ECサイトの勘定科目を、税務と運営判断の両方に効く形で分ける
2020.09.07 2026.09.02 更新
売上は少しずつ伸びてきたのに、確定申告や決算の時期になると手が止まる。ECの支出は種類が多く、どの勘定科目に入れるのが正しいのか判断がつかない。そんな状態で毎年を越えている方は多いのではないでしょうか。
カートASPの月額、ドメイン、撮影、モールの手数料、送料、梱包の資材。実店舗のビジネスにはなかった費目が並びます。検索すれば答えは出てきますが、記事ごとに書いてあることが違います。
一般には「勘定科目は税務のために正しく分類するもの」と語られます。かいなはそう考えていません。勘定科目は、決算が終わった後に自分の売り場を読み返すための分け方です。税務上通るだけの分け方だと、翌年の判断材料が何も残りません。
CONTENS
ECの勘定科目でつまずくのは科目名ではなく、分ける粒度
科目名そのものに悩んでいるように見えて、実際に決まっていないのは粒度のほうです。まずそこを整理します。
検索して出てくる正解が、自分の売り場に当てはまらない理由
「ECサイトの構築費は広告宣伝費」と書かれた記事もあれば、「ソフトウェアとして資産に計上する」と書かれた記事もあります。どちらも間違いではありません。
分かれているのは科目名の話ではなく、そのサイトが何をしているかの話です。見せるだけのページと、受注や会員データを処理する仕組みでは性質が違います。
自分のECがどちらに近いのかを先に決めないと、いくら検索しても答えは定まりません。科目表は、他社の正解を写すものではないという前提から始めてください。
経費のほとんどが電子取引になった前提で組み直す
いまのECは、支払いの証憑がほぼ電子です。カートASPの請求書も、広告の明細も、ドメインの領収書も、管理画面からダウンロードする形になっています。
電子取引でやり取りしたデータは、電子のまま保存することが求められます(出典: 国税庁「電子帳簿保存法関係」)。
また、支払先がインボイスの登録事業者かどうかで処理が変わります(出典: 国税庁「インボイス制度特設サイト」)。
科目を決める前に、どこに何を保管するかを決めておくと、後の作業がまるごと軽くなります。
個人でも法人でも、分け方を決める順番は同じ
副業として個人で始めたECでも、法人でも、課税されるのは売上ではなく、売上から経費を引いた後の利益です。ここは規模に関係ありません。
違うのは、分け方をどこまで細かくするかだけです。開業初年度なら、まず大きく分けて、金額が動いた費目を翌年に割るという順番で構いません。
最初から完璧な科目表を作ろうとすると、記帳そのものが止まります。止まった年の数字は、後から見ても使えません。
ECで迷いやすい費目を、運営の実感に合わせてどう分けるか
ここからは、実際に相談で名前が挙がる費目を順に見ていきます。税務上の整理と、運営で見たい形を並べて考えます。
構築費用を費用にするか、ソフトウェアとして資産にするか
宣伝のためのサイトで、内容を短い周期で更新していくなら、支出した期の費用として扱う整理になります。この考え方は今も生きています。
一方、受注や在庫、会員データを処理する機能を持つ場合は、ソフトウェアとして資産に計上し、償却していきます。自社利用のソフトウェアの耐用年数は5年とされています(出典: 国税庁「No.5461 ソフトウエアの取得価額と耐用年数」)。
ASPカートの標準機能の範囲で作ったのか、独自の仕組みを作り込んだのか。ここが最初の分岐になります。
カートASP・サーバー・ドメインを通信費でまとめたときに見えなくなるもの
カートASPの月額やサーバー、ドメインの費用は、通信費として処理されることが多い費目です。支払手数料や賃借料に入れている会社もあります。
どの科目でも決算は通ります。ただ、通信費にまとめると、電話代と売り場の固定費が同じ箱に入ります。
かいなは自社ECを4サイト運営していますが、売り場ごとの固定費が並んで見えないと、どのサイトが重いのか判断できません。科目を分けるか補助科目で分けるかは、この必要から決めています。
送料と梱包資材を、運営している側はどこに置いているか
ECの損益で最後まで効いてくるのが送料です。荷造運賃として扱うのが一般的で、梱包の資材も同じ箱に入れることが多い費目です。
かいなは大型の猫家具のECも運営しています。重量物は運賃の改定がそのまま利益を削るので、送料は販管費のひとつという感覚ではありません。
だから送料は、売上に対する比率を毎月見られる場所に置いています。値上げの通知が届いた日に、どの商品から効いてくるかをその場で計算するためです。
撮影費とモール手数料を広告宣伝費に混ぜない理由
撮影費、モールの手数料、広告費。まとめて広告宣伝費に入れても税務上は問題ありませんが、運営の判断はできなくなります。
広告費は明日止められる費用、モール手数料は売上に連動する費用、撮影費は資産に近い費用です。性質がまるで違います。
かいなは名古屋に自社の撮影スタジオを持っているため、季節ごとに撮り続けても支出の形が変わりません。撮った写真は翌年も使えます。外注のスポット撮影と同じ箱に入れると、この違いが消えます。
勘定科目の決め方で、かいながすすめない3つ
ご相談の中では、やらないほうがいいと申し上げることもあります。判断の材料として3つ挙げます。
節税の額だけを基準に、費用と資産を選ぶ
「今期の利益を圧縮したいので、構築費は全額費用にしたい」というご相談は珍しくありません。判断の順番が逆になっています。
費用にするか資産にするかは、そのサイトが持つ機能と使う期間で決まります。希望から逆算して選べるものではありません。
さらに、立ち上げ期は資産に計上して償却していくほうが、金融機関に説明しやすい決算になる場合もあります。節税と資金調達は同じ方向を向くとは限りません。
科目を細かく作りすぎる
科目を増やせば分析できるようになると考えて、数十個に分ける方がいます。実際に起きるのは、入力のたびに迷って記帳が遅れることです。
年に一度しか見ない科目なら、分ける必要はありません。月次で見て何かを決める科目だけを独立させ、残りは補助科目やタグで足りるかを先に検討してください。
科目表は増やすより減らすほうが難しくなります。迷ったら少なく始めて、見たくなった時点で割るほうが続きます。
検索結果だけで決めて、税理士に一度も確認しない
この記事も含め、Webの記述は一般的な整理にとどまります。実際の処理は、契約の内容や金額、事業の規模によって変わります。
構築費の資産計上、少額の減価償却資産の扱い、インボイスの経過措置は、判断を誤ると後から遡って直すことになります。
取得価額によっては全額を費用にできる扱いもあり、線引きは金額でも動きます(出典: 国税庁「No.5403 少額の減価償却資産になるかどうかの判定の例示」)。
年に一度でよいので、自社の科目表を専門家に見てもらう時間を取ったほうが、結果として安く済みます。
分かれ目は、その数字で来月何を決めるか
ここまでの話をまとめると、科目の決め方は税務の正解と運営の判断という2本の軸で考えることになります。
月次で見る数字が決まると、科目の粒度は自然に決まる
科目表を作る前に決めることがあります。毎月どの数字を見て、何を判断するかです。
広告を止めるか続けるかを月次で決めるなら、広告費は媒体別に分かれている必要があります。送料の上昇に価格で対応するなら、送料は商品群ごとに見える形にします。
判断に使わない数字は、細かく分けても眠るだけです。この順番で考えれば、粒度は人に聞かなくても決められます。
構築費の分かれ目は金額ではなく、サイトが持つ機能
同じ金額を支払っていても、扱いは変わります。分かれ目は請求額ではありません。
ASPカートの標準機能に載せて見た目を整えたのか、受注や在庫を処理する独自の仕組みを含むのか。後者ならソフトウェアの性質を帯びます。
かいながブランドサイトとECを統合するHAKOBのようなヘッドレス構成(表示側と購買機能を切り離す構成)では、決済や在庫はカート側が担い、表示側は自社で持ちます。どこまでが資産にあたるかは、見積もりの内訳と合わせて確認しておくと後で困りません。
会計の分け方を、そのままEC改善のデータにする
ご相談の入口が「カートを替えたい」でも、掘っていくと、お客様の顔が見えていないという話に行き着くことがよくあります。会計も同じです。
粗利がどの商品群から出ているか、送料と手数料を引いた後に何が残るか。ここが見えていないと、次に何を直すかが決まりません。
出荷や在庫の記録と会計をつないでおくと、この見え方が変わります。かいながMUSUBで出荷を作業ではなくお客様との接点として扱っているのも、同じ考え方からです。
ECサイトの勘定科目と数字の見方について、お気軽にご相談ください
勘定科目の相談は、税務の話に見えて、実際には自分の売り場をどう読むかという話につながっています。
科目の最終判断は税理士の領域です。ただ、毎月どの数字を見たいのかを決められるのは、ECを運営している側だけです。
かいなは支援会社であると同時に、自社ECを4サイトと拠点を2つ、自分たちで運営しています。送料改定の重みも、広告が効かなかった朝の焦りも、自分たちの金と在庫で経験してきました。
数字の見え方を整えたい、その先でサイトの構造から直したいというご相談まで、30分の無料相談からお付き合いします。選ぶ体験の改善やカート移行と合わせて検討したい場合も、まずは現状を伺うところから始めます。