クラウドECとはASPとパッケージのいいとこ取り?!注目のECサイト構築方法を解説
2020.09.07
ここ10年、インターネットに関わる事象として全体の中で普及し、注目を集めた技術のトップはクラウドに関わるサービスや技術です。その中でECサイトについても2010年代半ばにクラウドECが登場し注目されるようになってきました。その注目度はECサイトに関わるトレンドとも言っていいでしょう。
ここではクラウドでの構築をキーワードの軸にして、リニューアル、あるいは新規でのECサイト構築を考える方へ向けて、その資料となるようクラウドECについて解説します。
CONTENS
クラウドとはインターネット上でスペースを共有する仕組み
この10年でクラウドという言葉がかなり普及してきました。クラウドECもこの流れの中で少しづつ普及し、2015年くらいからECサイトに関わる業界のなかでも話題の構築方法となりました。
まず、クラウドとは何かというところから簡単に説明していきます。
インターネット上の仮想のデータを置くスペースをクラウドと呼びます。クラウドは特定のサーバーに依存することはなく、インターネットがあればアクセスができます。そのため、複数のユーザーが共有するのが簡単な仕組みでもあります。クラウドで共有するものは、アプリケーションやサービスの他、インフラをクラウドに格納して利用可能にしているケースもあります。
場合によってはクラウドを通してハードウェアを共有することもあります。そうした中で、早い段階から、このクラウドの活用を活発に行っているのがGoogleです。Googleは多くのことをクラウドで提供しています。GmailやGoogleスプレッドシートやドキュメントなどは利用している人も少なくないでしょう。また、Apple社のi Cloudもそのサービス名からクラウドという言葉や概念を普及させるのに一役買ってきました。
ASPとクラウドECの関係は近い
ECサイトに必要なシステムをインターネット上において利用出来るようにしているサービスの代表例としてカートASPがあります。一見、ASPはクラウドサービスとして提供している可能性もあります。ASPがECに必要なシステムをインターネットを通して提供されており、そのデータをクラウドサーバーに格納し利用出来るようにしているかもしれないからです。
クラウドサーバーは仮想のサーバーとしてインターネット上に存在しているものを指します。そのため、ASPは単純にクラウドのサービスと同義ではありません。現在のインターネットを通して共通のサービスをユーザーが享受するという意味ではそう違いがありませんが、クラウドECと定義される時は、利用されている技術が違うという点がポイントになります。
そのため、クラウドECとASPは技術というよりもあり方としての概念が違います。ASPではすでにシステムがすでに組み上がった状態でサーバーに置かれており、そのシステムをほぼそのまま使います。クラウドECはECサイト用に用意されたクラウド上のサーバーで動作が可能なアプリケーションが置かれています。それを自由に組上げて利用するものです。
また、一方でクラウドECをサービスとして提供しているベンダー(事業者)となるASPも存在しています。そのため、二つの概念はかなりの部分で共通しています。
クラウドサーバーではAmazonが有名
クラウドサーバーとしての代表的な存在としてはAmazonのAWSがあります。AWSはクラウドで様々なサービスを提供するサービスですが、その主力商品の一つがクラウドサーバーそのものの貸し出しです。
クラウドECという場合、こうしたクラウドサーバーの単純なレンタルとも少し概念が違います。
クラウドECのベンダー(ASP)はクラウドEC用に各ユーザーにクラウドサーバーを割り振ります。その中でベンダーが供給するプログラムをクラウドサーバー上で稼働させる仕組みを提供しています。
実はECに関連する業界でもAWSはここ数年、非常に注目されています。実際にサーバーを物理的に構築せず、大規模なサイトをAWSに格納して運用しているサイトも少なくありません。そちらも気になるという方はAWSについて参考までに以下の記事も合わせてお読み下さい。
【参考】ECサイト初心者向け解説〜AWSはAmazonのクラウドサービス
ASPとパッケージの弱点をカバーする構築方法
クラウドECがなぜ注目されたかというと、この方法が複数のECサイトを構築する方法のいいところ取りをし、それぞれの弱点を補うことが可能になったという点にあります。
ASPの弱点であるカスタマイズ性を確保
先ほども述べたとおり、クラウドECはASPと非常に共通点の多い仕組みです。しかし、ASPのように出来上がったシステムを使うシステムではありません。多くのASPではカスタマイズできる幅が大きくありません。そのため、構築についてはどうしても制限が多く、拡張性が保証されていません。そのため、それぞれの商品や利用者に合わせたECサイトでの販売を行うための環境構築に対して難しさがあります。
クラウドECの場合はパッケージで利用するアプリケーションがすでにクラウド上にあり、それを活用して、自身で構築するクラウドサーバーに格納して利用する感覚に近い状態でサイトの構築をします。
そのため、アプリケーションの追加などのカスタマイズ性はある程度高く、機能の拡張についてもベンダーで利用可能なものであればすぐに利用できるのが大きな特徴の一つです。
そのため、ほかのWEBサービスとの機能を連携させたり、意匠的なデザインだけでなく構造的なデザインの自由度も格段に高くなりました。ASPでももちろんこうした部分での拡張を試みるためAPIの公開などがなされていますが、クラウドECはこうした拡張がASPよりも簡単です。そのため、ベンダーの対応が早いという特徴があります。
そのため、ある意味ではASPを進化させたものがクラウドECと言えるかもしれません。ASPは基本的にソフトウェアをクラウド上に展開してユーザーに提供しているSaaS型のサービスに近いと言われています。これに対しクラウドECは開発環境、つまりプラットフォームまでをサーバー上に展開しているPaaS型であると説明している場合もあります。これについてはとても微妙な話で、そもそもクラウドをサーバーとして使用していないASPもあるため、根本的な論議とは外れます。
クラウドECの話としてSaaSについては、こちらでも解説しています。
【参考】SaaS型のECサイトとは?〜クラウドECを初心者向けに解説
ただし、このあたりの使用感や概念はかなり混ざりあっているというのが現状です。実際、SaaS型でもクラウドECと銘打つパターンも実際には少なくありませんし、実際にSaasであってもクラウドECには変わりありませんし、カートASPの概念も満たしています。
一般的なASPより割高なクラウドEC
また、当然、比較すれば料金は一般的なASPと比較するとクラウドECを名乗るサービスは割高になります。クラウドECでは数万円からがスタートラインになります。そのため、個人や中小規模のサイトでは最初の導入にはハードルが高いといえます。
もちろん、自社でのECサイトを初めて取り組むという場合にBtoBや海外への進出を目指す越境EC、オムニチャネルなどへ取り組んでいこうと考え、発展的に考えている場合は別です。さまざまな選択肢を柔軟に捉えやすなります。
ただし、現実的には技術的な側面も考えると、支援のない状態でスタートアップに使うのはハードルがあるかもしれません。しかし、月額が数千円程度のASPからのリニューアルでの選択肢としてはかなり強力です。
こちらのページでASPとクラウドECの事業者も具体的に紹介をしています。あわせて参考にしてください。
【参考】ECサイトのASP~いろいろあるけど、企業向けならどう選ぶ?
パッケージの更新による煩わしさを回避する
パッケージにも似ているクラウドEC
クラウドECの仕組み自体は、サーバーにプログラムを置くECパッケージによく似ています。ECパッケージはある程度オリジナリティを持った専門性の高いECサイトを構築することができます。無料で利用可能なライセンスフリーのEC-CUBEはよく知られていますが、有料のものですとそれなりの価格です。
ECサイトの構築方法としては開発環境としてWEBに関する専門的な知識や技術も必要になる選択肢といえます。しかし、その分、多くのユーザーのニーズを満たすことは出来る方法として、ASPでは物足りず、規模的な面でも踏み込んだサイト制作をする場合には支持されている方法といえます。
パッケージのメンテナンスコストを解決する
パッケージでの構築をした場合、問題はその維持や管理に関わるコストです。アップデートなどへの対応はサイトを運営する側が自らの責任において実施することになります。つまり、バージョンアップへの対応は自らで行われなければいけません。そのため、メンテナンスに関しても持続的に技術力が必要になります。そのため、管理に関わる技術的なコストや手間は結構油断できません。
そうした問題をクラウドECは解決します。基本的にアップデートに関わる対応をユーザー自身で行う必要はありません。クラウド内での最新のアップデートへと対応するのはベンダー側が実施していくことになります。そのため、アップデートに関わるコストとトラブルを回避することが簡単にできるのです。
クラウドECの課題解決はベンダー次第
一方で、クラウドECをサービスとして提供できる事業者には高い技術力が必要です。新たな機能の追加には常にスピード感が要求され、その精度も求められます。そのためクラウドECをサービスとして提供している多くのベンダーはサポートの体制などもしっかりと用意して、サービスに臨んでいます。
例えば「こうしたツールがないか」と相談すると可能であれば開発し提供してくれるケースもあります。
とにかくランニングコストという点と安全面ではパッケージより優れているということが言えます。保守の面で自主的なサポートを考えなくていいのは、運営後のことを考え、どれくらいの費用になるのかという点で悩まなくていいというのも安心なポイントです。
そのため、中長期的な費用対効果はクラウドECが優れています。
パッケージについては以下の記事も参考にしてください。
【参考】ECサイトをEC-CUBEで構築するメリットとリスク
クラウドECのデメリットはシステムの自主管理ができないこと
上記の話だけを参考にして構築方法を比較すると「クラウドECが最強の構築方法では?」と思えてきます。しかし、何事もメリットだけでなく、弱点はあるものです。
そのため、それぞれの構築方法のメリットと比較するとマイナスに感じることもあるかもしれません。
一つはサイトの開発に関わる手間です。技術や開発期間が必要になってきます。これはASPよりも格段に時間が必要で技術的な難易度もあがります。そのため基本的にWEBについての専門的知識が必要になってきます。実際にはパッケージを構築するのと同程度の専門性と開発の期間が必要と考えてください。そして、その割にはパッケージより融通が効かず、それぞれのベンダーに対応できるパートナーが必要です。
2つ目は費用の問題です。基本的にASPよりかなり割高になります。パッケージと比較しても導入費用は割高になる可能性があります。
大体月額としては数万〜数十万くらいが相場です。当然、それぞれのベンダーによって差がありますので価格は一定ではありません。ですのでどこと比べるかという問題はありますが、毎月定期的に月額が発生しますので、ある程度の収益を見込めない場合は導入できません。
どんな方法であれせキュリティには要注意
3つ目は、システムのソースコードが公開されていないことです。そのため、自主的にセキュリティ対策を行うことはできません。つまり、このあたりはベンダー次第ということになります。ベンダーの運営環境やサービスクオリティが低下すれば、直接的に影響を受ける可能性もあります。
自前で外部のサービスと接続することも難しくなります。
もしかすると、クラウドという時点で、社内で導入を警戒される可能性もあります。インターネット上にあるということで、ハッキングの被害に合う可能性もあるからです。
とはいえ、こうしたことはどういった環境でもあり得ることです。サーバーを社内で構築したとしても実際のところ100%安全とは言い切れません。そのため超大手のIT企業など以外では実はあまり問題にならないことかもしれません。
とはいえ、リスクヘッジを考えるのであれば、クラウドECでは対策があまりないのも事実といえます。PW管理をしっかりとしていくしかありません。
クラウドECの構築は制作会社の力を借りた方が効率的
クラウドECは自由度を上げたASPとの境目が非常に曖昧になっています。もしかしたら「これはASPだ」というように意見のわかれるベンダーもあるかもしれません。
いずれにしても大規模改修などのリニューアル時は強力な選択肢になります。
参考までに株式会社かいなでは、以下のようなクラウドECに対応しています。
- ebismart
- ecbeing
- aishipR
ecbeingはメルカートというクラウドECのサービスを提供しています。
それぞれ、構築する場合にも特徴があるので、基本的にこうした経験を持つ制作会社を選ぶ必要があります。コンサルタントだけでなく構築などのご相談についても承っています。
弊社でのECサイトの構築については下記リンクに基本的な方針などを掲載しています。ぜひ参考にしてください。
【参考】集客カテゴリ量産型ECサイト