ECサイトの運営にチャットボットを導入する効果と今後の期待

ECサイトに盛り込まれる新技術の中で、多くの人が関心を持っているものの一つがチャットボットかもしれません。プログラミングによって自動で受け答えをしてくれるチャットボットが顧客対応のコストを減らしてくれると期待する向きは大きなものがあります。ここではチャットボットについて解説していきます。

チャットボットを導入するサイトは増加傾向

ネットサーフィンをしていると「何かお困りのことははございませんか?」とスクリプトが前面に開いてきて聞いてくるサイトが増えてきました。このスクリプトを自動で表示し、やりとりも無人で可能なものがチャットボットです。

最近はチャットでのやりとりが一般化してきています。遠隔でのコミュニケーションは電話やメールではなく、Lineやメッセンジャーなどチャット形式でのやり取りの方が身近になってきました。10代〜20代の多くの人は電話を利用せず、こうしたチャットツールがメインのコミュニケーションツールになっています。おそらく、これ以降の世代は遠隔コミュニケーションはこうしたチャットがメインになっていくことは確実な流れです。

そうした状況に加えて、肥大化していくサイトの「よくある質問」やFAQなどのサポートに関わるページがどうしても四角四面で、ユーザーを突き放したような状態になってしまうことを考慮して、プログラムにより無人で動作するチャットボットを導入し、少しでも顧客対応を助けようという動きが進んでいます。

また、大手のECサイトでは積極的にチャットボットを導入しています。基本的には各社ともサポート用ツールとしての動作を前提にしていますが、それぞれもっと細かく設定した役割を負わせることで、発展途上中の技術をうまく演出に使っています。

例えばアスクルが運営するLOHACOではキャラクター化して親近感を演出することに用いています。UNIQLOでは新たな購入体験の演出などUXを重視した導入をしています。

チャットボットの仕組み

ボットの仕組みは、特定のキーワードをボットに入力するとAPIが動き、データベースにアクセスして、その言語内容を解析し、さらにデータベース内から適切な回答を選んで、言語として整合性のある内容にして返答するというものです。

その上でチャットボットは4種類に分類されています。

  • 選択肢タイプ
  • ログタイプ
  • ハッシュタイプ
  • Elizaタイプ

「選択肢タイプ」はチャットボットが利用するデータベースにシナリオや想定問答を蓄積し、そこから質問の回答を選んで返答するタイプのものです。簡単に動作させることができますが、応用は効かず、想定外の対応は一切できません。

「ログタイプ」は会話のログを記録し、そのログを元にして回答するタイプのチャットボットです。ログが豊富になればなるほど、回答は自然なものに近づきます。ログが多くなってくると処理が重くなるなどの問題もあります。それでも近年ではAI技術が進歩したことで発展してきています。

「ハッシュタイプ」は「辞書タイプ」とも呼ばれます。辞書に登録されたテンプレートを元に会話を行うタイプです。選択肢タイプと同様の傾向がありますが、利用を制限した中では精度はそれほど気にならずスムーズに動作すると言われています。

「Elizaタイプ」は1960年代に誕生した最初のチャットボットと呼ばれる「Eliza(イライザ)」から名付けられています。相槌をうち、聞き返したりしながら会話を進めて回答を出していきます。結論を出す目的よりも、状況を聴取していき、最終的には電話やメールで実際にサポートするような場面で活躍が期待できます。

チャットボットの開発について、複雑なものを開発するのは難しいですが、簡単なものであれば、ある程度プログラムを理解している人であれば作成することができます。ECサイトのプラットフォーム上で動かせるようにしなければいけないので、ECサイトに関わる知識も必要ですが、Java ScriptやRuby、pytonなどで作成ができます。また、HTMLで組めるようなツールもでてきています。

こうした状況を見ていると、まだまだ大手での導入にとどまっている感じがありますが、いきなりすごい勢いで普及する可能性もあります。AIによるビッグデータの活用が可能なチャットボットを無料で提供しているベンダーもあります。今はまさにチャットボット普及の夜明け前といった状況といえるでしょう。

こんなことが期待されている

新型コロナウイルスの影響以前に、ECサイトへの移行の流れは2010年代は黎明期といえる状況でした。ここから確実に過渡期へと向かっていくわけですが、背景には労働人口の減少があります。結果的に実店舗での店舗網を拡張したくても、拡張できないという現象が2015年ぐらいから起こり初めていました。

ECサイトでもユーザーサポートはどうしても人手が必要な部分です。よく「外注にすれば問題解決」とするWEBマーケッターがいますが、その調子でやっていくとこのシステムは数年内に破綻します。どこの企業もサポートセンターの人材不足は深刻だからです。

チャットボットには、こうした工数のかかる作業を肩代わりしてくれる可能性があります。実際のところ、全部ではなくても数割でも対応件数が減らせれば大きな経費削減につながります。

またECサイトはサーバーが稼働している限り土日祝日関係なく、24時間いつでもアクセスできます。そうした中でのサポートができない時間帯をチャットボットを導入することで埋めることに対しても期待できます。

こう考える場合、サポートは実際のところ、完全でなくてもかまわないわけです。「数%でもユーザーを満足させることができれば」と考えて、大手企業は導入している雰囲気があります。

また、ECサイトでの商品数が増えてくると、購入サポートをする存在があった方がユーザーにとっては利便性が高くなります。サイトのコンテンツは充実した方が本来はいいはずなのです。ECサイトにとってはコンテンツは商品ということになりますが、どうしてもその情報量に圧倒されてしまうユーザーが出てきます。

こうしたユーザーをサポートすることも、チャットボット、その中でも特にAIを搭載したものに期待されています。従来型の店舗ではコンシェルジュや営業員、渉外担当などが担当していましたが、時間的な問題を考えると限界があります。また、それだけでなく、データベースへのアクセスという点では人力よりもプログラムでそのままキーワードからデータベースにアクセスした方が効率的です。

実際のところ、現時点ではAmazonや楽天、Yahoo!ショッピングなどのモールのトップランナーや、ECでさらに売上を伸ばしている大手電気量販店のヨドバシカメラなどはこうしたチャットボットを導入していません。それよりはサイト内での検索エンジンの強化などを強めている傾向ですが、こうしたところがチャットボットを導入し始めるとあっという間に一般化しそうです。

後ノリでも大丈夫〜デメリットや弱点も

チャットボットの弱点はまだまだ会話の精度が甘いという点です。ちょっと不明点を聞いてみたいといったライトな状況のユーザーにとってはそれでニーズを満たせるかもしれませんが、利用方法がわからなくてイライラしているユーザーをサポートする場合、精度の低さはさらにイライラを助長させる可能性が高くあります。

ユーザビリティを向上させ、新たなUXに期待して導入されているのに悪い印象を残す結果になってしまっては台無しです。

また、もう一つはチャットボットが対応した履歴の扱いです。対応が完了したケースはあまり問題ありませんが、シリアスな内容になっていてアフターフォローが必要になっていたり、最終的にユーザーへのフィードバックが必要な対応になった場合にはそのチャットボットの対応履歴を追うインターフェースの操作が必要になります。

つまり、ユーザーサポートに対するチャネルが、そのままの状態にしておくと増えてしまうことになります。顧客管理は一元管理が理想ですが、うまくやらなければ、それができなくなります。今後、チャットボットを気軽に利用するユーザー層は確実に増えていくため、ニーズは徐々に上がっていくことが予想されますが、そうした対応チャネルの増加に対するフォローアップを事前に考えておかなければいけません。

一方で、チャットボット自体は、まだしっかり方向性が定まっていない部分も少なくありません。例えば、表示の仕方などです。いきなり全面に現れてきてノイジーに感じる場面も少なくありません。実際にベンダーとしては多くのサイトに早期導入を勧めていますが、必ずしも現時点で必要ではないサイトも少なくないのが現実でしょう。

アイテム数が増えてきて、商品のピックアップが難しいと感じるようになった場合は導入を検討してもいいかもしれません。しかし、どれも現時点で慌てて導入するような話ではないでしょう。

実際にチャットボットを提供しているベンダーは10社を超えてきました。中には無料で利用開始できるものもあります。少しづつ、チャットボットとはどんなものかを学びながら導入について様子を見守っていきましょう。

【参考】ECサイト業界はAIの活用が普及することで変化中

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