ECサイトの送料設定はしっかり悩んで決定しよう
2020.11.17

ECでの送料設定を安易に決定して営業を初めてしまうと後から変更するのは大変です。もちろんシステム的に変更自体は簡単にできるのですが、ユーザーに与える印象は運営側が考える以上に大きいものです。
都合が悪いからと安易に送料の徴収額をあげていくと如実にコンバージョンを低下させます。逆に闇雲に無料にしたり、安易に料金設定を下げてしまうと今度は収益性を下げることにつながります。
ここでは送料設定の考え方の基本や段取りについて解説します。
CONTENS
商品の価格上昇と比例しない送料
送料は物販を行うECサイトにとって、切っても切れない関係があります。
情報商材を扱うのでなければ必ず発生するのが送料です。この送料は少しクセがある存在です。必ず発生するにもかかわらず、お客様となったユーザーも含めて「できれば払いたくない」と考えます。
そこでユーザーのことを考えるとどうやって工夫して下げるか、あるいは企業側が負担するかということが手っ取り早くユーザーの満足度に影響してくることになります。だからといって闇雲に無料にしたり、送料の設定を適当にしていると儲からないECサイトになってしまうリスクもあるため、大変重要な設定項目といえます。
【参考】ECサイトの運営にのし掛かる「送料無料」問題と解決策
一方で、送料自体の仕組みは複雑です。まず、事業者側がそのまま支払う送料があります。そして、顧客が支払うECサイト側が決定した送料があり、どの程度、ユーザーが負担するのかといったことについては、いろんな要素を握ることになります。
まずは、送料を決定する前に、どんな配送サービスがあり、どういった仕組みになっているのかを知っておくことが送料の価格決定には重要です。
事業者が支払う送料は大きさ・重さとスピード、距離で変わる
送料の価格を決定するのは
- 商品の大きさや重さ
- 運ぶ距離
- スピード
- 温度管理や補償などのオプションがあるか
などです。
厄介な問題はこれらがECサイトでの商品の販売価格とは関係がないという点です。また、その商品の利益率をよくする要素にはならず、コストにしかならないという点につきます。いくら価格が安くても、嵩張る商品は送料が高くなるというわけです。実際に大きな商品は保管にも場所をとり、配送時の荷台のスペースも占拠するので仕方がありません。ECサイト運営時の在庫管理にとっても同様のことがいえます。
送料の話に戻りましょう。一定のサイズ内であれば全国一律で同じ料金で配送してくれるサービスは日本郵便やヤマト運輸などが展開しています。もし、そうしたサービスが利用できるサイズ感の商品であれば、送料の計算はより簡単になり価格としても作業的にもメリットがあります。しかし、残念ながら全てのケースで当てはまることではありません。
送料の料金設定をする前にどんな配送のサービスがあるのか、ここで見ておきましょう。なおBtoBなどでの送料についてはここでは触れません。トラック一台やコンテナなどでの配送は別途配送業者と相談して確定すべきです。
定型サイズのものを全国一律の料金で利用できるサービスは各社から登場しています。
代表的なものは以下のようなものがあります。
- レターパック(日本郵便)
- ネコポス(ヤマト運輸)
追跡が可能で、ある程度配送に対して保証があるのはこの2つです。
日本郵便の気楽なサービス
レターパックはサイズはA4サイズまでで、厚さに対して制限のないプラスと、3cm以内のレターパックライトがあります。レターパックはどちらも4kgまでの重さに対応し、プラスの場合は520円で、対面での配送に対応します。ライトは370円という設定です。どちらも追跡が可能です。
最近はオークション向けにまた、「クリックポスト」というサービスが開始されています。こちらは198円と安価ですが、荷物に対する保証はありません。ただ、追跡は可能です。サイズの規格がレターパックライトと同じという点も特徴です。また、支払いはインターネットで決済します。
対抗するヤマトのネコポス
ネコポスはヤマト運輸で実施しているサービスで、A4が収まるサイズで厚さは2.5cm以内のものに適用できます。金額は税込み385円で追跡も可能です。レターパックと違い、配送が速達レベルという点もポイントです。
全国一律のこうしたサービスを利用できる場合はこうしたサービスをうまく使うことで配送コストを下げられます。
定型サイズに収まらない場合は宅配便として送ることになります。箱のサイズや重さなどの基準はそれぞれの事業者で少しづつ違います。また、冷凍や冷蔵の場合はそうした対応が可能な配送業者を選択しなければいけません。
どの商品がどれくらいの送料なのかしっかり把握して
実際に梱包して発送する場合は、まず箱サイズの規格を揃えた方が様々な面で効率的です。
たまに有り合わせの段ボールで発送してくるECサイトもありますが、あまりオススメしません。ユーザーによって、そうした状態での受け取りを心地よく思わないケースもあるからです。ただし、発想を逆手にとって、リユーズ推進を考え、事前に「使用済み段ボールを利用すること」をユーザーへ提示しておくといったことも考えられます。
それでも、その箱の状態は一度使われていることになります。そのため、どの程度耐久力が落ちているのかはわかりません。また、実際に再利用しなくとも、しっかりとリサイクルに出すことで環境負荷は幾分でも下げることができます。
箱にロゴ印刷までする必要は必ずしもありません。段ボール箱も意外にコストになるからです。また、段ボールの規格は様々で、オーダーメイドもできます。ただし小ロットでは価格も高くつきますが、大量に作れば比較的安価で製造できます。ただし、保管のコストなども考えなければいけません。そう考えるとオリジナルの印刷がついた箱はなかなかハードルが高い方法です。
パッケージでオリジナリティを出すのであれば、梱包用のテープにロゴやURLをを印刷して利用するという方法もあります。それであれば箱ほどの在庫場所はとらず、ブランドのインパクトを残すことができます。
発送するサイズがわかれば、それぞれの配送料金パターンをシミュレーションしやすくなります。それぞれ、実際に利用する運送会社の料金体系に応じて段ボールを発注してください。
そのためにもしっかり個々の商品の発送サイズと重さを測って確認しておく必要があります。一つのパッケージにどれだけ入るのかといったことも想定してみましょう。それによっては配送料を無料にする設定なども算出できます。
規格サイズが決まった安価の配送サービスと、一般の配送ではコストが大幅に違います。しっかり確認してコストを減らす作業は重要です。
配送料を有料にするなら「わかりやすく提示」
配送料について配送業者に支払う金額は、細かく制御はできません。ある程度まとまった出荷数があるのであれば、金額を交渉することもできるかもしれませんが、多くの場合、こちらで自由に決めることはできません。
逆に購入客に対して送料をどう扱うかはECサイト運営側で決定しなければいけない項目です。
ユーザーが支払う配送価格の選択肢は以下の通りです。
- 送料は金額に関わらず無料
- 送料は一定金額以上購入した場合、無料
- 送料は一定の料金が発生
- 送料は一部変動性
- 送料は全額購入者負担
大体、この5パターンのどれかに当てはまるはずです。
どうあれ、販売側として全て無料にして送料が発生しないパターンはなかなか強気です。インパクトはあるので、もし全ての注文の配送料を全て利益で埋めることができるのであれば積極的にとりたい戦略です。
また、客単価をあげるために一定金額以上の購入に対して無料にするという方法も有効ですし、割と現実的といえます。送料無料については以下の記事で詳しく説明しています。
【参考】ECサイトの運営にのし掛かる「送料無料」問題を考える
ただし、安易に考えて実施するのは後々経営を圧迫します。しっかりと前段で述べたように、どのように送料が発生するか目算を立てて決定してください。
送料を一定料金について負担してもらうという方法もあります。例えば小さなサイズの商品であれば定型サイズに納めて全国一律の配送サービスを使います。こうすることでわかりやすい送料設定をユーザーに提示できます。それほど高額でもない送料で固定されていれば、配送料を利益が大きく侵食してくることを考える必要もあまりないため現実的です。
一部変動性にする場合は、商品サイズが極端に違う商品を扱っていたりする場合には個別に送料を設定したり、遠距離への配送コストを負担してもらう方法で対応します。問題点としては結果的に有料の条件の対象になった商品や、都道府県別で地域によっては遠方扱いになったユーザーのコンバージョンは低下する可能性があります。
そして最後は全額ユーザー負担による方法です。実際に送料を計算するシステムなどを導入しなければいけないので簡単なASPなどでECサイトを構築している場合は導入できないかもしれません。あるいは着払いにするといった方法もあります。
これは確実にコンバージョンに影響を与えますので、そのあたりをどう考えるかというところも課題です。ヤマト運輸や佐川急便はECで利用可能なAPIを提供しています。ネットショップに送料を自動で処理してくれる、あるいはそれに準ずる機能を組み込んで使えるかどうかを判断する必要があります。しかし、送料をコストとして考慮しなくて良いのはある意味魅力的です。
送料をある程度負担してもらえれば、そこで発生するはずの費用を他の方法に回すことも可能です。例えばそれは広告であったりコンテンツマーケティングに対する費用に使ってもいいでしょう。単純に無料は力がありますが、費用負担が増えていることは受注量とのバランスとしてどうなのかは常に冷静に考えておきたいところです。
無料の効果は大きいけれど要注意
オンラインショップの「送料無料」は、ユーザーだけでなく事業者にとっても高い引力を発揮します。コンバージョンに影響するということがわかっており、しかもそれがプラスの効果を発揮することがわかっているわけですから、その魅力は凄まじいものがあります。
しかし、よく考えずに一度初めてしまうと、利益が圧迫されることがわかっていてもやめられなくなってしまいます。これはまさにオンラインショップの送料無料中毒です。多くはユーザーに起こるものですが、事業者側にも時には発生します。
小物を扱うECサイトであれば、それほどコスト増にはなりませんが、家具などを扱えば、あっという間に送料が利益を吸い込んでいくことになりかねません。
ですので効果は大きいけれど、扱いは慎重にする必要があります。また、もし無料に対して一定のラインを引く場合は金額だけでなく、販売個数を基準にする方法もあります。ある程度単価の高い商品が揃っているのであれば、そうした方法で梱包をまとめることで、コストも抑え込めるかもしれません。
いずれにしても、「送料無料」にすること自体は割と簡単に掲示できます。ですので、切り札としてとっておいた方が、キャンペーンの幅も広げられたり、特別感を演出することに使えたりもします。
もしかしたら、送料も価格の一部として捉えてもらえるかどうかが、戦略の分かれ道かもしれません。ブランディングをして、しっかりと商品をプレゼンテーションする中で、送料に対して如何に理解してもらえるかが勝負のポイントです。