要素ブランディングが効く素材と、効かない素材の分かれ目
2021.08.17 2026.09.02 更新
自社の素材は間違いなく良いものなのに、最終製品の中では名前が出ない。取引先のパッケージの裏に、原材料として小さく並ぶだけ。そんな状態が長く続いている会社は少なくありません。
ロゴを整え、会社案内も作り直した。それでも指名での問い合わせは増えず、商談のたびに他社の見積もりと横に並べられる。よくある行き止まりです。
一般には「良い素材なら、名前を出していけば価値が上がる」と語られます。かいなはそう考えていません。要素ブランディングは素材の名前を広める仕事ではなく、最終購入者が選ぶ瞬間に素材名が判断材料として働くかどうかを設計する仕事です。ここを取り違えると、露出だけが増えて指名は生まれません。
CONTENS
要素ブランディングが成立するのは、買う人が素材名で迷いを解く場面
素材や部品のブランド化は昔からある考え方です。ただ、成功した例をよく見ると、共通しているのは知名度ではなく別のことです。
要素ブランディングという言葉が指しているもの
要素ブランディングは、イングリディエント・ブランディング(最終製品の中に組み込まれる素材や部品そのものをブランドとして扱う考え方)の訳語です。インブランディングとも呼ばれます。
特徴は、価値が二重に立つところにあります。素材の側も、それを使った最終製品の側も、同時に評価が上がります。
逆に言えば、片方だけが得をする構図になった時点で、この仕組みは回りません。供給先が名前を出したくなる理由まで含めて設計するものです。
よく挙がる事例が示しているのは、素材名が指名されたという事実
PC向けCPUで「インテル入ってる」の訴求が広く展開されたのは、多くの方がご存じでしょう。完成品メーカーではなく、中の部品の名前が購入時の確認事項になりました。
自転車の変速機やブレーキで、シマノのパーツが搭載されているかどうかを見る愛好家も多くいます。組み替え用の部品としても指名されます。
どちらも共通しているのは、買う人が最終製品を選ぶときに、中身の名前を自分の判断材料として使っている点です。露出が先ではなく、判断に使われたことが先にあります。
食品や産地でも、同じ構造が動いている
工業製品に限った話ではありません。飲食店のメニューで「鹿児島産黒豚のソテー」と書かれていれば、ただの「ポークソテー」より情報が増えます。
比内地鶏のように、素材名がそのまま注文の理由になるものもあります。産地や品種の名前が、味の想像を助けているわけです。
一方で、北海道の昆布は産地ごとに性質が違うのに、その差はほとんど知られていません。差があることと、差が判断材料になっていることは別だという例です。
自社ECを運営して分かった、素材名が効く瞬間と効かない瞬間
かいなは支援会社であると同時に、自社ECを4サイト運営しています。素材の書き方でお客様の反応が変わることは、自分たちの売り場で何度も経験しています。
猫家具では、無塗装という素材情報が不安を消している
かいなは国産の天然木でつくる猫家具のEC「猫のための木工所」を運営しています。キャットタワーやキャットウォークが主な商材です。
ここで無塗装天然木という素材の情報は、単なる仕様ではありません。猫は舐めるし、かじります。塗料が塗られていないことが、飼い主の不安をひとつ消します。
素材名が判断材料として働くのは、こういう場面です。好みの話ではなく、買う前に抱えている心配に直接答えているからです。
セミオーダー家具では、素材名より「うちに入るか」が先に来る
同じくかいなが運営している壁面収納のセミオーダーECでは、事情が違います。日本製の木材を使っていることは掲げていますが、お問い合わせの中身は別のところに集まります。
実際に届くのは「この天井高で設置できるのか」「賃貸でも使えるのか」という質問です。素材の話が出てくるのは、そこが解決した後になります。
この商材で素材名の訴求を前面に押し出しても、迷いは減りません。同じ会社の同じ木材でも、効く位置がまったく違うということです。
判断の分かれ目は、素材が不安を消しているか、好みを足しているか
この2つを分けているのは知名度ではありません。買う人が購入前に抱えている不安の中に、その素材が答えを持っているかどうかです。
安全性、耐久性、失敗の回避に関わる不安に答えているなら、素材名は購入の直前で効きます。前面に置く価値があります。
好みや満足度を上乗せするだけの要素なら、順番は後ろです。先に置いても読み飛ばされるので、詳細ページの中で丁寧に語るほうが返ってきます。
かいなが要素ブランディングをすすめない場合
やらないほうがいい、と申し上げることもあります。判断の材料として3つ挙げます。
供給先に、素材名を出す動機がないとき
要素ブランディングは、最終製品のメーカーが自社のパッケージやサイトに他社の名前を載せることで成立します。相手にとっては、売り場の一部を貸す行為です。
相手が自社ブランドの世界観を強く管理している場合、この協力は得られません。名前を出すことで自社の格が上がる、と相手が思える段階に達していないなら、順番が違います。
その段階では、まず最終購入者側の認知を自分たちで作るほうが先です。素材メーカーが自社ECや読みもので直接語り始めるのは、そのための手段になります。
素材の差が、使う場面で体験として現れないとき
CPUの例が機能したのは、速さが日々の作業で体感できたからです。名前を覚えた人が、実際に違いを確かめられました。
逆に、使っていても違いが分からない素材を前面に出すと、次の購入で裏切りが起きます。一度期待して買った人の落胆は、無名のままでいるより回復が難しくなります。
体験として現れない差は、まず現れる形に商品設計を変えるところからです。伝え方の工夫で埋められる差ではありません。
産地名や呼称を、他社に使われても止められないとき
売れ始めると、似た名前や紛らわしい表示が出てきます。産地名や品種名は、単独では独占できないものが多くあります。
類似品が増えると、せっかく育てた名前が「よく見かけるが中身は分からないもの」に変わります。ここまで来ると、投資は回収できません。
商標や認証、産地表示のルール、供給先の許諾範囲。この整備が動いていない段階での大規模な露出は、かいなはおすすめしていません。
素材名を買う人の判断材料に変えるまでの進め方
では何から手を付けるか。かいなが対話の中で決めていく順番があります。
最終購入者に渡す言葉と、供給先に渡す言葉を分ける
要素ブランディングは、相手が二者います。素材を採用する企業と、完成品を買う人です。この2つに同じ資料を出している会社が多くあります。
採用する企業が知りたいのは、その名前を載せると自社の売り場でどう働くかです。最終購入者が知りたいのは、その素材で自分の心配がどう解けるかです。
言葉を分けたうえで、最終購入者向けの言い方を先に固めます。そこが決まらないと、供給先に渡す説明も曖昧なままになります。
露出のルールを、取引が始まる前に決めておく
「監修」や「素材提供」の表示は、決め方を後回しにすると一方的な使われ方になります。相手の販促物の中で、意図しない文脈に置かれることもあります。
ロゴの使用位置、併記する説明文、使ってほしくない表現。この3点だけでも先に決めておくと、後の交渉が揉めにくくなります。
かいながブランディングの設計でここを最初に扱うのは、露出が始まってからでは巻き戻せないからです。
追うのは露出量ではなく、素材名からの指名
採用実績が増えると、掲載数を成果として見たくなります。それだけでは判断できません。
見るべきは、素材名そのもので検索して来た人がいるか、その人たちが最終製品まで進んでいるかです。名前が判断材料になっていれば、この動きが出ます。
動きが出ないなら、伝えている理由が買う人の不安とずれています。理由は後から差し替えられるので、最初の一案に固執しないほうが前に進みます。
語る場所と買う場所が離れていると、指名が消える
素材の背景を読みものとして丁寧に語っていても、購入がまったく別のサイトにあると、読んだ人の熱は移動の途中で下がります。
比較の軸に素材を入れたいときは、選ぶ体験を拡張する仕組みで絞り込みや比較の項目として置く方法があります。読みものの中で買える状態にするなら、ブランドサイトとECの統合が選択肢になります。
どちらを選ぶかは、素材名が購入の直前で効くのか、検討の入口で効くのかによって変わります。
要素ブランディングについて、お気軽にご相談ください
素材や部品のブランド化のご相談は、掘っていくと「最終的に買う人が何で迷っているか見えていない」という話に行き着くことがよくあります。
その場合に必要なのは、ロゴやキャッチコピーの刷新ではありません。どの不安に素材名が答えるのかを、取引先の声と売り場の反応の両方から決め直す作業です。
かいなは大きなエージェンシーのように決まった型に当てはめず、毎回の対話からその会社だけの課題を見つけて伴走します。自分たちでもECを運営しているので、売る側の実感を持った相手としてお話しできます。
診断だけ持ち帰っていただいてもかまいません。30分の無料相談から、お気軽にご相談ください。