ECで複数のチャネルを持つなら一元管理システムの活用にメリットあり
2020.07.13
ECサイトも、実際の店舗のように複数のモール型ECサイト、自社サイトなどで他店舗、多チャンネルで展開することは少なくありません。しかし、よほどの大手企業でもない限り、それぞれのチャネルに専属の担当がつくことはまれです。
そのため、販売のチャネルが増えた分だけECの運営担当者は業務が増えていきます。この問題を解決するのが一元管理システムの導入です。ここでは、そのメリットとともに、どういった機能が利用出来るのかサービスの選択方法なども合わせて解説します。
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複数のECチャネルの運営に追われるなら導入するメリット大
個別での操作は簡単であったとしても、そうしたシステムが複数で並列にあり、全てに手を加えるとなると途端に業務の負荷は大きなものになっていきます。そうした現象はECサイトの運営でも同様です。
もし、実際にそれぞれの販売チャネルで異なる複数の管理画面をコントロールする作業に追われているのであれば、一元管理システムの導入がいろんな問題を解決してくれるかもしれません。
自社のECサイトだけでなく、積極的に販路をモールにも出店してインターネット上の販売ルートを広げている企業は少なくありません。モールとはAmazonや楽天市場、Yahoo!ショッピング、Lohacoなどの大型ECサイトのことです。複数のモール型ECサイトに出店することで、それぞれのサイトについているユーザーへのアプローチを目指しています。
ECサイトは集客、さらには実際に購入してくれる顧客化が課題です。初めてのオンラインショップでは購入をためらうユーザーの数は非常に多いのです。そうした課題を解決するための一つの回答がモールへの出店です。
また、ECを通販という範囲に広げていくと電話やFAXなどもまだまだ利用されています。販売できるチャネルを多く持つことでいろんな層のユーザーを取り込んでいく販売戦略は実店舗を持たずに販売網を広げるうえでの常套手段ともいえます。
しかし、インターネット上での販売は「どれも似たようなものだろう」と色々なモール型のネットショップへと手を出し多角化すると、作業がその分どんどん足されていきます。
毎回、受注の確認やメールの送信、在庫の管理に加えて、それぞれのチャネルから来た顧客対応などについて、それぞれの管理画面にログインして開いてから作業を行っていかなければいけません。ルールもそれぞれのモールの基準に合わせる必要があります。その結果、工数は膨大になります。そうした結果、その分ミスも増えます。
また販売機会の損失にもつながります。データを分析する場合にもそれぞれの管理画面を開いて行う必要があるため、煩雑になりがちです。その結果、積極的な施策を打つこともままならなくなります。
一元管理システムはそうした問題に対応するために、一つの管理画面で、複数のサイト管理を文字通り一元化して行えるように開発されたシステムです。日々の画面上で行うような運営業務の負担を効率化することで軽減できます。売上の管理などもEC事業全体としてまとめて管理しやすくなります。
デメリットは多くはない
導入のデメリットはそれほど多くはありません。デメリットとして例えばよく指摘されるのは、導入時に業務フローの変更が必要になるということです。しかし、もしすでに業務の重複で現場が疲弊しているのであれば、あきらかにメリットよりデメリットが上回ります。業務フローを変更することで解決できるのであれば、できる限り対応すべきといえます 。
もう一つの問題はデメリットというよりも課題です。自社サイトのシステムが希望する一元管理システムと相性がよくないことがある、使えない、または追加でカスタマイズが必要になることで導入のコストが大きくなることがある場合があります。これについては導入前にしっかりと検討してどのシステムなら可能なのかなどを調べておく必要があります。
しかし、業務フローの変更やシステムのカスタマイズはいずれも導入後のデメリットにはなり得ないといえます。複数のサイト管理が発生している状況であれば、メリットの方が大きく上回るでしょう。
もちろんチャネルを一本に絞ってECサイトの運営をしている場合は導入を検討する必要はありません。しかし、もし複数のチャネルを持つ予定があるのであれば、事前に一元管理システムの導入を検討しながらサイトの構築手段を選択するという方法もあります。
モール運営については、この他の記事でも何度となく触れてきました。モールでの販売はEC初期にはメリットも多くあるので、モールでのECを先行している場合にそのまま運営を続けていこうという場合は一元管理システムの導入は初期からでも積極的に検討してもいいでしょう。
【参考】自社サイトはモールに出店していてもやるべき3つの理由
一括管理でルーティンワークを効率化しよう
ECサイトの一元管理システムを導入するメリットはECにおける日常のルーティンをそれぞれのサイト管理画面で何度も繰り返さなくてもいいことです。
同じ作業でもそれぞれの作業箇所が複数にまたがっていれば、当然それだけ分散して手間がかかります。季節ごとに入れ替わるような商材を扱っていたりすると、特定の時期には作業が膨大になりますが、その負担はチャネルのかけ算で増えていくことになります。
そうした負担を軽減するのに一役買うのが一元管理システムです。
主に
- 受注管理
- 在庫管理
- 連絡メール
- 出荷作業や配送の確認
- 商品登録
- 分析
などを一括管理することができます。どれもECサイトの運営では日常的に発生する業務ばかりです。
導入することで複数の管理画面を切り替えながらの非効率な作業を圧縮できるようになります。
また一元管理することで、複数のサイトで受けた注文から発送までのステータスなど、業務のルーティンとして必須の情報を一つのインターフェースで見ることができるようになります。そのため確実に受注の管理や出荷作業の視認性は高くなります。
例えば、ステータスごとに追えば、どのサイトからの受注に対して送り状が出力されていないのかといったことも確認できるようになるわけです。結果的に人的要因によるトラブルを減らすことにもつながります。
在庫管理の統合は販売機会の損失回避にも繋がる
こうした作業の中でも、販売のためのチャネルが増えると、特に難しいのが在庫管理です。在庫管理ではそれぞれのサイト間で出荷可能な在庫商品の数値を調整しなければ行けません。
例えば自社サイトと楽天をバラバラに管理していたとします。倉庫には在庫が10あったため、そしてそれぞれの在庫を5ずつ割り当ててました。数時間後に自社サイトで商品は5つ売り切れます。もしそれ以降にユーザーが商品ページに来ても在庫切れと表示されているため、購入できません。しかし、本来は楽天のための在庫が5個残っており、販売機会を失ったことになります。
このような場合、どのサイトでどの程度受注があるかの予測をしながら数値を決めていく必要がありますが、どうしても予想の範囲でしか数値を決定できません。そのため、予想を裏切って特定のチャネルでの受注が増えると、他のサイトでは在庫が余っているのに、人気が集中しているサイトでは売り切れをおこして販売機会を失うことになります。
こうした課題にも多くの一元管理システムは答えてくれます。在庫を一つの在庫として捉えて自動で処理してそれぞれのサイトに割り振りすることでこれを解決します。あくまで大きな一つの山から切り取っていくので、チャネルごとに偏った場合も販売機会を逃すことを防ぐことができます。
このように一元管理システムの導入による作業の効率化によって得られる恩恵は
- 作業時間の圧縮
- 人為的ミスの削減
- 販売機会の増大
などがあります。どれも売上拡大、ECの費用対効果向上に関わるものといえます。業務が効率化されれば、時間が確保されることで、売上を上昇させるための施策を打つチャンスも増えてきます。
実はけっこうある一元管理システム、導入は状況にあわせて
ここまで読み進めていただくと複数チャネルでEC事業を展開している、あるいはしたいと思っているなら、一元管理システムを入れたいと考える方が多数を占めていると思います。
問題はどのシステムを入れるかという問題です。よく「一元管理システム○○選」や比較をして紹介しているサイトがありますが、結局のところあまり比べ用が無いのが現実です。
モールだけに出店しているのであれば、こうした比較サイトは役に立ちますが、自社サイトを構築している場合はその構築方法に縛られることになるからです。
カートASPに対応しているサービスもありますが、逆に今利用しているカートASPが対応していなければ、その一元管理システムをいくら機能が豊富でも選択しようがありません。まずは自社サイトの構築状態に合わせて選択出来る一元管理システムをピックアップしていく必要があります。
もし対応しているのであれば、その利用月額や欲しい機能がついているかなどをファクターとして選びましょう。
メールの文面一括管理や、商品登録を一括で行えるなど、機能には若干の差があります。また、特に商品のバラエティがなく大量に倉庫に在庫を抱えているような、サイトでの販売在庫管理が不要な商品を販売しているのであれば、在庫管理の機能がそれなりでも困らないかもしれません。
他にも分析機能が付属しているものもあります。それぞれの個別の分析ページなどを参照する必要がなく便利です。また、連携のバリエーションとしては実店舗との連携、会計ソフトとの連携などが可能になっているなどもあります。このあたりはオムニチャネル化なども意識している機能で、今後は重要な要素になっていく可能性が高いです。
導入後のサポートが充実しているといった場合もあります。ただし、基本的な受注や在庫管理などの機能は概ね同じです。
もちろん管理画面はそれぞれのシステムによってインターフェースや操作は違います。こうした面もそれぞれの環境があるので、一概に良い悪いを判断できません。
APIと呼ばれる連携用のプログラムを公開しているASPプロバイダーも少なくありませんので、そうしたAPIの確認もしておくとよいでしょう。
【参考】APIを使って自社のECサイトをより便利にパワーアップしよう
価格は¥10000程度から
価格帯は月額で概ね「¥10,000〜¥50,000前後」で選ぶことができます。いきなりサービスを提供している事業者に確認する方法もありますが、そうする前にまずは、自社内のECに関する現状をしっかりと把握しておくようにしましょう。
もし、実際にサイト制作に携わった信頼できる業務提携先があるのであれば、相談してみることも重要です。また、構築前であれば、しっかりと事前にモールなどの出店をしていることなどの現状を考慮してください。
随時対応を一緒に考えてくれる制作会社や運営会社と取組むことが重要なのは言うまでもありません。導入したけれど、効果はなかったといった結果には注意しなければいけません。
あくまで運営の効率化を目的に導入するということは常に念頭に置いて進めましょう。