中小企業のブランディングが会社の成長につながるとき、つながらないとき
2017.09.04 2026.09.02 更新
ロゴを作り直し、会社案内も新しくした。それでも問い合わせの中身は前と変わらない。中小企業のブランディングは、この地点で止まってしまうことがよくあります。
社長の頭の中には、言いたいことがはっきりある。ただ、それを社員が同じ言葉で言えるかというと、まったく別の話です。
一般には「ブランディングとは認知を広げること」と語られます。かいなはそう考えていません。中小企業のブランディングは、外に広げる前に、自社が誰に何を売っているのかを社内の全員が同じ言葉で言えるようにする作業です。ここが揃った会社は、その後の判断がまるで速くなります。
CONTENS
中小企業のブランディングが、ロゴとパンフレットの話に縮んでしまう理由
やることが成果物の制作に縮むのは、担当者の理解不足のせいではありません。予算と社内の合意形成のかたちが、そう仕向けています。
予算に限りがあると、成果物から話が始まる
使える予算が決まっているほど、目に見えるものから決めたくなります。ロゴ、名刺、会社案内、Webサイト。形になるので社内の承認も通りやすい。
ところが成果物から決めると、「誰に向けて何を言うか」が最後まで曖昧なまま進みます。完成してから、営業が使い道に困るという話になります。
かいなが最初に時間を使うのは、作るものを決める前の対話です。何を作るかは、言うことが決まったあとに自然に決まります。
社長が語れることと、社員が語れることは別のもの
自社のことを一番よく知っているのは、たいてい社長です。創業の理由も、他社と何が違うのかも、身体で分かっています。
ただし、それを語れること、絵にできること、世の中に広める術を持っていることは、それぞれ別の能力です。ここを一人で背負うと、社内に言葉が残りません。
社長の言葉が社員の口から出てくるようになった会社は、展示会でも採用面接でも説明が短くなります。同じことを言う人が増えるからです。
「見える化」で説明を終わらせない
ブランディングを「見える化」と言い表すのは分かりやすい説明で、かいなも長くそう書いてきました。ただ、この言葉は範囲が広すぎます。
実際にやるのは、社長の主観的な想いと、第三者から見て気づいた魅力を突き合わせ、伝わる形に変換する作業です。コンセプトの言語化、キャッチコピー、ロゴやイメージ写真はその出口にあたります。
変換の材料は社内にしかありません。外注しても、対話の量が足りなければ言葉は浅いままです。
自社でECを運営して分かった、言葉が揃っている会社の強さ
かいなは支援会社であると同時に、自社ECを4サイト運営しています。言葉が揃っているかどうかで日々の仕事がどう変わるかは、自分たちの売り場で毎日確かめています。
コンセプトで束ねた売り場は、商品を増やす判断が速い
かいなは「めんどくさいを否定しない」という考え方で日用品を集めたSOREDAKEを運営しています。拭くだけ、流すだけ、入れるだけ。それが選定の基準です。
この一文があるので、仕入れの候補が出てきたときに議論が短くなります。売れそうかどうかではなく、この言葉に合うかどうかで判断できます。
逆にコンセプトが曖昧な売り場では、商品を増やすたびに「うちは何の店なのか」を作り直すことになります。増やせば増やすほど輪郭がぼやけていきます。
選ばれる理由が違えば、語り口も変える
かいなは国産無塗装天然木の猫家具を扱う「猫のための木工所」も運営しています。ここでお客様が読むのは、素材の安全性と、うちの猫が使う姿の想像です。
一方で壁面収納のセミオーダーECでは、同じ木材の話をしても反応が違います。知りたいのは天井高に入るのか、賃貸で使えるのかという条件のほうです。
どちらも国産木材の家具ですが、伝える順番はまったく別になります。ブランドの言葉は「自社が言いたいこと」ではなく「お客様が決めるために必要なこと」から組み立てます。
言葉が揃うと、社内の空気が先に変わる
自社ECの運営では、広告費が思ったほど効かなかった朝の焦りも、レビューが1件ついた日の嬉しさも、自分たちの金と在庫で経験しています。
そういう日々の中で支えになるのは、自分たちが何を良いと思っているかの共通認識です。出荷は作業ではなく、箱が開けられる瞬間がお客様との最初の接点だと全員が思えているかどうかで、同梱物ひとつの扱いが変わります。
ブランディングが採用に効くと言われるのは、この順番です。外の評価が上がるより先に、社内の説明が揃います。
かいなが中小企業にブランディングをすすめない場合
どんな会社にも必要とは考えていません。着手を止めたほうがいいと申し上げるケースを3つ挙げます。
売れる形が、まだ一度も見つかっていないとき
商品を作ったばかりで、誰がなぜ買ってくれたのかの手応えがまだない段階では、整えるより試す回数を増やしたほうが前に進みます。
この時期にコンセプトを固めても、材料が足りないので想像で書くことになります。想像で書いた言葉は、半年後にほぼ全部書き換えます。
かいなは単品1商品の立ち上げ初期からのご相談も受けていますが、その場合は看板作りより先に、売れ方の観察に予算を回すことをおすすめしています。
LP主体・広告主体で運営が回っているとき
広告からLPに流し、その1商品を買ってもらう。この形で数字が立っている事業では、ブランドの言葉を整える効果が出るまでに時間がかかります。
訴求の勝ち負けが広告クリエイティブで決まるので、会社の考え方を伝える面がそもそも用意されていません。かいながこの形態のご相談を受けにくいのは、構造として噛み合わないからです。
やるとしたら、LPの外に読まれる場所を作る話から始めます。順番を飛ばすと、作った言葉の置き場所がありません。
決める人が、対話の席に出てこないとき
ブランディングの材料は社長や現場の頭の中にあります。担当者経由の伝言だけで進めると、出てくるのは他社にも当てはまる言葉です。
かいなは大きなエージェンシーのように決まった型に当てはめるのではなく、毎回の対話からその会社だけの課題を見つける進め方をとっています。その対話に決める人が同席できないなら、時期を待ったほうが結果は良くなります。
着手するかどうかを、明日自分で判断する基準
では何をもって「今やるべき」と判断するか。かいなが相談の場で実際に確かめている3つを挙げます。
社員3人に同じ質問をして、答えが揃うか
「うちの商品が選ばれている理由は何ですか」と、営業と製造と事務の人にそれぞれ聞いてみてください。
答えが揃っているなら、必要なのは伝える手段の整備です。Webサイトや写真、資料に予算を寄せると返ってきます。
答えがばらばらなら、先に揃える作業です。この状態で広告を増やしても、受け皿の説明が一致していないので問い合わせが育ちません。
お客さんの顔が、データで説明できるか
相談の入口が「カートを替えたい」であっても、掘っていくと大抵ここに行き着きます。データを活用しきれず、買っている人の顔が見えていない状態です。
誰が何度買っているか、どの商品から入っているかが答えられるなら、その事実からブランドの言葉を作れます。強い言葉は、たいてい既存客の中にあります。
答えられないなら、最初の作業は言葉作りではなく、購買データと現場の感覚を突き合わせる整理からになります。
費用は何で変わるのか
かいなはブランディングの料金表を出していません。自分ごとでない金額を見て高いか安いかを判断されてしまうと、話がそこで止まるからです。
金額が変わるのは、対話にかける回数、作るものの点数、そして公開後にどこまで伴走するかです。ロゴと会社案内だけで済む会社と、ブランドサイトとECの統合まで踏み込む会社では、当然かかるものが違います。
ご予算の枠を先に伺い、その枠で何から手を付けると効くかを一緒に決める進め方をとっています。
中小企業のブランディングについて、お気軽にご相談ください
ブランディングは時間のかかる取り組みです。ただ、時間がかかるのは制作物ではなく、社内で言葉が定着していく部分です。
かいなのブランディングは、デザインを起こすことを目的にしていません。ブランドが育ち、会社と人が一緒に成長していく状態をつくることを目的に置いています。伝えるための投資が売上につながらない構造になっているなら、ブランドサイトとECの統合まで含めて考えたほうがよいこともあります。
かいなは自分たちでもECを運営し、撮影スタジオも自社で持っています。売る側の実感を持った相手として、まずは現状を伺うところから。30分の無料相談で、診断だけ持ち帰っていただいても構いません。