ECサイトは決済代行会社を利用して決済方法を増やす
2020.05.29
これからECサイトを作ろうという人や、運営を引継いだばかり、またはサイトをとりあえず知り合いのWEBデザイナーに頼んで作ってもらったという人は、さまざまな決済方法の種類があることに驚くのではないでしょうか。
そうしたいろんな決済方法をまとめて契約して管理してくれるのが決済代行会社です。
ここではオンラインショップでよく導入される決済方法と、その決済をとりまとめてくれる決済代行会社やその選び方について解説します。
CONTENS
豊富な決済手段あり!売上げにも関わる
決済方法はここ数年でものすごく急速に増えてきました。2010年代以前であれば、クレジットカード決済と代引きに対応しておけば十分でした。
しかし、ここ2~3年は次々と新たな決済方法が登場しています。利用者としては普段利用している決済方法を使いやすく便利になってきています。
決済にどういった方法を利用するか。ユーザーの多くは「自分はこれ!」といった感じで特定の決済方法を利用しようと決めています。もし同様の商品が同額で販売されていた場合は、どちらのサイトで購入するかを決定する場合には決済方法を優先することは珍しくありません。それどころか自分が普段利用している決済方法がないのでその場面では購入をあきらめるケースもあります。いずれにしても決済方法は購入を決定するための重要な要素といえます。
実際にはいろいろなユーザーがいるため、ECサイトの運営者はいろいろな決済方法に対応できるように準備しておくことで、さまざまな利用者にアピールできます。逆にあまり絞りすぎると「カート落ち」や「カゴ落ち」と呼ばれる“購入を決断したけれど、決済前にやめてしまう”という状態が増えます。
ではどんな決済方法があるのかざっと確認してみましょう。
通信販売は銀行振込や郵便為替から始まった
インターネット上で決済まで済ませることができるようになって通信販売の幅が格段に広がりました。オンラインショップ以前では通信販売といえば銀行振込や郵便為替などが主流でした。購入者は手続きをしに銀行や郵便局へ行き、販売者も入金の確認をしに行かなければいけませんでした。
後払いで請求書を送ったりという手段もありましたが、その場合には未払いは大きなリスクとなります。購入者にとっても、入金後に商品が届かないトラブルがあったりもしました。
オンラインショップが全盛になり豊富な決済方法がありますが、現在でも銀行振込や郵便為替による決済は残っています。利用しない人にとってはあまりメリットを感じない方法ですが、事業者と購入者の間で金額について打ち合わせが生じる場合には手っ取り早く利用できる手軽な手段でもあります。
銀行振り込みや郵便為替は決済方法として何か特殊なシステムの利用は不要です。ECサイトの画面内に必要な情報を提示し、購入を希望する人にも改めてメールで受注内容と金額を知らせて、改めて銀行口座など入金に必要な情報を知らせるだけで気軽に導入することができます。
また、最近ではインターネット上で振込も可能になってきました。そのため銀行振込が単純に必ずしも時代遅れの決済方法ともいえなくなってきました。
クレジットカードは多くのオンラインショップで利用されている
ECサイトでの売上げを分析するとクレジットカードでの決済は多くの調査で約7割を占める重要な決済方法です。ネットショップではあって当然の必須の決済方法ともいえます。
クレジットカードは「Visa」「Master」「Diners」「JCB」「American Express」の5派が主流です。
このほかにも多くのクレジットカード会社がありますが、この5つのどれかが使えるようになっているものがほとんどです。どのカードであっても利用者はカードの番号を入力することができれば、決済に利用できます。
クレジット決済については以下の記事もぜひご確認ください。
【参考】 ECサイトのクレジット決済から考えるサイトの信頼の重要度
自社のECサイトでクレジット決済を利用するためにはクレジットカード会社への手続きが必要になります。クレジットカード会社は、リスクがあると判断した場合は、利用の許可を出しません。そのため、この決済方法を設置するには、事業者の身元をしっかりと証明し、審査を通過する必要があります。
利便性を考えた代引きやコンビニ決済、後払いを保証するシステムも
ユーザーの利便性を考え、さまざまな安全面も考慮した料金の回収システムが配送会社と提携して行う配送時代金引替え、つまり代引きです。
商品の代金を運送会社の配達員が配送時に回収するシステムです。この方法は利用者は、配達の時に代金を配送員に支払う方法です。商品が届かない限りは支払いは発生せず、入金しても送ってこないというトラブルを避けることができ、事業者側から見ても代金を回収出来ない事態を避けることができます。手数料が発生しますが、この方法を好む利用者も少なくありません。
コンビニ決済は、豊富なコンビニエンスストアの店舗網を駆使してコンビニエンスストアで支払えるという決済方法です。営業時間の限られている金融機関にいくには時間が無いという利用者でクレジットカードの利用に抵抗があるというユーザーに人気がある支払い方法です。ただし、コンビニにある端末の操作が必要になったりすることもあり、サポートで不明なことが出てくることもあります。
後払いを保証するシステムもあります。これは、決済代行会社に請求については任せてしまう方法です。事業者は未払いのリスクがなく、利用者も後から決済方法を決めることで、品薄の商品などについて素早く購入を決定できるメリットがあります。
既存のアカウントと連動して利用できる決済も人気
大手のショッピングサイトAmazonや楽天、iPhoneの普及で利用者を増やしたApple、インターネット上のサービスでユーザーの多いGoogleなどは、それぞれがたくさんの利用者を抱えています。すでにそれぞれのサービスで作成したアカウントでユーザーが決済できる仕組みを提供しています。また、実際に多くのユーザーが決済として支払いに利用しています。
これらのそれぞれのアカウントで決済できる仕組みもECサイトに取り込むことが普及しています。
- Amazon Pay
- Apple Pay
- Google Pay
- 楽天Pay
この辺りについては要チェックです。
ユーザーにとっては普段から買い物しなれているアカウントで決済時にログインするだけで買い物ができるため利便性も高いです。「Google Pay」などのように他の決済も飲み込んでいるようなサービスもあり、電子マネーとの境目をどんどん無くしていこうとする流れもあります。ECサイト運営をする上ではこのあたりの決済方法の動向は目が離せません。
いろいろ増える電子マネー、オンラインショップに向き不向きあり
現金を持ち歩く時代は今や縮小し、この10年ですっかり様相が変わってきています。どんどん世の中はキャッシュレス化に移行しています。実際に海外では現金決済が実際のお店でもできない店舗も増えてきています。日本ではまだそこまでは進んでいませんが、その広がりは大きいものです。そのため電子マネーはどんどん発達しているカテゴリーといえます。
さらにはインターネット上の決済でも活発に利用されるようになってきました。ただし、電子マネーと一言でいっても複数のサービスが乱立しており、それぞれに特徴があります。他の支払い方法と連動していたり、他の電子マネーの利用ができるようになっているものもあり、とても複雑な状況といえます。
一方でクレジットカードのように利用者への審査などはありません。そのため、年齢なども関係がなく、比較的敷居の低い利用方法になっているという側面もあります。
一度使い初めてしまえば、利用者は普段使っている電子マネーが希望の店舗で利用出来るかできないかを意識する程度で気軽に利用できます。また、多くのサービスは利用に伴い、独自のポイント還元で囲い込みを計っています。そのため、そのポイントを目的にして、普段の支払い方法として利用を固定しているユーザーも少なくありません。
交通系電子マネーは、利用について物理的な接触を前提に作られているので、オンラインショップでの利用とは相性があまりよくありません。かたやLine PayやPaypayなどは表示されたQRコードを読み取るだけでで支払いが完了するため、簡便で、ECサイトと相性の高い電子マネーといえます。
ECサイトの決済方法はBtoBにも対応している
今まで取り上げてきたのは主にBtoCに主眼を置いた決済方法です。こうした決済以外にも、BtoBユースに対応した決済サービスもECサイトで利用できます。
BtoBでは月の間に取引が何度も発生します。そこで月ごとにまとめて請求するのが掛売りです。商品を納品してから、実際に代金が振り込まれるまでの間は、取引先に対して信用を付与する与信が必要です。
BtoC向きの後払い決済では掛売りに対応するのは困難です。後払いでは決済の回数が増えて、経理処理が膨大になります。そうなると手間も増えてしまい十分に対応することはできません。そこでBtoBでのEC決済を支援するために掛売りによる支払いが対応出来るサービスが提供されています。
まず掛売りに対応したサービスの多くは与信管理の機能があります。こうした機能を加えることで、購入側の企業だけでなく、販売側のリスクも減らせます。また、入金に応じて売掛金を減していく入金消込などのサービスもあります。
掛売りでの決済にはPaidやNPプロテクションズなどがサービス提供をしています。また、他にもWEBで請求書を作成し送信できるシステムなど、BtoB向けの決済も充実しており、ECで十分に対応できる状況になってきました。
いろんな決済方法をまとめてくれるのが決済代行会社
大きく分類しただけでも複数あり、さらにクレジットカードや電子マネーはその中に複数の種類があります。そうなると膨大な決済方法を管理し、それぞれの企業と契約してECサイトで利用出来るようにするだけで大変な作業になります。
こうしたたくさんの決済に関する契約や管理を一本化してまとめて行うのが決済代行会社です。決済代行会社と契約することでその会社が提供する様々な決済方法に対応することが可能になります。決済代行会社への料金はそれぞれの決済の中で手数料として支払われていきます。
決済代行会社の存在はECサイトがここまで普及したことにも大きく貢献しています。本来であれば、クレジットカードなどはそれぞれに審査が必要になりますが、そうした作業も決済代行会社とのやり取りをすることでクリア出来ます。これによって、簡単にいろんな決済方法をそれぞれのECサイトに導入できるようになりました。
決済代行会社はそれぞれの決済に対して手数料を設定しています。手数料はそれぞれの代行会社によって違います。またセキュリティに関しては、安心して利用できる仕組みを備えている企業を選ぶことは非常に重要なことです。当然様々な信用や使いやすい仕組みをそれぞれの決済代行会社が用意していますので、それに合わせたサービスを選択してください。
ECサイトで利用される代表的な決済代行会社
ここで主な決済代行会社を紹介します。決済代行会社は今回取り上げただけでなく、たくさんの会社が存在しています。ここで取り上げたもの以外の会社から営業を受けたという場合は十分に特性などを確認してください。
ネット決済の大手「GMOペイメント」
GMOはASPの大手であるカラーミーショップやMakeshopなども傘下にあり、EC事業に関して様々な展開をしている企業グループです。GMOペイメントはECサイトで利用される幅広い決済に対応しています。
その中でもPGマルチペイメントサービスは今まであげてきたような決済にはほぼ対応可能です。インターネットでの利用も考慮されており、まさに大手の決済代行サービスといえるでしょう。豊富な決済方法を展開したいという場合は一度は選択肢として検討したほうがよさそうです。
銀行に関わる決済に強く支払いサイクルの短い「ペイジェント」
三菱UFJ銀行とNTTデータが出資する「ペイジェント」は仮設銀行口座などにも対応するなど、銀行に関わる業務に強いのが特徴です。決済サービスも幅広く対応しています。また、決済締め日から支払いまでのサイクルが最短で5日という設定も可能です。
入出金のサイクルが早い業務であれば魅力的です。
Tポイントも対応する「SBペイメント」
ソフトバンクが運営する決済代行会社です。こちらも多くの決済に対応可能で、決済代行の大手の一角を担っています。TポイントやYahoo!ウォレット決済にも対応するなど、グループ企業で利用者の多いサービスとの連携も充実しています。携帯キャリアを運営し、オークションでも人気の高い企業がグループ企業にあることで、決済に深さを与えています。
ASPやパッケージにやさしい「ソニーペイメント」
日本の電子機器産業をリードしてきたソニーが提供するのがソニーペイメントサービスです。基本的な決済には概ね対応しています。さすが、技術開発の会社らしく、ECサイトの開設によりそってサポートが充実しています。
シンプル派には「Paypal」という選択肢も
Paypalはインターネットの普及に合わせて生まれたサービスです。メールアドレスを登録することでメールアドレス宛に金銭の受け渡しができます。現在はビジネス向けアカウントではPaypalがクレジットカード決済の登録も代行しています。
日本ではあまり普及していませんが、海外では利用者の多いサービスで、十分な実績があります。海外も視野にいれつつシンプルにしたいという場合は考えてもいい選択肢です。また、申し込み等の手続きもオンラインですべて完結できます。
構築手段によっては選択可能な決済が縛られることも
ASPを利用する場合、利用するASPによっては選択可能な決済代行会社が決められていたり、そもそも選択できない場合があります。そういった場合、決済手段が絞られていて、豊富な決済手段の存在を認知していても利用できないということもあります。
また、特定の決済代行以外は追加で手数料を取るケースもあります。決済はECにとってはとても重要な項目ですのでしっかりと下調べをして臨んでください。
ASPをつかってECサイトを構築しようと考えている場合はどういった決済代行会社が選べて、どういった対応になっているのか事前によく調べておきましょう。
こうした点はクラウドECでも同様のことがいえます。ただし、クラウドECはアップデートを頻繁に行っているケースが多いことや、その流れで対応を広げていく可能性も十分にあります。また、運営中に、どうしても要望の多い決済方法がある場合は、その要望を申告することで将来的な対応が加速する可能性もあります。
決済代行は導入時から慎重に選ぼう
決済代行会社が選択できる場合は慎重に選んでください。もちろん途中で変更することも可能ですが、変更すると、今まで対応していた決済が非対応になったり、入金サイクルなども変わる可能性が多くあります。ECサイトの業務以外の業務とも大きく関わるため、準備や調整がなかなか大変です。
初期に注意すべき点は主に以下の点です。
- 対応可能な決済
- 入金サイクル(締め日と支払日の確認)
- 決済手数料
以上のような項目はどれか一つについて突出して考えるのではなく、総合的に判断する必要があります。
例えば、今回例にあげた決済代行会社を利用する場合はあまり入金サイクルなどについて深く考えなくても良いかもしれません。しかし、ある程度、決済の種類が制限されるという状況であれば入金サイクルや決済手数料は重要です。
決済手数料が高い場合は利益に影響してきます。原価設定にも関わってくるので慎重に選択する必要があります。この場合、選択が難しいのは、それぞれに設定されている手数料が違うということです。そうした場合は利用者の多そうな決済方法の手数料を基準に考えましょう。
入金サイクルは短いほうが資金繰りは有利です。この辺りのバランスは手数料にも影響してきますので、経理や財務担当者ともよく話し合って決めてください。
決済方法に合わせたワークフロー、ワークフローに合わせた決済を
実務的な要素として、銀行振込やコンビニ決済など、受注してその後に入金確認が必要な決済方法の場合は、梱包や発送などの出荷に関わる業務の前にアクションが増えることを考慮する必要があります。
例えば、こうした場合、保存に関してとくに制限のない商品かどうかは考える必要があります。保存が効くのであれば問題はありませんが、生鮮食品などを扱う場合には注意してください。
「入金後の発送」としている場合は、在庫が豊富な商品であれば問題ありません。しかし、サイクルの早い商品であれば発送できるように商品を確保して保管しておかなければならず、大きな負担になることがあります。
利用者の多い決済方法でも、導入してからこうしたことに気づくこともあります。柔軟な対応が求められる場面もありますので、それぞれの実状を考慮しながら選択していくことが重要です。
カゴ落ち、カート落ち対策にも決済の充実が有効
その上で「カート落ちが多い」などの状態が多ければ、決済方法を見直してみる必要があります。
マーケットがある程度限定されている商品を扱うのであれば、どういった層に向けた商品か解析することで、決済方法を絞って、デザイン的にシンプルにすることでユーザーが使いやすくなるといった可能性もあります。選択肢は豊富なほうがもちろんよいですが、その上でどの方向に向けているかは考えて選択してください。
いづれにしてもユーザーフレンドリーなECサイト運営を継続していくことで結果がついてきます。
特に決済については分析を重ねて対応する必要があります。企業ごとの実状もそれぞれありますので、もし専門のサイト制作会社や運営会社に相談する場合は、しっかりとヒアリングして対応してくれる会社を選んでください。
専門知識があっても、ケースバイケースで対応は異なりますので、目線をしっかりと合わせられる企業とパートナーシップを組むことが重要です。