ECサイトは撮影テクニックで商品の魅力に差をつけよう
2020.10.02
ECサイトでは商品に直接触れることができません。そのため質感も表現できるかのような撮影力があれば売上アップ効果が期待できます。
とはいえ、始めたばかりの自社のECサイトではなかなかプロのカメラマンに依頼することは予算的に高いハードルがあります。それに加えて機材についても、購入から使用方法まで、「一体どう行ったらいいのか」と悩む人も少なくないでしょう。
ここではそうした方に向け、ECサイトのレベルアップに向けた撮影の初歩の初歩を解説します。
CONTENS
ECサイトでの画像の重要性はますますアップ
ECサイトでサイトの運営側が提供する情報として視覚で訴えることができる画像の重要度はどんどん高まっています。参考に提供される商品の画像は最初は多くのECサイトでは1枚で十分でした。これが最近ではそうしたニーズに合わせて多くのASPカートでも複数枚の商品画像をアップロードできる仕様になっています。
実際にコンバージョン率(CVR)を下げないためには平均で4枚の商品画像が必要としている研究データもあります。その結果、「ECサイトではアングルを変えて平均で6枚の画像データをあげるのが一つの商品ページでは標準」と考えるWEBマーケティングコンサルタントも少なくありません。
画像の重要性については以下の記事でも解説しています。
【参考】ECサイトの画像加工はポイントを押さえて売上げアップ
Googleは検索エンジンでAIを使った画像検索を強化しています。そうなるとECサイトにとって商品の画像について、その重要性は高まるばかりです。どのような画像を商品ページに掲載できるかがコンバージョンに影響する可能性もあります。
そうなると、商品の写真はある程度のクオリティは担保したいと多くの運営担当者は考えるはずです。
また、最近では操作方法や組み立てが必要な商品では、解説書だけではなく、動画を用いるといった手法も増えています。その結果、静止画、動画に関わらず撮影に関わる機会はEC担当者にとって少なくない状況になっています。
気になる「機材」について、高額のものは不要
撮影はプロフェッショナルも多数存在する領域です。つまり専門知識や技術が存在し、それを駆使することでビジネスをする人材が存在するジャンルの業務と言えます。
しかし、駆け出しのECサイトではなかなかちょっとした商品の撮影に対してカメラマンに依頼するのは予算的にもハードルが高いことも少なくありません。そうなるとどうしても自分自身で商品の撮影をする以外に選択肢は無くなってきます。
そこで自社内で自ら撮影をやってみようと考えたとします。
普段は一眼レフには触ったことはなく、スマホのカメラでちょっと撮影する程度の人であれば、「機材は必要なのか」という疑問が現れると思います。結論からいうと「機材はある程度は必要」です。しかし、そこまで高価なものはECサイトの商品撮影という目的であれば必ずしも必要ではありません。
カメラの機材は、もし、プロのカメラマンの機材と同じものを揃えるとかなり高額になります。また、プロのカメラマンはある特定の場面でしか使わないような機材にも投資しています。そうしたものはあれば確かに便利です。ですが、そのため、それと同じものを買い求める必要はありません。
ただし、プロの利用している機材を使えば、正しく扱えれば効率よくクオリティの高い商品の撮影ができます。ですので、メリットは必ずあります。しかし、機材の導入コストを考えるともはやカメラマンに依頼した方が安く済みます。
しかし、ECサイトの商品ページの写真であれば、特定のシチュエーションを用意して商品を撮影します。ですので決まった機材を用意して、その撮影場所に合わせたセッティングをするだけでそれなりのクオリティのものが撮影できるはずです。
様々な撮影に対応する専業のカメラマンとは違うので、カメラ本体のランクを2〜3落としても対応はできます。もちろんプロのフォトグラファーに言わせれば穴だらけかもしれませんが、十分に閲覧するユーザーにアプローチするものはできると考えられます。
最近のデジタル一眼レフはそこまで高額ではなくても十分に高いクオリティを出すポテンシャルもあるので要は使い方次第です。
また、実際のところ、iPhoneを始めとするスマートフォンについているカメラも相当クオリティが高いです。レンズも含めクオリティは上がっています。そのため、ECサイト用に安価なデジタルカメラを購入するのであれば、スマホのカメラで十分なので、そうした安い機材を導入する意味はないということも覚えておきましょう。
最低限、デジタル一眼レフで撮影距離に合わせたレンズは用意します。カメラは被写体に寄って撮影すると画像の端の部分が歪みます。スマホのカメラでも歪みが起こりやすいため、一眼レフで、大抵は標準でついている35-85mmズームレンズを使うことで対応します。
また、マクロレンズは焦点が短く、被写体に近づいて撮影が可能です。これは被写体が小さい時には便利です。逆に、もし大きな商品、例えば家などをECで取り扱おうと考えるのであれば広角レンズがあるといいです。しかし、通常の物販を考えているECでは不要です。これらのレンズ高額になりますので、その辺りはしっかりと費用対効果を考慮してください。
まずカメラスタンドです。これは必ず用意します。カーボン製の軽いものが高価になっていく価格のシステムです。移動しないので重いもので構いません。安定感だけを考えてください。
遠隔でシャッターを切るためのレリーズもできる限り用意してください。直接本体にあるボタンを押さなくなることでシャッターを切った時にカメラが動くことがなくなります。スタンドもレリーズもカメラを設定した後、撮影中にカメラを動かないようにするためのものです。こうした機材を使うことで商品がブレなく撮影できます。
また、照明を用意します。照明の色は商品の色にも影響するので、サイトのイメージと合わせながら選んでください。あまり黄色が強いと全体的に黄色くなります。基本的には白色のものを選びましょう。照明の色は温度で表現されますが、単位はk(ケルビン)で表されます。5500kで大体白色です。この値が上がると青みを帯びていき、下がると赤みを帯びていきます。白色を選んでセロファンでコントロールするということも可能です。
光量はルーメンやルクスで表現されますが、もし「演色性」と呼ばれる自然光下での発色を示すRaという単位があれば100に近いものを選んでください。とはいえそれほど高価なものではなくても、撮影しながら傾向を掴んでカメラのホワイトバランスなどで調整するのでも構いません。
もし明るさの調整ができないタイプの照明であれば透過性のある紙などを前において光量をコントロールすることもできます。ただし、発熱量の多いものも少なくないので火事の原因になる可能性もあります。そう考えるとできる限り使い回しのしやすいものの方が本格的なものよりもいいでしょう。
また、フォトブースを用意します。商品サイズに合わせたものを用意してください。必ずしも購入ではなく自作でも構いません。アパレル系ですと、それなりに大きくなることを覚悟する必要があるので、購入するというよりは場所を用意することになってきます。模造紙を壁にはり、左右と背後、そして可能なら上部も白く囲んでください。
レフ板も購入してもいいですが、アルミホイルや画用紙などで自作しても構いません。実際にプロのカメラマンでも自作のレフ板を持ち歩いている人は少なくありません。光量計はあれば便利ですが、一度設定が決まればロケ場所は同じなので必ず必要でもありません。ただし、被写体の色や質感によってはセッティングを変えなければいけませんので、あれば便利なのは確かです。
参考までに必要な機材を記載します。
- デジタル一眼レフカメラ
- レンズ(標準ズーム、可能ならマクロレンズ)
- カメラスタンド
- レリース
- 照明(5500Kのもの)
- フォトブース、レフ板
知識はなくてもこれをやるだけでワンランク上の写真が撮れる
それでは実際に商品の撮影をするときのポイントを解説していきます。
画素数をコントロールするISO
まず、カメラの設定についてです。デジタルカメラではISOの設定ができます。これはデジタル以前のフィルムカメラ時代にフィルム感度と呼ばれていたものです。フィルムにはそれぞれISOがありました。このISOの数値が高いフィルムに変えることで、暗い場所での撮影も対応できるようになっていました。数値が大きくなることで画素数が荒くなる傾向にあり、暗い場面での撮影により対応しやすくなります。
ECサイトの商品撮影ではISOは基本的に100で設定します。状況に寄っては50~400程度までを使い分けますが、基本は「ISOは100」でいいと覚えておきましょう。どうしても画面全体が暗くなる場合はこの数値をあげます。また、ホワイトバランスはフラッシュのモードがあればそれを選択します。一眼レフのフルオートでのモードでもこの2点はオートで設定されないケースも少なくありませんので事前に確認してください。
アングルのポイントとして画角ギリギリには商品を入れず、真ん中にしっかり商品を納めて、十分に余白をつけてください。余白はPCに取り込んだあとでトリミングします。そうすることで商品の部分が歪むことを避けることができます
あとは基本的にオートモードで撮影を試みます。カーテンをして光の量は常に一定になるように部屋の光量をコントロールしてください。室内照明の色によってくすんだりもするので、暗幕で外部の光を遮断して暗くし、照明だけで撮影した方がコントロールしやすくなります。
照明は十分に当ててください。照明の当て方を工夫し、発色を見ます。あまり照明の角度をつけると影が強く出るので要注意です。また白く色抜けを起こすこともあるので注意してください。反射しやすいものも注意が必要です。そうした場合は直接光を商品に当てず、天井部分を明るくするなどで対応します。照明が決まったら次のステップへ写ります。
ピントの範囲を決める「絞り」はF値でコントロール
その次は絞りを調整します。ピントを合わせて撮影しても、ピントのあっている場所から離れていくと、そのままではおそらく被写体がぼやけていきます。絞りはFで示されますが、これを大きくしていくとピントのあっている範囲が広がっていきます。F値は下がるとブレが大きくなります。そのため、スタンド類は必須です。例えば商品ページの1枚目に使うような商品の全景を写すものについては、しっかり撮影後の画像を拡大して、目で見て状態を確認してしてみましょう。
もちろんエンブレムや細かい細工などを商品に寄って撮影した場合は絞りの調整が必要ないこともありますので、撮影した後に写真を確認してください。必ず例外がありますが、成果物をすぐに確認することで、室内の商品撮影はその場ですぐにやり直しができます。
画一的な商品の写真を撮影していくにあたっては基本的には他の数値は触らなくてもいいです。マニュアルのモードではかなりいろんなことができますが、あまりやりすぎるとバランスがわからなくなってきます。
もちろん本格的にカメラにトライしたいというのであれば別です。例えばシャッタースピードは動く被写体を撮影する時にスピードをあげることで被写体ブレずにしっかり撮影できるようになるといったものです。このあたりが気になるという場合はまずカメラのマニュアルを読み、研究してみてください。
いざという時はプロへ依頼も
普段の商品撮影に関しては、基本的に上記のステップを意識しておけば大抵の場合は十分ではないかと思います。しかし、時には外せない時もあります。例えばキャンペーンなどをトップページでしっかり演出したい時などです。
特に体の一部であっても人物が画像に入ると途端に難易度が高くなっていきます。そういった時はカメラマンに依頼することも選択肢としてもっておきましょう。また、商品ページ用のものではなく、ここぞという場面でモデルを使い、ブランドをしっかりと演出するような写真撮影であればプロへ依頼せざるをえません。ECでは多くの場合、いくつもイメージショット的なものは必要ありませんが、写真によるインパクトは高いです。
そのため、余裕が出てきたら最初にプロの力を入れるべきところはサイトデザインの次は撮影です。
また、ブランディングも意識してサイト構築したり運営サポートをするような制作会社や運営会社では、カメラマンのスタッフを抱えていたり、コネクションを持っている場合もあります。それだけでなく、最近では動画によるマーケティングも盛んです。動画は静止画と似たような部分もありますが、より作業が複雑で、撮影後の編集なども必要になるためその分工数が多くなります。
そうなるとなかなか片手間ではできなくなってきます。そうした場合は専門家に依頼することが最も現実的になってきます。
また、そのままのデータをECサイトにアップするとデータ量が大きいのでトリミングなどとともに適切なファイルサイズへの変換も必要です。下の記事ではそうしたことについて解説していますので、撮影後のプロセスとして参考にしてください。