SaaS型のECサイトとは?〜クラウドECを初心者向けに解説
2020.09.29
SaaSとはクラウドの種類のことです。その中でもインターネット上にソフトウエアを置いてユーザーが利用するサービスの総称をSaasと言います。
最近では「クラウドEC」やもっと専門的に「SaaS型EC」という言葉を頻繁に聞くようになりましたが、あまり意味は解説されず耳慣れない言葉でもあります。
このように呼ぶ多くの場合、これはクラウドECのことを指しています。その点について、もう少し掘り下げて、このSaaS型ECサイトやクラウドECについてここで解説してみたいと思います。
CONTENS
SaaSはインターネット上で使えるソフトウエアのこと
2000年代の後半に幅広く話題に登ぼるようになった概念の一つがクラウドです。この概念は、現在ではITの領域に関わる人だけでなく、多くの人が何気なく使う技術となり普及しています。
クラウドとは正式にはクラウドコンピューティングのことを指していますが、このクラウドはECにおいても取り入れられる場面が増えてきました。かなりざっくりと簡単に説明すると特定のサーバーにデータを格納するのではなく、インターネット上に仮想のサーバーを構築して、そこにプログラムをおき、それを外部のデバイスが参照したり、操作するのがクラウドの概念です。
SaaSとはそのクラウド関連の用語の一つです。これはECに限って使われる用語ではありません。クラウドを活用しながら、そのサービスのあり方を示す言葉です。
「SaaS」は英語で”Software as a Service”の頭文字をとったものです。SaaSという綴りで「サース」と発音します。他に似たような言葉で、頭がプラットフォームのPに変わった「PaaS(パース)」、インフラストラクチャーのIに変わった「IaaS(イァース又はアイアース)などがあります。
SaaSは例えばGmailやGoogleスプレッドシートなど、すでにインターネット上のクラウドにソフトウエアが置いてあり、それをユーザーが自由に使えるというもののことです。Googleでは多くのクラウドを活用したサービスを提供しています。クラウド専用のChromというブラウザを媒介にして動くPCも商品として投入しています。
クラウド上に置かれたソフトウエア以上のパフォーマンスを発揮したり、その範囲を超えてソフトウエアをカスタマイズはできないというデメリットがあります。しかし利用するための環境をユーザー側で構築する必要がありません。
インターネットにアクセスできればインストールなどの作業をせずすぐに利用できるというメリットもあります。つまりアクセスするデバイスの環境に影響を受けないというわけです。
そのため、高スペックなPCは必要とせず、高速でインターネットにアクセスできる環境があれば十分なので、経済的な側面もあります。また、複数人でデータを共有しながらバラバラな場所から作業したりする場合はとても効率的です。
一般的には各ユーザーはクラウドのサービスを導入することで開発のコストを節約し、自社内で共有することで利便性を高めていくことができます。
SaaSではあくまでソフトウエアのみがクラウドで利用できるというところにポイントがあります。そのため自由度には制限がかかってきます。この自由度はソフトウエアの適応範囲による部分もありますが、他のソフトウエアとの連携を考えるとプラットフォームがクラウドにあるPaaSの方が利便性が高いということになります。
もしクラウドで自由度を求めるということになると
SaaS→PaaS→IaaS
という順番で自由度が高い形態となります。
ただし、自由度や拡張性が上がるということは、利用しカスタマイズするためにネットワークに関わる専門的な知識も合わせて必要になってきます。そのため難易度も上がってきます。
そうした点を考慮すると実際に利用されやすい特化したシステムという点でSaaSが普及し、提供される場面も多くなってきます。
SaaS型ECはほぼクラウドEC
SaaS型ECという言葉がECサイトの構築や種類を示す話の中で使われる場面が増えています。結論からいえばこれはクラウドECのことを指しています。実際のところPaaSを利用したECサイトもありますので、これも言葉通り捉えるならばクラウドECに入ります。例えばAWSはPaaSです。大規模なサイトでPaaSを利用して構築したサイトも少なくありません。
しかし、むしろ状況としては、サーバーをAWSにしているということであり、これはフルスクラッチに近いと考えることもできます。そのため、クラウドECという場合には多くはSaaS型のECサービスを指しています。
AWSについては以下の記事に詳しく解説しています。
【参考】ECサイト初心者向け解説〜AWSはAmazonのクラウドサービス
SaaS型ECサイトというかぎり、ECのためのソフトウエアがすでにクラウド上のプラットフォームにインストールされているわけです。この場合、インストールされているのは例えばメーラーのような単一のソフトウエアではなく、ECのシステムとして利用可能なソフトウェアのパッケージが一通りイントールされています。ここまでを一つの製品としてベンダーは提供します。
そのクラウドにインストールされているパッケージをユーザーが利用してECサイトを構築できるサービスがクラウドECということになります。
つまりECパッケージであれば、インターネット上からダウンロードして構築しそれをサーバーにアップロードして利用しますが、SaaS型ECではダウンロードやアップロードの作業は省かれており、そうした部分は全てクラウドで完結しているイメージです。
一方でクラウドECはSaaSの特性として先に説明していたようにソフトウエアとしてのカスタマイズには制限があります。そのため、結果的にECパッケージと比較した場合にはカスタマイズ性に劣るのです。
クラウドECはASPから発展した概念
実は「SaaS型ECはカートASPと同じ」という意見があります。一方で「別物」とする意見もあります。これは二つともあっているし、間違っているともいえそうです。その違いと共通点はどこにあるのでしょうか。
まずASPとはApplication Service Providerの頭文字をとった略称です。インターネットを使って何らかのサービスを提供する事業者のことで、ASPとECの世界では単純に略して呼んでいますが、実際にはECサービス以外にもいろんなサービスを提供するASPがあります。
そのため本来はその区別をつけてカートASPとかEC-ASPなどと呼ぶのがいいのでしょう。しかし、それでは略称の意味が薄まります。そのためここでも単にASPで通して記載することにします。
ASPはECサイトとして利用できるシステムをインターネットに接続したサーバーに置いてある利用者に「利用してもらう」サービスです。それぞれのASPで利用できるスペースが、ASPで用意したサーバーのストレージの中に収まっています。これはつまりSaaSと利用者にとってみれば同じ状況と言えます。もし、そのサーバーがクラウドにあるということになるとASPはクラウドECということにもなります。
このあたりはハードウェア的な概念も出てくるので、実際のところ、あまりよくわからない部分もあります。
これは考え方の話になってきますが、ASPが提供しているのはECサイトのアプリケーションそのものではありません。あくまで利用できるライセンスを貸し出しています。
こうした考えによればクラウドECはクラウドECを提供するASPによって準備されたものを利用するサービスです。そのためASPと言えないこともないのです。
しかし、SaaSの概念では、一般的なカートASPにないものもあります。それは「マルチテナント」と呼ばれるものです。このマルチテナントに対してシングルテナントという概念があります。このシングルテナントは一つの商店を、マルチテナントはテナントビルを比較のイメージとして持ってもらうと理解しやすいと思います。
つまり、SaaSはいわゆる既存のカートASPと比較した場合、複数の目的に対して対応することができるというものです。その結果、ASPよりも応用範囲の広いサービスを構築することができるのです。
こうしたことからSaaS型EC≧ASPと考えておくのがいいかもしれません。また、ASPでウィークポイントとされるカスタマイズ性の低さを解消するという方向性からもクラウドECは発展してきました。結果的にECサイトの拡張性という点でみるとクラウドECは、一般的なASPよりも優れています。機能の追加などの点でも柔軟に行われています。
その一方で自由度を持つということにはそれだけ難易度も上がってくるということも忘れないでおきましょう。なかなかパートナーなしにはスペックを生かし切ることができないかもしれません。
これは逆にパッケージという視点からクラウドECを見ることも可能です。これについては参考の記事も合わせてお読みください。
【参考】注目のECサイト構築方法、クラウドECはASPとパッケージのいいとこ取り
パッケージとASP、それぞれのメリットを生かす
ASPとパッケージを比較した場合、当然ですが、それぞれの特徴が表裏一体でそのままメリットやデメリットに反映されます。
ASPは自由度はないもののシステム的なメンテナンスを必要としないというメリットがありました。ユーザーはシステムに対して作業ができない一方、そうしたトラブルや保守については全てベンダー側が対処します。そのため、逆にその部分での作業から解放されることになります。
パッケージではサイト運営者の責任においてアップデートの作業を実施しなければならず、そうした部分にも技術者が必要となり、時間的なコストも発生します。
こうしたインフラに関わる部分へのメンテナンスは怠ることがリスクにつながるため、放置するわけにはいきません。そして、こうしたシステムの管理に関わる費用はパッケージなどの「サーバーを立ててその中にプラットフォームを自ら置くタイプのEC」では、サイト運営側が負担することになります。
アップデートをせずに放置した場合はどういったことがおこるでしょうか。この考えは非常に危険です。そのまま、何もせずビジネスだけを行っていると、脆弱性を突かれてサイトに悪意のある第三者の進入を許してしまうことがあります。そうなるとサイトを乗っ取られる事態に発展し、大変な損害を受ける事例も実際にあります。どのような規模の企業であってもダメージは多大です。何より失った顧客からの信用を取り戻すことは非常に困難を極めます。
クラウドECではこのようなシステム自体のメンテナンスに関わる作業の必要がありません。バージョンアップについてはベンダー側で実施することになります。サイト構築の自由度を持ちながら限りなくメンテナンスフリーというわけです。こうしたセキュリティ面での部分はクラウドECを選択する大きな理由にもなるものです。また、そのためには信頼できるベンダーを選ぶということが重要とも言えます。
ただし、料金はASPよりどうしても高額になります。機能の豊富さや自由度などと比較してASPなのか、クラウドECまでレベルをあげるのかと行った選択をリニューアル時なども含めて、今後は考える場面もECの現場では多くなっていきそうです。独自で保守のための対策を行う必要はなく、常に最新の状態で利用できるのであれば、ECサイトの運営者は販売の戦略に集中できるということもメリットです。
ただし、構築面では一般的なカートASPよりも専門的な知見からの支援が必要です。もし導入を検討している場合はご相談ください。
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