クラウドECはASPとパッケージのいいとこ取りなのか、選び方の分かれ目
2020.09.07 2026.09.02 更新
いまのカートでは、やりたいことができない。そう感じて構築方法を調べ始めると、ASP、パッケージ、クラウドEC、フルスクラッチという4つの分類にたどり着きます。
比較表を見ると、クラウドECの欄はいいことばかりが並びます。ASPより自由で、パッケージのような更新の手間がない。いいとこ取りのように見えるはずです。
ただ、かいなはこの分類から入る選び方をすすめていません。構築方法の名前で選ぶと、移行したあとに困るところがほとんど見えないまま契約が進みます。見るべきは分類ではなく、どこまで自分たちで手を入れる必要があるのか、そして日々の運用を誰が回すのかです。
CONTENS
クラウドECという言葉が指すものは、この数年で変わりました
2010年代半ばにこの言葉が広まったころと、いまとでは、指している中身がずれています。まずそのずれを押さえておくと、比較記事の読み方が変わります。
登場したころは「ASPの自由度を上げたもの」でした
当時のカートASPは、決められた機能を決められた形で使うものでした。デザインの自由度も、外部システムとの連携も限られていました。
そこに、ベンダーが用意した基盤の上で個別に作り込めるサービスが出てきました。更新はベンダーが引き受けるので、パッケージのようなバージョンアップ対応も要らない。これがクラウドECと呼ばれた中身です。
いまはASP側が拡張の口を広げ、境目が消えました
その後、ASP側がAPIやアプリによる拡張を広げました。テーマを自分で書き換えられるサービスも増えています。
結果として、あるサービスをASPと呼ぶかクラウドECと呼ぶかは、ベンダーの名乗り方の問題に近づきました。同じサービスが記事によって別の分類に入っていることも珍しくありません。
言葉の定義を突き詰めても、自社に合うかどうかは出てきません。
分類ではなく、どこまで手を入れられるかで見ます
かいながカート選定の相談で最初に確認するのは、名前ではなく3つの範囲です。画面の見た目、購入の流れ、そしてデータの出し入れ。
この3つのうち、どこを自社の都合に合わせる必要があるのか。それがはっきりしないうちは、どの分類を選んでも結論は出ません。
4つの構築方法を、費用ではなく手を入れられる範囲で並べ直す
費用の相場表は作りません。金額は要件で動きますし、相場を見ても自社の判断材料にはならないからです。代わりに、何が自由で何が固定かで並べます。
手を入れられる範囲で並べるとこうなります
| 方法 | 見た目 | 購入の流れ・業務要件 | 更新と保守 |
|---|---|---|---|
| カートASP | テーマの範囲内。サービスにより自由度に差 | 標準機能に合わせる。アプリで補う | ベンダー |
| クラウドEC | 個別に設計しやすい | ベンダーの基盤の上で作り込める | ベンダー |
| パッケージ | 自由 | 自由。ただし作った分だけ抱える | 自社と制作会社 |
| フルスクラッチ | 自由 | 完全に自由 | 自社と制作会社 |
クラウドECの立ち位置は、作り込みの余地を残しながら保守をベンダーに預ける点にあります。いいとこ取りという説明は、この一点に限れば間違っていません。
ASPとクラウドECの境目は、もう選定基準になりません
実務で効いてくるのは、名乗りではなく個別の可否です。定期購入の課金ルールを自社の商習慣に合わせられるか。基幹システムに在庫を渡せるか。
この種の質問は、分類ではなくサービスごとに答えが違います。同じクラウドECでも、できるものとできないものがあります。
比較表を眺める時間があるなら、自社の業務要件を5つほど書き出して、候補ごとに可否を聞いたほうが早く決まります。
ヘッドレスという選択肢が加わりました
近年増えたのが、表示側と購買機能を切り離す構成です。フロントは自由に作り、決済や在庫は実績のあるカートに任せます。
かつて「見た目と体験を作り込みたいからクラウドECへ」と考えていた案件の一部は、いまはこちらで解けます。かいなのHAKOBもこの型で、ブランドサイトの中に在庫と価格を呼び出して、その場で買える状態を作ります。
4分類の記事にはまだ載っていないことが多いので、比較の土俵に載せておいてください。
自分でECを運営してみて、選定で後から効いてきたところ
かいなは支援会社であると同時に、自社ECを4サイト運営しています。作る側と売る側の両方をやってみて分かったのは、検討時に見ていた項目と、あとで効く項目がずれていることです。
毎日触るのは、機能一覧に載っていない受注画面です
カートを比べているとき、人は商品ページの自由度や決済の種類を見ます。ところが運営が始まると、いちばん長く見る画面は受注一覧です。
注文を確認し、出荷を作り、問い合わせに答える。この動線が自社のやり方と噛み合わないと、注文が増えるほど人手が削られます。
出荷は作業ではなく、箱が開けられる瞬間がお客様との最初の接点です。ここに時間を取られる構成を選ぶと、接点の質まで落ちます。
送料と同梱のルールは、事業の都合で何度も変わります
かいなは大型で重い猫用家具のECも、季節が山になるギフトECも自分たちで回しています。送料改定のたびに、条件をどう組み直すかで頭を抱えてきました。
地域別、重量別、同梱時の扱い。この設定がどこまで柔軟かは、比較記事にほとんど書かれていません。それでいて、利益に直接ぶつかります。
デモを見るときは、商品登録より先に送料設定の画面を出してもらうと、そのカートの性格が分かります。
かいながクラウドECへの移行をすすめない場合
自由度が高いほうがよい、とは言いません。やめたほうがいいと申し上げる条件を3つ挙げます。
課題が「お客さんの顔が見えない」ときは、器を替えても戻りません
かいなに届く相談で最も多いのはカート移行です。ただ、掘っていくと大半が同じところに行き着きます。データを活用しきれておらず、誰が何を買っているのかが見えていない状態です。
この状態で高機能な基盤に移ると、使わない機能を抱えたまま月額だけが上がります。先に、いまのカートから出せる購買データを見直したほうが投資対効果は出ます。
広告とLPが主戦場の単品通販
流入がほぼ広告で、1商品を買って離れる形の運営なら、サイト全体の自由度を上げても売上の構造は変わりません。改善余地はLPと接客、そして引き上げの設計にあります。
かいながこの形の相談を受けにくいと申し上げているのも同じ理由です。構築方法を変える提案で、お役に立てる幅が狭いからです。
移行後に手を動かす担当が決まっていない
自由度の高い構成は、作り込める分だけ運用の手が要ります。自社ECのスケールには、事業者側とパートナーの双方に相当なパワーが必要です。
広告を出せば、SNSを外注すれば売れるという前提のまま移行すると、公開時点が最も充実した状態になり、あとは古びていきます。担当が決まらないうちは、いまのカートで回すほうが安全です。
分かれ目は、機能が足りないのか、表現が作れないのか
移行を検討する理由は、突き詰めると2つに分かれます。どちらなのかで、選ぶべき方向が変わります。
機能が足りないなら、まず既存カートの外側で足せないか確かめます
定期購入の条件、法人取引の掛け率、倉庫との連携。この種の不足は、カートを丸ごと替えなくても解決することがあります。
APIやアプリで足せるなら、売上が立っている売り場を止めずに済みます。それでも標準の思想と正面から衝突するなら、そこが移行の合図です。
判断の材料は、足りない機能が「業務のやり方」に属するのか「商材の特性」に属するのかです。前者は業務側を寄せられることがあり、後者は寄せられません。
表現が作れないなら、フロントを切り離すほうが早いことがあります
産地や製法を読ませたい、世界観を作りたい。この動機でクラウドECを検討しているなら、ヘッドレス構成と比べてみてください。
決済と在庫は既存カートに残したまま、表示側だけを自由にする。移行の範囲が小さく、業務の再教育も要りません。
逆に、業務要件そのものが独自で、購入の流れから作り替える必要があるなら、フロントだけ切り離しても足りません。基盤の乗り換えを検討する場面です。
足りないのが「選ぶ体験」だけなら、カートは替えません
商品点数が多く、目当ての商品にたどり着けずに帰られている。比較ができず決めきれない。この症状で移行を検討する会社は多いのですが、原因は基盤ではなく探し方の設計にあります。
かいなのERABは、カート本体を改修せずに絞り込みや比較、カタログ型の一覧を足す仕組みです。読み取り専用の連携で動くので、既存ECは通常どおり稼働します。
一方、商品点数が少なく既存の一覧で全体が見えているなら、これも要りません。そのときの原因は商品ページの情報量か価格の納得感のほうです。
ECサイトの構築方法選びについて、お気軽にご相談ください
クラウドECかASPかという問いは、単独ではほとんど答えが出ません。答えが決まるのは、いま何に困っていて、その先を誰が回すのかを言葉にしたときです。
かいなはShopify、ecforce、MakeShop、futureshopなど複数のカートで構築しており、カート会社からご紹介をいただくこともあります。特定の1つに寄せず、要件から逆算してお伝えします。
ブランドサイトとECを分けたまま消耗している場合は、HAKOBのような統合の型が向きます。BASICは120万円〜(税別)ですが、金額は要件で動くので、まず何が変数になるかからご説明します。
かいなは自分たちでもECを運営しています。売る側の実感を持った相手として、30分の無料相談からお気軽にご相談ください。