SDGsで企業に関係が深そうな目標12「つくる責任 つかう責任」を考えてみよう
2022.02.14
17ある目標の一覧を眺めるとこの目標12は一見して企業活動に関わりが深そうな目標です。ただし、それだけでは大きな枠組みなのでしっかりとSDGsの取り組みとして定められるのかを考える必要があります。ここでは目標12にフォーカスしてその視点を解説します。
企業と個人で行う環境維持に向けた取り組み「目標12」
SDGs参加への推奨が盛んな今日この頃ですが、いったいどういったところから参画すべきか悩むケースも、企業の場合は少なくないかもしれません。
SDGsは多くのテーマを取り扱いますが、労働環境に関する項目以外で多くの企業に業務上で関連がでてきそうなのが「目標12 つくる責任 つかう責任」ではないでしょうか。
この目標12は持続可能な生産と消費の形態を社会につくっていくことを目標としています。今までの経済構造の目指す方向性は「大量生産・大量消費」でした。それを抜本的に変えて行こうというのがこの目標12です。
大量生産・大量消費の構造に則って様々な物事やルールだけでなく、価値感までもが作られてきました。しかし、このままその経済構造では地球の資源や循環のサイクルを消費が上回り、枯渇してしまいます。そうなるといろんなことが維持できなくなると考えられています。
日本の人口は減っていますが、世界的な視点でみると世界の人口は増えている状況の中です。そうした中で大量生産・消費の構造は維持できないため、転換する必要に迫られています。
そうした構造自体の転換も含めて変えて行こうというのがこの目標12です。利用する資源を少なくし、かつそれを長く利用するように経済も生活も変えて行くことを目指します。いわゆる単純な省エネと違うのは、少なくするだけでなく、長く使う、資源の採取からのサイクルを外して循環も目指すところにあります。テーマはあくまでも「持続可能な成長」ですのでただ循環するだけでもなく、省エネでもありません。つまり高度な効率化と把握するのがよいのかもしれません。
目標12のターゲットは11
SDGsでは17ある目標一つ一つにそれを達成するためのターゲットが設定されています。枝番で数字がついたものが目標を達成させるための課題です。枝番以下にアルファベットを用いているものは対策を示しています。
目標12では、枝番で数字のものが8項目、アルファベットが3項目あります。まずは具体的に見てみることにしましょう。
- 12-1開発途上国の開発状況や能力を勘案しつつ、持続可能な消費と生産に関する10年計画枠組み(10YFP)を実施し、先進国主導の下、すべての国々が対策を講じる。
- 12.2 2030年までに天然資源の持続可能な管理及び効率的な利用を達成する。
- 12.3 2030年までに小売・消費レベルにおける世界全体の一人当たりの食料の廃棄を半減させ、収穫後損失などの生産・サプライチェーンにおける食料の損失を減少させる。
- 12.4 2020年までに、合意された国際的な枠組みに従い、製品ライフサイクルを通じ、環境上適正な化学物質やすべての廃棄物の管理を実現し、人の健康や環境への悪影響を最小化するため、化学物質や廃棄物の大気、水、土壌への放出を大幅に削減する。
- 12.5 2030年までに、廃棄物の発生防止、削減、再生利用及び再利用により、廃棄物の発生を大幅に削減する。
- 12.6 特に大企業や多国籍企業などの企業に対し、持続可能な取り組みを導入し、持続可能性に関する情報を定期報告に盛り込むよう奨励する。
- 12.7 国内の政策や優先事項に従って持続可能な公共調達の慣行を促進する。
- 12.8 2030年までに、人々があらゆる場所において、持続可能な開発及び自然と調和したライフスタイルに関する情報と意識を持つようにする。
- 12.a 開発途上国に対し、より持続可能な消費・生産形態の促進のための科学的・技術的能力の強化を支援する。
- 12.b 雇用創出、地方の文化振興・産品販促につながる持続可能な観光業に対して持続可能な開発がもたらす影響を測定する手法を開発・導入する。
- 12.c 開発途上国の特別なニーズや状況を十分考慮し、貧困層やコミュニティを保護する形で開発に関する悪影響を最小限に留めつつ、税制改正や、有害な補助金が存在する場合はその環境への影響を考慮してその段階的廃止などを通じ、各国の状況に応じて、市場のひずみを除去することで、浪費的な消費を奨励する、化石燃料に対する非効率な補助金を合理化する。
以上が内容です。
まずは後半のアルファベットの3項目について見てみましょう。かなり内容が限定されているのがわかります。またその中身は特に12.Cについては企業での取り組みというよりも行政に向けた内容になっています。12.bも開発コンサルなどでない限りは行政の範疇といえるでしょう。12.aについてもかなり政治的な内容になっています。技術開発をするような企業であればこれが活動の範疇に入ってきますが、かなり限定的であるため、多くの企業が目指すものではないといえます。
数字で振られたターゲットも企業単位での取り組みではない内容がいくつかあります。12.1は国家的な取り組みとしての内容です。企業としては決定をフォローする必要がありますが積極的にこれをどうにかしようという内容ではありません。12.4と12.7は同様に政治的な決定が実行の要素を握っています。基本的にイニシアチブがなく、行政の枠組みに沿って行動することになります。策定よりも実施に重きをおくことになります。
12.6のあり方は少し特殊です。実際にSDGsを取り組む企業に対しての報告をするよう課しています。
こうしてみると残されたのは4項目です。それぞれをもう少し取り上げてみましょう。
12.2 2030年までに天然資源の持続可能な管理及び効率的な利用を達成する
この項目を実施していくために企業は何ができるでしょうか。可能なことは発注や製造なども含めて天然資源を利用する場面での効率化を背景に考えていくことです。今までの業務自体を見直す必要があるかもしれません。効率的なシステムの導入などでこうしたことに貢献できる可能性があります。
たとえば石油燃料を使う場面というのはどういった場合かといったことも変革の範疇に入ってきます。遠いところではマイカー通勤などを廃止し、自転車通勤を変わりに推奨するといったことも考えられるかもしれません。多くの場面ではいままでの 企業としての業務やその周辺へのアプローチを考え、実際に変更していくことで取り組みに参画していくことが可能です。
個人であれば生活を見直すというんことになりますが、企業の場合はその仕組みを見直すことが求められている項目になります。
12.3 2030年までに小売・消費レベルにおける世界全体の一人当たりの食料の廃棄を半減させ、収穫後損失などの生産・サプライチェーンにおける食料の損失を減少させる
この内容は個人と企業に向けたものですが、その多くは個人ではなく企業に範疇があります。ただし業種はお分かりのとおり食品産業に関連するものです。ただし、生産、製造、流通、販売などの広い範囲に及ぶため、関連する企業は決して少なくないともいえます。
食料廃棄の問題は日本では特によく考える必要があります。現在は日本全国で好きな時に好きなものが購入できます。しかし、一方で大量廃棄の問題は大きな影を落としています。この背景には時節柄と結びつけた食品のプロモーションもあります。専門ではない店舗が気軽に販売することで消費される原材料の量は莫大なものがあります。中には国際的にも絶滅が危惧されているようなうなぎのような生物もいます。価格での調整を破壊してまで行ったプロモーションですが、背景には大量生産大量消費とセットで存在する「薄利多売」があります。
そうしたマインドも変えていく必要が背景にはあります。
12.5 2030年までに、廃棄物の発生防止、削減、再生利用及び再利用により、廃棄物の発生を大幅に削減する
事業ゴミを減らすことは非常に重要です。すでに事業ゴミは有料化されていますが、これをどうやったら減らすことができるのかを工夫することが重要です。実際のところ、SDGsに関連しなくてもゴミをどうやって減らすのかは大きな課題として存在しています。違法産業廃棄物が時折問題になることがありますが、廃棄物の問題は非常に根が深く、処理しきれなくなったゴミを海外へ運んでいるケースさえあります。
ここで考えなければいけないこととしては「どうやったらゴミを少なくしたり、それを再利用可能な状態にするのかを考えることです。家庭での問題とは別の思考で考えなければいけません。
現状、事業の中で多くのゴミがどこかに出ているのではないでしょうか。そうしたことを他人任せではなく、自分ごととして企業も取り組めるのかが重要です。
12.8 2030年までに、人々があらゆる場所において、持続可能な開発及び自然と調和したライフスタイルに関する情報と意識を持つようにする
ここで規定されている部分で重要なのは「あらゆる場所で」という部分ではないかと思います。個人のライフスタイルとして SDGsコンシャスな生活を企業での労働時に阻害しないということがまず第一儀としてあります。加えて、企業としても「持続可能な開発及び自然と」調和した業務のスタイルを意識した体制を持つことに努めなければいけません。
またこうしたライフスタイルの情報について社内で共有できる体制作りが求められています。
個人なしでは達成できない、企業の取り組みあってこそ
こうしてみると直接的に製造についてうたっている項目はあまりないことに気づいたでしょうか。直接作る責任についてルールが明文化されているわけではないのです。ただ、企業としてはむしろ「原材料を」どう使うかといったことにはフォーカス必要があるということもこれをみるとわかると思います。
また作ったら終わりではないということを考えなければなりません。廃棄の過程なども明示しながら製造、販売に関わっていくということがヴィジョンとして必要になっているということを意識する必要があります。
個人での取り組みに落とし込むことには限界があります。一つの商品の製造や販売を計画する時、常にその一つ一つがどういったプロセスで誕生し、廃棄までの流れを辿るのかということを企業側は意識しなければいけません。
個人の頑張りも必要ですが、企業の力なくして絶対的に達成できないのがこの目標12であるということは間違いないでしょう。