには二つの方向性があります。一つは自然回帰です。これは消費や経済活動をできる限り緩やかにして抑えていこうという考えかたです。
もう一つは「代替えと科学の発展」です。
これはエネルギー問題に対して顕著です。経済活動については必ず電気やガソリンなどの動力源が必要です。石油や原子力など、結果的に環境負荷の高いエネルギーに対して、太陽光や風力などを利用して代替えし、経済活動を維持しようという考え方があります。それぞれ発電の安定性など供給に課題を抱えていますが、そうした課題に対して科学の発展で回答していくという考え方も台頭してきています。排気ガスなどの問題もこうしたところに組み込まれ、このジャンルの発展には高い期待がかかっていると同時に、ITによる情報網と同じくらいこの20年で進んできている分野ともいえます。
エネルギー効率を求めることで実際に環境負荷を減らすことができます。こうした効率に対する注目はエネルギー分野からいろんな分野へと広がっています。
単純にサスティナビリティというと過去への回帰として考えられることも少なくありません。しかし、実際にはそうではなく、発展した技術の使い道としての志向性や哲学なども絡み、最先端の技術に付加しているケースも少なくありません。
また、科学技術のあり方として、一つサスティナビリティであることや、そうしたことへの寄与も求められるようになっているということはマーケットやビジネス視点でも持っておく必要があります。
CSRとサスティナビリティ
サスティナビリティへの意識はCSRなどとも結びついています。
CSRとはCompany Social Responsibiltyの頭文字をとったものです。この意味は「企業の社会的責任」という訳になります。企業は利益を追求するばかりではなく、社会的な責任も追っているという考え方が大きくなってきました。それぞれの企業がCSRを掲げ道義的な責任に対しても企業活動を進めていくようになってきました。
CSRは2010年代にISO(国際標準化)にもとりいれらこの10年で一般化してきました。CSRは、サスティナビリティやSDGsが社会環境的な立場にたって建てられていることに対し、利益受益者の目線で社会的意義を考えたものとなります。
短絡的な消費の時代の終焉
いずれにせよ、さまざまな視点から企業活動にも社会的意義や環境保護、継続性などが求められるようになってきたのは事実です。
こうしたことに以前では消費者はそれほど関心はありませんでした。また、そうしたことに関心のある消費者でも「そういう会社なら」と商品の購入を決めたり控えたりする理由には多くの場合はなっていなかったのです。
しかし、この2020年代はその様相がすっかりと変わっています。価値観は時代とともに移り変わるものです。そして、こうした消費に対する考え方が大きく変化してきているのです。
どういった主張を込めるのかが企業にも求められつつある
今までは企業は販売をいかに伸ばすか、経費をいくら削るのか、原価をいかに抑えるかということだけを考えれば良い時代でした。しかし、今はそれだけでは足りなくなっています。顧客満足だけを掲げ、ブランディングを進めてていても、そのブランドは中身のない空虚な存在として選択肢として伸びることは少なくなっています。
今、こうした社会的な意義を様々な方向から考え、実践し、主張していくことでより時代にあった多くの共感を得られるようになってきています。もし、ブランディングをしていて、そうしたことに着目をしていなかったという場合は、今一度振り返って、御社のこうした部分について振り返ってみてもいいでしょう。