ECサイトにはクーリングオフの適用なし〜返品ルールはわかりやすく
2020.08.24
ECサイトではクーリングオフが適用されないことをご存知でしょうか。そのため返品ルールをしっかりとわかりやすく掲載して、ユーザーから信頼されるサイト作りをしなければいけません。ここではECサイトの返品について、クーリングオフを題材に解説します。
CONTENS
ECサイトでの販売自体はクーリングオフの対象外
店舗以外の場所で商品を購入した消費者を守る仕組みの代表的な制度がクーリングオフです。クーリングオフとは訪問販売、電話販売、マルチ商法などで契約した商品について、商品到着後でも契約を解除して返品し、返金してもらう仕組みのことです。突然、営業をかけられたような場合や複雑な契約形態を持つような商品が多くの場合、対象になります。
クーリングオフの特徴は、申込みをすることで契約を一定期間内であれば一方的に契約を無条件で解除できるということです。通常は契約を一方的に解除することは法的に認められていません。しかし、クーリングオフは消費者を守る意味合いが強く、一方的に解除して返品することができます。
クーリングオフの場合、送られて来た商品自体に問題はなくても、一定期間を置いて「不要である」と消費者側が判断すれば解約の意思表示をする手続きを踏んで適応することができます。クーリング・オフとは英語で「Cooling off」、つまり熱を冷ますという意味で、この「一定期間」のことを示しています。
このクーリングオフですが、ECサイトでの販売についても適用できると考えている人は全体の6割を超えると言われています。しかし、実際には「ECサイトでの購入はクーリングオフの対象外」です。他にも飲食店などのサービスなど返却が難しいものや、3000円以下の商品など、この制度に合わないものはクーリングオフの対象外となります。
ECサイトはなぜクーリングオフの対象から外れているのでしょうか。クーリングオフの対象はあくまで不意打ち等の条件があります。これはつまり、販売機会について販売者側の意図が強く反映された状況によるものに対して適応される制度です。
これに対してECサイトでの買い物は購入者の意思でネットショップを閲覧して購入に至っています。基本的にクーリングオフの対象は購入を不意打ちで誘因された場合に限られます。
そのためECサイト事業者はクーリングオフによる規程に縛られることはありません。ネット上のお店に来店したという扱いになります。
クーリングオフの話とは少し外れますが、電子メールでの宣伝活動についても実は法律で制限しています。許可を得ていないメールでの広告は法律で禁じられています。大手のモール型ECなどでは巧妙に隠して配布の同意を得たりしていますが、こうした行為はギリギリの線をついています。また、メールマガジンなどは場合によっては風当たりが厳しいので運用の仕方には要注意です。
そうしたことに加え、配布したメールマガジンなどは事業者側は内容を一定期間、保管しておく義務があります。
返品に関わる特定商取引法はある
クーリングオフでの適用はなくても、ECサイトでの販売について返品に関わる規程をする法律は存在しています。「特定商取引法」が通信販売での購入契約について規程しています。
返品についての表示がない場合は、8日以内であれば返品は可能としています。この法律の条文はクーリングオフを規程しているものとよく似ています。そのため、クーリングオフはECサイトでの買い物にも適用できるという誤解を生んでいるのかもしれません。
しかし、よく見て見ると「返品についての表示がない場合」にのみ8日以内の返品を規程しています。つまり、このポイントがクリアにされていれば、一方的な解約はできず、問答無用で返品ができるクーリングオフとは大きな違いがあります。
そのため、返品についての規程を経済産業省の設けたルールに乗っ取って作成し、わかりやすく掲示する必要があります。また、この法律で定められている規程では、返品に関わる送料については購入者側が負担するルールになっています。こうして、消費者と販売者の間でバランスを取っています。
ECサイトの事業者側は、悪意があったり闇雲に返品したいようなユーザーに対して返品ルールを設けることで、その行動に制限をかけることができます。
信頼されるサイトづくりには返品ルールの掲載は必須
返品ルールには以下の3点について掲載する必要があります。
- 返品を認めるかどうか
- 返品を認める時の条件や、可能な期間
- 返品に関わる送料の負担は販売側にあるか購入側にあるか
こうした内容をユーザーが見やすい場所に掲示する必要があります。内容が多くなる場合は返品についての条件として商品ページの画面内に「返品に関わるルール」などのリンクをしっかりと掲示して誘導し、詳細を閲覧してもらうのが一般的です。
基本的に、返品ルールのイニシアチブはECサイトの事業者側にあります。返品に関わる作業は売上にもならず、返金作業など煩雑な作業も少なくありません。そのため、返品を一切認めないと規程しているサイトもあります。
しかし、返品やキャンセルできないサイトでの買い物に対して、ユーザーは安心してショッピングできるか考えてみる必要もあります。食品などを扱う場合は、ロスになってしまうことも考えられますが、行き違いが発生してしまうことで、サイトの評判を落としてしまうことも考慮しなければいけません。
そういった時に、しっかりとした返品ルールを設けることでユーザーだけでなくサイトの評判も守ることができます。少なくとも発送前のキャンセルなどは受けつけ、それ以外の場合も、不良品の交換などには応じるなどの文言をしっかりと付け加えて、CVRを上げるのに利用したほうが賢い選択と言えます。
また、こうしたルールの提示が一般化していくことで、全体的なECサイトの利用率をあげることもECサイトの普及と社会的貢献には役立つのではないかと考えられます。そのため、ビジネスであっても社会的意義を求められることも多い、現代の企業にとっては返品ルールの設定は重要性の高い項目です。
まだまだECサイトでの買い物に対して不信感を持つユーザーも多くいます。この傾向は国内では人口の多い高齢者に顕著です。また、実際に不信なECサイトも存在しています。そうした状況を考慮しておくと、しっかりとレギュレーションを掲示しておくことは立派なサービスの一環ともいえます。
クーリングオフの適用されないECサイトでの販売だからこそ、サイトの運営において信頼性を高めることが重要です。そのためには明快なルールを作成して、掲示することがその第一歩になります。利用規約や特定商取引法に関わる表示などはしっかりとユーザーを意識した文章で的確にわかりやすく記載する必要があります。
【参考】ECサイトの利用規約はユーザーと運営を守るための約束事
レギュレーションは意外に多くの人が見ている
こうした返品ルールや利用規約を侮ってはいけません。サイトを訪れた多くのユーザーがこうした項目を確認します。また、こうしたルールの策定には企業の姿勢が現れるものです。
表向きには「お客様を大事に」「顧客第一主義」や「ユーザビリティ」を謳いながら、そうした部分に対する姿勢が実はないという場合は、こうした自社で規程したルールに現れてくることになります。
顧客と事業者がトラブルを回避して、お互いに良い関係を作れるようにルールを策定し売上アップに繋げてください。
それぞれの事情にあわせたルールの策定が必要です。また、こうしたサイトのあり方はそのサイト全体のイメージにも方向性をつけます。もちろん、しっかりとしたECサイト構築や運営が背景にある必要があります。構築や運営のスムースさは、サイトの内容を充実させ、ユーザーが安心して買い物ができる状況にもつながります。
もし、そうしたECについての課題を抱え、解決したいと考えている場合は弊社にご相談ください。