ECサイトの利用規約はユーザーと運営を守るための約束ごと
2020.06.22
利用規約はECサイトがユーザーにどう利用してもらいたいかの指針を提示するためのものです。そのため、利用規約次第でユーザーがそのECサイトに抱く印象が変わる可能性もあります。
実際、利用規約が関係するのは法律的なことだけではありません。ここでは運営・運用にも強く関わる利用規約について、解説します。
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利用規約はECサイト側が定めるルール
インターネットを利用していると、特定のサービスなどを利用した場合に、利用規約に同意するよう促す画面が出てくることがあります。利用規約はECサイト側がユーザーへ提示するサイト内やサービスについてのルールです。ユーザーの行動を規定して、責任の所在がどこにあるのかを判断するために規約として残し、かつ、目を通してもらうことで、双方に無用な損害が発生することのないようにするためのものです。
基本的には紛争などが起こった場合に、事前に「こういったルールでやっている」と通知してユーザーに同意してもらっておくことで「事前了承があったこと」を示し、サイト側をトラブルから守るための仕組みです。また、サイト内での取り決めがあることで、サービスの提供側とユーザーのトラブルを事前に抑制する効果も期待できます。
ユーザーとしても、サービス提供前に事前にルールがわかっていれば、利用する時の安心感に繋がります。それだけでなく、そのサイト自体の方針なども見えてきます。ユーザーが利用規約を読み込めば、さらにそのサイトについてよく知ることができます。
ただし、ただサイトに掲示してあるだけではユーザーは利用規約を読まない可能性もあります。残念ながら法的に争うような場面では後から「よく読んでいなかった」などということになることも実際には少なくありません。そうなってしまえばその効果は薄くなってしまいます。そのため「利用規約への同意」が必要になります。必ず利用にあたっては承諾を受けなければ法的な効力は成立しません。
また、法的に有効であるためには、利用規約を用意する側としても、当然公序良俗にあった社会的にも認められる内容である必要があります。
ユーザーとの約束だけど契約書ではない
利用規約は、ECサイト側が掲示するものです。そのため、ユーザー側は契約書のようにその利用規約の内容に対して部分ごとに異議を唱えて改善するというものではありません。あくまで「守ってもらうこと」が前提のルールです。
そこで利用規約の作成時に気をつけなければいけないのは、あまりにサイト側に有利な内容にしてしまうと、ユーザーが尻込みして売上に繋がらなくなる可能性があるということです。逆にユーザーへの条件をどんどん下げていくと、運営への負担が大きくなったり、補償などでの支出が増える原因になることもあります。
また、利用規約は第三者も含めて誰でも閲覧が可能である必要があります。そのため、企業やサービスのあり方、考え方、方針などが具体的に現れて世間に見えてくる部分でもあります。
結果的に計らずも企業のイメージにとっても重要な部分になることがあります。いずれにしてもECサイトのコンテンツとしてはもっとも慎重に作成しなければいけない部分とも言えます。
特定商取引法に基づく表示は通販では義務
しかし、ECサイトが利用規約を掲示することに対して、実は法的義務はありません。そのためECサイトにとっての必須作業項目ではありません。
ただし、サイト上で販売も含めたなんらかの商取引を行う機能が備わっている場合には必ず「特定商取引法に基づく表示」を行う義務があります。この掲示がなければ、販売行為は行うことができません。また、決済代行会社などでも契約時に特定商取引法の表示を確認することを義務づけていることもあります。その場合はこれがなければ当然、契約することも難しくなります。そうなると決済サービスを利用することもできません。
「特定商取引法に基づく表示」には、必ず、事業者名、代表者、住所、連絡可能な電話番号、メールアドレス、決済や返品についてなどの項目を明示する必要があります。
そしてもう一つ、ECサイトと関係の深い項目が「プライバシーポリシー」です。ウェブサイトで集めた個人情報をどのように利用するかを明示することが、個人情報保護法によって定められています。ECサイトはユーザーの行動履歴などを観測することで、新たな戦略に役立てることができます。そのための情報を利用しているわけですが、こうした事柄が個人情報保護法の範囲に入ってきています。そのため、そうしたデータの利用について事前にユーザーに同意を得る必要があります。
これに対策するため、了承するアクションを求めるサイトが増えました。実際に、サイト閲覧中に、別のサイトへ移動した際に移動先のサイトでこうした項目に出会うことは今や多くの人が体験しているのではないでしょうか。
作成することでEC運営をスムーズにしよう
利用規約を作成して提示することに法的な義務はありません。しかし、ECサイトを運営する上では利用規約を作成しておくことによるメリットも少なくからず存在します。
利用規約はユーザーにとってそれぞれのECサイトのマニュアルのようなものです。単純に物品を販売し決済してもらい、発送するというやり取りだけであれば、「特定商取引に基づく表示」だけでケアできるかもしれません。しかし、さまざまな決済、返品ルール、会員登録や解約、ポイントなど、ECサイトにはそれぞれのサイト独自のルールがどんどんできてきます。そうした場合に作成した利用規約の内容をユーザーに参照してもらうことで、無用なアフターケアを減らすこともできますし、複数の担当者で顧客対応を考える場合には、利用規約がしっかりとした基準になります。
特に、会員を募ってサービスを提供するような場合は、利用規約の重要性は高くなってきます。どこまでがサービスの範囲なのか、どういった権利が利用者に付与されているのかがより明確になっていることが重要です。
サービス形態や販売物などに合わせた利用規約に
利用規約の作成については、その雛形をインターネット上に掲載して、空欄を埋めることで利用出来るようにしているサイトなどがあります。しかし、こうした雛形を利用する場合は、必ず内容を事前に何度もよく読んでみる必要があります。
必ずしもこうした雛形の利用を否定はしません。しかし、ECサイトの事情や、サービスの内容などはまさに千差万別です。その中で、一つのフォーマットを基本にするのはいささか危険です。作れば良いという性格のものではないのでそこはしっかりと作り込んでおくべきです。テンプレートも必ず、内容をよく読み、ECサイトの運営体制やサービス内容をしっかりと反映したものにする必要があります。
利用規約は、ECサイト側で決めた事項を記載して掲示します。これを何かトラブルがあった場合には、ECサイト側は利用規約の記載事項をベースにして、対応することになります。そのため、重要なのはトラブルになりそうな事柄について、しっかりと事前に方針を決定して記載しておくことです。
また、トラブルになりそうなことはユーザーも混乱しやすい項目です。そうした部分こそ丁寧に取り扱ってください。
例えば多くのサイトでは発送スケジュールについて記載していますが、必ず遅延が発生した場合にどういった扱いになるかを記載しておきます。また、返品や返金についてのルールも決定し記載するようにしましょう。現在は様々な決済方法があるので、どのようにして返金が可能かは運営者としても当然確認しておく必要のある項目です。
また、サービス内で専門的に使われる用語や解釈が複数あるような用語についてはしっかりと定義しておくことで齟齬を無くすようにすることも重要です。
まず基本的に自社ECサイトで販売しているものをしっかりと定義して、利用規約に明示しましょう。そのうえでコンテンツを販売していたり、機能をユーザーに提供しているマッチングサービスなどのような場合は、その取り扱いについてしっかりと利用規約に明示する必要があります。
著作権に関わる商材は利用規約に盛込むことが多くなる
ソフトウェアや情報商材などコンテンツが商品となっている場合は、著作権が発生します。そのため、通常の物品を販売する行為とは若干異なります。しっかりと禁則事項を決めておかなければ、大きなトラブルの原因になることもあります。
例えばユーザーが購入した商品を譲渡するような場合についてはしっかりと決めておく必要があります。再販を禁止することで知的財産の再販売などを目的にした購入を防ぐことにもつながります。知的財産権などの権利に関わることについては特に慎重さが必要です。
また、口コミの掲載など取入れる機能の内容によっても利用規約に掲載しておくべき項目が増えてきます。
例えば、例に挙げた口コミ機能はユーザーがサイト内を回遊する中で購入の動機にもなりやすいコンテンツです。SEO的にも効果があると一部では言われており、その機能を実装したいと考えるECサイトも少なくありません。一方で口コミはしっかりと事前にルールを決めておかないと管理が大変です。何も手を入れないでおくと炎上の原因にもなります。
また、最近ではSNSと連携しやすいようにボタンでリンクを設置するパターンも多くなりました。SNSでの拡散も大きな宣伝になりますが、それぞれのアカウントで自由な内容を投稿できます。そうした内容についても、もし悪意のある投稿が行われた場合には対策できるように免責条項をしっかりとつけておくことが重要です。他者の権利を侵害するような行為が行われる場にECサイトがならないようにルールを作っておくことが社会的にも重視されています。
また、場合によっては優良なユーザーを保護して、悪質なユーザーを排除するためには利用規約を違反したユーザーに対するペナルティなどを明記する必要があるようなケースもあります。
いずれにしてもこうした項目は「何をしたら、どうなるのか」ということをしっかり記載する必要があります。
途中での変更もできる
利用規約は、サイト側が提示して、ユーザーに同意してもらうことで効果を発揮します。そのため、どういった形で同意を得るかということは重要です。多くの場合はサイト閲覧自体は自由にしてもらい、なんらかのアクションが必要な場合には、会員登録をしてもらい、登録の時に利用規約に同意を得るという形式が一般的です。
利用規約は変更することも可能です。当然、サービスを継続していく中で変更を求められることもあるでしょう。そうした場合はそれに合わせて利用規約の変更も忘れずに行う必要があります。
ただし、注意しなければいけないのは、利用規約を変更した場合には改めてユーザーに同意を得る必要があるということです。また、事前に「利用規約の変更について」といった項目を設けておくことで、変更するときのルールを明示しておくのもよいでしょう。
利用規約自体は全公開されていることが重要です。そしてここに、そのECサイトはどういったサイトなのかといったことが理解出来るようになっています。そのため、サイトのブランディングとも大きく関わっているのが利用規約といえます。ブランディングを考える場合も、今一度、利用規約について見直してみる、考えてみるということは有効です。自社が行いたいブランディングとの乖離がないか今一度確かめてみてください。
弊社ではブランディング会社として、ECサイトの構築や運用、またDXに向けたツールの活用のサポートも行っています。利用規約だけでなく、運用面全体のお困りごとなどもぜひお気軽にご相談ください。