ブランドパーパスが機能しているかどうかは、何をやめたかで分かる
2022.01.28 2026.09.02 更新
パーパスという言葉を社内で使ってみたものの、それで何かが変わった実感がない。そんな状態のまま数年が過ぎている会社は少なくありません。
ミッションやビジョンとどう違うのか、社会貢献とどこが線引きされるのか。説明はいくらでも見つかるのに、自社の場合に何を書けばいいのかは出てきません。
一般には「パーパスとは社会における存在意義を掲げることだ」と語られます。かいなはそこで止めません。パーパスが機能しているかどうかは、掲げた言葉の出来ではなく、それを理由に何かをやめられたかで決まります。やめた判断がひとつも出てこないなら、それはまだ飾りの段階です。
CONTENS
パーパスが言葉だけで終わるとき、社内で何が起きているか
掲げたのに定着しない。この状態には共通した型があります。順に分解していきます。
パーパスは「どう見せるか」ではなく「どう決めるか」の話
ブランディングの多くは、どう見せるかを扱います。ロゴ、トーン、写真、メッセージ。外側から見た印象を設計する仕事です。
パーパスはそこに含まれません。扱うのは、判断が分かれたときにどちらを選ぶかという内側の基準です。
だから見せ方の作業と同じ進め方で言葉だけを整えると、日々の意思決定には届きません。きれいな一文が壁に貼られて終わります。
ソーシャルグッドと混ざると、活動が付け足しになる
社会貢献活動とパーパスは、よく同じものとして語られます。この2つは階層が違います。
余剰の利益で自然保護に寄付する、意見広告を出す。これらは本業の外側に足された活動で、ソーシャルグッドです。
パーパスの場合は、本業そのものが目的に向かっている必要があります。売っている商品と掲げている言葉が別々に動いているなら、それは付け足しのままです。
ベネフィットの言い換えになっていないか
「お客様の暮らしを豊かにする」。この形の文は、パーパスとして書かれることが多いものです。
ただしこれは、商品を使うと何が得られるかというベネフィットの説明を、少し抽象度を上げただけの文でもあります。どの会社に置き換えても成立します。
自社以外に当てはめて違和感がないなら、判断の基準としては使えません。誰にでも言える文は、迷ったときに何も決めてくれないからです。
自社ECを4サイト運営して分かった、パーパスが効く瞬間
かいなは支援会社であると同時に、自社ECを4サイト運営しています。掲げた言葉が働くのは、たいてい売上を手放す側の判断のときでした。
品揃えを断るときにだけ、コンセプトは形になる
かいなは「めんどくさいを否定しない」を掲げた日用品のEC「SOREDAKE」を自分たちで運営しています。拭くだけ、流すだけ、入れるだけで済むものだけを扱う売り場です。
この基準が働くのは、売れそうな商品を前にしたときです。数字は取れそうだが、手間をかけて丁寧に使う類の商品だった場合、扱わない判断になります。
掲げた言葉が意味を持つのは、この一回です。並べるほうの判断では、コンセプトは何も仕事をしていません。
忙しい時期に、判断が現場まで降りるかどうか
カニと北海道海鮮のギフトEC「かにと。」も運営しています。年末に注文が集中する商材です。
この時期は、経営側が一件ずつ確認する余裕がありません。梱包をどこまで丁寧にするか、遅延の連絡をどの温度で出すか、判断は現場の手元で起きます。
そのときに拠り所になる一文があるかどうかで、対応の揃い方が変わります。パーパスの真価は、平時ではなく手が足りない日に出ます。
素材の選択が、原価と衝突する場面
猫家具のEC「猫のための木工所」では、国産の無塗装天然木を使っています。塗装をすれば見た目は整い、傷にも強くなります。
それでも塗らないのは、猫が舐める前提で作っているからです。ここで塗装を選べば、その日から売り文句と実物がずれ始めます。
目的を先に置いているかどうかは、こうしたコストと利便の衝突で表に出ます。言葉を作った日ではなく、選択を迫られた日に分かるものです。
かいながブランドパーパスの言語化をすすめない場合
やらないほうがいい、と申し上げることもあります。判断の材料として3つ挙げます。
誰に売れるかが、まだ見えていない立ち上げ初期
単品を立ち上げたばかりで、買ってくれる人の輪郭がまだ定まっていない段階があります。かいなにはこの時期のご相談も多く寄せられます。
ここでパーパスを先に固めると、後から見えてきた顧客像と食い違ったときに、言葉のほうを守ろうとしてしまいます。
この段階で必要なのは、売れた理由と売れなかった理由を書き留めることです。目的の言語化はその材料が溜まってからで間に合います。
採用がうまくいかない理由を、パーパス不在に求めているとき
応募が集まらない、若い人が定着しない。その解決策としてパーパスを作りたい、というご相談があります。
この場合、掲げた言葉と入社後の実態が違えば、離職の理由がひとつ増えるだけになります。共感して入った人ほど、ずれに敏感です。
先に手を付けるべきは、現場で実際に何が起きているかの把握です。言葉は実態を変えた後に付いてくるもので、順番を逆にすると裏目に出ます。
言葉づくりを、外に丸ごと預けたいとき
「いい感じの一文を考えてください」というご依頼は、正直に申し上げてお断りすることがあります。
パーパスは、これまでどんな判断をしてきた会社なのかを掘り出す作業です。外部が資料だけを見て決められるものではありません。
かいなは対話から課題を見つけるやり方をとっています。経営者が自分の言葉で迷いを話せない状態では、この工程が成立しません。
言語化に着手するかどうかを、どこで見分けるか
では、いつ手を付けるのか。かいなが見ているのは会社の規模ではなく、判断のばらつきです。
同じ問いに、人によって違う答えが出始めたか
商品を増やすか絞るか、値引きに応じるか断るか。こうした問いに、社内で違う答えが出るようになったら着手の合図です。
逆に、経営者が全部を一人で決めていて、それで回っているうちは急ぎません。判断基準はその人の頭の中にあり、実際に機能しているからです。
チャネルが増え、人が増え、経営者の目が届かない場所で判断が起きる。この変化が起きたかどうかで、必要性は変わります。
言葉を作る前に、過去の意思決定を並べてみる
着手すると決めたら、最初にやるのは文章づくりではありません。この数年で断った案件、やめた商品、譲らなかった仕様を書き出す作業です。
並べると、説明できない共通点が見えてきます。そのとき何を守ろうとしていたのかが、パーパスの素材になります。
ここから起こした言葉は、社内の誰かが「あのときの判断のことだ」と思い出せます。実例に紐づいていない一文は、翌月には忘れられます。
サイトが分かれている会社は、言葉より先に構造を見る
ブランドサイトで思いを語り、ECは別ドメインで売るだけ。この構造のまま言葉を磨いても、読んだ人は買う手前で離れていきます。
かいなに寄せられる相談で最も多いのはカート移行ですが、掘っていくとブランドサイトとECの分断に行き着くことがよくあります。
語る場所と買う場所が離れているなら、先に手を入れるのはそちらです。伝えるための投資が売上につながる形になって初めて、パーパスは経営の話になります。
ブランドパーパスの整理について、お気軽にご相談ください
パーパスをどう言葉にするかというご相談は、掘っていくと「お客様のことがデータでも実感でも見えていない」という話に行き着くことがよくあります。
その場合に必要なのは、きれいな一文ではありません。誰に何を届けている会社なのかを、過去の判断から洗い直す作業です。
かいなは、ブランディングを通して地域の経済が動き、関わる企業と買う人と働く人が満たされる状態を目指しています。これがかいな自身のパーパスであり、断る判断の基準にもしています。
語る場所と買う場所の統合が先だと判断した場合は、HAKOBのようなブランドサイトとECを一体化する構成もご提案します。AI時代のブランド戦略と合わせて考えたほうがよいケースもあります。
決まった型に当てはめず、毎回の対話からその会社だけの課題を探します。30分の無料相談から、お気軽にご相談ください。