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紙カタログのEC化が使われないまま終わる原因と、デジタルカタログの設計

2026.09.02

木の机の上で見開きに開かれた厚手の紙カタログと、そばに置かれたノート、鉛筆、小さな段ボールの見本箱。窓からの自然光が斜めに差し込んでいる。

取引先やお客様には毎年カタログを送っているのに、Webには同じ体験がない。そんな状態のまま何年も過ぎている会社は少なくありません。

PDFを置いてみた、ページをめくれるビューアも入れてみた。それでも紙のときのようには見てもらえず、結局カタログ請求のフォームだけが動いている。よくある行き止まりです。

一般には「紙をデジタルに置き換えれば印刷費が減る」と語られます。かいなはそう考えていません。紙カタログのEC化は紙の置き換えではなく、ECの中にカテゴリでも検索窓でもない三つ目の探し方を足す仕事です。ここを取り違えると、作っても使われないまま終わります。

紙カタログが残る業界で、Web化だけが進まない構造

紙が残っているのには理由があります。その理由を潰さないまま形だけ移すから、使われないものができあがります。

紙が担っているのは情報伝達ではなく回遊

カタログを開いた人は、目当てのページに直行しません。隣の商品が目に入り、次の見開きをめくり、当初考えていなかったものを見つけます。

紙の価値は、この寄り道が起きる密度にあります。1画面に載る情報量と、めくるという行為の軽さが、それを支えています。

ECのカテゴリ一覧は、1行あたりの商品数が少なく、スクロールの先が見えません。同じ寄り道は起きにくい構造です。

PDF公開とめくり型ビューアで止まる理由

PDFは版面をそのまま持ち込めるので、社内の合意が最も早く取れる手段です。ただし紙の縦横比はスマートフォンと相性が悪く、拡大しないと読めません。

めくり型のビューアも同じ壁にあたります。演出としてのめくりは再現できても、商品ページや在庫とはつながっていません。

結果として、見つけたのに買えない状態が生まれます。紙より不便なものができてしまうわけです。

カテゴリ階層を作り込んでも代わりにならないところ

カテゴリを細かく切れば探しやすくなる、と考えて階層を増やす改修はよく行われます。ところが階層が深くなるほど、全体を見渡す感覚は失われます。

紙のカタログは、分類されていない商品同士が同じ見開きに並ぶことがあります。ギフトの「予算三千円台」のように、カテゴリとは別の軸で束ねられる。この束ね方こそが再現すべきものです。

一覧が要る商材と、要らない商材を運営して分かったこと

かいなは支援会社であると同時に、自社ECを4サイト運営しています。同じ「一覧」でも、効く商材と効かない商材があることは、自分たちの売り場で毎年痛感しています。

ギフトECでは、見開きの束ね方が購入の決め手になる

かいなはカニと北海道海鮮のギフトEC「かにと。」を自分たちで運営しています。年末に集中する商材です。

ここで買う人は、商品名を知りません。決まっているのは贈り先と予算だけです。だから商品カテゴリを並べても手が止まります。

「両親へ、この価格帯で」という軸で束ねた一覧を見せたときだけ、比べて選ぶ動きが起きます。紙のカタログギフトが強いのは、この束ね方を最初から持っているからです。

セミオーダー家具では、一覧より一台の理解が先に来る

一方で、壁面収納のセミオーダーECも運営しています。こちらは事情がまったく違います。

仕様の組み合わせが多く、お客様が迷うのは「どれを買うか」ではありません。「うちの天井高で入るのか」「賃貸で使えるのか」です。

この商材に見開きの一覧を足しても、迷いは減りません。必要なのは一台を深く理解してもらう導線で、選択肢を横に並べることではないのです。

判断の分かれ目は、見比べて決めるか、決めてから探すか

この2つを分けているのは商品点数ではありません。お客様が購入を決めるまでに、複数の商品を横に並べる瞬間があるかどうかです。

並べる瞬間があるなら、カタログ型の一覧は購入の直前に効きます。ギフト、部材、消耗品の型番選びなどが該当します。

先に1つに決めてから詳細を調べる商材なら、一覧は入口の飾りにしかなりません。予算は商品詳細の情報量に回したほうが返ってきます。

カタログのEC化で、かいながすすめない進め方

やらないほうがいい、と申し上げることもあります。判断の材料として3つ挙げます。

商品点数が少なく、一覧で足りているEC

数十点までの品揃えで、既存のカテゴリ一覧を数回スクロールすれば全体が見えるなら、カタログ型を足す理由はありません。

この規模で離脱が起きているとき、原因はたいてい探し方ではなく、商品ページの情報不足か価格の納得感にあります。一覧を作っても数字は動きません。

回遊せず、単品を買い切る商材

広告やLPから流入して、その1商品だけを買って離れる。定期購入の初回獲得もこの形です。

ここに見開きの一覧を挟むと、購入までの導線が長くなります。かいながLP主体・広告主体の運営に対してカタログ型を提案しないのは、構造として噛み合わないからです。

紙の版面をそのまま再現したいという依頼

「印刷データをそのまま載せたい」というご要望は、正直に申し上げてお断りすることがあります。紙の版面はA4見開きの物理制約に最適化された設計だからです。

スマートフォンで見る前提に置き換えると、文字は小さく、価格は読めず、在庫は反映されません。再現すべきは版面ではなく、束ね方とめくる軽さのほうです。

見開きの一覧体験を、カートの外側に足すという設計

では実装をどう進めるか。ここでかいなが選んでいるのは、既存のECに手を入れない方法です。

カート本体の改修は、影響範囲が大きすぎる

一覧の見せ方を変えるために、カートのテンプレートや商品データ構造に手を入れる案は必ず出ます。ただしカートは決済と在庫を抱えています。

売上が立っている売り場を止めるリスクと、一覧を良くする効果が釣り合うか。ここを冷静に比べると、多くの場合は釣り合いません。

だからかいなのERABは、読み取り専用のAPIやCSVだけで既存ECとつながり、独立したレイヤーとして動く設計にしています。カート本体は一切改修しません。

紙の役割を分解して、どの型で再現するかを決める

ERABの選ぶ体験は3つの型で考えます。見開きの一覧をWebにするCATALOG型、複数商品のスペックを並べるCOMPARE型、多軸の絞り込みで大量在庫から探すFILTER型です。

紙のカタログが果たしていた役割は、たいていこの3つが混ざっています。ギフトなら束ねて見せるCATALOG型、産業資材なら型番を絞るFILTER型が中心になります。

自社のカタログのどのページが一番使われているかを思い出すと、必要な型が見えてきます。

公開後に見るのは、めくられた数ではない

デジタルカタログを入れると、閲覧数やめくられたページ数を追いたくなります。それだけでは判断できません。

見るべきは、一覧から商品ページに移った人がどれだけ買ったか、そして一覧を経由した人の購入単価が経由しない人と違うかです。

差が出ないなら、束ねる軸が的外れです。軸は後から作り替えられるので、最初の軸に時間をかけすぎないほうが前に進みます。

紙カタログのEC化について、お気軽にご相談ください

紙カタログをどうWebに移すかというご相談は、掘っていくと「お客様がどう選んでいるか見えていない」という話に行き着くことがよくあります。

その場合、必要なのはビューアではありません。どの軸で束ねると手が止まるのかを、データと現場の感覚の両方から決め直す作業です。

ERABは既存ECを改修せずに導入でき、初期200,000円〜(税別)、月額29,800円〜(税別)から始められます。カート移行やブランドサイトとECの統合と合わせて検討したほうがよいケースもあるため、まずは現状を伺うところからお付き合いします。

かいなは自分たちでもECを運営しています。売る側の実感を持った相手として、30分の無料相談からお気軽にご相談ください。