広がり続けるEコマースの概念〜ECサイトを始めたいなら「今すぐに」
2020.08.11
Eコマースはまだ30年弱の歴史しかなく、まだまだ過渡期といえます。そのため、いまだに市場規模だけでなく技術やあり方も常に進化しつづけています。
インターネットの普及を背景に実店舗との差をどのように埋めていくかということを課題にしつつ、ECはそのメリットを伸ばしてきました。現在ではBtoB、BtoCでのECの存在感はとても巨大なものです。
ここではEコマースの歴史や実店舗との違い、共通点について解説します。その成功と失敗の流れを知ることで今後の運営の見直しや新たなEC運営に活かしてください。
CONTENS
ECサイトの昔と今
“ECは「Electric Commerc」の略称”という言葉はこのサイトでも繰り返し登場してきました。
和訳では「電子商取引」であり、その略です。オンライン上で電子化した情報を基本にしてビジネスが成立する商業形態がEコマースです。
90年代半ばに最初のEコマースが登場します。つまりECサイトが出てきました。どの会社が始めたのかという説には諸説ありますが、有力なのは1994年です。その当時は、賛否両論あり、どちらかというと否定的な意見も多くありました。まだインターネットではなくパソコン通信と呼ばれていた時代です。パソコン通信と言っても1980年代以降に生まれた人はあまりピンとこないかもしれません。
また、回線速度は今と比べると信じられないほど遅く、電話回線の音声通話を使って接続していました。それでも96年の段階ですでに普及率が3.3%となっており、その後も右肩上がりに伸びていきました。期待値の高い技術として非常に注目を集めていたのも事実です。
Amazonの日本語対応は2000年からですが、その前後くらいから日本でもECサイトがいくつか誕生しては消えていくという状況です。楽天はその当時から運営されており、国内の通販事情を大きく動かしています。1997年には大手企業がECを開始しています。また、Yahoo!オークションなどのオークションサービスが注目を集め、急速にCtoCの市場も拡大していきました。
90年代は現在と同じくコンテンツを発信する、あるいはコミュニケーションの場としてのニーズが高いところからスタートしています。その中でEコマースは悪戦苦闘の歴史を重ねています。ここまで到達するのには90年代はまだまだ種まきの時期といってもいいでしょう。
「直接接客ができない」「直接商品を手に取れない」などの理由で、どちらかというとEコマースは実店舗には勝てないという論調が強い時代でした。業界の内部でもそれは似たような状況がありましたが、その中でもその可能性にかける若手開発者たちが状況を切り開いていくという展開が続いていきます。
回線の高速化に伴ってインターネットの利用率も上昇するとEコマースも伸びていきます。これが2000年代に入ってからの状況です。90年代〜00年代はまさにEコマース草創期といってもいいでしょう。00年代になるとECサイトが増え、モール型ECだけでなく、自社でECサイトを持つ企業も増えてきます。
日本全体としては90年代以降、常にビジネス的には閉塞感とともにあります。そうした中で、ECを開始することが事業を拡大するためのひとつのきっかけとして保守的なビジネスのムードの中で、一部では大きく期待されていました。
結果的に現在では、当初の予想に反してECでの取引量は増加する一方で、市場の中での存在感を示しています。また、その伸びもまだ底には来ておらず、イニシアチブを握っています。マーケティング手法などもECに向けたものが多数発展しています。そのため逆に実店舗の扱いにも主従が入れ替わる変化が起きています。
今後ますます、ビジネスはECが中心になっていくと考えられています。
BtoCだけでなくCtoCの存在もECを牽引してきた
ECの普及によって、商流は大きく変わったと言われており、実際に個人の生活も大きく変化しています。
例えば、日本のビジネスでは生産者(メーカー)と消費者(コンシューマー)の間にたくさんの卸業者が入っていました。流通を維持しつつ、小売店での販売を考えるとこの仕組み自体は必要な部分も少なくありません。
しかし、一方でそうした中間業者の存在が安価での販売を阻害してしまい、メーカーは利が少なく、コンシューマーは高額を支払うという現状がありました。Eコマースはそうしたビジネスでの距離感を変革しました。24時間取引ができ、距離も関係ありません。ニーズ同士を繋げるにはとても強い方法として存在感を発揮しています。
その結果、商流を大きく返ることになり、BtoCだけでなく、個人間でのやり取りも発達させる結果になりました。これはカスタマー同士という意味で「CtoC」とよばれます。このCtoCっはECを考える場合には大きなものとなってきました。
たとえばYahoo!オークションや、最近であればメルカリなどのCtoC用のプラットフォームの存在感は消費行動の中では無視出来ない存在になっています。一見、個人間のこうした取引は企業には関係ないように見えます。しかし、実際には企業の関わるビジネスに大きく影響を与え、消費を減らしているという側面も大きくあります。それだけでなく、価値の確認や製品の価格決定にも無視できない存在になっているのです。
Eコマースの活発化はこのように、商売のシステムそのものに大きな影響を与えています。
ECと実店舗を比較してみよう
ECサイトと実店舗は、実際には多くの点で共通点があります。当然、ECサイトに落とし込む際に、実店舗での流れを踏襲している部分もあります。
一方で、当然ながら相違点ももちろんあります。こうした部分はこの20年でかなり埋められてきましたが、それでもなおメリットとデメリットの両面として残っています。また、一部ではECに対する誤解のようなものも存在しています。
実店舗と比較した場合のECサイトのメリットは以下のように言われています。
- 出店コストが安い
- ランニングコストが安い
- 価格の比較が簡単
- 購入者はいつでもどこでも購入できる
ネットショップでのメリットである「24時間注文を受けることができる」という点は距離を問わないというところもポイントです。インターネットが接続出来る環境さえあれば理論的には世界中から購入することができます。
運営の上で忘れてはいけないのは必ずしも様々な顧客対応を24時間できるわけではないことです。しかし、このメリットは結果として大きく、ビジネスの対象を広くすることにつながります。ECにおいてはマーケットを区切るものはインターネットユーザーであるかないかという点につきます。そして、そのインターネットユーザーは多くの人口帯を網羅するようになってきました。
また、価格の比較をユーザーがしやすいという点もメリットとしてあげられます。実際の店舗であれば、現地で実際にどういった価格で販売されているのか見なければいけません。インターネット上にあるEコマースであれば、各サイトを見て回るのは、実際に足を運ぶことと比較するとそれほど時間はかかりません。
それでも、もちろん参照するサイトが増えてくれば話は変わってきます。その結果、価格比較サイトなどが登場し、普及しました。
こうした点はユーザーにとって大きなメリットとなりました。また、基本的に配送されるので大型の商品などであれば運ばなくてもよいといった部分もメリットとなりました。
ただし、配送に関しては料金が発生するというデメリットもあります。それでも配送業者の体制やサービス自体の進歩も関連してその発展を後押ししています。今や、大手の配送業者を利用すればいつ、どこに荷物があるのかをすぐに確認できるシステムが構築されています。また、配送時間のコントロールなども可能になってきました。Eコマースの発展と配送システムの洗練は表裏一体といえます。
一方でネットでの出店や運営のコストについては、一概に「安い」といえるかは実際のところはなんとも言えません。実店舗とECでは出店場所のアドバンテージに違いもあります。また構築や運営自体にはコスト自体は発生します。それぞれ、規模によるのですべてのECサイトがどんな実店舗よりも経費が安いといったことは一概にいうことはできる状況ではなくなってきました。
それでも、さまざまな手続きを踏んで実店舗でのビジネスを始めることと比較すると、コストや手間は格段にEコマースのほうが少なく済みます。またStoresやBaseなど無料で始められるASPもあるので、「お金をかけない」ということに集中してサイト作りをすることは実際に可能です。
一方で、ECサイトでの最大のデメリットは、商品の詳細が、サイトの情報以上に受け取るとなると実店舗よりも手間が増えることになりユーザーはリサーチに時間がかかることです。もちろん手に取って確かめたりすることも難しくなります。
手に取れないというデメリットについては大手の衣料メーカーは返却を無料にするなどで対応しています。こうしたデメリットを如何に埋めていくかということが課題として取組まれるようになってきました。
直接接客できないからこそ丁寧な解説が必要
Eコマースの弱点をどう克服するかということは、この20年、多くのECサイトの課題であり、多くの取組がされてきました。
たとえば、常に必要な生活必需品などは、近隣の実店舗での消費のほうがはるかに大きい状況でした。これを定期購入などで在庫可能な商品はカヴァーして、毎度購入する手間を省いたりといったユーザーの利便性を向上させる取組みがなされていたりという対処がされています。
Amazonが進める「置き配」なども配送による手間を軽減するだけでなく、ユーザー側の在宅を必要としない、受け取りの手間を減らそうという取組みでもあります。また、同じAmazonで言えば、決済の手間の簡略化を行い、ワンクリックでの購入を可能にしています。こうしたことはもちろんユーザーとの信頼関係もあってのことです。Amazonはそうしたことが可能な段階までブランドが浸透しているために可能となってきたことといえます。
直接の接客については、現在もECサイトでは難しい課題です。そのため、しっかりと商品ページでは、ユーザーの知りたい情報を用意しておくことが重要です。
実際のところ、デメリットと思われることをどのように埋めるかという点がECサイトの売上に反映してくると言えます。こうした点は課題でもありますが、ECサイトのサービスとしてのひとつの指標と考えてもよいでしょう。
モバイルやヴァーチャル~新たな状況にECは進化している
Eコマースのもう一つのメリットは分析を実店舗よりもしやすいということです。その性質上、さまざまなデータを比較的簡単に取得することができ、戦略的にビジネスを展開していくことに役立ててきました。その結果、さまざまなウェブマーケティングの手法が生まれ、また、洗練されてトレンドに合わせた動きをいち早くキャッチして対応してきました。
そうした中で、この数年言われているのは「Mコマース」という言葉です。Mはモバイルのことを指します。スマートフォンの普及により、現在、消費者の消費動向の多くはモバイルを中心にしています。ECでの購入も多くはモバイル(mobile)という状況になっており、それをもじってMコマースと呼ばれています。
また今後いわれているのはVコマースです。Vはヴァーチャルの意味です。Vコマースでは実際にお店にいくような体験をECでも与えることを目指しています。
これは何年も研究が奨められてきましたが、スマートスピーカーによる買い物などを足がかりに今後の発展が見込まれています。他にもECサイトだけでなく、実店舗での連携を深めるO2Oや、SNSや広告なども含めた総合的な顧客囲い込みをめざすオムニチャネルなども注目を集めています。もはや独立したビジネス形態に留まらなくなってきました。
このように常にECサイトへの参入は変化にさらされてきました。では実際にどういったタイミングで参入するのがよいのかと見計らっているというパターンもあるかもしれません。
しかし、こうした流れは常に動き続けています。そこで外野で様子を見ているだけでは流れに取り残されてしまうでしょう。その中に身を投じながら変化を体感していくことが必要です。
集客などにおいてはインターネット上では先に始めるほど有利といえます。そのため、開始するタイミングは常に今現在がベストといえます。いきなり資金的な面では全力で取り組まなくとも様子見をしながらECを事業としてすすめていく方法もあります。
もちろんそうした中で、しっかりと現状の経営状態を見据えながら専門的な視点でアドヴァイスを受けることができれば、スタート時もソフトに離陸できる面は増えてきます。