自社ECサイトはモールに出店していてもやるべき3つの理由
2020.06.08
あなたがどうやってECに参入しようかと考えている場合、手軽にモールを利用するという選択肢もあります。また、その一方でモールで最初にECへ進出した場合、「モールに出店しているから自社でECサイトの導入は不要」と考えているケースも少なからずあります。
しかし、2021年の今、ECでの販売のチャネルを一本に絞るのではなく、自社ECサイトとモールを併用することにも大きなメリットがあります。ここではそうした併用のメリットと負担を中心に解説していきます。
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モールとは大型のショッピングサイトのこと
まず「モールって何?」というのために人に念のため、モールの基本的な情報について説明しておきます。「モール」あるいは「モール型ECサイト」というのは、大規模なショッピングサイトのことです。
その語源は「ショッピングモール」です。
モールは販売している商品を扱うそれぞれの企業がそのサイトで出品することで成立しています。日本では楽天市場やYahooショッピング、そしてAmazonなどがよく知られているモール型ECサイトです。他にも業務用品に特化したモノタロウや、事務用品を中心に扱うアスクルなどが有名です。
ちなみにAmazonは最初は自社で商品を仕入れて販売するサイトでした。そのため最初期はモール型ECサイトではありませんでした。2000年代中期にマーケットプレイスという名称で各ショップの出品を募る形式でモール型ECとしての機能を追加し、現在では、モール型ECの中核を成す存在といえます。また、最初は専門の商品を扱うところから始まり、モール化していくサイトもあります。例えばヨドバシ.COMは家電以外のものも数多く扱っています。
イメージとしては実際のデパートやショッピングセンターなどを想像するとわかりやすいでしょう。デパートでは一つの名称でさまざまなブランドが集まっていますが、実際にはいろんなお店がテナントとして出店していて一つのモールを構成しています。ECモールの意味もショッピングモールのモールと同義であり、構成は同じです。実店舗のモールも、ECのモールもどちらも高い知名度があり、集客力もあります。
こうしたモールに対して、「自社ECサイト」を説明するとしたら、自社サイトは「自社ビルに直営店舗を持っている状態」といっていいでしょう。モール型ECに出店した場合と比較すると規模も体裁も予算さえあれば、ある程度は自由に作ることができます。
また、違いは例えばURLにもあります。URLはhttpから始まる文字列で、いわばインターネット上の住所のことです。URLはモールへ出品した場合、ドメインとよばれるサイト独自の文字列がモールのものになり、そのページ自体はそのドメイン内のページとして扱われます。
モールでのURLは多くの場合は数字やアルファベットが記号的に並んだものになります。一方で自社サイトでは、構築方法によってはそうした表示をある程度整理して、関連付けをしておくことができるという違いがあります。これは当然といえば当然のことなのですが、意外に重要なことでもあります。また、ネットショップを社名やサービス名を冠したドメインにすることで、しっかりとブランドの印象を植え付けることもURLでできます。
モールではモールそれぞれのルールに従う
モールがまず自社サイトと大きく違う点は、サービス内容など運営・運用ルールも含めて、モール側で定めているルールに従う必要があるという点です。仕組みを独自に変えることはできません。
決められたフォーマットで必要な情報を入力し、画像などをアップロードしていくことで商品ページが出来上がります。送料や発送のルールなども事前に決められており、その枠組みのなかで行っていきます。
つまり運営のルール自体も大枠はモール側がイニシアチブを持っている状態になります。それが気軽でさにつながっているという側面はありますが、これが改善の足を引っ張るということもあります。
モールのメリットとデメリット
すぐに開始出来るのはモールの大きなメリット
モールのメリットは、「簡単なこと」に集約されています。例えば商品登録はそれぞれのモールごとに特徴はありますが、基本的にはそれぞれ聞かれていることに答えを入力していくような状態に近いものです。そのため、画像や商品データ、紹介文などの素材さえ揃っていれば商品ページの制作に時間はかかりません。
また、こうした入力やデータの流し込みをする作業だけでページのレイアウトをサイト全体の傾向に合わせることができ、そのモール型ECサイトで商品を探すユーザーは簡単に商品を発見することが出来るようになります。また、「普段利用しているオンラインショップ」ということから、購入へのハードルも低いのが特徴です。
大手の人気サイトほど、ユーザーのサイト内での行動分析は進んでいます。その行動に基づいたレコメンド機能なども実装し、多くの場合、効果的に機能しています。レイアウトはそうした行動分析に基づいた配置になっています。決済のページ遷移なども含めて洗練されていることも多く、簡単にそれぞれのベンダーがモールが実装している機能を享受できるのは大きなメリットです。こうした売り上げをアップさせるための仕組みをサイト自体が持っているので、そうした機能にうまくのっかるだけで良いからです。
もう一つはそのサイトが持つユーザー層を開始時からマーケットにして販売活動をすることができるという点です。つまりある程度の見込み顧客を持つ状態からスタートできます。
独自のドメイン、URLで構えた自社サイトでのECであれば、初期に集客することはなかなか大変なことです。そうした部分は、モール自体にユーザーが回遊しているため、かなりメリットがあるといえるでしょう。
ルールが自由を縛っているように見えますが、このルールについても場合によってはメリットになります。自社サイトであればルール作りを1から実施しなければいけません。しかし、モールであれば、そうした枠組みはモールの敷いた中で行うだけです。顧客も買い物に慣れていることが多く、ルールを独自に設定できないことは必ずしもデメリットにはなりません。
モールは動きが出にくい、出しにくいのがデメリット…手数料も負担になる
もちろんこうしたことはメリットだけではなく、デメリットにもつながります。
まず、サイトのデザインです。レイアウトを含め、自由度は一切なくカスタマイズして利用することができません。写真と文章以外は商品の独自性を演出しづらくなります。商品や企業のブランディングなどに活かすということは非常に難しくなります。
例えば動画などでアピールするといった手法で使い方を見せて魅力を伝えるということも、かなりモール内でできるようにはなってきていますが、それでマーケティングを考えることは難しく、スーパーの商品棚でどれだけ目立てるかという状況とあまり違いがありません。
そのため、あくまで販売のチャネルがインターネット上にあるというだけのことになりかねない部分が多いにあります。結果的に発展性という点では自社サイトでのECに大きく劣ります。戦略を独自に立てるにしてもどうしてもモールの枠組みの中に限られてくることになります。
ある程度、認知が広がっており市場内で成熟しきった商品であればよいかもしれません。つまり、ブランドの普及は完了しており、指名買いされるような、すでにブランド力がある商品です。しかし、そうではなく、新たな市場の開拓が必要な新製品などの場合は競合のなかで埋もれてしまい、魅力をしっかりと伝えて掬い上げていくことは簡単ではありません。
もう一つは販売にかかる手数料です。最初のうちは問題ないかもしれませんが、販売量が多くなっていくと毎回抜かれていく手数料のトータル金額はバカにならない金額になっていきます。これも実は大きな負担になります。
なんらかのきっかけで認知が上がった場合に自社のECサイトであれば発生しなかった金額が毎回の手数料として出費としてのしかかる可能性があるということになります。そうした費用は売上が増えると総金額は高くなり、負担も大きくなります。つまり、利益を圧迫します。せっかく注文が増え、売上が伸びても、利益率は高くならない可能性があり、これについてはモール単独での販売では対策のしようがないのです。
また顧客情報を自社活用するためには情報は取りづらく、マーケティングに活かすということもなかなかできません。加えてモール本体に悪評などが立てば、それに引き釣られて、一緒に悪い影響を受ける、つまり売り上げを下げることにもなります。
顧客情報を活用できないことはリピート施策に影響します。リピート施策は適切に行うことで売上を安定させますが、そうしたことができないため、成り行きに任せるしかありません。楽天などではショップからのメールを一度購入した経歴のあるユーザーへ送ることも可能です。しかし、そうであったとしても多くの場合、ユーザーとしては「ショップからのメール」という認識ではなく、「モールからのメール」と認識されてしまうことも少なくありません。こうなると認知を向上させて定着させることが難しく、場合によっては類似商品を販売している他のモールの援護射撃をすることにつながることさえあります。
併用することで自社サイトの初速を売上面で補える
モール自体は構築方法のハウツーサイトで、ASPやパッケージ、オープンソースやフルスクラッチなどの手法と比較対象にならんでよく解説されています。しかし、こうした構築手法とモールは決定的に違う部分あります。それはもし自社ECサイトがあったとしてもモールであれば併用して利用できるという点です。
例えばASPとパッケージで構築された自社サイトをそれぞれ持つ理由はありません。集客が分散されるだけでデメリットしかなく、メリットは一切ないからです。分散するためSEO的にはかなりの悪影響を与えることになるでしょう。
このように2つのECサイトを持つことは、行動はもちろん検討さえする必要も多くの企業にとってありません。
しかし、モールへの出店であれば別です。モールであれば、そのモールを利用しているユーザーに向けてアプローチしながら、自社サイトも育てるということができます。特に自社サイト開設当初のセッション数が稼げない期間にはプラスは少なくありません。SNSでの集客が弱かったり、広告等の費用を捻出できない状況であればプラスに働く部分も少なくありません。
一方で2つのチャネルを同時に運営していくにはいろいろと手間もかかります。在庫管理や発送ルールの違いなどによる負担は意外に大きく、混乱を生むこともあります。必要な知識やノウハウには少し違いがあります。とにかく管理での手間は増大します。
管理が煩雑になる場合は、一元管理システムの導入も検討するべきです。しかし、どういった環境にも使えるかといえば、その点では全てを保証はできません。そのため自社サイト側がそれぞれのモールに対してAPIが開発さてているかどうかといったことを開発時に把握しておく必要があります。
【参考】ECで複数のチャネルを持つなら一元管理システムが便利
モールがあっても自社サイトを一緒に運営させるべき3つの理由
もし、自社の商品のイメージを育てていきたいというのであれば、自社サイトも同時に並行して運営していくべきです。理由は大きく3点です。
1.自社サイトならブランディングができる
モール内では、どんな商品も画一的な画面におさまります。たくさん販売されている商品の一つでしかありません。そのため、ブランディングはしにくく、アピールポイントがあってもなかなか強く押し出すことは難しくなります。
モールでは特に価格勝負になりやすくなります。もしライバル企業がより低価格で類似の製品を販売し始めると、そうした価格での比較をするというラインも考慮せざるをえない部分があります。
一方で自社サイトの場合は、日頃から自社サイト内のコンテンツを強化することで、サイト自体も自然検索での流入に強くなり、商品のイメージをしっかりと打ち出すことができます。
2.手数料などのコストを抑える
もし、オンラインショップを独自に持つことはなく、商品をモールでのみ販売している場合は、大きなヒットに繋がって販売数が増加しても手数料を払い続けることになります。このコストは利益を単純に圧迫します。
3.モールだけではトラブル時の影響大
例えばモール内で同じ系統にある商品が炎上するなどの何らかのトラブルが発生した場合、その影響を直接、あるいは間接的に受ける可能性があります。また、他の企業の安売りや、モール全体に関わるルールの変更などがあってもその影響を受けます。
モールの売上だけに依存している場合はそうした影響をもろに喰らうことになります。
並行して運営しておくことは、そうした場合には、一時モールでの出品を取りやめるなどで対処もできます。もちろん、自社サイトのサーバーダウン時にモールが活きるということもあるのでリスクヘッジになる場合もあります。併用にはこうしたメリットがあることを覚えておくとよいでしょう。
ルールについては、最近では楽天で全ての送料を無料にするという方針を運営が導入しようとして、大きな問題になったこともありました。もし、実施されれば、結局のところその運営ルールに従わざるを得ません。
よく商品の特性を考えて
もちろん、併用することが販売面で難しい商品もあるので一概にすべて当てはまるとはいえません。しかし、在庫のコントロールがしやすく、粗利も良い商品であれば、販売のチャネルが多いことによるメリットはあります。
そうした商品であれば自社サイトとモールを併用することで、それぞれに意味合いを持たせ、利益を更に伸ばしていくことも可能です。
自社サイトとモールでの在庫管理などを楽にするため連携できる機能も多くの事業者が提供しています。シンクロ率は完璧ではありませんが、こうしたツールを導入することで効率を上げ、事業を円滑に進めることができるようになります。多チャネル化を課題にしている事業者では見逃せないツールです。
逆にじっくりとブランディングして販売していきたいということであれば、自社サイトだけ、ブランディングは完了しているということであればモールだけという選択肢もありです。
また越境ECを検討している場合は、販売を希望する国のモールを使うのが常套手段です。これは、早い段階で余計なリスクを追うことも少ないのでお勧めできる方法です。
チャネルを広げることで手間はかかりますので、企業自体の成長や事業としての進捗などの様々な段階や、商品の特性を考えて計画するのがいいでしょう。
Amazonをテーマにモール型ECについて解説している以下の記事も参考にお読みください。
【参考】Amazonで分析するモール型ECサイトのメリット・デメリット
モールから自社サイトへの移行を考える人に向けた資料
併用していると自社サイトでの十分な売上があればと誰もが考えていると思います。しかし、なかなか簡単ではありません。
まずはどこから手をつけるべきか、問題を明確にして取り組む必要があります。ここでは、その手助けになるように資料にまとめました。誰でも無料でお読みいただけますので、ぜひ、この機会にお読みいただき、自社サイト強化のお役に立てれば幸いです。