面接や会議だけじゃない!広がるECサイトでのリモート機能活用
2020.07.31
リモートワークの普及を実現させているのが数々のオンラインで利用できるツールです。新型コロナウイルスの影響で一気に普及しました。面接や会議での利用では以前から利用される流れがありましたが、ここに来て小売りのECでも利用を試みる企業もでてきました。このページではECでのリモートツールの現状と課題を解説します。
リモートの普及がECサイトを変える可能性
新型コロナウイルスの流行は社会の状況を一変させつつあります。未経験の事態に多くの企業がリモートを実際に導入し、結果的にそのインターフェースや利便性を体験することになりました。
SkypeやFacebookのメッセンジャー、AppleのFacetimeだけでなく、Zoomなどの新興勢力もあります。またGoogleもGoogle meetを無料で解放するなど、これらの遠隔での面接に利用可能なツールが市民権を得ました。実際に会議などでも使用され、これで事足りるという業種も少なくありません。
実際に製菓大手のカルビーはリモートへの全面的な切り替えを宣言しており、それに向けて取組んでおり、社会的な変革の流れは必至といえる状況です。
今まで、ECサイトでの対人による接客は課題の一つと考えられてきました。回線の速度やタイムラグなどいろんな問題はありますが、こうした機能を持たせることで、よりサイトでのショッピングでの安心感を高める可能性があります。
オンラインショップといえば、基本的には置いてある情報をユーザーが能動的に見ることで成り立ってきました。そうしたあり方を変えようという動きは今までもありました。例えばチャットボットの導入です。ビッグデータを利用してのAIによるウエブ接客機能が2〜3年前から注目されるようになってきました。
また、スマートスピーカーの導入もネットでの購買行動を変化させつつあるといわれています。Amazonは自社のスマートスピーカー開発に力を入れて消費活動の囲い込みを計っています。これに対して、直接販売のチャネルを持たないGoogleは検索のより一層の活発化をスマートスピーカーにかけて、業界内で綱引きが活発な状況です。
そしてここで実際にオンラインでの人対人の接客という手段も現実味を帯びて活きているという状況があります。
求人だけでなく販売などでも活用できる
実際にリモート機能を対面の接客に導入する事例は実は2,000年代初頭からありました。例えば銀行です。大手銀行で口座開設をするために銀行にいくと、専用のブースがあり、そちらに誘導されます。中で着席すると、モニターにオペレーターが映り手続きをしてくれるというシステムです。実際のところ、こうしたコンシェルジュ的サービスは、結局銀行まで脚を運ばなくてはいけませんし、現在のリモートの状況とはかなり違います。
実際に現場でいち早く利用してきたのはリクルート産業です。働き方の多様化でリクルート産業はいち早くオンラインでの面接の実施に力を入れていました。これをこのコロナ禍が加速させています。めざとい就活コンサルタントなどは、まだ確立していないウェブ面接の様式を確立すべく、躍起になって新たなルールの定着を目指しています。
ところで、リクルートビジネスも実はEC化が進んでいる産業の一つです。求人から実際の仕事まで、オンライン上で完結できるシステムは求人、就職希望の両方の登録者数を増やし、情報誌を駆逐してきました。現在では外資系や地方の企業が、世界中の人材を求人サイトを通して集めて、実際にに採用しています。応募者にとっても選択肢が実際に広がっています。
今、こうしたテクノロジーをBtoCでも応用できないかという取組みがされています。例えばコロナ禍以前にも百貨店の老舗としてブランドを確立している高島屋はオンラインショップの画面操作サポートにオペレーターが遠隔操作をするシステムを導入しています。これにより、購買意欲はあるけれど、PC操作などに不慣れな高齢者層を繋ぎ止めて、スキルをオペレーターが補うことで顧客の満足度を高めようというのが狙いです。
これがコロナ禍によりもう一歩進んだ取組みをする店舗が出てきました。東京の吉祥寺にある雑貨店では、店舗スタッフがタブレットで店内の商品を遠隔で案内し、決済をオンラインショップへ誘導するという取組みを行い好評を得ました。こうした実際に脚を運ばず、より商品の質感を感じる取組みが注目され始めています。
遠隔でも対面での安心感
実際にリモートでの接客によるポイントはどういった部分にあるのでしょうか。それは商品への安心感の向上です。対人で顔が見えるというところにポイントがあるような気がしますが、実際には買い物をする人が見たいのは販売者の顔以上にどういった商品が届くのかということです。
文章や写真だけでは、どうしても細かいニュアンスは掴みきれないと考える購入者は少なくありません。もちろんリモートでのソフトウェアを通した画面でも完全ではありませんが、実際に思ったように動かして貰ったり、よく知るものと比較したりしてもらうこともリモートであれば可能なので、信頼感はより高くなります。
こうしたことはECサイトでの動画の需要の高まりを見ていてもよくわかります。ユーザーはよりライヴ感、生の感覚をインターネットであろうと購入の動機として求めています。そうした点を考えると一般の消費者に小売りをするような業界では、ECサイトでのリモート接客には高い需要がある可能性があるといえるでしょう。
対応人員などの課題もある
一方で、こうしたリモートを導入したのは、このコロナ禍による実店舗での集客への危機的状況が生んだ奇手ともいえます。日本の市場はどんな場面でもどこか保守的なので、大手が思い切ってやらない限り、あるいはインディペンデントで始めたベンチャーが大きな規模になるまでは、なかなか普及しないと考えられます。
実際にリモートでのECはデメリットも少なくありません。
例えば以下のようなことです。
- 経費も含めた対応する人員の問題
- 回線の問題
- リモート接客する場所の問題
- 知らない人とのオンライン通話へのユーザー側のハードル
こうしたことが考えられます。オンラインショップのメリットの一つに「いつでも、どこからでも」というものがあります。それを実現するにはセッション数を元に人員配置を考えなければいけません。業務を過不足なくこなすためにはある程度のコールセンター程度の人員を確保するなり、アウトソーシングする必要があります。これは実際には非常に高いハードルです。
また対面になることで、アウトソーシングへのハードルも上がります。ユーザーの質問に対し的確に回答できる人材が必要です。実際に商品の知識や経験のないスタッフへのトレーニングは大きな負荷になります。その結果、高単価で原価率のよい商品でなければ導入は難しくなります。結果的にコストの点ではAIによる接客に大きく劣ることになります。
回線の問題はシビアです。必ずしもEC事業者側のインフラだけを整備すれば解決する問題ではないからです。ユーザーの回線品質も大きく影響することを考えるとなかなか解決できない問題といえます。それでも音声通話だけであればかなり実用レベルは上がって来ています。
どこで実際に対応するのかという問題があります。例えばたくさんの商品を販売している場合はそれをピックアップするのも大変です。倉庫やオフィスなどでは背景の写り込みなども気にしなければいけません。
メールで対応するのと違い、言葉遣いや服装などについても考えなければいけません。カジュアルなスタイルでいいいのか、スーツなどを着用すべきかなどいろんなことが現場での課題に出てくるでしょう。情報漏洩など新たな課題もありますし、対応するスタッフへのセキュリティなども考えなくてはいけません。
そして実は「ユーザー側がリモートでの接続すること」自体をハードルに感じている可能性もあります。ネットショッピングの良さは気軽さでもあります。実際のところカゴ落ちと呼ばれる状態は、事業者側にとっては問題ですが、ユーザーにとってはこのカゴ落ちできるというのもメリットの一つです。購入するタイミングを雰囲気に流されず自分で決めることができるのです。いろんな行動のハードルが低いからこそ気軽にネットショッピングを楽しんでいます。
そこへリモートで接客を依頼するというユーザーはもはや購入を確定しており最後の確認をしようという状況といえます。もしかしたら、他のコンテンツで後押しすることができるかも知れません。
こうして考えるとリモートの導入はメリットが少ないように思えます。しかし、業態によっては必ずしもそうでもありません。
例えばBtoBなどでは、こうしたデメリットを担当者レベルでは気にしなくなります。最後のリモート利用自体への躊躇も小さくなります。企業を背負っているので折り合わなければ断るということも織り込んでアクセスしてきます。
また、もう一つは一点ものの高単価でプレミア性の高い商品を扱うようなビジネスです。例えば呉服などです。ニッチ向けの商品を扱うというのであれば、小規模であっても導入する価値はあるでしょう。こうした商品を扱うECではブランドの確立は完了しているので、それを如何に普及するかということも課題になります。しかし、それ以上に対面での接客による効果はブランドをより高める可能性も秘めています。そうした商品は逆に気軽に購入できないところに価値がある場合もあります。こうした面でのECサイトとの相性は必ずしもよくはありませんでしたが、そうした部分にアクションを起す可能性があると言えるでしょう。
現状はまだまだ進展中
現実的なECサイトへのリモートの導入はまだまだこれからというのが現状です。しかし、可能性のある分野ということは間違いないでしょう。
どういったことも最初はリスクが多く語られ、参入の障壁になります。しかし後発であればあるほど、いろんなことにチャレンジしてブレイクスルーしてかなければいけません。そうした材料の一つになる可能性はこうしたテクノロジーにもあります。
やらない理由を探すのは容易です。しかし、今後の流れを注意深く観察していく必要があります。