ブランディングの効果はどのように評価するべきか
2021.11.16
ブランディングに興味をもっている人はこの数年でかなり増えてきました。それでも事業の中に取り入れてビジネスを展開するとなると、どのようにその効果を見極めるのかを考えると懐疑的な人もいます。ここでは今一度、ブランドの評価という視点でブランディングがもたらす効果について解説します。
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ブランディングの効果をまずはおさらい
ブランディングを評価するのは簡単ではありません。ブランディングが一過性のものであれば、その答えは出やすいものですがその効果の発現には時間がかかるからです。一方で、世の中は検討、実施とその効果測定の繰り返しといえます。しっかりと効果が出ている方向へとそれによって進行していくというわけです。こうしたことはPDCAサイクルを取り入れることが一般化してきていることでもよく理解できると思います。
そうした世の中の潮流とある意味、ブランディングは反しています。PDCAについて、どこでどう回すのか少し分かりづらいものがあるかもしれません。また、それ以上に最初のブランドコンセプトやブランドメッセージなどをどう組み立てるかで方向性がガラリと変わるため、一般的な評価基準をもちづらいのも確かです。
まずはその成果にどういったものがあるのかを考えてみる必要があります。
ブランディングの効果としては
- 価格競争からの脱却
- 購入率の上昇
- 顧客のファン化による客単価向上
- 顧客の口コミによる購入率の高い集客力
- 安定した人材雇用
主にこの5点があります。ここから派生し、ブランディングが進んでいくことでそれぞれの効果があがり、またそれぞれが相乗効果で作用していきます。
ブランディングを進めていくことで、人々はそのブランドに対しそれがどういった目的を果たすものなのかをしっかりと理解し、また、高い評価を与えます。また、さまざまなブランドの背景や物語を知ることで愛着を持ち、代替えの効かない存在へと変えていくのです。
ブランディング自体は商品だけでなく、ブランドそのものに起こることも少なくありません。「ブランドとは何か?」と問われた時、「なんらかの特定された存在」という回答をすることができます。そのため、ここに当てはまるものは何事もブランディングの対象になりうるといえます。それは特定の個人にも言えることです。
この個人についてブランディングを考えると理解しやすい部分があります。「この仕事はあの人に頼みたい」「こういったことはあの人が一番だ」ということは日常の中でよくあると思います。こうした評価をどんどん上昇させ、認知も広げていくことがブランディングです。
こうしていくことで、指名買いされるようになります。指名買いされるということは絶対評価の中にあります。「〜と比較して」と競合他社の商品と比べられにくくなっていきます。その結果、価格競争も関係がなくなるというメカニズムを持っています。
また、今後は純粋な利用者からのレヴューやその人を囲む人間関係の中での広がりによる認知向上は、メディアによるコンタクト以上に購入率という面で確度が高い状況になっていくと考えられています。
そうしたファン層を増やすという面でブランディングは欠かせない状況になっているのです。
【参考】ブランディングにはインフルエンサーよりアンバサダーを活用しよう
ブランディングの評価基準はそれぞれが用意する
とはいえ、評価をしないと導入しづらいということもあるかもしれません。実際、経営に携わるレベルのスタッフがブランディングの実施を検討しない限り、なかなか一体的なブランディングの基礎までたどり着けないことも少なくありません。
世の中を見渡してみると、確かにコンセプトがブレて一体感を欠いたブランディングの破片のようなものが溢れています。また、ブランディングに対する意識がないためにアートワークなどのクリエイティヴなものがそれぞれ孤立してしまい残念な結果になっているものも少なくありません。
そうならないためには企業全体でブランディングに取り組む必要がありますが一定の評価基準が必要です。
ただし、難しいのはブランドが「それぞれ特徴的で記名制のあるもの」という点です。それはつまり、一定のものではないということを指します。そのため、杓子定規に同じことをブランディングとして全てのブランドが行っても効果も意味もないのです。つまり、それぞれのブランディングをいかに行うかが重要です。
そのため、評価をする場合もそれぞれに設けなくてはいけないところが難しいところです。ただブランディングとして価値を置くものは普遍的なものとして存在します。
評価を考える前にブランディングでいう「価値」、つまりどういったことが結果につながっているのかを考えてみましょう。
ブランディングにおける価値の概念
ブランディングにおいて価値があるとするものは主に3点と一般的に言われています。
基本となる機能的価値
まずは「機能的価値」です。これは商品やブランドが本来持つべきベネフィットの持っている価値です。これはもっともベーシックなものです。例えば「おいしい」お菓子、”燃費がいい”車など、その元々もつ商品をより魅力的に見せる本来の部分を指すものです。
機能的価値については、多くの企業が商品開発などで力を入れています。ここが重要なのはとてもわかりやすいでしょう。これはサービス業でも適応されます。たとえば”居心地のいい”空間、であったり、”さわやかな”対応といったものです。ブランディングの例でよく出てくるディズニーランドはこの機能的価値の積み重ねも数多く行っているサービス業態の代表格です。
演出が勝負の情緒的価値
「情緒的価値」はブランディングでも注目されやすい部分です。情緒的をもっと砕いた言い方をするとつまり「好きか、嫌いか」ということです。そのブランドが好かれているかどうかが実は購買意欲に大きく関わってきます。また、好かれることで、「それをがんばって購入したい!」というような意欲を持ってもらうことなどもできます。
逆に嫌われていると「製品自体はいいんだけど、次は買わないかも」といったようなことも起こります。この情緒的価値は機能的価値にも大きく影響します。機能的価値に満足し、さらに期待以上のものを感じることで情緒的価値が上昇することも少なくありません。そういった意味でもユーザーエクスペリエンス(UX)が注目されるようになってきているという背景もあります。
よくあるパターンとしては著名な人が身につけていると欲しくなるというケースです。そのため、有名人にメーカーはサンプルを提供したりします。こうしたことは衣服や化粧品などのファッション系の商品のほかに電子楽器などに顕著です。今は有名人だけでなくアニメのキャラクターもこうした市場になってきており、注目度の高いものに対する付加価値は多種多様に利用されています。
ブランドの情緒的価値が上昇すると、他のブランドもその情緒的価値を利用したいと思うようになります。つまりそのブランドの情緒的価値が商品になることさえあります。
翻って考えるとそれだけ、情緒的価値は高く評価されるものになっているということも言えます。
唯一無二を示す自己表現的価値
自己表現的価値はある意味で創造するのが難しいものと言えます。誰も真似できないそのブランド特有の価値が「自己表現的価値」です。「〇〇といえばこれです」と言えるもので、そのブランドはどういったブランドなのか、何を目指すのかといったものが価値になります。真似をすることは困難なため、自己表現的価値が出来上がり、伝播していくととても強固になります。
そのブランドが持つ自己表現的価値をユーザーは好きか嫌いかという判断の範疇に入れます。そのため情緒的価値にも連動していくとても重要な価値判断ということになります。
そのブランドの自己表現的価値がどういったものなのかをしっかりと捉え、どこをそのブランドが目指すのかをしっかりと持つことが重要です。つまりこれはブランドコンセプトとブランドミッションということになります。
注意しなければいけないのは、これに対し価値を置くのは顧客も含めたものになるという点です。
評価測定よりも重要な価値の醸成
おしなべてブランディングをするということは2点が大きなポイントといえます。
- そのブランドの価値を高める
- そのブランドを必要な人やその予備軍に知ってもらう
この2点です。行うことが明確であればその効果を測定しやすくなります。
また、実は評価をしていくこともブランディングの作業の一つです。評価は分析という言葉で置き換えることができます。
ターゲットの設定やその展開状況を定期的に評価していくことで、自らの方針や施策の設定なども見えてくるようになります。何をどう行っていくかをしっかりと考え続けなければいけないからです。
そのためには「SWOT分析」や「3C分析」が用いられます。
その上で、もしブランディングの進行を評価するということであれば「ブランドエクイティティ」を評価していきます。
ブランドクエイティティとはブランドの資産を指します。評価するということであればこの資産について考察していくことになります。
資産価値としては
- ブランド認知度
- 顧客の品質認知度
- ブランドロイヤリティ
- ブランド連想
などです。
ブランド認知度はどの程度そのブランドが認識されているかです。多くの人に知られているほど価値が高いということになります。品質認知度は顧客がそのブランドの商品の品質をどのように想定しているかというものです。品質認知が高いということは「そのブランドの商品なら間違いがない」というように良い評価をブランドだけで判断しているかどうかを測ります。
ブランドロイヤリティは顧客がそのブランドに対し、どれだけ入れ込んでいるかを示します。ロイヤリティとは「忠誠」を意味します。この評価が高くなると同業の商品に乗り換えられることが少なくなり客単価が上昇します。
ブランド連想は、そのブランドがどういったイメージを想起するかというものです。例えばスポーツシューズメーカーであれば、「活動的で、かつスタイリッシュ、履くだけで早くなりそう」といったものです。
こうした評価を判定するには自己判断が難しく、実際にはユーザーへアンケートを取るといった方法になってきます。
ただ、評価判定を実際に行うかは別にして、こうした項目がブランディングを実施した際の効果であるということがいえます。この期待される効果を出すために積み重ね続けることがブランドをより強固にしていくことになります。