EC化が遅れる分野の可能性〜食品ECサイトの成功ポイントはブランドの確立にあり

その市場の規模に反してEC化が進んでいないジャンルの一つが食品です。また、EC業界では長らく「食品のECは難しい」と言われてきました。

しかし、最近ではECが専門ではなくとも、食品ECで売り上げを伸ばし成功している企業もあります。ECにより最適化した取り組みを通して、物販の幅をより広げることで利益を上げる企業も少なくありません。

また、巨大モールであるAmazonや楽天も大規模にリソースを投入して食品ECに積極的に取組みはじめています。

ここでは大きな市場規模を持ち、可能性に満ちた食品ECについて解説します。

食品はEC化が遅れている分野

EC市場が拡張している中で食品のEC化率は低く伸び悩んだままです。実際には日本に限らず、多くの先進国でも同じ状況です。広い意味での電子商取引も含めたEC全体の課題といってもいいでしょう。

日本でのBtoCでの食品EC化について2022年7月に経済産業省が発表したデータを見ると、2021年の食品市場全体に対してECでの取引はわずか3.77%という数字です。

ただし、約4%であっても国内の食品産業の市場規模は2兆1.99億円あり、市場としては巨大です。

この数字を読む時、BtoCでの日本全体のEC化率は8.78%となっており、決して高くないということも考慮する必要があります。

しかし、実際にECが普及していないのかといえばそういうわけではありません。例えば文房具は高いEC化率を誇っています。事務用品としてもその販売経路の多くはECに移行してきました。またBtoCでは書籍や生活家電もECサイトからの購入が一般化しています。

全体のEC化率が高くない日本にあって、それでもなお食品ECとの差は大きくあります。市場規模の大きい食品ECが全体に影響し、全体のEC化率を低くしていることがわかります。また、この数字は毎年少しずつ上がってきているということも抑えておく必要があります。

捉え方によってはオンラインショップで買い物をする人や動く金額の今後の増加がまだまだ期待できるカテゴリだということになります。その割合が低いということは、それだけ数字的に伸びる幅がある『可能性もある市場』ということです。

計算上、食品産業のEC化率を0.1%押し上げるだけで20億円ほど上乗せされてくることになります。今はインターネットが普及し、スマートフォンでなんでも気軽に買う時代になりました。

事業者としては同業者がまだ手をつけず、未開拓のうちにどのようにECに取り組むかを考慮する価値があります。そしてもちろん、開発する側としても注目のカテゴリーでもあります。

食品ECの割合はわずかずつではありますが、毎年上昇しているという事実は今から取り組みを行う企業を後押ししています。

生鮮食品がEC化率上昇の妨げになっている

食品のEC化が難しいと言われている要因はどんなところにあるのでしょうか。

その秘密は生鮮食品にあります。そして、巨大な食品市場の中で実際に大きなボリュームを占めているのが野菜や肉、魚などの生鮮食品です。

生鮮食品は、新鮮さが重要で保存が効かず、製品の品質も一定ではありません。そうした部分にECとの相性の悪さがあります。

ですので食品の形態によっては、必ずしもECに向かないというわけではありません。流通技術が発達した今、冷凍食品や、保存の効く食材でかつパッケージの処理を施しやすいものの中ではネットショップでの販売を導入することで莫大な売上を稼ぎ出している企業も多くあります。

食品の需要そのものは人間の生活に欠かせないものです。つまりニーズは高い、というよりもニーズが必ずある、人間が生活していくためには必須のジャンルです。

この側面から、その需要は常に高く維持されています。コロナの感染拡大や世界経済の影響なども本来はBtoCという目線で考えれば、このジャンルについては大きく関係がありません。もちろん嗜好品になってくると景気や市場の影響が出てきます。しかし、世界的な恐慌やそこまでの高級品でない限り、大きくは影響を受けにくいものでもあります。

また、スーパーマーケットでの販売という小売り店での販路以外のビジネススタイルではEC化を高めて成功している企業も実際にあります。

ただし食品EC全体で見ると課題が多いのも事実です。その難しさからネットスーパーでの販売から手を退く企業も出ています。

実際に生鮮でのEC化に取り組んだコンビニチェーン大手のファミリーマートやローソンでは単価の低さに対して配送処理の手間や梱包材など費用を圧縮できないなど、採算が合わないだけでなく、顧客の満足度も高めることができませんでした。その結果、事業から撤退しています。

もちろん一度撤退した企業が、今後再びECに取り組む可能性はありますが、この結果はインターネットの活用が普及した今でも生鮮食品のECは難易度が高いということを証明しています。

苦戦の理由は利便性にあり

ECサイトでの食品販売が進まない理由をもう少し分析してみましょう。市場規模の大きい生鮮について考えます。

売る側の視点ではなく、買う側の視点で「生鮮をECで購入しない理由」を考えてみる必要があります。「なぜ生鮮をECで活用しないのか?」を考えてみましょう。

その大きな要因としてまず「ECでの販売になっても生鮮食品についてはユーザーにそれほど利便性が高くないものが多い」というところにあります。

生の野菜や肉、魚はグラム数や大きさを揃えても鮮度や味などの状態に大きな差があります。そのため、こうした商品をインターネットで販売することはユーザーにとって、目で直接見ることができず、手にも取れない状態になるため、ECでは不利に働きます。

また、保存が効くものであれば届いたものの状態によっては返品交換も考えるかもしれません。しかし、生鮮は利用のタイミングとしてそうした時間もありません。基本的に生鮮食品は購入してから間を置かずに利用し使い切るからです。

また、理由はそれだけではありません。日本の多くの地域にスーパーがあり、今やコンビニエンスストアでも生鮮食品を扱っています。ECサイトから購入して失敗した商品を掴むリスクを考えると、数分歩いて直接買いに行き、自分の目で選んだ方が楽なのです。

つまり実際に買いに行った方が作業が簡単に済むということがあるのです。

加えて送料の問題もあります。歩いて数分のところで販売していて購入できる商品に対して多くの人はあえて送料を払って入手するようなことは控えるでしょう。

このようにECで生鮮食品を手に入れるメリットは、何の工夫もしなければ存在しないのです。

生鮮についてECを使うメリットにしても、普段利用している決済を使える、普段から使っているサイトのポイントがたまるなど、数えるほどしかありません。またそれらはメインの主目的に付加価値を与えるまでに至らない可能性もあります。さらには、どこでも販売しているようなものの場合はそのメリットも霞んでしまい、ほとんどメリットと呼べるものはありません。

生鮮の難しさと産直ECの可能性

とはいえ、必ずしもスーパーマーケットが全てにおいて強いというわけではないこともあります。

スーパーマーケットでも本来の商材のポテンシャルを生かせず市場を縮小させたケースも少なからず存在します。その代表例は鮮魚です。鮮魚はスーパーマーケット以前は鮮魚店で購入するのが一般的でした。鮮魚店はある意味ではいわゆる目利きでした。そしてその日の仕入れの状態や料理法までをサポートしていたところが少なくありません。

これがスーパーマーケットにユーザーが流れてから状況は変わっていきます。一律にトレイに収まった状態での販売では、魚の料理法は知られず、旬もわかりにくい環境を生み出しました。結果的にそれは、それぞれの魚の美味しさのプレゼンテーションが不足していき、魚離れが大きく進んだのです。もちろん売り場は残っていますが、鮮魚の売上は全体的に減少傾向にあります。

この問題はECに可能性があることを伝えています。インターネットはコミュニケーションツールです。こうした場面でいかに仲介的な機能を発揮することができるかが求められています。

そして実際の成功例として、漁港からの直送販売をECを通して行う試みも進んでいます。この取り組みは規模は大きくありませんが、コアなユーザーを惹きつけています。

同じようなことは農産物でも出てきていいます。顔の見える、利用法のわかる生鮮販売は、市場機能を通さないことでスピード感を得ることができます。流通経路を変えることで”すぐに手に入らない”という課題をクリアしているのです。

こうした一次産品のD2C化には大きな期待が寄せられているのも事実です。そして、これらを取り扱う試みは以前からありますが、まだまだ超えなければいけない壁が多くあるというのも事実です。

ECがどれだけこうした問題に切り込めるかによって、生産者も消費者も双方にハッピーなビジネス環境を生み出す可能性は変わってくるといえるでしょう。

特色のある商品はEC化しても強い

一方で、食品ECの中でも生鮮という枠を取り払いみた場合に成功している、あるいはECでの販売が歓迎されている商品の傾向はどういったものでしょうか。それは地域特性が強く、手に入りにくいものと、水などの重たい商品です。

特に地域特性が高い商品という点では、生鮮食品でも販売が伸びる傾向にあると言われています。

例えば静岡に住んでいて、青森のものを買おうと思えば、EC以前はデパートの物産展に期待するか、旅行の時、あるいは誰かのお土産などに頼るしかありません。そうしたケースに該当する商品ではECで発生する送料へのハードルは格段に低くなります。

また運ぶのが大変な商品も需要が上がりつつあります。例えば飲料です。ペットボトルの箱買いなどはそれなりに健康で体力のあるユーザーであれば問題ありません。しかし、日本国内で考えれば社会全体の高齢化があります。1.5リットルのペットボトルなどでも購入に躊躇するような世帯も少なくない状況になってきました。

こうしたケースではコストがかかっても配達してもらうほうが良いと考えるユーザーも増えてきています。

そう考えると必ずしも「生鮮食品=EC化できない」ということでもないことがわかってきます。このようにネットのメリットをいかに活かすのかが重要なのです。

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大手モールは物流基地構築に取り組んでいる

大手は需要の高さをよく理解しています。そのため、その資金を実験的に生鮮や日配品のマーケットへ投入しています。

Amazonと楽天市場の2つの巨大モールは、食品ECを本格化させようと動いています。その影響力は大きく、雑貨などでは圧倒的な強さを発揮してきた巨大ECサイトが食品で今後どういった動きを見せるかで食品でのECのスタンダードも変わってくることが予想されます。

最初に実施しているのは2つとも物流システムの構築と整備です。まずAmazonでは手始めに2017年に物流基地を神奈川県川崎市に作り、東京都の一部地域に向けて食品ECと「Amazonと生鮮」のイメージづけを行いはじめました。

「Amazon Fresh」というサービス名で17万ほどのアイテムを在庫として揃えて販売しています。温度管理を6段階に分けるなど、細かい気配りでユーザーの不安を解消し、順調に売上を伸ばしています。届くまでの時間や配送料などもAmazonプライム会員では送料が無料にすることで対応しています。このようにデメリットをいかに潰すかにも取り組んでいます。

また、もう一方のモール型ECサイトの大手である楽天はアメリカの大手スーパーマーケットチェーンであるWalmartの傘下に今はある西友と組んで生鮮のECに取り組み始めています。このジョイントベンチャーは楽天西友ネットスーパーを開設して大々的に展開しています。2018年のスタートでアイテム数はAmazonより少ないですが、西友のチェーン網を物流拠点にすることで、すでにサービスの提供エリアを全国に着実に広げています。

ブランドの認知とリピート率をあげることに工夫のカギがある

ECでの食品販売大手で業績を伸ばしている事例としてもう一つあげられるのがオイシックスです。こちらは、オンラインだけでなく実店舗での小売にも参考になる点があるかもしれません。

元々宅配での食品通販会社ですが、産地直送の生鮮食品を販売していた「大地を守る会」と「ラディッシュぼーや」を吸収合併して、「オイシックス・ラ・大地」と社名を変更し顧客層を拡大しています。

もともと、どの会社も店舗を持たず、物流網を整備して宅配してきた業態だったのでECとの相性は高いという点がありました。それぞれ、食材へのこだわりが高い客層を相手にビジネスを展開しておりECへ参入する体制は十分にできていました。そうした土壌がブランドへの信頼につながっています。

さらに合併後も料理方法なども含めてコンテンツとして提供するサービスを展開し、ブランドへの信頼感とユーザーフレンドリーな姿勢が業績アップにつながっています。

オイシックス はビジネスの形態としては、以前からサブスクリプションも取り入れるなど柔軟です。それ以上に多くのECサイトが参考にすべき点としては、コンテンツマーケティングを広義の意味で取り入れて行われているそのブランド作りではないかと思います。

西日本ではブランド力が圧倒的に強い生協などもそうですが、ブランドへの信頼感に加えて、そのまま今までの事業がECへ移行できるインフラを持っているという点は大きなアドバンテージです。

流通のシステムはそのまま真似することは多くの企業にとってなかなか難しいことです。しかし、いかにそのECサイトで販売されている食品が良いものなのかが伝われば、生鮮であってもECが成功できる例を示しています。こうした施策には可能性を感じさせます。

実際にその他の企業でも、ブランドを確立しているECサイトや、ブランディングを行い、認知を向上させて商品の魅力をアピールできた場合には注文も増え、成功への階段を登りはじめています。

ビジネスモデルとしてもそして一度胃袋をつかめば、リピートの可能性が高くなるのも食品ECの強さです。一朝一夕では達成できませんが、成功すれば、顧客と直接繋がることで事業はより安定することでしょう。

生鮮ではECは難しいと言われてきましたが、必ずしもそうではないことは理解していただけたと思います。実際、ECではデメリットを覆してきた例は少なくありません。たとえばアパレルを中心としたファッション業界は00年代では「EC化は不利」といわれてきました。しかし実際のところ2021年には売り上げの主軸にECが迫らんとしています。

いずれにしてもECサイトを作らないと始まらないことではあります。ただ、それぞれいろんな要素があるので、扱う商品に合わせてそのあたりは踏み込んで対応していく必要があります。サイトの構築については基本的なことについて以下の記事で説明しています。

【参考】ECサイトの構築の基本とは〜売れるサイト作りの方法を解説

スーパーやコンビニではできないことをする

消費者への食品購入に関するアンケートでは、スーパーでの買い物についての不満な点では3割ほどの回答者が「食品の詳細や背景がわからない」という点をあげています。

そうした詳細をじっくりと伝えることはWEBが最も得意とすることの一つといえます。生産現場に近いエリアや食品メーカーこそ、直販に近い状態で販売できるECサイトをしっかりと運営することで大きな利益を手にする可能性も秘められています。

生産者と消費者をいかにスムーズに繋ぎ、商品の魅力をしっかりと伝え、説明し、安全、安心を提示できるかが食品ECの課題です。これがそのまま「食品ECに向けてやるべきこと」ともいえます。クオリティを維持し、それをしっかりとアピールすることで、ユーザーだけでなくリピーターを増やしていくことが重要です。今はfacebookやInstagramなどで実際にユーザーともつながり易い状況があるので、そうしたものを使って囲い込みをいかにしていくかということも戦略の一つです。

また、SEOでの視点だけでなく実際にこうしたユーザーのニーズによりそった発信を実施できているかどうかの差がそれぞれのECサイトの売上の結果として反映されてきます。

EC化率は低くても、ユーザーの期待は高い食品EC。どうやってユーザーが発見できるようにするか、購入のチャネルをどう持つのかを検討して行けば可能性は小さくないジャンルといえます。

それぞれの商品の認知をあげていかにブランドを強くしていくかが、ECを成功させる鍵になっています。

大手の大量生産大量消費型経済からの脱却を目指す雰囲気とともに、まさに生鮮での食品ECはインディペンデントの企業が成功を掴むチャンスに溢れたジャンルになってきているのです。

ブランディングに向けて

ブランディング企業として、私たち株式会社かいなが食品ECに貢献できることは少なくないと考えています。

マーケティングを意識し、しっかりコンバージョンしやすいキーワードを狙って設計されたECサイトの構築、PDCAを回して最大化させるEC運用、そしてデジタル人材の育成プログラム、また顧客管理をシステム化し優良顧客化を目指すマーケティングツールの導入などについて、ぜひお手伝いさせてください。

ブランディングされ、狙ったマーケットのユーザーに対する集客力の最大化を目指したECサイトによって御社の商品をより多くの人に届ける力になれるはずです。食品ECでのブランディングの効果をぜひ体験してください。

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ここから始めるECサイトでのブランディング

ブランディングの重要性については理解し、いろいろ聞くけれど、結局具体的にはどこから取り込めばいいのか、またどういったことをすればいいのかわからないという声は少なくありません。

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この機会にブランディングの第一歩に取り組んで、ぜひ自社だけのマーケットを創造してください。

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