ブランディングとデザインの関係ー拡張していく二つの概念の切れない関係
2021.10.04
ブランディングという言葉は決して新しい言葉ではありません。それにもかかわらず今、多くの企業が必死に取り組んでいます。そうした中でデザインという要素の立ち位置が変わってきているのをみなさんはご存知でしょうか。ブランディングデザインという言葉もありますが、この二つは密接に関わっており、独立して考えることは今や困難です。ここではブランディングとデザインについて解説します。
CONTENS
ブランディングにとって欠かせないデザイン
「ブランディングデザイン」という言葉があります。これは企業がユーザーに対して「こうあってほしい」と考える理想や情報、哲学などを視覚的に具現化したものと解釈されています。
人間が視覚から得る情報は言葉の数百倍と言われています。「百聞は一見にしかず」と昔からよく言われていますが、これは実際に科学的にも証明されています。そのため、こうしたデザインワークが重要視され、プロダクトに関わる全ての面で重要視されるのです。
ブランディングを学んでいくとよく言われる用語としてはこうしたデザインから「アイデンティティの認知」を促進します。つまり、ひとつの記号が何らかの意味をもって機能していくことになるわけです。
一般的にブランディングデザインとされるもの
ブランディングデザインと強く関係するものとして以下のものが挙げられています。
- ロゴ
- コーポレートカラー(企業のイメージカラー)
- ECサイトも含むウエブサイト
- パンフレット、チラシ等の印刷物
- 会社案内、IR(投資家向け情報)やCSR(社会的責任)
- 封筒、名刺
などと言われます。結局のところ、企業が関わるほぼ全てに関係してくるということも言えます。
例えばECサイトなどのデザインはブランドに大きく影響を与えます。
【参考】ECサイトはブランディングでシェアをとるその施策を解説
ECサイトの意味とはーそれをさらに加速させる運営とブランディング
参考の記事でも解説していますが、ECサイトの存在自体がブランドに影響を与え、ブランドの存在がECサイトの売り上げに影響を与えます。それぞれは一体として存在しているという側面もあります。ブランディングではブランドのポジティブな印象の拡散を目指します。ですので、それぞれのデザインはブランディングにとって大きな要素となっていることは確かです。
ロゴやコーポレートカラーなどを考えるという行為はそれそのものがブランドのイメージを作っていきます。ただし、これらについてはもっともシンボル的なものであり、その後に盛り込むブランドストーリーなどによっても影響していくものです。
そうした点で会社案内やIR、CSRなどはブランドのストーリーを語るという側面も持ちます。そのため、いわゆる一般的に想像されるデザインという言葉の範疇よりも広い範囲にアプローチするものといっていいでしょう。いわゆる視覚的なアプローチに加えてどういった内容を盛り込むかを考えなければいけません。
ECサイトや実際の店舗などはそこでの仕事ぶりそのものが、その会社それぞれが掲げるブランドコンセプトを実際に体感してもらう場ともいえます。もちろん商品そのものもです。ユーザーは商品やサービスを通して、その使い心地や所有欲、他者からのリアクションなどを総合的に含めてそれぞれのブランドを体験していきます。そうした場面、つまり接触の入り口を作る面でとても重要な役割を担っていることになります。
デザインの概念は拡張し続けている
さて、一般的なデザインという表現を聞いて、多くの人はビジュアルや立体などの創作を思い浮かべると思います。しかし、この21世紀に入って、いわゆる「デザイン」という概念は変化し拡張してきました。
デザインをするという側面ではコンセプトやブランディングを無視できない状況にあります。一方でブランディングという言葉は実際に頻繁に使われるようになってきました。また多くの企業がブランドコンセプトを掲げ、ロゴを作り…と上記にあげてきたようないわゆる「ブランディングデザイン」の実施をしています。
しかし、実際にはデザインの領域ではそうしたプロダクトの外観を揃えたりするというだけでは全く足りていません。つまり、それだけではブランディングは進んでいかないという現象に陥ります。
そこで必要なのがブランディングをブランドの中に実装していく、つまり具体的に機能していくようにしていくことが求められます。
そうしたブランドを機能するようにしていくことこそがデザイナーに今求められていることになります。
実際、ブランディング自体は進み、しっかりとブランドが価値をもっている企業などは少なくありません。しかし、それをしっかりと経済的な恩恵を生み出すメカニズムの中に組み込まれているブランドは多くはありません。
そうした状況を組み立てていくことが現在の先端のデザイン概念といってもいいでしょう。こうしたデザインの概念の拡張はたとえば空間をつくる、場を作るといった総合的なプロデュースの力としてその重要性は高くなっているということもいえます。
認知を広げ心地よくさせていくものがデザインに求められている
大きな概念の話の後には小さな話をしなければいけません。総合的なサービス設計やブランドのメカニズムなどもデザインは請け負いますが、一つ一つのパーツという部分においても、もちろんその領域にあります。つまり、今度は表層的な見た目の話です。
ブランディングでのデザインはまずブランドコンセプトありきです。そのコンセプトはブランディングにおいては絶対的な存在であり、例外はありません。ブランドコンセプトはとてもシンプルなものです。もし、そうした中で例外を作ってしまうと、まず信頼性がなくなります。信頼のないものは浸透しません。
なので、デザインの概念をしっかり把握し、その実装をおこなうというデザインの本質的な部分を理解したうえで、パーツごとのデザインを実施していかなければならないのです。
ただし、ここには一般的な言葉どおり受け止めると一つ、難しい部分もあります。認知を広げるということは、「多くの人の印象に残す作業」ということがいえます。ブランディングデザインでは「心地よくさせる」ということが重要です。多くの人の印象に残すということは簡単ではありませんが、知ってもらうことは可能です。ただし、それを「好きになってもらう」というものは難しい部分があります。誰もが好きなものというのは、それほどその人を熱狂させないものです。
そこで、考えなければいけないのは「ブランドを必要としてくれる人」へしっかりと認知されることであり、心地よくさせることです。
また、これは前段で説明した「ブランドの実装」という概念と一致します。つまりブランディングが機能するようにする作業を行なっているということになります。そのため、視覚に関わらず、感覚的な部分をすべて含めて触れるという部分では確実にデザインの領域ということがいえます。そしてそれぞれの積み重ねでブランディングは出来上がっていくということになります。
二つの関係は二つの入り口を持つ一つの山にすぎない
こうして考えてみると「ブランディング」と「デザイン」は切ってもきれない関係です。また、こうしたことを理解すると「ブランディングデザイン」という言葉に少し滑稽さを感じないでもありません。
現代においてはブランディングとデザインは実は同じゴールを持っているといえます。両方の視点なくしてそれぞれは存在しえないというと少し大袈裟に聞こえます。しかし、実際にいいブランディングにはデザインがあり、いいデザインはそれ自体がブランディングになり得ます。
ただ、今後ますますこの二つを切り離して考えることは困難になっていくことになるでしょう。