いまさら聞けないオウンドメディアを運営するECサイトのメリットを解説
2020.08.03
企業のECサイト運営者のを運営するなら、「オウンドメディアをやったら?」と奨められたり、やっていないか尋ねられたことはないでしょうか。言葉の意味から自社で持つメディアということは想像がつく、あるいは企業ブログと認識している人もいるかもしれません。ここではオウンドメディアについて解説していきます。
オウンドメディアの定義
オウンドメディアはここ10年で急速にWEBに関わる人を中心に、いろんな人の口にのぼるようになったキーワードです。この言葉は英語では「Owned Media=自分自身が持つメディア」という意味です。対比する言葉として、広告等、料金を払って露出する「Paid Media(ペイドメディア)」、TwitterやfacebookなどのSNSによる「Earned Media(アーンドメディア)」の2つと並べて「トリプルメディア」という概念が提唱されており、その中に出てくる言葉です。ウェブマーケティングの中で注目されています。
オウンドメディアは自身が運営主体となって「ユーザーの知りたいと思われる情報」を掘り下げて発信していきます。意味はとても広く、パンフレットなどの紙媒体なども本来は含まれます。現在の一般的な認識では企業が行うブログを指す場合が多いです。
ここで一度振返っておく必要があるのは、「ユーザーの知りたいと思われる情報を掘り下げて」発信するメディアであるということです。あくまで企業が発信する自主広告ではなく、情報発信の場としてウエブが活用されています。
こうして考えると「企業ブログ≠オウンドメディア」ということがわかります。つまり、企業の言いたいことだけを伝える広告媒体の場ではなく、メディアとして機能している情報発信の場ということです。決して企業のオフィシャル情報のみを伝える広報ではありません。
実際のところ、ECサイトにおけるオウンドメディアは、広告とは異なり、売上に対して即効性がありません。それにも関わらず、この10年間注目され続けています。
こうした背景には広告であるかないかということにユーザーが敏感になっているという側面があります。その結果、広告では消費行動が動きにくくなってきました。また、多くの人が欲しいと思ったものをすでに持っているという状況でもあります。
そうした中で、広告とは一線を引いて企業が発信するオウンドメディアというスタイルが注目を集め続けているという背景があります。
ECサイトにおけるメリット
オウンドメディアを行うメリットは、通常のECサイトの情報ページと違い、これから顧客になりそうな「見込み客」を掴めることにあります。
広告であれば、直接的に興味のあるユーザーにアプローチする効果は高いですが、それ以外のユーザーにとってはインターネット上のノイズとして扱われていることもあります。
一方でオウンドメディアは、その企業が扱う商品の周辺情報も掘り下げていきます。その結果、直接のユーザーだけでなく、興味のあるユーザーの耳目を集めることができます。また、すでに利用して顧客となっているユーザーは優良顧客としてファンになり、サイトや企業の力になってくれるようになる可能性もあります。広告離れへの対策というわけではありませんが、ファン層としてゆるやかに見込み顧客を獲得する方法として、主流の方法としてWEB関連のマーケッターたちに注目されています。
インターネットで顧客になるユーザーは主に以下のように分類されると考えられます。
- 今すぐ購入しようと考えているユーザー
- 購入を検討しているユーザー
- 興味がある程度のユーザー
- 優良顧客となっているユーザー
多くのECサイトではこの中でも「今すぐ購入しよう」というユーザーに対しての施策が多くあります。一方で購入を検討しているユーザーや興味があるユーザーへのアプローチはリスティング広告などで行いますが、コンバージョンにすぐにつながらないこれらの層へのアプローチとしては費用対効果が悪く出費がかさむことになります。
それよりも、コンテンツで知識を深め、興味を持ってもらい回遊する場として認識してもらえるようするオウンドメディアによる集客のほうが、効果は高くなります。また、そうした売上の面だけでなく、認知度をあげ、商品や企業そのものをよく知ってもらうことでブランディングにも繋がっていきます。
またSNSでの情報展開はスピード感があり、情報の内容によっては拡散力はありますが、すぐに流れてしまうため、じっくりと反芻したいような情報の発信には向いていません。
そこでオウンドメディアとしてブログが注目され、利用されています。その結果、「企業のブログ=オウンドメディア」という認識が広がったものと思われます。
認知をあげるのは手がかかるが、フィードバックは大きい
オウンドメディアはコンテンツマーケティングの一手法と考えたほうがよいでしょう。その他のコンテンツマーケティングと同様に数記事程度では、検索エンジンからも評価されず、ユーザーからも情報提供の場としては薄いため関心を引くことは難しいです。
即効性に乏しく、売上に繋がるためには長期的な視点が必須です。しかし、コンテンツが揃ってくればSEO的な効果も高くなっていきます。
企業内の立場として難しいのは自社の広報の場ではないということです。場合によっては他者の商品やサービスを扱うこともあるかもしれません。そうなると、社内からはそうした姿勢に対して批判や否定的な意見もでるかもしれません。そうしたことに対して十分に説明して理解してもらうことが重要ですが、そうした社内認知の向上へ割くリソースが意外に取られてしまうかもしれません。
しかし、わかりやすく認知を得られるこうした「社内広報」的な認識ではオウンドメディアとしての効果は限定的なものになると言わざるを得ません。オウンドメディアは、その領域に関わるすべてのユーザーへアプローチするものであり、自社の商品やファンだけに向けたものではありません。
一方で、その産業や商品、サービスへの見識や、担い手、作り手だからこそ伝えられる情報があり、その情報はユーザーにとって代え難いものがあります。こうした情報が発信されるサイトとして認識されることで、見込み客を産み、見込み客が顧客に、一般の顧客を繋ぎ止めて優良顧客へと変わることで市場を広げつつ深堀できる可能性がひろがっていきます。
しっかりとした情報発信が継続してできれば、確実にその業界内でのユーザーからの見え方は格段に変わってきます。
他にも情報は発信していくことで、より新たな情報が集まりやすくなっていくということが言われています。ECの運営だけでなく、今はいかにフレッシュでレアな情報を得ることができるかが重要な時代です。
そうしたことを総合して考えると時間はかかってもオウンドメディアを運営することのメリットは少なくありません。ただし、ユーザーの興味のある情報を探り、興味の引くコンテンツを作り続けるということは簡単なことではありません。
そのうえ、効果に即効性がないという点はなかなか導入できなかったり、継続していくことを難しくさせる部分でもあります。
オウンドメディアの運営は長期的な視野で投資として行う必要がありますが、その結果で得られるものもその運営企業にとって、必ず大きなものとなるでしょう。