ECサイトの重要性は今後さらに高くなる〜ネットショップのトレンドを予測
2020.09.28
2020年も後半に差し掛かってきましたが、今年はECサイトにとって変革の年と数年後には言われることになりそうなほど、変革を迫られた一年だったのではないでしょうか。ECサイトに対する注目度の上昇はコロナによる社会的な影響がそうした面を加速させた部分はありますが、それ以外の環境的要因もあったといえます。ここでは現状を振り返りつつ、今後のECについて考察してみたいと思います。
CONTENS
コロナを契機にECが消費の動向を握る未来
インターネットでの買い物の市場はBtoBはもとより、BtoCでも2000年代以降、ずっと増加傾向にあり、これが今も継続しています。日本ではこの2000年代の20年間で経済的に大きな打撃となるような経済的事象や災害が多くありましたが、そうした背景にも関わらず、消費の中でECでの取引が占める割合は増加する傾向で推移してきました。
例えばリーマンショックや東日本大震災は、世の中の雰囲気を突如一変させ深刻な状況を生んでいます。こうした事象は国内全体の消費に大きく影響を与えましたが、ECでの販売による売上は伸び続け市場規模を拡大しています。
背景として裏付けとなる数値については経済産業省が発表しているデータが裏付けています。また一方で、世代ごとにどうやって物品を購入するかにバラ付きがあり、高齢者ほどECを使わない傾向にありますが、それでも年々、高齢者のEC利用も含めてその割合を伸ばしているのです。
これは社会的な行動変容が背景にあります。2000年代に入り、インターネットが通常の生活インフラ並に普及し、身近にあるという状況の中で、交通費と時間をかけて実際に店舗で買うメリットが低下していることが背景にあります。以前であれば、実際に目で見て触って品質を確認しないと消費行動に移さないと言われてきました。これはインターネット以前の通販業界全体で課題とされてきたことでした。しかし、今ではそうした流れはすっかり変化しています。
また、それに加えて、スマートフォンの普及でインターネットが手軽で身近にある状況も後押ししています。まさにどこでも、いつでも買い物ができる時代が実現しています。2010年代に入り、ECサイトを運営する事業者の工夫は「いかに簡単に購入できるか」という点に着目されています。こうした工夫を重ねたことが普及を進め年々増加する傾向を産んでいます。
その上で、「他者との接触を避けよう」というコロナ対策の喧伝される状況がECでのやりとりを増加させています。この流れはBtoCだけでなく、インターネット登場以降、消費の傾向の一つとも言えるCtoCも加速させていると言われています。
CtoCとは消費者同士が売買するビジネスの様式のことです。つまりYahoo!オークションや、今、物凄い勢いで伸びているメルカリなどのネット上のフリーマケットです。これら日本国内を中心としたシステムですが、海外であればE-Bayなども一般化しています。人と人がインターネットを通して繋がることが簡単に可能になりました。物が溢れる時代への移行は新規購入ばかりではなく、必要な人へとシェアしていくという概念も普及させており、ECとしても無視できない存在といえます。
個人や小規模企業が増加する2020年
ECの売り上げは伸び続けているという話は本当のことですが、その大部分は実際のところ、Amazonと楽天市場という超大規模ECサイトが売り上げを伸ばし続けていきた結果と言われています。実際に数字を見ると売り上げの伸び幅の大部分をこの2社が占めています。
もちろんヨドバシカメラなど猛追してECで売り上げを伸ばしているECサイトもありますので、全体的にも伸びてきているのは事実ですが、それでも数字的な意味での伸びを見せているのはAmazon、楽天の二社による影響であることは否めません。
しかし、2020年は少し状況が変化しつつあります。もちろん、大手二社の取引量も増加しているのですが、個人レベルでのECでの取引も活発化しました。その証拠という訳ではないですが、無料ASPカートのBASEは連日株価を上昇させており、その伸び幅は凄まじいものがあります。BASEだけでなく、Stores.jpもこうした無料でサービスを提供し、販売時の手数料で利益をあげるサービスで知名度を急上昇させています。株価についてはもちろん投資家たちの思惑が存在しているのは事実ですが、個人でのECサイト開設が相次いでいるのも事実です。
ポジティヴなことだけではない進化の結果
ただし、こうした状況は、一方で怪しげなECサイトが多数ネット上にある状況を産んでもいます。若干でも嗜好性の高いある程度単価の高いアイテムを調べると、本当にここで運営しているのか疑わしいようなECサイトが数々出てきます。検索結果からいきなりリダイレクトされたり、商品説明が怪しく、相場よりも明らかに安すぎる金額が提示されており、フィッシングサイトの匂いが漂ってきます。モールや無料ASPカートなどは消費者の安心感を高めるためにも対策が必要な状況といえますが、現在のところは注意喚起のみに止まっています。
また、AppleやAmazon、楽天などそのアカウント自体で他のサイトでも決済できるようなサイトの情報を盗もうとたくさんの迷惑メールが送られてきます。実際には迷惑レベルではなく、犯罪誘発メールと行った状況ですが、どれも対応は後手後手です。不正アカウント利用による事件は実際に後を経たず、Docomo口座などで銀行のセキュリティの甘さとネットリテラシーの低さを突いた犯罪は今年の後半の大きな話題として、ECにも大きな影を落としかねない状況です。
しかし、こうしたネガティヴな事象が発生する背景には、ECサイトの一般化ということがあるのも事実です。そして、これらの対策は検索エンジンなども含めてEC事業者含め社会全体で行っていく必要があります。
多様化するECの立ち位置
2010年頃までは、ECサイトは企業内では支店の一部的に独立した売上部署として扱われる傾向が強くありましたが、現在ではこのあり方が多様化してきています。各企業それぞれが経営の中での位置付けを単純な売上をあげる機能としてみるのではなく、それぞれに意味を持たせ始めました。
それはブランディング強化であったり、顧客の包括的サービスの一つであったり、それぞれのシナジーを目指すなどです。特に実施例も目立ち始め、注目されているのはオムニチャネルという手法です。SNSや実店舗、広告、メール、そしてECサイトといった手段を利用してユーザーを誘導していくことで優良顧客としていくというマーケティング戦略ですが、ECサイトはその中でも中核をなす存在として注目を集めています。ブランドの露出を多角的に行うことで、ユーザーとの距離感をつめ、サービスレベルの向上とブランディングを狙います。
実際にヨドバシカメラなどでは実店舗を実際に手にとって商品を確認できる場と位置付けていたりと実店舗とECサイトの存在が以前とは変化してきています。
またオムニチャネルよりも軽い施策としてO2Oが普及しています。これはオンラインtoオフラインの略です。簡単に解説するとオンラインショップでクーポンを配布するなどしてオフライン、つまり実店舗に誘導する施策です。SNSの利用が活発する中、その着地点となったりする場面も少なくありません。
全体的には地域性飛び越えた存在であるECサイトは、単なるインターネット上の販売チャネルから様々なチャネルを統合する存在へと変貌を遂げつつあります。
キーボードからマイクへ変わる入力形式
今後の流れとして数年で起こりえる状況としては「音声」によるECの活発化です。現在、Amazonのアレクサ、AppleのSiriなどの音声認識AIの利用が活発化しています。音声での検索はキーボードで入力するよりも効率がいいとされており、Google HomeやAmazonのEchoでの商品の購入は今後増加していると多くの専門家が分析しています。
また実際にAmazonではAmazon Echo経由での購入数の増加を確認しており、今後確実に伸びてくるカテゴリーと認識しています。今後は音声認証などの活用も盛んになってくると考えられます。一方で、日本語の対応は独特の文法などが発展を疎外する可能性も示唆されています。それでも、ヴィションとして描かれているという点と、利便性の高さは認識されているため、キーボード入力から音声入力への本格的なシフトは突然起こる可能性があります。
また、もう一つの技術的なポイントとしてはAiの活用です。現在、すでにビッグデータを活用したAIの利用が実際に導入されています。無料で利用できるプラグインも存在するため、WEB上での接客ツールとして活用しているサイトも少なくありません。
AIの活用は今後、運営時の工数削減に向けて積極的に利用されると考えられます。
サイト構築も変わる可能性
こうしたインターフェースが一つではない状況はECサイトの構築状況も変化させるのではと予測されています。その一部で言われているのが、「ヘッドレスコマース」というECサイトです。これはフロントエンド部分とバックエンド部分を切り離して構築するサイトのことです。フロントエンドとはざっくりいえばユーザーインターフェースのことです。今の段階でいえばこれはサイトのデザインなんかのことを指しますが、ゆくゆくはここは音声認識や視覚入力に置き換わってもいい構造になっているということです。
これで伝わるかは分かりませんが、今のサイトがノートPCだとすると、モニターやキーボードなどを自由に選べたり複数使えるデスクトップPCのような構造になっていくというものです。
国内の人口減にも対応するEC
将来のビジョンとして考慮しなければいけないのは、日本国内の人口減というシナリオです。実店舗では距離の壁を超えることは困難です。そのため、BtoCでかつ実店舗という面での消費はインバウンド需要に高い期待がかかっていました。この15年、行政が観光政策に力を入れ続けてきた背景には、国内在住者や地域だけでは支えきれない消費活動の拡大を期待していたためです。
その結果、中国を始めとする海外からの旅行客は増加し、消費も支えられてきた側面があります。しかし、コロナの状況は国内の消費状況を現実に引き戻しました。
結局のところ実店舗では、海外のユーザーにアプローチ出来ません。そうした側面を一気に飛び越えるのがECサイトの存在ともいえます。日本は人口減少が続いていますが、世界全体では人口は増加傾向にあります。
地域の商圏を超えて、全世界にアプローチできるECサイトですが、実際に越境ECを実施するには難しさもあります。実際に結果を出している企業もありますが、多くの企業はまだまだ発展途上にあります。言葉の壁から始まり、今後は越境ECへの試行錯誤が始まることが予想されます。
未来のECは専門性の集積を目指す
こうした流れの傾向から考えるとECサイトのあり方はさらに2極化が進んでいきそうです。一つは無料ASPの拡充です。インスタントECとも呼ばれるこうしたサイト構築は、さらに簡単にECができる門徒を広げそうです。また、その結果、ASPは手数料などを広くとっていくことで収益性を高めていきます。
もう一つはパッケージやクラウドECの多機能化と専門性の分業です。ECサイト自体は商品力を軸に、AIやウェブ技術、コンテンツ作成のノウハウなどがうまく統合されることで売上を伸ばすことにつながります。こうした技術と知識の統合自体は現在に通じる流れといえますが、ある程度の規模を見込んだECサイトではこうした内容がさらに深化していくことになりそうです。
そうした面ではビギナーでの単独運営と専門的に関わる外部企業と社内での連携チームによる中大プロジェクトに二分されていきそうです。また、企業として自社でECサイトをもち、販売チャネルをインターネット上に持つことの重要性はますます高くなりそうです。