ECサイトは利益率が重要〜売上とともに注意する指標をあげて財務を改善する

2020.06.12

ECサイトの目標や成功の指標は売上ベースで考えるというのが一般的です。

もちろん売上の確認は重要です。しかし、それだけでなくより具体的な発展を目指すのであれば、売上の金額だけでなく利益率についても十分に考えを深めていく必要があります。

ここではECサイトの運営において利益率を考えるべき理由や重要性に加えて、利益率をあげるための取組み方法や実践についてまとめ、解説します。

売上アップが正しく利益上昇につながっているか

ECサイトの一つの指標として売上の金額ベースで話が展開することが多いと思います。

ECサイトの売上は
『集客数』×『客単価』×『CV率』

この3つの要素で決定されます。集客を伸ばし、客単価を上げ、コンバージョンにもっていく可能性をあげる〜つまり、この3つの要素をそれぞれ上昇させることが販売数をあげ、売上を上昇させるカギを握っているというわけです。

そのサイトがどれだけ売り上げるかという金額ベースでの数字はサイトの評価に対して重要なことです。実際に結果として、そのショップの成果を表すものです。売上に加えて上記の「集客」「客単価」「CV率」の推移を追いかけていくことも運営の担当者にとって重要な業務になってきます。

しかし、多くの企業がEC事業に参入していきている今、売上の向上“だけ”を指標にもっていては、見失うことも多くあります。売り上げはあっても結果として利益を出していなければ意味がありません。

十分に利益として余剰を生んでいなければ、継続した運営によって業績をあげていくことに繋がらないからです。つまり利益があるかどうかということも関連して重要です。もちろん売り上げがあってこその利益ですが、その割合をしっかり把握して計画を立てることが重要です。

利益率が低いと売上での損益分岐点が高くなり、売り上げじゃ上がっているけれど、利益はないという状態を長く続けることになります。

売り上げ以外にも考えておかなければいけない利益率ですが気にしなければいけないのはまず「一体、利益率は現状どれくらいなのか?」ということです。

そのうえで、その利益率を高く伸ばすことが可能なのかということです。複数人のチームでECサイトを立ち上げるのであれば、こうしたことにすぐ気が付けます。しかし、個人や先行して実施しているごく少人数のプロジェクトでは、利益率を見落とすことが少なくありません。また、売上を構成する3つの要素にも関連しない数字でもあります。

ECサイトの耐用年数は3〜5年といわれています。ECサイトの構築費用は実際に減価償却としても5年で設定されています。もし利益率が悪ければ、その後、なかなか改修のための予算を捻出出来なくなる可能性もあります。また、日々の運営で、集客へのもう一押しのアクションができず、停滞する原因にもなります。

売上を伸ばすことと同時に利益率を把握し、そのパーセンテージを高めていくよう推移させることも日々の運営業務には必要なことです。

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原価と経費を把握しよう

売上から原価と経費をマイナスすると利益を計算できます。売上に対してこの金額をマイナスしたものが利益です。そして売り上げに対して利益の割合が利益率です。初期であれば、構築費用や設備投資を算入すると1年くらいではまだまだマイナスかもしれません。そのため、利益率は初期に見るよりも継続して運営していく中で見てみると発見できるものがあるでしょう。

原価は確認しやすい

利益率を考えるには「原価」と「経費」を考える必要があります。そこでまず、考えるべきは原価です。

製造コストや仕入れ値などのそもそものコストがあるので、多くの場合は「売上=利益」ではないことは、みなさんも理解していることかと思います。また、こうしたコストについてはわかりやすく把握できます。

カートASPのなかには管理者だけが見える原価を商品ごとに設定することで粗利を表示できる機能を搭載しているASPも少なくありません。

原価を下げることは簡単ではありあせん。また、原価を抑えるということはすべてのビジネスについて重要なことであり、ネットでのビジネスに限ったことではありません。

また、在庫の抱えすぎなどは利益率とは別の話ですが、資金繰りを悪くするので仕入れの原価を下げるとしても注意してください。

経費になるものをしっかりと探索しよう

経費は、単純に担当者レベルだと気づいていないものがあるケースがあります。また、他の部署との作業の掛け持ちなどで人件費などについては計算しづらいものもあります。そうした場合は作業時間をコストとして算出することをおすすめします。冷静に分析し、不要なものを切る、見直す、また、サービスを変更するといったことで金額をおさえることで利益率は向上します。

業務のルーティンを冷静に見直してみるといったことも必要になることがあります。当たり前だと思っていたことでも、客観的にみると改善しコストを削減できる要因になっていることがあるからです。

まず経費として考えられることを以下にあげていきます。

①システム費用
ECサイトの基本的なコストです。ASP利用料や、サーバー使用料、ドメイン使用料などがこれにあたります。実際に発生している費用としては、どういった方法でECサイトを構築しているのかといったことにも関係します。

このシステム費用は数千円で済んでいるケースから数十万まで選択したプラットフォームや構築費用によっても様々です。ただし、最低限として必要な金額であることも少なくありません。そのため、一概に削減対象ではありません。もし不要なオプションなどに加入しているのであればそれについては見直しの対象となります。

無料ASPは売上手数料が発生します。売上増大に対して伸びてくる費用になるため、どの辺りで他のASPのサービスと比較した場合の損益分岐にあたるのかは事前に確認しておくことが必須です。

Amazonや楽天などモールなどの出店費用についても同様に考えてください。ただし、自社ECと違い、利益率がよくないからといって簡単に大きく改善することはできません。また撤退の判断も簡単にはできないことも認識しておきましょう。モールの場合は撤退するとそのまま売上がなくなるからです。

こうした分率式のシステム使用料については少々やっかいです。売り上げとともにトータルの金額が上昇するため、固定料金のサービスのほうがどこかのタイミングで有利という状況が発生します。

システムに関わる経費については、基本的な考え方としてはある程度バッファーを持ちながらもしっかりと、フィットしたECサイトづくりを行うことがコスト面では重要です。あまり大規模ですとコストだけが発生して、持て余すことのなります。

②在庫管理費用、出荷費用
通販ではほぼ確実に発生する費用です。

倉庫のテナント代や、配送料、梱包に関わる費用など割と幅広く、商材によっても変化します。具体的には梱包に関わるダンボール箱やテープなどの包材、送り状の印刷なども含まれます。この経費については何かと発生しているはずです。

また配送料は、「○○○円以上購入で無料」などのキャンペーンに使われることもオンラインショップではよくあります。しかし、実はそうした施策が以外に利益率を下げているケースもあります。配送料は意外に高額になることも多く、実際にその金額設定で問題はないのか、実施する前に冷静に計算してみる必要があります。

ある程度まとまった出荷数があるのであれば、送料の取り決めを運送会社と話し合うことで送料の料金を交渉できる場合もあります。ただし、最近では運送会社も人員不足になってきており、コストが圧縮できなくなっているため難しい場合も少なくありません。

それでも、いろいろ工夫することでコストを下げる方法が見つかる可能性もあります。そのため、多くの検討余地がある項目です。

【参考】ECサイトの送料設定はしっかり悩んで決定しよう

③決済手数料
銀行振込や代引きなどで、ユーザーに手数料を負担してもらう場合はあまり気にする必要はありません。それ以外の場合、たとえばクレジットカード決済などでは必ず手数料が発生します。コストとして3〜5%程度発生するので、決して小さくありません。

決済代行会社によって、この料率は変動するので、もし特定の決済に偏っているなどの傾向があれば、要検討な案件です。ただし、決済代行会社を変更するのは簡単ではないので慎重に行う必要があります。

とりあえずは現状の決済手数料がどういったパターンでどのように発生するか、どの決済パターンが多く利用されているのかなどを定期的に把握することも重要です。

【参考】ECサイトの決済手数料は決済代行会社の重要な選択基準

④販促費
サイト独自にポイントを設定し、購入時に利用出来るようにしている、あるいはクーポンなどの費用です。こうした施策は効果も大きく、ポイント付与のパーセンテージを期間中だけあげるなどのキャンペーンは効果絶大です。ただし、全部のコストをサイト側が持つので、その分、のちのちのコストとして時間差で利益を削る状況が発生します。

ポイント自体に直接の出費は見えませんが、収益率を悪くします。しっかりと把握しておく必要のある経費です。

⑤広告費・ウエブマーケティング費用
これも販促費といえますが、分けて考えた方がわかりやすいため、分けて解説します。

まずは広告費です。ECサイトでは、広告のターゲットを絞りやすいWEB広告がよく利用されます。WEB広告としては、現在ではSNS内での広告もありますし、検索連動広告などはかなり一般化しています。

また、広告のチャネルを絞らずに複数のウエブメディアを活用して出稿するケースもあるでしょう。もちろんウエブ以外での広告出稿を考えるケースもあるかもしれません。利用したことのあるユーザーに対して、商品と一緒にチラシを同封したりするチラシの印刷代や、会員登録ユーザーへのDM発送に関わる経費などもここに含まれます。

アフィリエイトの活用なども業界のなかでは購入顧客を獲得しやすい広告の戦略としてかなり一般的になってきました。ブロガーなどが製品の情報を拡散してくれる仕組みですが、料率によっては著しく利益率を下げる原因になることがあります。

また、Google検索からの流入を増やすSEO対策に費用を割いている場合もあるでしょう。最近ではYoutubeなどの動画共有サイトやInstagramやTwitterを利用したSNSを運用したマーケティングなど、チャネルが多角化しており、そのあたりにコストをかけるケースも見えてきます。こうしたコストは、実店舗ではあまり目に見える形で発生しない費用ですが、ECサイトの売上を押し上げるために必要な部分でもあり、成果が現れると効果は絶大です。

ウェブでのマーケティング手法はどんどん拡張しています。そのため、この項目も幅広くなっています。ただし、一概に支出につながっていなかったり、費用が見えないようなケースもあります。

一方で、売上に対し、この項目の費用がどの程度のパーセンテージになっているのかは費用対効果として確認しておくことが重要です。

費用対効果として十分に成果のあるものは削る必要はありませんが、もし代替えすることで安価にできるということであれば、もちろん削減対象になることもあります。

⑥ページ作成費用
商品の入れ替えが激しいサイトであれば、写真撮影と説明文をしっかりと作成していく必要があります。

社内で行うにしても写真撮影などはフォトブースやカメラ機材一式などが必要になってきます。そうした経費や運営に関わる人件費などの作業コストも考慮する必要があります。

経費を把握し、しっかりとコントロールすることはネットショップのデメリットを消していく行為でもあります。そのため、しっかりと徹底して経費として支出する意味を考えて吟味していくことが重要です。

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サイト自体の集客力のアップが利益率アップのカギ

サイト全体として絞れる経費を絞った場合にどこで差がつくのかと考えると、そのサイト自体の価値、ブランド力が大きな要素を握ることになります。

結局、ウエブマーケティングにコストを割いている場合、サイト自体の魅力が高いかどうか、つまり自然検索の流入を高められるかで、こうした費用対効果が格段に変わってくるはずです。

そのため、まずは「自然検索での流入がしっかりと増えるようブランディングをしていく」ことです。これには長期的な視点が必要ですが、広告以外での顧客を増やし、サイトを成長させていくことにつながります。

具体的には主にコンテンツマーケティングによる長期的な集客とファン化を目指すことになります。

ウエブ広告に出稿しつつ、その出稿量を少しづつ減らして、広告に関わる費用を下げながら、セッション数をあげることができることができるかどうかが利益率を上昇させる勝負の分かれ目です。

ウエブ広告に大量に費用をかければ、一時的な風速はあがり、売上は伸びるかもしれません。しかし、それを継続していくということは継続して費用がかかるということでもあり、利益率の向上を妨げることに他なりません。

それであれば、同じ費用をかけるにしてもブランディングを意識して、種を植えて、育てることで利益率のアップにつながるようにしたほうが、「賢い経費のかけ方」と言えます。

ブランディングには他にもメリットがあります。参考の記事も目を通して頂き、今一度ブランディングについて考えてみてください。

【参考】ECサイトでシェアをとるブランディング施策

利益率を上げる上で削れることと削れないこと

利益率を向上させる上で考えるべきことは2つです。

  • 無駄の排除
  • 効率化

この2つは当たり前のように言われることです。しかし、意外にできていないケースも少なくありません。ここで気をつけなければいけないのが

「無駄の排除」=「経費削減」ではないということです。

わかりやすい例としては経費として発生しているものの中には効率化を図るために必要があって発生している経費があります。

例えば、送り状のシール台紙などを考えてみてください。普通紙にプリントして送り状を作る場合、その後に切り貼りの作業が発生します。1日に1、2件であればそれほどの負荷ではありませんが、件数が増えると作業時間が膨大に膨らむことになります。

こうしたことは作業レベルで確認しなければ気づけないことが少なくありません。

また、効率化についてはルーティンに慣れてしまう人の中には変更を嫌う人がいますので、そうした意見については要注意です。そうした変更をとにかく拒否する人にはあまりイニシアティブを持たせないようにすることも効率化には重要です。

意外に簡単な効率化で利益率が上がる可能性があります。業務の中にそうしたヒントが隠されていることも少なくないので注意深く、探ってみてください。

業務改善で変わることも

業務の中でもECで利用しているプラットフォームが要因で効率的に動かない場合は、部分的にでも改修したほうがいいかもしれません。そうした部分で業務全体が滞っているのであれば改善対象です。

また業務内でもちょっとしたことでコストが変わってくることは少なくありません。

例えば梱包材についてです。発送に使う段ボールのサイズを見直すだけで、運送の費用をおさえることができるかもしれません。「そんなこと」と思う方も実は少なくありませんが、1サイズの違いで結構な金額差があります。最近は割安でサイズをオーダーメイドできる段ボール販売の事業者もありますので、一度しっかりと見直してみてください。

例えばAmazonなどは大きなサイズの箱で発送してきますが、その感覚を真似るのは危険です。

ECサイトでは、システムの導入などで一気に効率化されて作業時間が圧縮されることも少なくありません。また、可能な変更については専門家ほど、ノウハウの引き出しがあります。

そうした部分で頼れる専門家と協力していくことも利益率の改善につながるかもしれません。専門家ならではの支援の策などがあるかもしれません。

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