ECサイトとオンラインショップの違いと、呼び名を使い分ける基準
2020.05.12 2026.09.02 更新
自社の販売ページを、社内では「ECサイト」と呼び、お客様への案内文には「オンラインショップ」と書いている。そんな状態のまま何年も運営している会社は珍しくありません。
どちらも指しているものは同じです。ただし、どちらを選ぶかで、読んだ人が思い浮かべる絵は変わります。仕組みの説明に見えるか、お店の案内に見えるかが分かれます。
一般には「同じ意味なのだから好きに呼べばいい」と語られます。かいなはそう考えていません。どちらの言葉を使っているかは、その会社がECを装置として見ているか、売り場として見ているかの表れです。呼び名の相談は、掘っていくと売り場の設計の話に行き着きます。
CONTENS
ECサイトとオンラインショップを、誰がどちらで呼んでいるか
呼び名が複数あるのは、言葉が乱れているからではありません。同じものを違う位置から見ている人が、それぞれの都合で名前を付けているだけです。
EC、ネットショップ、通販が指している範囲
ECは electronic commerce の略で、日本語にすると電子商取引です。ECサイトは、その電子商取引を行う機能を備えたWebサイトを指します。
オンラインショップは「オンライン上にあるお店」という意味です。機能としての差はありません。カートASPで作っても、モールに出店しても、成り立つものは同じです。
取引相手が個人か法人かでも呼び分けはされません。経済産業省の調査でも、企業間の電子商取引は消費者向けと並ぶ大きな領域として扱われています。(出典: 経済産業省「電子商取引に関する市場調査」)
売る側は機能で呼び、買う側は場所で呼ぶ
作る人と運営する人は「ECサイト」と言います。カートがあり、決済があり、在庫が動く仕組みとして見ているからです。
買う人はそう呼びません。「あそこのECサイトで買った」という会話は、日常ではほとんど聞きません。「あのお店で」「ネットで買った」と言います。
この差は、どちらが正しいかの問題ではありません。立っている位置が違えば、見えているものが違うというだけです。
だから「ECサイト」は制作や運営の側に届く言葉で、「オンラインショップ」は買う側に届く言葉になります。
呼び名のずれが、要件のずれとして表に出る
「ECサイトを作りたい」と言われたときと、「ネットでお店を出したい」と言われたときでは、その後の会話が別の方向に進みます。
前者はカートの機能や決済、在庫連携から話が始まります。後者は何を並べるか、どう見せるかから始まります。
かいなに来る相談で最も多いのはカート移行です。ところが話を進めると、機能ではなく「お客様の顔が見えていない」という話に行き着くことがよくあります。
最初に使われた呼び名は、その入口がどちらだったかを示す手がかりになります。
自社ECを運営して分かった、言葉が届く面と届かない面
かいなは支援会社であると同時に、自社ECを4サイト運営しています。言葉の効き方が面によって違うことは、自分たちの売り場で毎日確かめています。
お客様からのメールに「ECサイト」と書かれることはほとんどありません
かいなはカニと北海道海鮮のギフトEC「かにと。」を自分たちで運営しています。年末に注文と問い合わせが集中する商材です。
そこに届くメールに「御社のECサイトで」と書かれていた記憶はほぼありません。「そちらのお店で」「サイトで注文しました」という書き方がほとんどです。
一方で社内のやりとりは「ECの受注」「サイトの改修」で通っています。この非対称は、どちらかに統一するものではありません。
お客様が触れる面ではお客様の言葉に、社内で回す面では社内の言葉にする。それだけの話です。
社内の言葉をそのまま同梱物に載せると、距離が出ます
出荷は作業ではなく、箱が開けられる瞬間がお客様との最初の接点です。自社ECを回していると、その一瞬の印象の重さが分かってきます。
納品書や同梱のカードに「当ECサイトをご利用いただき」と書くと、途端に事務的な文書になります。
「このたびは当店をご利用いただき」と置き換えるだけで、届いた箱の温度が変わります。文言を変えただけで売上が動くわけではありません。ただ、書き手が誰に向けているかは確実に伝わります。
BtoBの窓口では、寄せる先が逆になります
かいなは国産無塗装天然木の猫家具を扱う「猫のための木工所」も運営していて、こちらは法人からのオーダーも受けています。
法人の担当者は、はじめから仕様や納期の話をしてきます。ここで「お店」の言葉づかいに寄せると、かえって話が進みません。
相手が業務としてECを見ているなら、EC、受注データ、API連携といった語をそのまま使ったほうが早く伝わります。一般向けの言葉に寄せるほど良い、という話ではありません。
呼び名の見直しで、かいながすすめない進め方
言葉を整えること自体は安価にできます。それでも、やらないほうがいいと申し上げる進め方が3つあります。
検索ボリュームだけで屋号や見出しを決める
検索数の多い語に寄せれば流入が増える、という考え方は分かりやすい反面、外れると取り返しがつきません。
検索数が多い語は、それだけ competitor も多く、指名で探された言葉ではありません。屋号や看板の言葉を、検索数だけを根拠に決めるのはすすめません。
変えるとしたら、検索から入ってくる面の見出しやカテゴリ名からです。屋号は最後に触るものだと考えています。
サイト全体の言葉を一括置換する
「ECサイト」をすべて「オンラインショップ」に置き換える、といった作業を提案されることがあります。かいなは止めます。
会社概要や特商法表記、システムの説明文では、正確な語のほうが適しています。一括で置き換えると、そこまで崩れます。
言葉は面ごとに決めるものです。全ページで統一することに、読者側の利益はありません。
育てる体力がないまま、独自の呼び名を打ち出す
自社だけの造語で商品カテゴリを呼びたい、というご相談もあります。詩的で印象に残る言葉ほど、誰も検索しません。
その言葉を数年かけて広告や記事で押し出し続ける計画があるなら、意味があります。計画がないなら、一般名詞を主にして、造語は併記にとどめたほうが返ってきます。
かいなが広告主体・LP主体の運営に対して独自呼称をすすめないのも、同じ理由です。露出が止まった瞬間に、その言葉は誰にも通じなくなります。
面ごとに言葉を選ぶとき、どこで答えが変わるか
基準はひとつです。その言葉が置かれる面で、お客様が探しているのか、それとも納得しようとしているのかを見ます。
探している場面か、納得している場面か
ページタイトル、カテゴリ名、広告文は、探している人が最初に触れる面です。ここはお客様が普段使っている言葉に寄せます。
商品詳細、仕様表、送料や返品の説明は、すでに見つけた人が納得するための面です。ここは正確さを優先します。厳密な語に、平易な言い換えを添えるのが安全です。
同じ社内でも、集客担当と受注担当で使う語が違うのは自然なことです。無理に揃えると、どちらの面でも中途半端になります。
商標に触れていないかを、決める前に確認する
一般名詞だと思って使っている言葉が、他社の登録商標であることがあります。「シーチキン」がはごろもフーズの登録商標であることは、よく知られた例です。
商品名やカテゴリ名を決めたら、公開前に特許情報プラットフォームで検索しておくと安心です。(参照: 独立行政法人工業所有権情報・研修館 J-PlatPat)
Web上の表記なら修正で済みますが、パッケージや印刷物に載せてからだと費用が発生します。順番として、印刷より先に確認します。
言葉を変えても数字が動かないとき、どこを見るか
呼び名を整え、見出しをお客様の言葉に寄せた。それでも流入も購入も変わらない。このときに言葉を追い続けても、消耗するだけです。
疑うのは、たどり着いた後の探し方です。商品点数が多いのに絞り込みが効かない、比較ができない。この場合は選ぶ体験そのものの拡張が先になります。
もうひとつは、読みものとECが別サイトに分かれている場合です。共感した人が買う前に離れているなら、ブランドサイトとECの統合のほうが効きます。
ECサイトの言葉と設計について、お気軽にご相談ください
呼び名をどうするかというご相談は、話していくと「お客様がどんな言葉で自社を探しているか分かっていない」という課題に行き着くことがよくあります。
その場合に必要なのは、用語の統一ルールではありません。検索の語、問い合わせの文面、受注時のやりとりを突き合わせて、面ごとに使う言葉を決め直す作業です。
かいなは自分たちでもECを4サイト運営しています。売る側の実感を持った相手として、まずは現状を伺うところからお付き合いします。30分の無料相談で、診断だけ持ち帰っていただいても構いません。