ECサイトでのカスタマージャーニーマップの役割と使い方
2020.08.31
ECサイトはビジネススタイルとしてはユーザーが直接見えません。
そのため、売上を伸ばしていくためには運営していくうえで、ユーザーを捉えることが具体的にできるかどうかで差がついてきます。ユーザーを分析することで、どういったUIが向いていて、どんなUXを提供することが感動に繋がるのかを考えることが重要です。
今回は、そのためのマーケティング方法のプロセスの一つであるカスタマージャーニーについて解説します。
CONTENS
カスタマージャーニーマップはマーケティングツール
カスタマージャーニーとは、特定のユーザーがどのようにサービスに触れて、活用するか、その結果どうなっていくのかを想定するものです。これをタイムライン順に並べて、カテゴリ分けして可視化したもののことをカスタマージャーニーマップといいます。
カスタマーは「お客様」、ジャーニーは「旅」を意味します。ユーザージャーニーマップなどという言い方をする場合もあります。つまり、お客様の動向を具体的に書き起こして理解を深め、施策に活かすためのものです。
このカスタマージャーニーマップを作成したり、活用しようというビジネス戦略は2010年代にウェブサービスが普及して、マーケティング戦略の中に組み込まれて来た時に普及してきました。
特定のブランドやサービスと顧客との接点を考えたり、その流れを考えることで、企業側にどういった点に課題があるかを洗い出したり、その解決に向けたプランを考えるために、この10年間、多くの企業がマーケティングに用いて来た手法です。
ECサイトの運営においてもこの流れに漏れず、多くの企業が採用しているプロセスの一つといえます。ECサイトはインターネット上にあり、いろんなバックグラウンドを持ったユーザーがアクセスできる形式で存在しています。そのうえで、ターゲットにしたいユーザーや、すでに顧客となっているユーザーを分析するにあたってカスタマージャーニーマップを通して、可能な限り可視化していくことで、ECサイトを強化していく手段として用いられています。
顧客に寄り添うEC運営に役立てることが重要
カスタマージャーニーマップのポイントは、顧客目線での事実確認をするということです。制作の多くは発信者目線で行われます。ECサイトももちろんそうです。例えば「この商品を売りたい」「会社の売上を上げたい」などの思いがその背景には必ずあります。
そうした欲求や希望を抱えながらECサイトは構築され、運営されています。そして、そうしたものが情熱となって大きな言動力になるわけですから、それを欠かすことはできません。
しかし、そうなると、どうしてもユーザー目線、顧客目線という部分は抜け落ちてしまうことも少なくありません。ECサイトも実際の店舗と同様にホスピタリティやユーザーインターフェースの快適さが重要です。しかし、インターネットを通していることで相手の見えないユーザーである分、ユーザーの姿が見えにくくなっていきます。
そこでカスタマージャーニーマップを作成し、ブランドコンセプトなどとすり合わせます。軸を感情なども含めたユーザーに置いて確認していくことで、客観的に課題を見つけ出します。ここで得た洞察を取組みの指標にしていくことで、活動の方針を立てていくのです。
すべてを客観的な視点で作り上げよう。
カスタマージャーニーマップを制作する上で最も重要なことは、あくまで主観やイメージを廃し、客観的事実に基づいて組み立てていくことです。作成するにあたり、人物像をペルソナとして設定していきますが、この時点ですでに妄想に近いイメージを設定していることが少なくありません。
しかし、実際に役立つカスタマージャーニーマップにしていくためには、ぼんやりとしたイメージでは役に立ちません。実際のところ、この辺りが作成の難しさであり、ポイントでもあります。
現在ではカスタマージャーニーマップの作成が多くの企業に普及してきましたが、こうしたペルソナの設定や行動には根拠を示せることが利用価値の高いカスタマージャーニーマップの作成には必要です。
手順を考えよう
カスタマージャーニーマップを適当に作ってしまわないためにも手順は考慮したほうがいいでしょう。まず一番にしなければいけないのはデータの収集です。ユーザーからのアンケートを実施したり、市場調査結果などからのデータが基本です。
もしデータが十分に揃わない場合は、ユーザー像に近いスタッフや友人などから聴き取るなどで揃えることになります。とにかくあまり先入観は入れないようにするためにも、自分以外のデータを集めてください。精度を考えると個人的には自分自身をペルソナに設定することは難しいと考えますが、もしあえて自分をペルソナに当てはめるのであれば、客観的に行動を冷静に分析してみましょう。
基本的には上から以下のような順番で進めることになります。
- 人物像の設定
- フェーズ(事象変化)の設定
- チャネルやタッチポイントなどどこでサービスや商品に触れるのか
- 行動分析
- 心情分析
- 課題のピックアップ
人物像はペルソナと呼ばれることが多いです。一体どういった背景を持った人物にスポットを当てているのかを正確に記載します。性別、年代、職業や行動パターン、趣向などにより分類します。ごちゃ混ぜにはせず、一人に狙いを定めるのがよい方法です。また、ペルソナは複数ピックアップし、それぞれについて、フェーズごとに分析をしていくことが重要です。
フェーズは、ECであればサイトの閲覧開始のきっかけから、商品の購入、あるいは離脱までのプロセスの設定です。課題の設定によってフェーズ設定は変わってきます。例えばカゴ落ち対策を考えるのであれば、それに当てはまる人物の行動フローを設定します。ペルソナなどとも関係してきますが、チャネルやタッチポイントなどもしっかりと把握しておくことです。
チャネルやタッチポイントとは、どういった手段でどのようにブランドや商品、サイトと触れ合って認知したのかを意味します。広告であったりSNS、マスメディア、店頭などで、どのくらいの密度で浸透したのかも記していく必要があります。
ここまでできたら、行動や体験と心情を分析していきます。どんな体験をして、なぜそう行動したのか、どう思ったのかを考えていきます。ここで注意しなければいけないのは、理想を混ぜてしまうことです。また、必ず複数のメンバーで行ってください。どうしても一人で作業を進めると客観性に問題が出てきます。
また、もう一つ問題は作成メンバーの構成です。お互いの関係性に偏りがあると、一人の意見が強く反映された結果になり、課題のピックアップも迷走したものになり役に立ちません。問題は、これが課題になる可能性があるということで、ECサイトの運営方針に偏りがもたらされる可能性があるということです。
行動や心情なども可能な限り、アンケートなどで具体的に収集できることが望まれます。
運営の次の行動に役立てよう
基本的にカスタマージャーニーマップは、「その時の」ユーザーの行動や心情を可視化して課題を考えるためのものです。ここで拾い上げられたもの読み方は複数考えられます。
一つはECサイトとしてプラスになったものが偶発的な要因として起きているようなものを発見した場合です。プラスなので、「良い点」として見過ごされてしまいますが、偶然起きたということに注目する必要があります。プラスであれば、偶然ではなくいかに必然的にそうした売上や顧客満足度向上などに繋がるように転換できないかを考慮するべきです。
もう一つはマイナス面です。マイナスな行動の要因になったものに関してはストレートに現れてきます。これは改善点としてピックアップしやすいでしょう。また、カスタマージャーニーマップであらわになった課題は、スタッフで共有することが重要です。またこの共有の段階までやることで効果のあるツールともいえます。共有せずにただわかっただけでは解決できません。かならず共有してください。
カスタマージャーニーマップの課題は理想の排除とスピード感
カスタマージャーニーマップの作成は伝家の宝刀的にマーケティングに関わる人たちの間でほぼ必ず行われています。しかし、現在では問題点も多く、「役に立たない」「時間の無駄」と指摘される場面も少なくありません。
一つは本文中でも述べていますが、事業者側の理想や意図を排除するのが難しいことです。行動は具体例があっても心情などの要素をしっかりと汲み取りきれないことは少なくありません。
そもそも心情を正確に汲み取れれば、カスタマージャーニーマップで視覚する必要もないので、当然ブレてしまい易い部分です。また、ペルソナの設定でも意外に意図が入りやすく、具体性にかけたぼやけた人物像になりがちです。
そうなるとカスタマージャーニーマップの精度が途端に下がっていくことになります。顧客目線に立った課題抽出ではなく、自社内の改善案や報告に過ぎなくなってしまいます。
もう一つ指摘されているのはスピード感です。カスタマージャーニーで抽出した課題による改善のスピードよりも顧客心情の変化によるスピードが上回ってしまうことが少なくありません。人の気持ちは移ろい易いのは事実ですので、この指摘はある程度は的を得ています。
ただし、こうした「分析は役に立たない」というのは言い過ぎともいえます。顧客心情を汲み取るということは逆にいえば、常に継続していかなければいけないこととも言えます。ジャストに落ちなかったとしても、顧客心情を汲み取り続けることでコンセプトを強めるアイディアのヒントになることも少なくありません。
そうしたアイディアから、ユーザーに新たな感動を与える経験、つまりUXを提供していくことがECの発展に寄与していくことになります。
ECでのカスタマージャーニーとブランディング
そうした顧客分析を繰り返して行い、変化し続けることでECサイトの印象がユーザーの中に強く残るようになってくるはずです。この繰り返しがブランドの浸透、つまりブランディングにつながっていきます。
ECサイトの構築も運営もブランディングを意識した設計や施策が重要です。弊社では、ECサイトにデジタルマーケティングを活用してバックアップすることでブランディングを進めていく手法をケースごとにご提案させていただきます。
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