ブランディングを人に適応する「パーソナルブランディング」からブランディングを理解する
2021.11.19
ブランディングは個人でも適応することができます。また実際に政治家や著名な起業家、芸能人などはこうしたパーソナルブランディング、あるいはセルフブランディングを戦略的に活用し、それがうまくいっている結果として自身の存在の価値を高め、ビジネスの中でその地位を得ているケースも少なくありません。
しかし、実際にやることの基本はその他のブランディングと同じことです。また、ある意味では個人のブランディングについて考えることは非常にわかりやすくブランディングを理解するよい例になります。パーソナルブランディングを考えることでブランディング全般を理解しやすくなるかもしれません。
CONTENS
あの人はなぜ指名買いされるのか
職人的な専門職や個人事業主の中には、「この仕事はあの人!」といわゆる指名買いされてたくさん受注を受けている人がいます。実際には同じくらいのスキルの人が並んだ場合であっても、片方の人に受注が集まることは起こります。これは実は受注が集まる人が「世の中によく理解されている」から起こることです。
実際に自分に近いポジションの人にこういったことが起こっていると「よっぽど口がうまいんだろう」「何かずるをしているのでは?」「世渡り上手」「メディアの使い方がうまい」などなどやっかみもふくめて、いろんな意見があると思います。これはネガティブな意見として出てきやすい話ですが、これは要するにその人に対して「宣伝上手である」ということを指摘しているわけです。
同じスタート地点に立って、始めた場合、確かに一時的なものであれば個人の宣伝力やコネなどは大きく影響します。しかし、本当にそれだけでしょうか。
また、これが継続的なものであれば、単純にそうともいえません。そもそも、2つが並んでいていて片方だけが選ばれるという状況をしっかりと分析する必要がありそうです。
そして、実はこうした話は完全にブランディングについての話なのです。また、実際のところ、これは実際に仕事のシェアをたくさん持っていくその人個人がブランディングを意識しているかどうかは別の話です。結果的にブランディングされており、その個人のブランドが確立されているということは少なくありません。
ブランディングに関する他の記事でもおりに触れて個人のブランディングについて解説していますが、こうしたことはその個人のブランディングがうまくいっていることでおこります。
個人に向けたブランディングは「パーソナルブランディング」や「セルフブランディング」などと呼ばれます。
そしてこの個人のブランディングは虚像を作り上げるということではありません。個人に限らず企業であっても商品であってもブランディングについてはまだまだ大きな誤解があります。
ここでは個人のブランディングについて解説しますが、そうした誤解についても解いていきたいと思います。
「パーソナルブランディング=自分の宣伝」ではない
個人のブランディングは「自己宣伝を進めていく」「自己PRをうまくやっていく」ということではありません。
実際、いくらそうしたことを実施したとしても、自分の実力以上に示した宣伝行為は結果として継続的な評価にはならないからです。
そのため個人のブランディングをしようとして、実力以上の宣伝をすることは無意味です。当然、自慢話はあまり意味がありません。
レッテルを貼るという言葉があります。ブランディングはある意味、自分自身を理解した正しい内容でレッテルを貼ってもらう作業といえるかもしれません。そうして考えるとひたすら自己宣伝をする人は「自己宣伝に忙しい人」という評価を得ることに過ぎません。
この構図は実はその他のブランディングとも一緒なのです。
- 自分は何をする人なのか
- 自分は何ができるのか
- 自分はどんな人なのか
- 自分はなぜそれをするのか
これらをしっかりとクライアントになる人に理解してもらうことができれば、ブランディングはなされていきます。この「自分」をブランドという言葉に置き換えてみるとよくわかります。自分自身の持つ知識や技術などサービスに関わることを正確に、また十分に理解してもらうことでそれは強固になります。
これらは取り繕ったものではありません。ブランディングでは継続的な関係を築き上げていくことも重要です。それによって顧客に対して価値をしっかりと理解してもらえたユーザーがリピーターになります。リピーターが増えていくことで単発で仕事が切れなくなっていくことを目指します。
そのためには闇雲にキャラクターを作りあげて、それを演じても意味がありません。途中でボロが出てしまったり、逆に自分がその役を演じることが辛くなったりするなどで破綻することがほとんどです。顧客の求めるものにスキルがついてこなければ継続した関係を築くことは困難です。つまりこれはうまくいきません。もっとリアルな存在とそのベネフィットとしてのスキルなどを理解してもらうことが重要なのです。
そして、これは個人のブランディングだけでなく、企業のブランディングでも同様です。
何をする人か、何が提供できるのかというのはそのブランドのベネフィットです。そしてどんな人かということはストーリーブランディングといえます。なぜそれをするのかということはブランドミッションです。
つまり、パーソナルブランディングはそのまま基本のブランディングをしていくということに過ぎないのです。
これはつまりブランディングをしていく対象が個人であっても同じことであるということができます。
「自分はいったいどこの誰なのか」
「何をする人なのか」
これを周りにしっかり知ってもらうということが重要です。これができていなければ仕事を頼むという行動を引き出すことは難しいのではないでしょうか。そして、そこで形を取り繕ってもそれはブランディングとして形成されていかないでしょう。
一方、これは企業や商品のブランディングでも一緒です。正しく伝えることができなければブランディングは進んでいきません。ある意味、ユーザーに対する正直さがブランディングにとってとても重要です。過大に見せることはベネフィットを偽ることになります。そしてベネフィットを偽ることは結果としてユーザーエクスペリエンスを著しく損なうことになります。
企業と違ったリスクもあるパーソナルブランディング
企業のブラディングと違い、個人のブランディングにはリスクも伴います。個人は代替えが効かないことで、業務過多によりパンクしてしまうことがあるからです。
また、一度出来上がったイメージを覆すことは困難です。自分のやりたいことをしているうちはいいでしょう。しかし、少しづつ人間は変わっていきます。本人の嗜好が変わってくることは少なくありません。そういった場合に一度出来上がったブランドのイメージを塗り替えていくことは困難です。多くの人で形成される企業では、スタッフを拡充することで業務の幅を広げることが可能ですが個人ではそうはいきません。
もちろんブランディングのやり直しはできないことではありません。しかし、時間はかかります。
ただし、業務のなかでブランドが確立したのであれば、それをその後にどう展開していくかを考えることはできます。個人のブランドを企業の中に移し替えていくということも簡単ではありませんが可能なことです。
こうした事例としては、例えばスティーブ・ジョブズとAppleの例がわかりやすいかもしれません。ジョブスはAppleの創業者としてとても有名です。そしてAppleユーザーの中には「ジョブズが作った」という商品のアイディアを信奉するユーザーも少なくありません。ここには確実にパーソナルブランディングの効果が現れています。しかし、それをApple社はその価値をうまく取り込んでそれを企業のブランドとして活かしています。
結局のところ、リスクが一時的なものになるのか、継続的におこるものなのかは、そのブランドをどう活かすかということをどう考えるかによるところも少なくないといえます。
また、個人に向けたブランディングは複雑なアイディアを用いた方法を行うよりも、ブランディングの基本をしっかりと行うことが重要です。それこそが戦略的なパーソナルブランディングといえるかもしれません。しっかりとリピーターを増やし、信頼されるブランドとして個人の仕事が認められることが重要です。
そしてこれは企業などでのブランディングも同様であるということは忘れてはいけません。
ブランディングは一過性の関係を持つための手法ではない
ブランディングは一時的に加速度をあげて売上を上昇させるものではありません。もしそうしたものをブランディングに求めているというのであればそれは根本的に間違っています。まずはブランディングをなぜするのかということを思い出してみる必要があります。
ブランディングはブランドの価値を高めていく行為です。その結果として求められる大きなものの一つにユーザーの優良顧客化があり、売上の安定した上昇があります。
この基礎にあるのが顧客との強いつながりです。こうした関係は単純な安売りでは作ることはできません。ましてや虚構に満ちた誇大広告などは逆に信頼を失うことになります。そのため、目先のテクニックでなんとかなるものではありません。だからこそ、しっかりと基本的なこと、たとえばターゲッティングや顧客の分析のためのフレームワークなどが重要なのです。