ブランディングの意味と使い方を、自分でECを運営する立場から考える
2021.11.05 2026.09.02 更新
「そろそろブランディングをやりましょう」という言葉が社内で出たあと、何から手を付けるかで話が止まる。そんな場面に心当たりはありませんか。
ロゴを作り直す、写真のトーンを揃える、SNSの投稿を増やす。どれも間違いではありません。ただ、一巡したあとで「何が変わったのか」を説明できないまま次の期を迎えることがあります。
一般にはブランディングは「比較されない絶対的な価値をつくること」と語られます。かいなはそう考えていません。ブランディングは比較を消す活動ではなく、どの土俵で比較されるかを自分で決め直す仕事です。土俵が決まっていない状態で施策だけ足しても、判断の基準が社内に残りません。
CONTENS
ブランディングという言葉が、社内で噛み合わなくなるとき
言葉の意味を確認するところから始めます。定義そのものより、なぜ社内で解釈がずれるのかのほうが実務では効いてきます。
焼印から始まった言葉が、いま指しているもの
ブランドの語源は、牧畜で家畜の所有者を見分けるために押した焼印だと言われます。最初は識別のための記号でした。
やがて「あそこの牛はうまい」という評判が、その焼印に乗るようになります。記号が保証に変わった瞬間です。
日本にも同じ発想がありました。蒲鉾や焼き菓子、家具に押された焼印、あるいは家紋です。ブランドという言葉が入ってくる前から、誰が作ったかを示す仕組みは動いていました。
つまりブランドは最初から「誰が作ったか」の記録で、価値は後から乗ったものです。順番はいまも変わっていません。
認知が上がっただけでは、ブランディングになっていない
認知の向上をブランディングと呼んでしまうと、社内の会話が食い違います。知られることと、選ばれることは別の話だからです。
名前を知っている人が増えても、購入の直前で他社商品と並べられて負けることは普通に起きます。そこで効くのは知名度ではなく、比べたときに残る理由のほうです。
認知はブランディングの一部であって、全部ではありません。施策を評価するときは、認知の数字と、指名で探された数を分けて見ると噛み合いやすくなります。
広告費がかからなくなるのではなく、広告の効き方が変わる
「ブランディングが進めば広告費がかからない」という言い方があります。これは半分だけ当たっています。
かいなは自社ECを4サイト運営していて、広告も自分たちの資金で回しています。想定より効かなかった朝の焦りは、支援側にいるだけでは味わえないものでした。
実感としては、費用がゼロに近づくのではなく、同じ広告の受け取られ方が変わります。すでに知っているブランドの広告は、初見の広告と同じ面積でも意味が違って届きます。
だから予算の立て方は「削る」ではなく「効き方が変わる前提で配分し直す」のほうが実態に合います。
比較されない状態ではなく、比較される土俵を決め直す
冒頭の見立てを具体的にします。ブランディングで動かせるのは、お客様が何と並べて考えるかという部分です。
同じ商品でも、隣に何が並ぶかで選ばれ方が変わる
価格だけで並べられる棚に入ると、どれだけ丁寧に作っても価格の話になります。逆に、用途や場面で束ねられた棚に入ると、比べる基準そのものが変わります。
これは商品を変えなくても起こせます。誰に向けて、どんな場面のものだと言うか。その宣言が土俵を決めています。
ブランディングの初期にやるべきなのは、良さを増やす作業ではありません。どの土俵なら自社が一番になれるかを選ぶ作業です。
コンセプトで束ねた自社ECで、実際に起きたこと
かいなは「めんどくさいを否定しない」という考え方で日用品を束ねたEC、SOREDAKEを自分たちで運営しています。拭くだけ、流すだけ、入れるだけで済むものを集めた売り場です。
ここに並ぶ商品は、単体で見れば他店にもあるものが含まれます。それでも、束ね方を変えるとお客様の反応が変わりました。
「安いから買う」ではなく「これなら続けられそうだから買う」という声が届きます。レビューが1件つく日の嬉しさは、支援側にいた頃には想像していなかった種類のものでした。
コンセプトは飾りではなく、比較の土俵を切り替えるための道具だという実感は、この売り場から来ています。
商品力とブランディングは、どちらが先に来るか
紛い物を高く売るための技術としてブランディングは成立しません。ここは元から変わらない前提です。
一方で、良いものを作っているのに知られていない会社は本当に多い。この場合は、作り込みではなく伝え方の設計に時間を割いたほうが早く返ってきます。
迷ったときは、既存のお客様がリピートしているかを見ます。リピートがあるなら商品側は足りていて、課題は届け方の側にあります。
かいながブランディングをすすめない場合
やらないほうがいい、と申し上げることもあります。判断の材料として三つ挙げます。
商品が定まる前に、ロゴとトーンから始めようとしている
誰に何を売るかが固まっていない段階で、ロゴやカラーパレットを整える依頼をいただくことがあります。この順番はおすすめしません。
見た目は、決めたことを表現する手段です。決める前に作ると、商品が定まったときに作り直すことになります。
この段階で先にやるべきなのは、想定するお客様に一度売ってみて、何を言われるかを集めることです。判断材料が増えてから形にしたほうが、費用も一度で済みます。
広告とLP中心の運営を、当面変えるつもりがない
広告からLPに流し、その1商品を買ってもらう。この形自体は有効ですし、成立している事業も多くあります。
ただ、この構造のままブランディングだけを足しても、効果が観測できる場所がありません。LPは購入の直前だけを担う設計で、蓄積が起きにくいからです。
かいながLP主体・広告主体の運営に対して積極的な提案をしにくいのは、遠慮ではなく構造の問題です。土俵を変える意思があるかどうかを、最初に確認させていただきます。
変えないことを決められる人が、対話の場に出てこない
ブランディングは、やることよりやらないことを決める場面が多い仕事です。値引きをしない、この販路には出さない、この表現は使わない。
こうした判断は、担当者だけでは持ち帰れません。決裁できる人が対話に加われない体制だと、途中で全部が「一応やっておく」に戻ります。
体制が整うまで待ったほうがいいケースは実際にあります。無理に走らせるより、半年後に本気で始めたほうが結果が出ます。
明日から使える、ブランディングの分かれ目
では自社はどう判断すればいいのか。三つの問いに置き換えると、次の一手が決まります。
お客様が何と比べているかを、社内の言葉で言えるか
「うちの競合は誰ですか」と伺うと、同業他社の名前が並びます。ところがお客様は、まったく違うものと比べていることがあります。
猫家具なら他社の家具ではなく「置かない」という選択肢と比べられます。ギフトなら別の商品ジャンルごと入れ替わります。
ここが言えるなら、土俵の設計に進めます。言えないなら、レビューや問い合わせの文面を読み直す作業が先です。順番を飛ばすと、掲げたコンセプトが誰にも刺さりません。
指名で探されているかどうかで、次に置く予算が変わる
社名や商品名で検索されているなら、認知の入口は足りています。この場合の予算は、到着後に納得してもらう情報の整備に回したほうが返ってきます。
指名がほとんどないなら、まず知ってもらう投資が必要です。世界観を磨いても、見る人がいない状態では判断材料が集まりません。
同じ「ブランディング予算」でも、この一点で使い道が逆になります。決める前に検索データを見ておくと、社内の議論が短くなります。
直す場所は、購入の直前から逆算して選ぶ
ブランディングに関わるものを全部並べると、パッケージ、接客、保証、出荷まで含めて手が付けられなくなります。
かいなは、購入の直前に触れる接点から逆算します。読みもので共感してもらえたのに、買う画面に移った途端に世界観が切れる。この分断が起きているなら、ブランドサイトとECの統合が先です。
商品点数が多くて選びきれずに帰られているなら、直すのは世界観ではなく選ぶ体験の側になります。同じ「ブランディングをやりたい」でも、詰まっている場所で答えが変わります。
ブランディングの進め方について、お気軽にご相談ください
かいなに届くご相談は、入口が「カートを替えたい」であっても、掘っていくと「お客様の顔が見えていない」という話に行き着くことがよくあります。
その場合に必要なのは、ロゴの刷新でも投稿本数の増加でもありません。どの土俵で比べられているかを一度決め直し、そこから接点を並べ替える作業です。
かいなは大きなエージェンシーのように決まった型に当てはめず、毎回の対話からその会社だけの課題を見つけて伴走します。ブランディングの取り組みも、この進め方を変えていません。
かいなは自分たちでもECを運営し、売る側の焦りと嬉しさを毎日味わっています。売る側の実感を持った相手として、30分の無料相談からお付き合いします。診断だけ持ち帰っていただいてもかまいません。