化粧品から分析するECサイトの課題〜商品ごとにことなる事情の考察と最適化

2020.09.15

ECサイトと一言でいっても、扱う商品によって事情はことなります。取り入れる手法によってはメリットがメリットにならないといったことも起こり得ます。

それぞれの商品ごとにサイトのデザインから運営のスタイルまで、適した方法を模索しながら導入する必要があります。

ここではその例としてEC化が思うように進んでいないと言われている化粧品に関連したECを事例にして、ECの商品への最適化をテーマにして解説します。

EC化率の低いコスメ業界

ECでは商品ごとに様々な課題やメリット、デメリットを抱えています。一律に世の中の状況に合わせてどういった商品でもEC化が進んでいるわけではありません。

どういった業界であっても、それぞれの状況にうまく適応してECサイトの構築や運営・運用をしていく必要があります。それが結果的に業界内でECでの存在感に繋がることにつながります。

こうした中でも化粧品は広告費など、ブランドの認知を向上させることに予算を割く割合の多い業態です。また、店舗での販売が強く、市場規模に対してEC化が進んでいないのも化粧品市場の特徴になっています。

2020年7月に経済産業省が発表したデータではコスメに分類される化粧品と医薬品を足した市場のBtoCでのEC化率は6%と発表しています。ビジネス全体のEC化率よりも低い数値です。これはECでの取引が40%を超える文房具などと比較すると大きく出遅れている現状がよくわかります。しかし、それでもECによる取引は1800億円ほどはあると考えられ、市場規模そのものは大きく、6%のEC化率でも金額自体は大きいのも特徴です。

コスメ業界自体はライバル企業がしのぎを削り合うレッドオーシャンです。国内だけでなく、海外からの参入もあり、非常に厳しい企業間の争いが続いている市場といってもいいでしょう。

ECをユーザーが利用しない理由は少なくありません。その最大の理由の一つに路面店でのショッピングに対する高いニーズがあります。「ドラッグストアが各地にあって買う時の不便がない。送料を加えると割高になる」「実物を確認しながら購入したい」などの需要の問題もECでの利用にブレーキをかけています。

それでも新型コロナウイルスの影響で外出を控えるため、ECでの購入は増加傾向にありました。一方で外出しないことが、化粧品全体の需要を低下させており、中国や東南アジアからの海外旅行客が無くなったことによって、化粧品の購入も旅行の目的にしている旅行客からの売上も下がりました。このように大きく売上を下げる要素も少なくないのが現状です。

しかし、ECでのコスメの利用を経験した消費者の存在は多くの可能性を秘めています。

ECでの化粧品の持つ課題についてまずは見ていきましょう。

化粧品という商材が抱えるECへの3つの課題

化粧品自体は保存も効き、パッケージも柔軟に作成できるため、在庫もしやすいものが少なくありません。

こうして見るとECと表面上は相性が悪くは見えません。また、マーケティングもしやすい商品のはずです。例えば多くは女性であり、年齢層ごとに商品の嗜好に方向性があります。

しかし、そうしたことは表面的なことに過ぎません。これはあくまで、ビジネス視点でのことでしかなく、ユーザーの実態に則していないのです。化粧品業界はECでの販売に関して、実際には3つの課題を抱えています。

直接購入出来る場所での高い利便性

化粧品を扱うドラッグストアの店舗はいろんなところに存在しています。例えば、消費の動向やトレンドを左右する学生層ですが、この層は日常的に市街地を利用します。その結果、家に届くということに利便性がありません。ましてや化粧品は小さいため、鞄に入れてもじゃまになることもありません。また金額も小額のものが多く、送料を考えると割高になります。つまり、このような傾向の化粧品に対してはECのメリットをまったく活かせません。

もう少し、上の世代層も含んで考えてみましょう。人間の肌や髪の毛などはそれぞれに違います。そのため化粧品自体は如何にあったものを選ぶかということに需要があります。美容部員が店頭販売を行い、お客様一人一人の状況に合わせて販売が可能な形態の根強さにはこうした背景があります。スキンケアを意識している層に対しては実際に現地でコンサルタントを受けながら購入出来る百貨店などでの販売は利にかなっています。

さらにそこに安全性への配慮が加わると、文章と写真では太刀打ちできません。動画も結局同じです。実際に触れてみることはできないわけですから、そうした需要に対しては勝負にならないわけです。実際に少しだけ使ってみることに重要性があります。

販売チャネルの多様化

化粧品の購入が出来る箇所は様々です。その結果、ECでの購入はその一部でしかなく、売上が分散しているという側面もあります。

実際の店舗だけでなく、雑誌やテレビ、カタログでの通販など、以前から様々な販売のチャネルが存在していました。そのため、各社はEC化が必須の命題ではなく、数字としても現れにくくなっています。その結果、さらに企業はECへの注力をしなくなるというECにとってはマイナスの循環がおこります。

このこと自体は化粧品におけるECの課題というよりも構造的な問題です。それよりも、セクションごとに売上を考える部門主義的なものがさらなるECの発展を阻んでいる可能性があります。

また、通販で詐欺まがいのことを行った美容系のメーカーも少なくありません。そうしたことでECに限らず、通販に対して不信感を持っているユーザーも少なからず存在しており、そうしたこともコスメのEC化にブレーキをかけている可能性があります。

難易度の高いWEBマーケティング

ECでの売上を伸ばすためにはなんらかのWEBマーケティングで集客を行います。その中で、化粧品に関わるジャンルは異業種参入も多く、常にレッドオーシャンの状態が続いています。例えばブランディングはECにとっては欠かせない戦略ですが、そのブランディングをコスメ業界はそれぞれインターネット以前から続けていた状態でもあります。そしてそれ以前にオンラインで購入することのメリットを提示し、オンライン上でユーザーを獲得しなければいけないという道のりがあります。

老舗企業に加えて、化学工業や食品メーカーなどが参入してくるため、常に売り手は飽和している状態です。その結果、入札式のWEB広告は費用がかさみ、コンテンツマーケティングでも情報が乱立します。

こうした激しい競争の結果、WELQ問題でコンプライアンスや常識が問われるようになりました。このWELQ問題はは主に医療に関わるジャンルの話で、セッションの多いキーワードを狙って信頼性の低い、あるいは間違った情報を拡散したことが問題になった事件です。

この問題は医療や健康その地と続きにいる化粧品メーカーも少なからず影響を受けました。スポンサーとしては巨大な資金力があるため、コンテンツマーケティングが間違った方向に使われてもその流れで情報を溢れさせてしまいます。

その結果、ビジネスベースの記事などは軒並みGoogleにより順位を下げられるという結果になりました。

また、InstagramやTwitterなどのSNSで多数のフォロワーを持ち、影響力のあるインフルエンサーの存在が業界の動向を握っている部分もあります。各企業は資本力をこうしたインフルエンサーの巻き込みに使うようになりました。結局ここでも商品力より資本力がものをいう結果になっています。

一方でそうしたインフルエンサーの存在がその商品の真偽に影響するといったことも起こります。逆にインターネットの利用でブランドの価値を落とすといったことも起こっています。

足下の企業からのEC需要は化粧品に関しては起こりにくい状況になっているのです。特にECを自社で構築し運営していくことは簡単ではなくなっています。

各社が取組むECでの工夫とビジョン

実際にこうした状況に対して各社はそれぞれの戦略を描いてアプローチしています。その中で考えられている戦略の方向性は大きく分けると2つです。

  • ECを含め部門主義の廃止と販売チャネルの統合
  • ブランディングやリブランディングの場としてのECサイト

「ECを含めた販売チャネルの統合」は考え方的にはオムニチャネルに近い考え方です。それぞれの販売チャネルのメリットを活かし、デメリットを補います。部門主義を廃し、切れ目のない宣伝戦略と総合的な顧客の囲い込みをねらっていくというものです。

もし実店舗で来店したタイミングでは販売に結びつかなくても、ECへ誘導し、そちらで決済してもらったり、ECで商品の背景を知ってもらうことで実店舗での購買力を向上させるといったやり方です。こうした戦略は資生堂やファンケルなどが取っています。

【参考】ECサイト売上ランキングから見るオムニチャネルの可能性

ECサイトをブランディングに積極的に使おうとしているのは花王です。ECサイトは必ずしも販売の場ではなく、改めて企業や商品を知ってもらうためのサイト作りに注力しています。花王はECでの売上アップを目指していますが、直接的に上げていくのではなく、地固めをウェブで行いながら最終的に売上に結びつけるという戦略です。王道ともいえ、大手としての冷静な状況分析は見習う点も少なくありません。

ECサイトを意味あるものにする運営とブランディング

今からECへのシフトへ取組むことは命題

まだ過渡期の入り口といえる化粧品業界ですが、コロナの影響でインバウンドの需要が見込めないなか、海外へもリーチできるECへの取組みはまったなしともいえます。アジアでは日本の化粧品が高く評価されており、需要自体が衰えたわけではありません。

しかし、コロナウイルスの影響は、国内需要は回復したとしてもインバウンドでの消費はまだまだ戻ってきそうにありません。そうしたことを考えると、日本への旅行数がゼロに近い今、その分を取り戻すにはECしかありません。

今回は化粧品をとおして、商品について掘り下げて解説しました。それぞれ扱う商品によって背景や事情はことなります。実体験と、ECで利用できる選択肢の適切な提示を的確に行えるかがどういった業界でも求められているのではないでしょうか。

EC化の進んでいない業界ほど、ECサイトを早めに構築し、実際に運用することが他社との差をつけることになります。

実際にECサイトの構築を考えて見るのであれば以下の記事も参考にしてください。

【参考】ECサイトの構築の基本とは〜売れるサイト作りの方法を解説

化粧品ECの特徴としてはブランディングをEC上にどうやって展開するかというところに大手が取り組んでいるところです。ブランディング自体はコスメ業界全体で取り組まれてきたところですが、ECでそれを改めて行われている点については興味深い点です。

今まで培ってきた購買層とはまた違うチャネルに如何にとどけることができるか、可能なマーケティングはすべて行って厳しいシェア争いに日々挑んでいる業界といえます。またアパレルと同様で、ファッションの一部でもあり、流行をうまく取り入れる必要が高くあります。

一方でECでの基本的な取り組みをしっかりとやることの重要性もコスメでのECは伝えているように思います。

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