ブランディングの会社が注目の方法〜「要素ブランディング」を解説
2021.08.17
ブランディングには様々な要素が絡み合っています。そのため、一つのセオリーに乗って行われるものではなく、状況によってその手法は様々に変化していきます。
しっかりとブランドを浸透させ、ユーザーそれぞれの中にその存在感を深めていくということを考えるとブランドの数だけ、その正解があります。また、そのブランドがどういった部分を大切にし、中心に考えていくのかによって、それぞれのとるべき手法や戦略も変わることでしょう。
また、ブランディングが活用できる対象となるものは、何も消費者に最終的に手に届く商品やサービスそのものにかぎるものではありません。
その中に使われる部品や素材に対してもブランディングをすることは有効なのです。
ここではブランディングを実施していく方向性の中でもこうした「要素ブランディング」について解説します。
CONTENS
ブランディングのポイントは全体のアピールだけではない
ブランディングのゴールは、ブランドとして商品やサービスの認知を高め、ユーザーの中で価値を高めていくことです。この目的を果たすためには様々なことを実施していきます。
ブランディングは、実際のところ、そのブランドの状況に合わせて、どんどん変化していくので最終的なゴールはありません。ですので一時的な通過点としてその認知と深まりを目指していきます。
視覚と言語
視覚的なものでコンセプトを統一してブランドを連想させるデザインと絡んだ部分はブランディングとして一般的に理解しやすいものです。
では、ブランディングとして成功している例によく引き合いに出されるコカ・コーラをイメージしてみてください。
コカコーラと聞いた時点で、すでにその特徴である「赤をベースにしたロゴ」が「炭酸による爽快さ」などと合わせて多くの人の頭に浮かんだのではないでしょうか。
これはブランディングの中でも視覚的な側面をしっかりと作り上げてきたからこそ現れている結果です。こうしたイメージが定着すると、ユーザーはそれに関連したものを見たりするだけで、つまり、この場合、赤い色をみただけでそのブランドを思い出します。こうした積み重ねがユーザーをファンとして獲得していくわけです。
もちろん、その他の要素も絡んでいます。しかし、イメージが明確に印象づいていなければ、こうした作用は期待できません。
こうした視覚的なイメージによる想起はブランディングの実際としては一つの事象に過ぎませんが、ブランディングの中でも大きな部分を握っています。私たちかいなはこうした「デザインの領域でのアプローチは得意分野」でもあります。
要素、部品としての存在感を示すブランディング
このように単一の商品そのものがユーザーに受け入れられるブラディングは多くの人がイメージしやすいことかと思います。こうしたこととは別に「要素」や「素材」としての価値を発揮するブランディングも存在します。そういったブランディングにもぜひ注目していく必要があります。
まだ日本ではあまり言葉として一般には普及していませんがこうしたことは「イングリディエンド(Ingridient) ブランディング」として、意外に歴史は古くからあります。単にインブランディングと呼ばれたりもします。日本では「要素ブランディング 」と呼ばれます。
国際的に活躍している企業ではこうした要素としてのブランディングに注目し、実際にその取り組みによって大きな利益を生んでいる企業もあります。
このタイプのブランディングの例を挙げてみましょう。わかりやすいところでは、例えばある料理に「特定の素材が使われていること」がブランディングになるというケースです。「鹿児島産黒豚のソテー」という場合、ただ「ポークソテー」という場合よりも好印象を受ける人が多くいます。これは鹿児島産黒豚が素材として価値を感じさせているということに他なりません
要素ブランディングの場合、素材も、その料理も、ともに価値を上げていくことになります。しかも要素の部分にも十分にスポットが当たっているのです。
つまり。その素材そのものをブランディングする、あるいはされていくことを指しているというわけです。
それではこうした要素ブランディングをもう少し詳しくみていきましょう。
要素の影響力もブランドの中で実は大きい
この要素ブランディングの成功した事例として頻繁にあがるのはCPUのメーカー大手のインテルです。
インテルは90年代前半に「Intel Inside」のコピーとともに大規模な広告キャンペーンを行い、PCの良質なCPUとして一般のユーザーに対して信頼と性能をアピールしました。
その結果、どのメーカーが販売するPCであっても「インテルのCPUを使ったコンピューター」を多くの人が買い求めるようになります。
場合によってはインテルのCPU以外は敬遠される状況さえ生まれます。
これは各メーカーが「インテルのCPUを搭載しなければ訴求できない」という状況にまで進展していきます。その結果、PCのCPUのシェアはほぼインテルが占めるようになりました。
ここでの代表的な出来事としては、ほぼ独自にすべてを組み上げてきていたAppleのマシンもインテル製のCPUが搭載されていました。独自のサプライチェーンを持つAppleの歴史の中で実はこれは結構特殊なことでもあります。2000年代半ばまで独自のCPUを搭載していたAppleも「Intel」というブランド力にこの時、降伏したというわけです。
実はこうしたブランディングの例は少なくありません。自転車パーツを供給している精密機械メーカーのシマノも「Shimano」ロゴのパーツは自転車愛好家の中で絶大な指示を得ています。最初からスポーツ自転車に搭載しているパーツとしてだけでなく、代替えのパーツとしても高い信頼と人気を得ています。
シマノには対抗馬としてヨーロッパの老舗パーツメーカーのカンパニョーロがいました。カンパニョーロのブランディングの牙城は90年代頃までは圧倒的で、日本でも高額なカンパニョーロのパーツセットは憧れをもって見られていました。
これに対しシマノは徹底的に無駄を廃し、性能を意識した洗練されたデザインと、特許登録を技術秘匿のためにあえてしないなど、独自の技術力を見せつけていきました。その結果、自転車ファンを虜にしていきました。今や、自転車パーツでシマノの牙城は揺るぎません。
このインテルとシマノの2つの例は要素ブランディングの例としてよく取り上げられます。そのため、多くの人は工業製品に対してのみ有効なものだと誤解を生んでいるところもあります。しかし、実は工業製品にかぎらず、この要素ブランディングはどのようなものにも作用します。私たちの生活にも実際に大きく影響を与えているものです。
生活に与える要素ブランディングの影響
知らず知らずのうちに私たちは要素ブランディング の影響を受けています。
たとえば加工食品などは少しでも内容物を気にするような人であれば、素材としてどういったものが使われているか確認していると思います。また外食をしていても先ほどあげた黒豚のように「〇〇産の素材」というだけで「何か美味しいかもしれない」とそのメニューを選んだ経験があると思います。
例えば「比内地鶏」などはよくレストランなどでも素材表示として見かけることがあります。これらも要素ブランディングと言えます。こうしてみると要素ブランディングの気配は衣食住を中心とした生活の基本的な部分のいたるところにあふれているといっていいでしょう。
もちろん要素ブランディングは素材メーカーだけでなく、その素材を利用して別の商品として送り出すメーカーも取り入れることができます。しかしその主導権はやはり、その素材メーカーにあるといっていいでしょう。
そして、そのベネフィットの影響は成功するほど大きくなり、市場の中で確固たる地位を確立していくことになります。
素材の広義性と可能性
素材という場合、何も材料に限ったことではありません。例えば「どこの誰が作ったのか」ということも、もしそれがブランディングされていくことになれば、価値を高めることができます。それはすでに確立しているブランドでも効果があります。
その代表例の一つにギターが挙げられます。アメリカ大手のエレクトリックギターメーカーであるフェンダー(fender)社では、クラフトマンの指導的な立場にいるマスタービルダーという存在がいます。彼らは有名ミュージシャンのギターを制作したりセットアップしたりする作業にも従事しています。
そうしたマスタービルダーの制作したギターは90年代にカスタムショップと銘打って販売されるようになりました。価格は通常のラインナップの2倍ほどで販売されましたが、市場での人気が高く、商品は枯渇しました。
これが人気を博して以来、余力のある他の楽器ブランドは”カスタムショップ製”やどこの工場かをギターのブランディングの一つとしてアピールするようになっていきます。
この話にはさらに続きがあります。続いてFender社が行なったのはマスタービルダーのうちの「誰がつくったか」ということをしっかりと打ち出していったのです。しかも、さらに通常の価格の4倍ほどで売り出しました。結果的にこれも成功しギターの価格は高騰します。こうした作業によって楽器市場の中でもしっかりとした価値を維持することに成功しました。
これはフェンダー社全体のブランディングでもあり、その中にさらに「場所」や「人」などインブランディングの要素を取り入れているといえます。
要素ブランディングとして、既存の商品の価値を高めるために、この「場所」や「人物」をブランド力として活用していますが、こうしたことは他の商品に当てはめて考えることもできます。
例えば工芸品などはブランディングしていくことで、生産者だけでなく、それを購入した人にとっても、その製品を所持し日常の中で利用することに潤いを与え、それがベネフィットとなります。
また、こうしたことをもっと積極的に進めていきたいジャンルとしてあるのが農作物や水産のジャンルでしょう。たとえば利尻産、奥尻産、日高産など北海道の三箇所の昆布があります。これらは同じ昆布でも特徴が違います。しかし、なかなかそのアピールはできていません。他にも里芋やトマト、ねぎなど、産地や品種で変わるものは数多くあります。しかしそれらはあまり知られていないものも少なくありません。
中には売れるとそれを真似てしまう、または似たような名前を名乗るなどで印象をかえって悪くしてしまうようなケースさえ見られます。それでは全く逆効果です。
素材ブランディングを活用する側の注意点
「〜監修」などという商品が一時期流行しました。これはインブランドとして、素材や技術を供給するサプライヤーとなるメーカーと、その商品を供給するメーカーのブランドが、お互いにメリットを提供し活かしあって高めていくというものです。
この「〇〇監修」というものが、どうしてもその印象づけが一方的になるパターンが多くあります。その結果、あまりうまく行かないケースも生みます。しかし一方でお互いのターゲットが一致するとブランド同士を高めあうことにもなり、とても高い効果を生むこともあります。
うまくいかないケースとしてよくあるのは、要素ブランディングされている素材についての理解が乏しいケースです。そのブランドがどのマーケットに対して訴求力を持っているのかを用いるメーカー側はしっかりと認識しておく必要があります。
また供給する側もしっかりとブランディングしてきた自社の商品について、供給時のパブリケーションなどについてはコントロールしていく必要があります。
あまり下手な露出をするとブランディングしてきた価値を損なうこともあるからです。
要素ブランディングはBtoBにこそ響く
要素ブランディングが進んだブランドはサービス業などでも活用されることがあります。これはここで度々登場している「鹿児島産黒豚」などで説明した通りです。
飲食店であればメニュー開発、アパレルであればデザイナーやコーディネーターの推薦など、例には欠くことがありません。
また、BtoBをメインにしたビジネスに対してもブランディングの重要性を示していると言えます。
取引するビジネスパートナーはその素材を仕入れて利用するだけで、その商品のブランド力もあげることができます。つまり、BtoBではWin-Winの関係を作り出すことに一役買うことになります。
一般ユーザーへの波及力が要素ブランディングを成功に導く
何かの要素として活用される商品が一般のユーザーに受け入れられても、一見メリットはないと感じる人も多くいるかもしれません。
しかし、こうした例を見ていくとそうではないことに気が付くはずです。
どういった商品を扱うにしろブランディングを確実に行なっていくことは大きなメリットがあります。
要素ブランディングでも欠かせないユーザーエクスペリエンス
要素ブランディングでも変わらず絶対的に必要なのが顧客に対してベネフィットを満たし、その期待に応え、時にはそれを超える体験を与えることです。
たとえば先述のインテルの事例でいえば、実際に機動性のよさをPC作業の中で実感できるということが重要でした。それをインテルは実際に満たしてきたからこそ、要素ブランディングが圧倒的な価値を持ち、効果を発揮するようになりました。
ですので、まずその商品が素材としてどこが優れているのかをしっかりと捉えることが重要です。そしてそれを言語化したりイメージを形作る必要があります。
その他の事例でも同じことがいえます。それぞれの商品が持つユニークさやメリット、顧客へ提供することが可能なベネフィットを徹底的にに掘り下げて分析し、しっかりとターゲットになるユーザーへ残さず伝えることはやはり必要です。
その上で、その機能による効果は要素ブランディングの対象となっているブランドによるものであると認識してもらうことができるようにデザインやコピー、戦略などを落とし込んで、広告などもふくめたマーケティングの力を使って拡散していく作業を丁寧に行なっていく必要があります。
ブランディングの集積が力になるということ
こうしたことはブランディングの要素として語られるものそれぞれに言えることです。そのため、一つのブランディングはそれぞれの要素のブランディングの集積となることでより強固なものが出来上がる可能性があります。
つまり、キャッチコピーや造形、音、ロゴマークなどブランドを構成するその要素自体もブランドとして効果を生む可能性もあるということでもあります。
その効果を生み出すためにはそれぞれのブランディングを構成する要素についてしっかり考えていくことが改めて重要になってきます。
そのうえでどういったベネフィットがあり、それを言語化あるいは視覚化によってターゲットにアプローチできるのかがブランディングにとって重要になっていきます。
ブランディングはこうしたことの積み重ねで成立しています。だからこそ時間がかかったりすることも当然のようにあるのです。
また、それぞれが思いのこもったもので構成された商品やサービスが広がっていけば、世の中を一歩より良い場所に進める力になっていくものでもあるでしょう。
自社と競合との差別化など、ビジネス的な視点にたったものだけでなく、社会的な側面にも深くブランディングが貢献していくことにもなります。
結局はここまでのことを成立させるために確かな道のりを進んでいくことが重要です。そのロードマップを描くサポートをするために私たちのようなブランディング会社があります。
ジャンル問わず、ブランディングの可能性は存在しています。もし興味があるという場合は一度ご相談ください。そこに必ず何かの可能性があるはずです。
そして私たちと想いがあえば、ぜひ一緒にみなさんの想いを届けていきましょう。