ECサイトの保守費用〜運営時に知っておくべき項目の必要性と内訳を理解する
2020.12.01
ECサイトにとって保守作業は欠かすことができません。だからこそ保守費用についても理解しておく必要があります。
コストはかからないほうがよいですが、やはり内容が重要です。単純に保守費用について「安く済ませる」と考えて運営に当たることはリスクを生じさせることもあります。
ここではECサイトにまつわる保守費用の仕組みについて初歩的なことから解説します。
保守費用はECサイトを維持管理するための費用
ECサイトは”構築が完了したらそれ以上出費がない”なんてことはありません。
集客したり、サイトのサービスを向上していくためには運営に関する費用がなんらかの形で必ず発生します。サイトが常に安全に快適に利用できるように維持していくための費用も発生します。オンラインショップのデザインをして、構築が完了したら、それ以上は費用がかからないと考えるのはまさに早計です。
こうした費用の中でもECサイトを安全で快適に利用できる環境を維持していくためのものが保守費用です。
そして、「保守費用は必ず発生」します。保守費用には同じことを指している言葉も多くあります。「管理費」や「メンテナンス費」「保守管理費」などは同じ意味合いで使われる言葉です。
保守費用の内訳
ECサイトを保守するための費用の主な内訳は以下のようなものがあります。
- サーバーに関わる費用
- システムの使用料
- セキュリティなどのアップデート作業費用
この他に、エラー修正対応なども保守作業です。そのための費用も発生します。ECサイトは動的なWEBですので、何かのきっかけでシステムがエラーを起こすこともあります。それを放置しているとそのままエラーを出し続けることになるため、修正作業が必要です。
次にサーバーに関する費用はECサイトのデータをサーバーに置いて、閲覧可能な状態にするためには絶対に必要です。サーバーがなければECサイトは存在できません。このことは継続的にサーバーに関わるなんらかの費用が発生することも意味します。
もしサーバーを自社で構築するオンプレミスであれば、電気代やスペースに関わる賃料コストなどが必要です。技術者に関わるコストも発生します。他にもドメイン使用料など、何かと費用が発生してくる項目です。カートASPの場合では月額使用料に含まれています。
システムの使用料金はオープンソースや無料ASPなど構築方法によっては発生しない場合もあります。しかし、なんらかのシステムを使っている限りは多くの場合で発生するものです。もし、こうしたものに対する月額使用料などへの出費を渋れば直ちにECサイトはクローズします。
アップデートについて発生する費用とは、インターネットの仕様上のアップデートなどに関する費用です。セキュリティの脆弱性などがあった場合は、そのままにしているとサイトを乗っ取られてしまうクラッキングなどの被害に会う可能性もあります。顧客データを扱うECサイトでは安全面への考慮は欠かすことはできません。ですので欠かすことのない作業であり、削ることのできない費用です。
こうした保守に関わる費用は、構築方法によって変わってきます。ASPカートでの構築について保守費用が少なくすむのは、サーバーやアップデートに関わる費用が、システム利用料に含まれているからです。
もっとも「保守」という概念を広げていくと、例えば誤字脱字、あるいは言い回しのちょっとした修正や、画像の更新なども含まれるかもしれません。
こうした範囲の部分について、社外に発注するようなケースでは保守費用の契約に関わってくることになります。契約した料金に含まれているのか、あるいは別途の料金として追加で発生するのかは、契約したプランや、それぞれの企業間の取り決め次第ということになります。
保守費用の絶対的な必要性
「可能な限りコストを圧縮したい」と考えるのはビジネスの世界では当然のことです。ただし、中には絶対に削ってはいけないコストもあります。売上につながっているものや、そのビジネスの土台を支えているものもあるからです。
そうした費用を削ると、それまでの売上を失ったり、うまく運営できなくなり、余計にコストを生む可能性さえあります。そのため、コストの扱いについては慎重にならなければいけません。保守費用もその一つといっていいでしょう。
ECサイトにとっても同様で、保守費用はもっとも慎重に扱うべきコストの一つです。例えばサーバーの費用は家賃のようなものです。これを削って安いレンタルサーバーに変更すれば保守費用は確かに安価になります。その代わりにサーバーの性能が低くなり、アクセスを同時にできる数が限られ、パフォーマンスを落とし、すぐにダウンしてしまうといった可能性を生むことにもなります。
読み込みの速度が遅くなることはSEO的にも問題が発生する可能性もあります。表示速度は順位低下の原因になることもあるからです。サイトの利便性を大きく損なう状況は順位低下の対象です。
これは現実に置き換えると理解しやすいかもしれません。要するに家賃が安くなる分は、古くて狭い不便な部屋に引越した結果と同じようになる可能性などがあるということです。しかし、実際に現実世界でも保守費用を節約し過ぎて大事故になる例はあとを立ちません。
保守に関しては、どういった項目も基本的なことに関わってくるため、削減することで大幅にそのオンラインショップのスケールをダウンさせてしまうリスクがあると考えておく必要があります。
そのため、そもそもゼロにはできない費用と考えておくことが重要です。保守費用は基本的に検索順位を上げたりプラスアルファをつくるためにするためのものではなく、スタートラインに立つためのものです。そのため、この費用を削るということはものごとがマイナスになっていく可能性があることを把握しておきましょう。安全性の低いサイトや不具合の多いサイトでは誰もが購入を避けるようになっていきます。
いくら販売されている商品の価格が安くても、リスクのある場では購入する気持ちが萎えてしまいブレーキをかける要素になります。
外注の場合、その金額は作業内容次第で変わる
実際に保守費用の相場はどの程度なのでしょうか。規模などにもよるためその解答は容易ではありません。
例えば、先に出てきたカートASPであれば、月額利用料で済むということになります。サーバーをわざわざ借りることもありませんし、アップデートに関しては、システム面についてはASPのベンダーまかせです。ただし、ベンダー側でトラブルがあればその影響を直接的に受ける可能性があります。
無料のASPでは保守費用が発生しないように思えますが、結局のところ販売手数料を徴収されており、その中にそのための金額が含まれていることになります。要するにどんなASPもコミコミの金額設定になっているということになります。
もしサーバーをレンタルする場合は、大体標準的なレンタルサーバーであれば月額1000円程度です。この金額で始まり、規模やスペックによって月額の費用はどんどん上がっていきます。オンプレミスでのサーバー管理は月100万程度かかることはざらにあります。
この金額は規模や仕様によっても変わってきます。また、管理するにはサーバーに関わる専門的な知識も必要になってきますので、それなりにコストが発生することはやむを得ないといえます。
ドメインは取得するものにもよりますが、年で1000円程度です。企業ドメインとして日本国内での信頼度の高いco.jpは5000円ほど発生します。レンタルサーバーであればこうした費用は月額として見えやすく、一度契約してしまえば、変更しない限り変化しない固定費と考えることができます。
多くの人が問題にするのはメンテナンスに関わる費用です。基本的に人件費であり、技術料です。作業が複雑になっていくほど、費用が膨らむと考えてください。
システム開発にある程度の金額をかけた場合、こうした費用が後々発生していくことが少なくありません。また、規模が大きくなるとそのために社内に専門の部署を設ける必要が出てくる可能性もあります。
もちろんセキュリティアップデートなどの作業は、トラブルがなければ時間もそれほどかからず簡単に終わることもあります。逆に変更によって、サイトに多くの不具合があれば大問題となります。そうした事象にしっかりと対処していく必要があるので作業量は膨大になっていくことを前提にしておく必要がある項目です。
こうした金額について、相場を語ることは少しナンセンスな気がします。外注で専門の業者に依頼する場合に、一様ではないものに対して相場で価格の相談をするのは無意味です。
その内訳として基本的に理解しておくべきことは作業は基本的に人力で技術者が行うという点を理解しておく必要があります。
ですので一般的な相場を知るよりも、それがどういった作業内容で、どれくらいの作業工数になりそうなのかといった見積もりと、実際の作業での状況などをしっかりと把握していくことが価格面で失敗しないためには重要です。
保守と運営代行は違う
こうした保守作業はあくまでサイトを維持していくためのものです。ECサイトの運営はECサイト自体で利益をあげていくための活動ですので、保守作業も含んだもっと積極的な営業活動と考えるべきです。
SEO対策や広告、SNSの運用は明らかに保守作業ではないことはお分かりいただけるかと思います。
ある程度の規模のECサイトでは自社内だけでなく、外部の企業と協力しながらサイトを構築し、技術的な部分でサポートを受けているケースも多くあると思います。その中で保守作業は特に専門性に関わる部分も多いため、WEB制作会社などに依頼して保守契約を結んでいるケースも少なくありません。
運営代行では集客やコンバージョンの改善などにも関わって、サイト全体の売上を上昇することを目的にしています。そのため、根本的に保守作業とは異なる部分があります。
もし、保守作業を依頼している企業に運営自体もサポートをしてもらうと考えるのであれば、その他、別に費用が発生するということになります。しかし、これも結局のところは費用対効果を考慮して判断をすべきです。
外部企業に発注することで空いた手をさらにプラスの作業に回すことも考えることができます。最終的には考え方次第です。代行に興味のある方は参考リンクの記事もぜひお読みください。
また、継続したEC事業としては外部の企業に協力を求めるとしても、ある程度は専門領域を知る、あるいは理解のあるスタッフを社内で育成していく必要があります。
【参考】ECサイトの運営代行で利益の最大化をめざせるネットショップを作ろう
ひとつ、ここでしっかり覚えて置かなければいけないことは、何度も繰り返す通り、保守費用自体は必ずなんらかの形で発生するものであるということです。本文中でも再三記載していますが重要なことですので、最後にもう一度お伝えします。インターネット上にECがあることで、そこには平面の画面しかないと考える人も少なくないかもしれません。また企業内ではみんながそうした保守に理解があるというわけでもありません。
実際、保守費用自体は利益を生んでいるように見えないことも多いため、現場から遠いと削減の対象にしてしまう人も少なくありません。
しかし、継続性をもって取り組もうと考えるのであればしっかりと保守費用の発生を考慮しておくことが非常に重要です。経営に関わる人にもこうしたことを理解してもらうことで単純なコストカットの対象にしないよう、日頃から理解を進めてください。