ECサイトで「サービス」も販売される時代に取るべきECのサービス姿勢
2020.10.05
ECサイトは24時間年中無休でユーザーが閲覧できます。そのため、ユーザーだけでなく、事業者側は自動販売機のように、置いてあるだけでサービスについて考慮しないといった状況を生みがちです。しかし、実際には、そのまま置いておくだけでは、集客はできず、コンバージョンに影響し、サービスに配慮がなければリピート率を低下させ、場合によってはブランディングとしてもマイナスな結果になることもあります。ここではECサイトのサービスのあり方を掘り下げて解説します。
CONTENS
サービスはECではコンバージョンとリピート影響する
一般的なECのイメージでは、主にBtoCで、販売者が一般消費者に向けたビジネスを連想することが多いと思います。その商品は簡単に購入できる「物品」が取り扱われると想像すると思います。
しかし、実際にはECで販売されるものは、商品となるものであればどんなものでも取引されているのが現状です。「自社の商品はネットショプ向きじゃないからな」と考えている企業は少なくないと思いますが、実際に検索をかけてみると同じような商品を販売している会社があるはずです。
扱う商品の値段も関係ありません。実際に土地付き住宅や、マンションも売られていることがあります。もちろん法的な手続きが必要なため、全てがその場で決済されるわけではありません。しかし、実際にこのような現状は知っておく方が良いでしょう。
さらにビジネスのスタイルとしても、BtoBもあれば、Yahoo!オークションやメルカリのようなフリーマーケットなどのCtoCも存在しています。販売者や顧客も多様化しており、ほぼ現実の企業活動と大差は無くなってきています。
その一方で、商品は「もの」だけではありません。「サービス」そのものが商品になっていますが、そうしたサービス自体もECサイトでは取り扱われています。また、そのサービスに付加されるサービスも商品になりつつあり、EC自体が新たな商品を生んでいる状況さえあります。
サービスとして商品を扱うECサイトは「サービスEC」と呼ばれており、その動向も注目されています。
そうした状況の中で、ECサイトはただ商品を掲示しているだけの存在では競争に勝てなくなりつつあります。EC自体がどういったサービスの場として成立するのかをそれぞれのECサイトは考えなければいけません。それは自社サイトであってもモール型ECへの出店であっても同様です。
ECにおける「サービスの悪さ」はまずEC特有のものとしてはユーザビリティとして現れます。動線などの配慮が足りなかったり、商品を探し出しにくい、商品情報が足りないといったサイトは「サービスの悪いECサイト」といえます。こうした点はコンバージョンに確実に影響してきます。
【参考】ECサイトのコンバージョン率アップ対策〜チェックポイントと6つの施策
また、受注後の流れや対応が悪いという場合もやはりサービスのレベルが低いECサイトということになります。サービスの悪さはリピート率を下げてしまうことになります。例え商品が魅力的であったとしても、サービスの質が低いことでチャンスを逃すことになるのは、実店舗と変わりません。
逆にいえば、ユーザーの買い物をサポートできるシステムを導入し、機能だけでなく体制を充実させていくことがECサイトのサービスともいえます。
ユーザビリティという点では以下の記事も参考にしてください。どのように商品の情報を含めて提供し、新たな経験をECサイトを通してユーザーに用意できるかを考えなければいけないのです。
【参考】ECサイトのデザインは何を参考にするか~「ユーザビリティ」を意識しよう
サービスECとは
一応、サービスECについて触れておきましょう。ECに関わりのない人にとってはあまり聞き慣れない言葉かと思いますが、実際のところ、サービスECの存在は珍しくありません。旅行代理店のサイトや航空会社のサイトもサービスECです。これを使ったことのある人は少なくないでしょう。主にサービス予約を受けることができるサイトです。そのまま、決済も可能なものも少なくありません。
他にも医院の予約や、薬局へ処方箋を事前にWEB経由で提出して待ち時間を簡略化するサービス、空いている駐車場を活用できるサービスなど、マッチングに有利な媒体であるインターネット自体がサービスを加速させている部分もあります。
サービスECの伸び率は高く、また、業界によってはEC化率は高くなっています。旅行代理店では2018年の段階で3割以上がECによるものです。飲食業などはEC化自体がされていない状態でしたが、uber Eatsなどはコロナの影響で利用数を大きく伸ばし、売上もそれに合わせて伸びています。
一方で飲食店の予約については問題も抱えています。予約が手軽にできることで、キャンセルも容易になっており、レストランや居酒屋側が仕入れのリスクを抱えています。こうしたことはサービスEC全体でも発生する可能性があり、今後の課題といえます。
とはいえ、そうした部分が足かせになっている部分もあります。そう考えるとサービス業は全体的にECへの伸びしろがまだまだある状態といえます。
食べログなどのサイトが予約をサービスとして取り入れていますが、バランスとして業務の実体を無視したサービスが展開されているともいえます。こうしたことはわかりやすい例ですが、サービスは売上を加速させることも、ブレーキをかけることがあるのはECでも同様です。
サービスECは扱う商品が特徴的でもあるので、その機能などは豊富で様々です。そのため、ややこしいですが、ECサイトのサービス自体を考える上で、実際に利用してみて、良い例でも悪い例であってもサンプルにするには良い素材ともいえます。
ECサイト構築や運営時にサービスはどこを考慮すべきか
ECサイトの機能としてのサービスを考える場合、構築環境に大きく左右されてしまいます。そこでノウハウとして「機能としてこういうものが不可欠」などと解説したとして、構築方法によっては導入できない場合も多分にあります。
手軽さからECサイトの構築時にASPを選択する場合も少なくありません。しかし、ECサイト自体のサービスレベルを管理するという点ではその選択自体は慎重に行う必要があります。ASPの場合は、機能やツールなどをベンダー側が対応しない限り導入したくてもできません。そうしたサイトの付加機能を考える前に、受注から、商品が届くまでのプロセスの中でどういったことが可能かを考えることから始めたいと思います。
もちろん、月額料金が上がればサービス制限が解放されたりすることもありますし、後々、世間のニーズに合わせて会員に向けて新サービスとして機能を搭載するASPもあります。そういった点ではプラン変更なども逃げ道になります。ですので運営のしっかりしたASPを選ぶという姿勢は充実した運営にとっても重要ですので考慮しながら選択してください。
手数料や月額の費用も重要ですが、そうした機能面は考えておくに越したことはありません。クラウドECやパッケージなどはそうした面ではやはりASPよりも有利といえます。それでも、もちろんそうしたことは予算や規模にもよるため、多角的に選んでください。
当サイトでもサービス視点での記述は他のトピックでも記述してきましたが、それはユーザーが見えない分、常に意識しなければならないからでもあります。
構築については以下の記事も合わせて確認してください。
メールでのコミュニケーション
メールはECサイトの受注時や発送を知らせたりとサービスとして当たり前にあります。しかし、時々、買い物をしていて、明らかに雛形のまま利用され文面が購入した商品の内容と合わず考慮されていないものと出会うことがあります。
しかも、こうしたメールはECがかなり一般的になってきた最近、少し増えてきた印象さえあります。
受注後のメールはそれぞれのECサイトによってその後に送信されるメールの数は考え方によって変わってきます。受注確認メールの後に、決済完了メール、発送メールと3本、あるいは決済完了メールを抜いて、発送メールが決済確認を兼ねているケースもあります。
それぞれのメールの文言について、今一度、冷静に読み返して見てください。なんでもそうですが、作った本人は気がつかないミスなどがあったりもするので、できれば校正者を別に立てた方がいいでしょう。それができない場合は、少し時間を置いて読み返してみてください。可能であれば、2日程度置いてみると、書いている時の感覚から離れて文章と向き合えるはずです。
どんな人でもミスをしないつもりで業務に当たっていますが、誤字脱字や入力ミスは手動であれば起こりやすく、発見もしにくいものです。可能であれば定期的に見直すことで、よくそれぞれのサイトにあっているメールの雛形が出来上がります。
これはすごく簡単なことではありますが、できることを積み重ねることが重要です。
発送時の梱包にもサービスレベルが現れる
箱を開ける時に、商品が壊れかねないような梱包をしている事業者は少なくありません。これは大手のECサイトであっても、むしろ発送数と商品数の多い大手であればこそ起こりやすいトラブルでもあります。
事故的なもので商品が痛んでしまった場合は、しっかりと説明すれば、多くの顧客は理解してくれます。また、その説明がしっかりしていれば、逆に信頼感を得ることも起こります。しかし、消極的な説明に終始して有耶無耶にしようとしたり、自社都合を振りかざして顧客に押し付けるような姿勢を見せれば、その場は治ったとしても、次はありません。
こうしたトラブルはユーザーエクスペリエンスを配慮していないからこそ起こります。過剰に包装する必要はありませんが、しっかりと配慮した発送や梱包の体系を整えることも重要なサービスです。また、お客さんと商品を通して間接的に触れ合う場であることも意識してください。ホスピタリティを発揮しやすい場でもあります。
例えばギフト需要は多くのECサイトで無視できません。そうした場合にラッピングやのし付きのサービスを体系化できていない場合は、注文する側も躊躇しますし、伸ばせるチャンスを潰している可能性もあります。
こうしたことはサービスを商品としているECサイトでも同様です。まれに旅行系のサイトでは具体的な指示が直前までないようなこともあります。そういったサイトでは「次回はもう利用しないでおこう」と考えることも少なくありません。
ECサイト運営側は普段、当たり前に商品を扱っていますが、顧客はそうとは限りません。そうしたユーザーにしっかりと配慮されているか、今一度、サイトだけでなく配送などの体制も含めて、しっかりと自社内の状況を確認しましょう。
会員へ向けたポイント
ECサイトのサービスとして、一度利用してくれたユーザーへのインセンティブとして行われる代表的なサービスにポイント付与があります。一度利用してくれたユーザーは、初めて訪れたユーザーよりもコンバージョンする可能性は高くなります。会員として登録してくれたユーザーは、さらにリピートしてくれる可能性は高くなります。ネットショップで行われる常套手段的な施策です。
ポイントによる還元は期限を設けることでユーザーに「なくなるともったいない」という心理的効果を与えます。購入ごとにポイントは付与されるので、そのサイクルが継続する仕組みです。ユーザーは割安感を得て、事業者側はリピート効果を期待できるので、設定さえ間違えなければWin-Winです。還元率は慎重に計算する必要があります。高くしすぎると確実に利益を削ります。
複雑になっていく機能
ECサイトはサイト自体に人員を配置できません。そのため、接客やサービスといった精神は置き去りにされがちでした。しかし、こうした状況はAIの登場で、積極的に対応しようという動きもあります。
例えば以下のような機能が一般的になりつつあります。
- 行動分析に基づいたレコメンドのカスタマイズ機能
- ボットによるチャット接客
- サイト自体のコンシェルジュ機能
などです。わかりやすい例としてAIを提示しましたが、単純にカート内の合計金額を表示したり、送料無料となる購入金額まで幾ら足りないかを知らせるといったものや買い忘れがないかを知らせるような機能でも、設置されていると助かる場合もあります。もちろん、これらはサイトの事業者側にとってプラスになると考えられる昨日でもありますが、ユーザーにとってもプラスになることが効果があるということでもあります。
そうした点ではECは少しビジネスのノウハウが実店舗でのものと違う部分もあります。もし、さらに売り上げをあげるサービスを盛り込みたいという場合は、弊社のような技術とマーケティングのノウハウを持つ運営会社などでECサイトの運営支援を受けることでより良いECサイトとなるでしょう。
いずれにしても、ECサイトのサービスは、ユーザーとECサイト事業者がWin-Winになるものが最終的には効果的なサービス手法といえます。それ俺のECサイトにとって最適な方法を様々な力を借りながら発見し構築していくことが重要です。