IT補助金を申請してECサイト構築する際の思わぬ落とし穴

2020.10.23

IT導入補助金は経済産業省が監督して行っている「ITを導入することで業務の効率化を進めることに対して交付している補助金事業」です。

今まではECサイトの構築には活用できませんでしたが、2020年は新型コロナウイルスの影響で多くの企業のEC化は急務であるとして、補助金の対象になりました。

しかし、補助金の制度的な難しさから、この補助金の利用には思わぬ落とし穴もあります。その問題を考えるため、今回はIT補助金をテーマに解説します。

ECサイト構築にも使える2020年度のIT補助金

IT補助金とは、正式には「IT導入補助金」のことです。政府が資金力の問題でIT化をなかなか進められないような中小企業に向けて、ITを推進するために補助金を交付する制度です。

この制度は2019年度までは主にITを導入することによって業務の効率化を進めたり、デジタル人材の育成に用途が制限されており、WEBサイトの制作には活用できない制度でした。

しかし、2020年度は新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、皆が外出を控えるような状況がありました。今もそうしたムードは継続しています。

そこで極力接触を避けてビジネスが展開できるよう、このIT補助金の用途を拡大し、ECサイト構築にも利用できるようにしました。2020年は結局10次申請まで行われ、2021年度はその枠を拡大することが発表されています。

この拡大枠は「特別枠、C類型」として「非対面型ビジネスモデルへの転換」と「テレワーク環境の設備」として条件が付けられています。テレワーク環境設備には30~450万円の金額で予算の2/3を補助します。「非対面型ビジネスモデルへの転換」では補助金額の額面は同じですが、予算の3/4までを補助してくれます。

「非対面型ビジネスモデルへの転換」が、つまりECサイトを作って、販売の場とすることを指しています。サイトの構築としては通常の業務内容や沿革を知らせるようないわゆるコーポレイトサイトや求人を目的にしたサイトは補助金の適用外になります。つまり、対象になるサイトは、そのサイト上で商取引をしたり、決済も可能なサイトです。

こうした補助金は多くの場合、用途に制限があり審査が必要です。当然といえば当然ですが、このIT補助金も例外ではありません。

実際のところ、日本のBtoCでのIT化率は高くありませんが、こうした紐付きの補助金を継続することで促進される可能性も多いにあります。実際に必要な費用の3/4をサポートして貰えます。つまり1/4の出費でECサイトを構築できるのであれば大きなチャンスといえます。

この補助金を受ける条件としては、企業内での最低賃金の引上げが条件になっています。つまり、効率化による利益アップを背景にしたものである必要があります。

また、原則的に案件への着手は申請の認可が降りた後から業務に着手する必要があります。しかし、遡っての申請はC類に関しては特別に2020年度については対応するとしています。もしすでに作り終えたECサイトに対し、補助金を使いたいという場合は、C類に含まれるので遡っての申請が可能です。

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事業者を選定して共同で申請する必要がある。

IT補助金を受けるためには、IT補助金の事業を実行するために「IT導入支援事業者」をまずは選定しなければいけません。

IT導入支援事業者は、このIT導入補助金の企画について趣旨にあう企業がそれぞれ登録し、審査で認められた企業がIT導入支援事業者、つまり登録ベンダーとなり、業務を請負います。また、IT補助金を受けるためにはその登録ベンダーが事前に申請しているツールを導入することで行う必要があります。

そのため、この補助金を利用できるのはべンダーに依頼することとそのベンダーが申請しているツールの利用がセットになっていなければいけません。

申請までの流れは以下の通りです。

補助金の内容を理解し、IT導入支援事業者を選定する

補助金で導入するITツールの決定とgBizIDの取得

IT導入支援事業者と共同で交付申請を作成し、提出(提出は自社で)

交付決定後に事業開始

こうした縛りがあるため、支援が可能な技術を持った企業であっても、登録をしていなければ事業者として選択することはできません。そのため、そうした企業に発注した業務は補助金の対象にはなりません。同様にそのベンダーに登録されていないツールを使っていた場合も内容として用途を満たすものであったとしても補助金の対象にはなりません。

そのため、補助金を前提にしてサイト構築を行うという場合には、あくまで用意されている範囲の中で可能な範囲のことを行うことになる可能性があります。あくまで登録ベンダーの検索は「IT導入補助金」のサイトで検索して行う必要があります。

【参考】IT導入支援事業者・ITツール検索

ベンダーやツール前提にならないサイト構築はできるのか

そこで問題になるのは、ITについての全体的な知識がぼんやりとしている状態でありながらECサイトを持つことについてのメリットは感じているといったようなケースです。

ITツールとして登録されているものは、実際には結構な数が登録されています。ASPやECパッケージ、SNSの活用なども登録されていますが、全て登録ベンダーと紐づいているところに難しさがあります。

例えば、実店舗を展開していてECは後発で参画するような企業でのIT化といった場合、「ECサイトの構築」だけでなく、実店舗の事業活動内でもIT化が必要なことは少なくありません。

昨今のECの事情を振り返ると、実際にこうした実店舗を運営している場合は、ECをそのまま独立した存在で、ネット支店のように運営しても成果は伸びにくいです。

本来はECだけでなく店舗も含め、ブランディングをしながら全体で価値を高めていくことが最適解となりますが、そうしたことに繋がっていきません。

ですのでECサイトの構築と合わせて、実店舗での会員情報を一元管理していくいわゆるCRM(カスタマーリレーションシップマネージメント)やSNSとの連携を行い、その会員情報をECサイトでも統合して行けるかが重要になってきます。

つまりデジタルプラットフォームの導入も視野に入れて、サービス全体を向上させていく必要があります。

【参考】デジタルマーケティングは戦略的なプラットフォームの導入から始まる

しかし、そういった視点を持たずにECサイトだけが存在しているような状態になってしまうと発展性のあるECプロジェクトにはしにくいというばかりでなく、効率の悪い運営となることで、結果的に利益も上がらず、サイトの寿命も短くならざるを得ません。補助金の交付を受けたとはいえ、予算とまた、それに関わる労力は必要であるにも関わらずです。

このIT導入補助金の落とし穴は、補助金の制度がECサイト構築にとって逆順で確定して申請を行い、実施することになるという点にあります。本来は、最初に達成したいヴィジョンをつめるべきですが、補助金を前提に考えるのであれば、登録ベンダーから検索を開始し、さらにその登録ベンダーが登録しているツールを前提にしてプロジェクトを考えていかなければならなくなってしまうことがあるのです。

そうなると登録ベンダーとしても、また発注者となるあなた自身も補助金の呪縛にかかって、その範囲内でプロジェクトをまとめようとしてしまう可能性は高くなっていきます。登録ベンダーとしても、本来あるべきサポートではなく、補助金の取得がメインになってしまうかもしれません。

例えば、先ほど例に出したようなケースでは、対応できないことに目をつぶり、あくまで登録ベンダーが使える登録済みのシステムとカートを選択してサイト構築を進めることにならざるを得ません。

本来は理想的なECサイトのあり方があり、それを丁寧に読み取ってシステム設計をして、ブランディングのプランも組み込みながら構築を進めるべきです。しかし、最初から補助金の申請範囲に収まるツールの可能な範囲で、補助金の実施期日に合わせたスケジュールを前提にどうしても登録ベンダーも話を進めるケースが多くなってしまいます。

補助金で負担は軽減されていても、それでは結果的に理想とは外れた未来へ進んでしまうかもしれません。

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補助金を未来に生きるサイト作りに生かす

これらのことはIT補助金の交付を受けてECサイト構築を考えた場合には、そのシステム上、どうしても抱えやすい問題になっています。

しっかりと補助金を使ってECサイトが自社の財産となるように構築していくには、社内全体のIT環境を含めた中でのECサイトの位置付けをしっかりと行う必要があります。「非対面型ビジネスモデルへの転換」でEC化を単純に進めても実店舗を凌駕する収益をいきなりあげるのは困難です。プラスアルファでの要素をしっかりと加味してECサイト構築を行うことが重要です。

そうした場面で、やはりよくわからないというのであれば、セカンドオピニオン的に他の専門家へ相談してみるという方法もあります。せっかく受ける補助金ですから、ECサイトも企業の価値を最大限高める要素としてブランディングにしっかり活かせる仕様を持って構築することをオススメします。

もちろん助成金などについて弊社でもそうしたご相談に対応しております。失敗しないためにもぜひご活用ください。

【参考】助成金を活用したWEBサイト制作・ブランディング

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