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宅配買取システムの構築が本人確認で止まる理由と、eKYCの選び方

木の机で、スマートフォンの背面に無地のカードを重ねて持つ手元。かたわらには開封済みの配送用の箱が置かれている。

不要になったものを送ってもらい、査定して買い取る。宅配買取の仕組みを自社でも持てないか、というご相談が増えています。物が動く方向が逆になるだけで、ECの仕組みがそのまま使えそうに見えるからです。

ところが実際に設計を始めると、思っていたところで止まりません。査定の基準づくりでもなければ、配送キットの手配でもない。多くの場合、最初に行き止まりになるのは本人確認です。

一般には、買取事業の要は査定精度と物流だと言われます。かいなはそこに一つ足して考えています。買取のシステム化は業務効率化ではなく、仕入れを自社の中で回すための投資であり、その入口を塞いでいるのが非対面の本人確認です。ここを最初に決めないと、あとの設計がすべて仮置きになります。

買取のシステム化を、効率化ではなく仕入れの話として考える

仕入れが外部依存だと、売り場の設計が先に決まってしまう

仕入れを卸や問屋に頼っている状態では、売り場に並ぶものはあらかじめ決まっています。何を強く見せるかは選べても、そもそも何を持つかは選べません。

買取を自社で持つと、この順番が変わります。どんな商品をどれだけ集めるかを、売り場側の都合から逆算できるようになります。

季節や相場に合わせて買取価格を動かせば、集まるものも変わる。仕入れが手元にあるというのは、売り場の設計権が自社に戻るということです。

かいなが自社ECを運営して分かった、仕入れと売り場の距離

かいなは自社でECを4サイト運営しています。カニのギフトECの「かにと。」、猫家具の「猫のための木工所」、日用品の「SOREDAKE」などです。

商材ごとに、仕入れと売り場の距離がまったく違います。自分たちで作るものは、売り場の見せ方に合わせて仕様を動かせる。仕入れて売るものは、届いたものをどう見せるかの勝負になります。

在庫を抱える怖さは同じでも、打てる手の数が違うのです。買取は、この距離をいちばん短くできる仕入れ方だと考えています。

買取から販売までを1本の流れにすると、何が変わるか

買取の管理をスプレッドシートで、販売をカートで別々に持っていると、買い取った物が売り場に出るまでに人の手が何度も入ります。

申込データ、査定結果、在庫登録、商品ページ。同じ物の情報を、担当者が形を変えて何度も入力し直すことになります。

買取をシステムとして作るなら、査定が確定した時点で在庫の候補として販売側に渡るところまでを一続きにします。ここまで設計して、はじめて「ECサイクル」と呼べる状態になります。

宅配買取のオンライン化が止まるのは、査定でも配送でもなく本人確認

申込フォームの最後に置くものが、完了率を左右する

宅配買取の申込は、住所と振込先を入れてもらう時点ですでに負担の大きいフォームです。そこに本人確認が乗ります。

ここで「後日、身分証のコピーを郵送してください」と案内すると、申込は完了しても物が届かない件が確実に出ます。お客様の熱量は、申込を終えた瞬間から下がっていくからです。

かいなが構築した宅配買取のシステムでは、申込の流れの中で本人確認まで終わらせています。スマートフォンで本人確認書類のICチップを読み取り、その場で撮影した顔と照合する方式です。元の画面に戻ると結果が反映されている、という体験に寄せています。

手作業の本人確認を残すと、どこが詰まるか

本人確認だけを人手に残すと、詰まる場所は運用側にも出ます。書類の画像を目視して、氏名と住所を転記して、記録として保存する。この一連が申込1件ごとに発生します。

買取は波のある事業です。相場が動いた週や、キャンペーンを打った直後に申込が集中します。

そのときに確認待ちの列ができると、配送キットの発送が遅れ、査定が遅れ、振込が遅れます。査定を早くする工夫をどれだけ積んでも、入口が人手のままなら全体のスピードは変わりません。

書類の写真を送る方式を選ぶと、あとで作り直しになります

非対面の本人確認には、本人確認書類の画像を送ってもらう方式もあります。導入は簡単ですが、この方式は選ばないほうがよいと考えています。

なりすましのリスクが高いとして、画像送付による方法は廃止の方向が示されており、ICチップの読み取りを用いる方法への移行が進められています(出典: 警察庁JAFIC「改正事項に関する資料」)。

いま安く作って数年後に作り直すのか、最初からICチップ読取で作るのか。買取を続ける前提があるなら、答えは後者に寄ります。

自社がオンライン本人確認の対象かを、根拠法から判断する

犯罪収益移転防止法の特定事業者に当たる場合

ひとつめの根拠は犯罪収益移転防止法です。マネー・ローンダリング対策として、取引時確認と確認記録の保存が義務づけられている事業者が定められています(出典: 警察庁JAFIC「犯罪収益移転防止法 同施行令 同施行規則など」)。

金融機関、クレジットカード事業者、暗号資産交換業者、宅地建物取引業者、宝石・貴金属等取扱事業者、郵便物受取サービス業者、士業などが挙げられています。

「金融の話だから自社には関係ない」と読み飛ばされがちですが、宝石・貴金属を扱う事業者はここに含まれます。買取事業と無関係ではありません。

古物営業法の古物商として、非対面で買い取る場合

もうひとつが古物営業法です。古物商が非対面で買い取るときは、相手方の住所・氏名・職業・年齢を確認することが求められています(出典: 警察庁「古物営業・質屋営業について」)。

対象となる商材は広く、ブランド品、時計、着物、トレーディングカード、ゲーム、ホビー、カメラ、楽器、家電、パソコンやスマートフォン、書籍、酒、工具などが含まれます。質屋も質屋営業法で同様の確認義務があります。

つまりリユース系のECで宅配買取をやるなら、根拠法は違っても本人確認は避けて通れません。

根拠法が違っても、設計上の課題は同じところに出る

特定事業者なのか古物商なのかで、確認する項目や記録の要件は変わります。ただし「相手が目の前にいない状態で、本人だと確かめて、記録を残す」という課題自体は共通しています。

だから設計の順番も同じです。まず自社がどちらの根拠法に当たるかを確定し、必要な項目を洗い出す。そのうえで、どの方式でオンライン化するかを選びます。

ここを曖昧にしたまま画面設計から入ると、後半で仕様が全部ひっくり返ります。

買取のシステム化をすすめない場合と、判断の分かれ目

かいながすすめないケース

買取の申込がまだ月に数件という段階で、システム化から入ることはおすすめしていません。この規模なら、フォームと手作業で回したほうが早いですし、何より査定の基準がまだ固まっていないはずです。

もうひとつは、買い取ったものの売り先が決まっていない場合です。業者間オークションに流すだけなら、それは仕入れではなく仲介であり、自社の売り場は強くなりません。

買取を単発のキャンペーンとして試したい、という段階もそうです。継続する見込みが立ってから作るほうが、方式選びを間違えません。

判断の分かれ目は、買取単価と返送の頻度

システム化の要否は、買取単価と査定の分かれやすさで変わります。単価が低く、送られてくるものがほぼ買取になる商材なら、承認のやりとりは簡素で足ります。

逆に、1点ずつ状態で価格が変わり、お客様が金額を見てから決めたい商材は違います。査定結果をマイページで提示し、承認・一部承認・返送を選べる仕組みがないと、電話とメールの応対がそのまま人件費になります。

返送が一定の割合で発生する商材かどうか。ここが、作るか作らないかの分かれ目になります。

承認と個人情報の扱いを、先に決めておく

買取で揉めるのは、金額そのものより「合意した記録がない」ときです。誰がいつ何を承認したのかを残す設計を、画面より先に決めます。

かいなが構築したシステムでは、重要な操作の記録が前の記録を引き継ぐ連鎖構造にして、あとからの改ざんを検出できるようにしています。振込先の口座情報は暗号化して保管し、振込後に自動で消えるようにしています。

買取は、お客様の身分証と口座を預かる事業です。持たない情報を決めることが、そのまま守りの設計になります。EC構築の考え方についてはECサイト新規構築のページでも触れています。

買取から販売までの設計、お気軽にご相談ください

宅配買取のシステム化は、申込フォームを作る話ではありません。本人確認をどの方式で行い、査定と承認をどう記録し、買い取ったものをどうやって売り場に戻すか。この流れ全体をどう組むかという話です。

かいなは、申込から本人確認、査定、承認、振込までを一気通貫で扱うシステムを構築しています。同時に自社でもECを運営しているので、集めたものをどう売るかの側からも設計を見られます。

買い取ったものをそのまま自社で売るなら、買取と販売をひとつのECとして組む設計になります。1点物と型番商品で判断がどう分かれるかは、買取と販売を一体で組むときの記事にまとめました。

買い取ったあとの出荷や在庫の流れまで含めて整えたい場合は、MUSUB(フルフィルメント・WMS)のような後工程の仕組みと合わせて考えます。既存のECをどう活かすかは、ECリニューアル・カート移行の観点も含めて整理します。

自社が本人確認の対象になるのか、いま作るべき規模なのか。その手前の判断からご一緒します。30分の無料相談で現状を整理するだけでも構いませんので、お気軽にご相談ください。