デジタル人材のスキルセットは職種一覧ではなく自社の課題から導く
2021.06.21 2026.09.02 更新
デジタル人材を育てたい、というご相談をいただくことがあります。ところが「どんなスキルが必要ですか」と伺うと、答えが出てこないことがほとんどです。
調べれば職種の一覧も、必要なスキル領域の分類も出てきます。それを眺めても、自社の誰に何を足せばいいのかは見えてきません。研修の予算だけが先に決まっていることもあります。
一般には、必要なスキルを一覧から選び、研修で埋めていくものだと語られます。かいなはそう考えていません。スキルセットは職種一覧から選ぶものではなく、自社のどの判断が止まっているかから逆算するものです。順序を逆にすると、覚えたことが業務に接続しないまま終わります。
CONTENS
デジタル人材が足りないという話が、社内で止まってしまう構造
人材不足が言われ続けているのに、社内の育成が進まない。この行き止まりには、いくつか共通した形があります。
スキル一覧を眺めても、自社の欠けは見えてこない
経営、業務設計、事業開発、マーケティング、IT知識、システム開発、データ分析。デジタル人材に必要とされる領域は、たいていこう並べられます。
この一覧は間違っていません。ただし、どの会社にも当てはまる書き方をしているので、自社で何が欠けているかは判別できません。
欠けが見えるのは、具体的な業務が止まった瞬間だけです。誰も数字を見ていない、見ても次の一手を決められない。そこにしか手がかりはありません。
資格から入ると、業務と接続しないまま終わる
手をつけやすいので、資格取得の補助や研修受講から始める会社は多くあります。受講した記録は残りますが、業務の進め方は変わらないままということが起きます。
理由は単純で、学んだ内容を使う場面が翌日の業務にないからです。使わない知識は数か月で抜けます。
資格そのものを否定するつもりはありません。順番として、先に「この判断を社内でできるようにする」と決めてから学ぶかどうかで、定着はまったく変わります。
ツールを入れた時点を終わりにしない
プラットフォームを選んで導入すれば完了、という感覚は今も残っています。ところが売り方も客層も毎年変わるので、設定した条件はすぐに実態と合わなくなります。
必要なのは、ツールを直せる人ではなく、実態がずれたことに気づける人です。この2つは別のスキルです。
気づけるかどうかは、日々の数字と現場の声の両方に触れているかで決まります。触れていない人に気づけと求めても、無理があります。
自社でECを運営して分かった、必要なスキルの見つかり方
かいなは支援会社であると同時に、自社ECを4サイト、撮影スタジオとレンタルスペースを2拠点、自分たちで運営しています。育成の話をするとき、まずこの経験から引きます。
受注とお客様対応を自分たちで持つと、必要なスキルが具体になる
企画からデザイン、日々の受注処理とお客様対応まで、かいなは自分たちで回しています。広告費が想定より効かなかった朝の焦りも、レビューが1件ついた日の嬉しさも、自分の金と在庫で経験しています。
この状態にいると、必要なスキルは一覧から探すものではなくなります。「返品理由の傾向を月末までに読めるようにしたい」といった形で、業務の側から出てきます。
出てきた要求は具体的なので、学ぶ範囲も絞れます。全領域を網羅する必要は、最初からありません。
人任せにした領域からは、判断できる人が育たない
広告を代理店に、SNSを制作会社に。分業そのものは合理的ですが、丸ごと預けた領域は社内で判断できなくなります。
かいなに来る相談でも、掘っていくと「データを活用しきれていなくて、お客さんの顔が見えない」という一点に行き着くことがよくあります。入口が「カートを替えたい」でも、実際の課題はそこです。
顔が見えないのは、データがないからではありません。データを見る人と、売り方を決める人が離れているからです。
スキルセットは、毎日そのデータを見る人から逆算する
誰にどのスキルを足すかを決めるとき、かいなは「その数字を毎日見ることになる人は誰か」から考えます。
受注データなら出荷担当、問い合わせ内容ならカスタマー担当、配信結果なら販促担当。役職ではなく、接触頻度で決めます。
週に一度しか触らない人に高度な分析スキルを積んでも使われません。毎日触る人に、集計の考え方を一段だけ足すほうが、翌週から変化が出ます。
職種の一覧をどう使い、どこでは使わないか
プロデューサー、ビジネスデザイナー、アーキテクト、データサイエンティスト、UXデザイナー、エンジニア。この職種分けは、外部と組む範囲を決めるときには役に立ちます。使う場面を間違えなければ有効です。
一人で全部を満たす人材を探す進め方はすすめません
全領域をハイレベルで備えた人は、実際にはほとんど存在しません。探し続けるあいだ、社内の状況は何も変わらないままです。
現実的なのは、2つか3つの領域が重なる人を社内から見つけることです。業務を知っていて数字に抵抗がない人は、たいていどの会社にもいます。
その人に足りない領域だけを外部で補う。この形なら、数か月単位で動き出せます。
研修カリキュラムを先に固める進め方もすすめません
年間の育成計画を先に組み、そこに人を当てはめるやり方は管理しやすい反面、業務側の変化に追いつけません。
半年前に決めたカリキュラムが、今期の課題と噛み合っていないことは珍しくありません。それでも計画は消化されていきます。
かいなは決まった型に当てはめる進め方をとりません。育成でも同じで、いま止まっている判断に合わせて内容を組み替えるほうが結果につながります。
外部に任せてよい領域と、社内に残す領域
実装や技術選定は、外部に任せても支障が出にくい領域です。仕様として言語化できるからです。
一方で、誰に何を売るかの判断、お客様の声をどう読むかは社内に残します。ここを外に出すと、判断の根拠が社内に蓄積しません。
境目は「毎月変わるかどうか」で引きます。毎月変わるものは社内、めったに変わらないものは外部。この線引きで大きく外れることはありません。
育成に踏み出すかどうかを、自社で判断する分かれ目
すべての会社がいま育成に着手すべきだとは考えていません。条件によって答えが変わります。
その業務が毎週動くか、年に数回か
毎週判断が発生する業務なら、社内に人を置く価値があります。反復するので習熟し、外注のたびに説明する手間も消えます。
年に数回しか動かない業務は、育てても腕が鈍ります。たとえば大規模なサイト構築は、その都度外部と組んだほうが早く、質も安定します。
頻度を数える。この一手間で、育成対象はかなり絞り込めます。
データを見て決める権限が、現場にあるか
分析できる人を育てても、施策の決裁が上に上がって数週間かかる会社では、スキルは活きません。育てた本人が先に疲れます。
権限が動かせないなら、育成より先に、決裁の範囲を決め直すほうが順序として正しいことになります。
逆に、現場が小さく試せる会社なら、教える内容は最小限で足ります。試した回数が経験になります。
成果を何で確認するかを、先に決めておく
育成の成果を受講者数や資格取得数で見ると、業務の変化と切り離されます。見るべきは、その人が下した判断が増えたかどうかです。
たとえば、問い合わせの傾向を見て商品ページの説明を書き換えた回数。配信内容を自分たちで変えた回数。行動の数で確認します。
数か月試して行動が増えないなら、教える相手か、任せる範囲のどちらかがずれています。内容を変えるより、そこを見直すほうが早く戻せます。
デジタル人材の育成について、お気軽にご相談ください
デジタル人材をどう育てるかというご相談は、掘っていくと「お客様の動きが社内で読めていない」という話に行き着くことがよくあります。
その場合に必要なのは研修の一覧ではありません。どのデータを誰が毎日見るのかを決め直し、そこに合わせて足りない部分だけを補う作業です。
データと施策をつなぐところでは、購買データと連動したLINE CRMや、お客様の選び方を可視化するERABのような仕組みが助けになることもあります。サイト構造そのものが原因なら、ブランドサイトとECの統合から考えたほうが早いケースもあります。
かいなは自分たちでもECを運営しています。売る側の実感を持った相手として、30分の無料相談からお付き合いします。お気軽にご相談ください。