ECサイトの運用で使われていない機能を見つけ直すための判断基準
2020.07.27 2026.09.02 更新
管理画面には、一度も開いたことのないメニューが並んでいる。名前は知っているけれど何が起きるか分からないので触っていない。ECを続けていると、そういう機能が少しずつ溜まっていきます。
いつか整理しようと思いながら、日々の受注と問い合わせでその時間は取れません。気づけば数年、同じ使い方のまま来ている。よくある状態です。
一般には「機能をひととおり覚えれば運用は効率化する」と語られます。かいなはそう考えていません。使われていない機能の大半は、使わなくていい機能です。手をつける順番を決めるのは機能の一覧ではなく、お客様のどこが見えていないかです。
CONTENS
運用と運営を分けて考えると、お金と時間の行き先が決まる
言葉を分けること自体に意味はありません。分けると、いまの困りごとが今日の作業で片づくのか、来期の投資でしか動かないのかが見えます。
運用は今の売り場を回すこと、運営はできることを増やすこと
運用は、いまある売り場の中でできることを回す仕事です。受注処理、商品登録、メール配信、在庫の更新がここに入ります。
運営はその外側まで含みます。何を売るか、どこから人を連れてくるか、来年どう変えるか。英語にすればoperationとmanagementの違いです。
現場ではほとんど区別せずに使われる言葉です。それでも一度切り分けると、目の前の不満をどちらの土俵で解くべきかが決まります。
運用の上限は構築時に決まる、はいまも半分だけ正しい
以前は、構築時に入れた機能がそのまま運用の天井でした。いまはアプリや外部サービスとのAPI連携(システム同士をつなぐ仕組み)で、後から足せる範囲がかなり広がっています。
ただし後から足せるのは機能であって、データの持ち方は簡単には変わりません。商品情報をどの単位で持っているか、顧客と受注がどう紐づいているか。ここは構築時の設計がそのまま残ります。
つまり天井は、機能の数ではなくデータの持ち方の側にあります。使える機能を数えるより、自社のデータがどう並んでいるかを見たほうが早いです。
機能の棚卸しは、4つの箱に分けてから始める
全機能を覚えようとすると、たいてい途中で止まります。かいなは次の4つに並べ直してから、触る順番を決めています。
商品・顧客・決済・コミュニケーションで並べ直す
- 商品とページの管理(登録、カテゴリ、在庫の反映)
- 顧客データの管理(会員情報、購入履歴、絞り込み)
- 決済と受注の処理(入金確認、ステータス変更、返品対応)
- コミュニケーション(メール、クーポン、レビュー、LINE連携)
SNS連携もブログ機能も、この4つのどれかを助けるために付いています。単独で価値がある機能はほとんどありません。
並べ終えたら、箱ごとに「毎週いちばん時間を取られている作業」をひとつ書き出します。当面触るのは、その4つの周辺だけで足ります。
自社ECを4サイト運営していて、効いた機能は地味な場所にあった
かいなは支援会社であると同時に、自社ECを4サイト運営しています。カニと北海道海鮮のギフトEC「かにと。」もそのひとつです。
年末に受注が集中する商材ですが、効いたのは販促向けの華やかな機能ではありませんでした。のし、配送日、お届け先違いの注文を取り違えずに捌くための機能です。
出荷は作業ではなく、箱が開けられる瞬間がお客様との最初の接点になります。そこを守る機能から先に覚えたほうが、遠回りに見えて売上に近い。自分たちの在庫で回してみて分かったことです。
使っていない機能の大半は、使わなくていい機能
棚卸しをすると、触っていない機能がずらりと出てきます。それを全部使おうとする必要はありません。
判断の材料は「4つの箱のどこを楽にするか」です。どこにも当てはまらない機能は、自社の商材と噛み合っていないだけで、放っておいて構いません。
逆に「実はこうすれば楽だった」が見つかるのは、顧客とコミュニケーションの箱に集中します。ここだけはテスト注文を入れて、実際の挙動を確かめる価値があります。
機能の使いこなしより先にやることがある、とお伝えする場合
運用の見直しをおすすめしないこともあります。判断の材料として3つ挙げます。
受注量に人が追いついていないとき
出荷が遅れ、問い合わせが溜まっている状態で管理画面の勉強を足すと、現場はさらに止まります。習熟の時間は、いまの現場にはありません。
この段階で先に手を打つのは、受注から出荷までの流れそのものです。かいなのMUSUBが既存カートとAPI連携し、フロントに手を入れずに出荷側だけを整える設計なのも、売り場を止めずに直すためです。
機能の習熟は、手が空いてからで間に合います。順番を逆にすると、どちらも中途半端になります。
LP主体・広告主体で回していて、運用で埋めようとするとき
広告からLPに集めて単品を売る形は、そもそも売り場の機能をほとんど使いません。管理画面の外側で勝負が決まっています。
ここで機能を増やしても、動くのは広告の中身と商品の見せ方のほうです。かいながこの形の運営に運用改善から入らないのは、構造として噛み合わないからです。
取り組むなら、獲得後にどう関係を続けるかの設計から入ります。それは運用ではなく運営の仕事です。
半年以内にカート移行を決めているとき
移行が決まっているカートの独自機能を覚え込んでも、移行日には持ち越せません。学んだ操作の多くは無駄になります。
この時期にやる価値があるのは、いまの管理画面で不便だった点を、日付つきで書き出しておくことです。
そのメモはそのまま移行先の要件表になります。機能一覧を眺めて選ぶより、自社の不便から選んだほうが外しません。
運用で直すか、構築で直すかを見分ける3つの条件
同じ不満でも、条件によって答えは変わります。かいなが相談の場で使っている見分け方を書きます。
週に何度も起きることか、月に一度のことか
週に何度も発生する手作業は、運用の工夫で削る価値があります。一括更新やCSV、自動送信の設定でたいてい形になります。
月に一度しか起きない作業のために外部連携を組むと、覚え直すコストのほうが上回ります。手でやったほうが早い作業は残して構いません。
頻度を数えずに「効率化」と言い始めると、使わない仕組みが増えていきます。まず数えるところからです。
直したいのは管理画面の中か、お客様が見る画面か
不便が管理画面の中で完結するなら、運用の範囲で片がつきます。設定変更と手順の見直しで終わることが大半です。
お客様の画面に出る問題は別です。商品が探せない、スペックを並べて比べられない、読みものから購入に進めない。ここは機能の使い方では動きません。
探せない側はERABのようにカートを改修せず選ぶ体験だけを足す方法があり、ブランドサイトとECの分断は統合の話になります。切り分けてから予算を決めます。
データを見ている人が社内にいるか、いないか
機能を使いこなしても、購入履歴を誰も見ていなければ配信の中身は変わりません。相談を掘っていくと、ここに行き着くことがよくあります。
社内に見る人がいるなら、運用の改善はそのまま成果に変わります。いないなら、まず誰が何を毎月見るかを決めるほうが先です。
自社ECのスケールには、相当な伴走とお互いのパワーが要ります。人任せにした施策が伸びないのは、この一点に尽きます。
ECサイトの運用の見直しについて、お気軽にご相談ください
使っていない機能を洗い出したい、というご相談は、掘っていくと「お客様の顔が見えていない」という話に行き着くことがよくあります。
その場合に必要なのは機能の勉強会ではありません。4つの箱のどこが詰まっているかを一緒に見て、運用で削るところと、構築でしか直せないところを分けることです。
かいなは自分たちでもECを4サイト運営しています。売る側の朝の焦りを知っている相手として、30分の無料相談からお付き合いします。診断だけ持ち帰っていただいて構いません。