ECサイトを開設する基本手順の概要解説~計画から運営まで
2020.09.29
オンラインショップを初めてみたいという場合、まずは全体のプランを考えることが重要です。ここでは主に初めてECサイトを始めようという人に向けて、増え続ける構築方法の選択肢の中から現実的な方法の提案や、その後の作業などの大まかな段取りをまとめ、構築方法の種類とその選び方のポイントやどんな作業にとりかかり、何が必要になるかなどを解説します。
CONTENS
ECサイトの開設はプランから
ECサイトを持とうという場合、手順は基本的に以下の順番で行われます。その上で、それぞれの選択肢によってやらなければ行けないことが間にさらに挟まってくることになります。
計画(構想や規模の策定)
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構築方法の決定・契約
↓
構築作業の実施、コンテンツ作成、EC運営の体制作り
↓
ローンチ(開業)
↓
運営・プロモーション
実際に計画の中身は以下のようなことが決まっているだけでも違います。
- 最初にどういった内容の商品を販売したいのか
- どれくらいの生産数、または仕入れが可能なのか
- 出荷可能数と期間
- どういった客層を狙っているのか、あるいはどういった客層に受け入れられているのか
などを考えておくと目指すべき売上目標が見えてきます。そうした資料やヴィジョンをしっかりと考え、揃える、あるいは割り出してみることで新規であってもどの程度のサイト規模が必要になってくるか目指すべきものが見えてきます。
こうした計画を考えることで、ECサイトの方向性も見えてきますし、構築方法の決定の際も、複数ある選択肢の中からスムーズに絞ることができるようになります。また、それ以降のデザインの決定やコンテンツ作成などについても方向性が見えてきます。途中でこうしたUIについての方向性を変えるのは全く無しではありません。変更には大きな労力、つまり時間的、金銭的にコストが発生することは意識しておいたほうが良いでしょう。
構築手段は4つ、最初の選択肢は2つ
構築方法に関しては他の記事でも何度か解説しています。主に選択肢としては4つあります。
- フルスクラッチ
- カートASP(クラウドEC含む)
- パッケージ(オープンソース含む)
- モール型EC
その中でも自分でECサイトを持つという意味では主な選択肢はカートASPかパッケージの2種類になります。
フルスクラッチは既存のECプラットフォームを活用する方法とは異なります。フルオーダーメイドでECサイトを作っていく方法です。そのため、必要な予算なども桁違いに大きくなり、開発の期間も長くなります。そのためあまり新規で始める場合の選択肢にはならない方法ともいえます。
モール型ECはサイトを自ら作るのではなく、商品をAmazonや楽天、Yahooなどの大型ショッピングサイトで販売するという方法です。ショッピングモールへの出店によく例えられます。非常に手軽でだれでもできるので個人で販売を始める人に好まれています。メリットも多々あり企業で活用しているケースも少なくありません。ただし、サイトの開設というニュアンスとはこれも外れてくることになります。
構築方法の詳しい説明としては以下の参考になりそうな記事のリンクを確認してください。
【参考】ECサイトの作り方〜初心者ほど開設後の運営を意識して作ろう
ECサイトの構築と考え方の基本は集客
ECサイトをオープンさせよう!ローンチ時のチェックポイント解説
カートASPについての開設手順の概要
まずハードルが低く、幅広く受け入れられそうな選択肢としてはカートASPがあります。カートASPはECに必要なものがほぼ全て揃っており、ASPと契約するだけで、それらが手に入ります。
そのため、基本的には初期の申込が完了すればすぐに構築作業に写ることが可能です。利用料についてはクラウドECという手法も含めると月額は無料〜数十万と幅があります。クラウドECをASPに含めることについては議論の多いところですが、仕組みとしてはASPの派生と考えると理解しやすいです。
ASPは最近では無料で開設できるものもあり手軽なものが流行しています。サービスを提供する事業者により傾向も違うため、「ASPでショップを開設しよう」と決定した後はどの事業者にするかという選択をする必要があります。
無料、有料、そしてクラウドECなどについては下記のリンクを参考にしてください。
【参考】ECサイトのASP~いろいろあるけど、企業向けならどう選ぶ?
注目のECサイト構築方法、クラウドECはASPとパッケージのいいとこ取り?!
ASPを選択する目安としては以下のようなことが言われます。
- 個人はBaseやStoresなどの無料ASP
- ECの年間売上1億まではカラーミーショップやMakeSHOPなどの有料ASP
- 年商1億以上はクラウドEC
無料ASPであっても売上をあげていくことは目指せますが、受注ごとに発生する手数料が売り上げが順調に伸びた場合は利益を圧迫するため、そのあたりを考慮する必要があります。
ただし、構築自体はものすごく簡単です。感覚としてはSNSのアカウントを作成するのに近いとも言われています。登録開始から30分程度で開設できるというのもこうした無料ASPの売り文句です。そのため、インスタントECと呼ばれています。
実際に、このコロナ禍でBASEは登録者数を大幅に伸ばしました。PCを普段使わず、htmlなどWEBの技術について一切知らなくても構築が可能です。また、そうした状況からカラーミーショップが2021年の春から無料のコースを開設し、そのシェア争いが始まっています。
拡張性に優れたパッケージ、初期費用を抑えたオープンソース
もし以下のような状況や要望があるのであればパッケージによる構築も選択肢になってきます。EC-CUBEなどオープンソースでのECパッケージを利用するのであれば初期費用を抑えることも可能です。
- 技術力がある
- ある程度自由にサイトを作りたい
- ASPでは機能などが十分ではなく計画にはまらなかった
ハードルの高さではASPより格段に上がりますので、初心者が考える第一の選択肢としては確実にASPに道を譲ることになります。しかし、頭の隅には入れておくと良いでしょう。
オープンソースはライセンス使用に料金が発生しないプログラムのことです。背景には「誰でも自由に利用し、情報を共有して技術を高めていこう」という方針があります。そのため、利用に関して料金は発生しません。実際のところ有料のECパッケージも無料のオープンソースをベースに作られたものも少なくありません。
オープンソースやパッケージについては以下の記事も合わせて参考にしてください。
【参考】ECサイトをEC-CUBEで構築するメリットとリスク
パッケージでの構築を決定した場合は、このシステムを利用してネットショップを構築することが可能な知識を持った技術者の確保、サーバーの準備が必要です。パッケージはECサイトに必要なプログラムをカスタマイズして使いますが、そのプログラムをインターネット上に置いて、ユーザーが閲覧可能な状態にしなければ行けません。そのためのスペースがサーバーです。自社内で構築することもできますし、レンタルも可能です。しかしいづれにしてもメンテナンスなどが必要で、費用が発生することも覚えておきましょう。
【参考】ECサイトを始めるのに必要なインフラとは~サーバーからPCまで
また、セキュリティ対策やバージョンアップに対応する作業は自分自身で行わなければ行けません。こうした部分はしっかり実施しなければ、大きなリスクになります。こうした手間がかかる点もASPと比較するとマイナスポイントといえます。しかし、構築の自由度は格段に変わってきます。
それに加えてオープンソースで構築した場合はさらに厳重な体制づくりが必要です。そのためセキュリティについての担当者の意識が試されることになります。すべて公開されているプログラムを使うということは悪意のある攻撃に対しての防御が弱くなるということに他ならないからです。そのため、徹底したセキュリティへの意識を持ち、実践する必要があります。
また決済代行会社との契約も行う必要があります。決済はネットでの買い物にとってとても重要です。現在はクレジットカードや代引きだけでなく、電子マネーやAmazonや楽天などのアカウントを使ったID系の決済、海外であればPaypal、BtoB向けに後払い決済など数多くの決済方法が存在しています。決済代行会社はこのように数多く存在する決済方法を決済代行会社との契約一本で利用できるようにするものです。手間などを考えると利用しないでECサイトを運営していくことは困難です。
決済代行会社については以下の参考リンクで詳しく確認してください。
フルスクラッチを初期から選択するケース
スクラッチは「擦る」という意味ですがゼロからという意味もあります。そのためフルスクラッチとは、全てオーダーメイドでサイトを作ることをいいます。カスタマイズは技術さえ伴えば当然やりたい放題に可能です。しかし、先にも述べているように費用的なことやメンテナンス性を考えると初期のECサイトの選択肢としては向いていません。開発には十分な知識を有したエンジニアのチームも必要です。
初期の段階からガッチリとしたプロジェクトとして資金調達がされており、技術的にも十分にあるような先鋭的なプロジェクトなどであれば話は別ですが、この記事のようなHow Toを確認しながらサイトを始めようという場合に向けたものではありません。
サイトの構築期間も年単位で必要ですし、資金も億へ届くことは珍しくありません。初期に考慮すべき手段というよりはリニューアル時にもしかしたら出てくる選択肢といっていいでしょう。
【参考】ECサイトをフルスクラッチで構築すべき理由は多くない
プロモーションが不要な商品ならモールという選択肢もある
扱う商品の知名度や価格競争が落ち着いており、単純にインターネットで販売するチャネルをECサイトに求めているという場合もあるでしょう。そうした場合はモールという選択肢がよいでしょう。
あえて独自のサイトを導入せず、Amazonや楽天市場、Yahoo!ショッピング、Lohacoなどのモール型ECの利用をオススメします。場合によっては商品を倉庫へ送るだけといったこともありますので、そうした契約になれば卸先の一つとして考えることもできます。
そもそもこうしたモール自体に集客力がありますので、マーケティング的なテクニックを極端に考慮する必要がないという点がメリットです。
デメリットとして大きいのは、手数料です。卸売価格を設定しているような感覚で利用できるのであれば問題ありませんが、価格の設定などによっては大きな負担となるかもしれません。
また同種の商品が出店されていると価格競争に否が応でも巻き込まれることになります。
【参考】Amazonで分析するモール型ECサイトのメリット・デメリット
コンテンツ制作〜商品ページは重要なコンテンツ
構築方法が決定したなら、サイトの構築を行います。ASPの多くはテンプレートを選択し、デザインを確定させる作業や商品ページを作っていく作業を行います。
基本的にはどのような構築方法を選択したとしても、この辺りの部分は変化がありませんが、作業の重さは変わってきます。レイアウトや色合いなどの選択などは使い勝手にも関わってくるので実際にテストページなどでしっかりと確認する作業も重要です。
デザインやフォント、ロゴなども選択していきます。以下のページに項目ごとに詳しく記載しています。
【参考】ECサイトのデザインは何を参考にするか~「ユーザビリティ」を意識しよう
しっかりとユーザーを購入へ導くためには写真と文章を考えなければ行けません。商品画像は一つの商品につき現在では平均6枚は必要と言われています。商品購入を決定するユーザーにとって重要なコンテンツですのでしっかりと撮影に取り組む必要があります。
【参考】ECサイトは撮影テクニックで商品の魅力に差をつけよう
また、文章は目的を持って商品ページを閲覧している人に購入を決意させる大切な情報です。以前は検索エンジンの検索結果で上位を狙うためのSEO対策として関係のありそうなワードを文章に埋め込むなどが横行した時期もありましたが、現在はあまり意味がありません。
基本的にはそのような集客は別の方法で行い、しっかりと商品の魅力や利用方法、特徴が伝わる文章をコンテンツとして提供する必要があります。そして、それこそがECサイトに必要なコンテンツとなります。また、他にも大きさや重さ、発送形態なども画像なども使って知らせることで、ユーザーの安心感を高める必要があります。
ECサイトはお互い顔の見えないやりとりです。そのため、いざ購入を決定しようという時には不安になりやすい傾向にあります。そのため注文する場面で不安感を拭い、安心感をいかに高めるかが販売する側にとっての工夫するポイントといえます。
サイトの構築以外の運営向けの構築準備もお忘れなく
ECを始めるということでどうしてもWEB上のことに目が行きがちです。しかし、実際に商品のやりとりが発生する部分を充実させることもとても重要です。つまり、現実の世界での環境整備です。EC用の在庫の確保、発送作業のスペースの準備、カタログなどの同梱物や配送向けパッケージの制作、また作業のルーティンを決めておくことも重要です。また、ユーザーからの問い合わせに対して想定問答集なども用意しておくと効率アップを図ることができます。
実際に、こうした実務的な運営作業は作業時間を伴う部分も多く、利益やサイト管理に関わる業務の時間確保など他の作業にも影響しますので事前にある程度決めておくことはとても重要なことです。
サイト構築完了後はプロモーションをしっかりしよう
いよいよ、全てのサイトの準備が整ったらECサイトを公開し販売を開始します。またここからは新たにサイトを売り出していく作業が必要になってきます。
つまり、集客作業です。ECサイトはそのままにしておいてもなかなか集客できません。ましてや競合のいるような商品ラインナップの場合は尚更です。そのため、様々なWEBマーケティング手法が編み出されています。
まず、広告という方法が分かりやすく集客できます。広告については以下の記事で解説していますが、インターネット広告は割と少ない金額でも始めることができます。
【参考】ECサイトの集客を広告で加速!WEB広告は使い分けよう
ただし、リピーターを掬い上げる施策がないと一時的なものに終始します。
そのため費用対効果を考えるのであれば、広告だけでなくブログなどを使ったコンテンツマーケティングが効果的です。しかし、これは即効性はないため、成果が出るまで続ける体力と情報源が必要です。そのため一部では「あまり効果がない」と喧伝するWEBマーケッターもいます。
しかし、実際のところ、多くのマーケティング手法が乱立する中で、もっとも確実な方法といえます。基本的には「急がば回れ」を体現するようなマーケティング手法であり、一見スピード感のあるインターネットとは相入れないように思われる部分もあります。
オリジナリティを押し出すことでブランディングの確立にも繋がるため、ECでこれに成功した場合の効果は絶大です。弊社でもこのコンテンツマーケティングを工夫して効率よく行うマーケティング手法で実績を作っています。
最近では文章と写真による平面の記事構成によるブログ型のものに加えて、SNSもコンテンツマーケティングの重要なツールになってきました。
文字を媒介にしたコンテンツだけでなく、動画もコンテンツマーケティングに活用されるようになってきました。テレビを見ない代わりにYoutubeで時間を消費する世代も多くなり、動画のパワーは今や計り知れない存在感です。コンテンツマーケティングともツールとして相性がよく、サポートレベルを高めることにも活用できます。
【参考】ECサイトはコンテンツマーケティングが集客力アップのカギ
選択したASPによってはコンテンツマーケティングをうまく連携する機能を持っていないなどで実施できない場合もあります。そうした場合もWordpressなどのCMSとうまく連携して実施することもやり方次第では可能です。しかし、組み込みにはそれなりにウェブに関する知識も必要になってくるでしょう。
以下のリンクは無料ASPとCMSを連携させて弊社で構築した事例です。デザイン的にも大きく違いを演出できます。参考にしていただけますと幸いです。
【参考】kimono grace
また、他にも次々と登場するインターネットメディアを使って集客していくことも必要になっています。その一つとして今、多くの企業が取り組んでいるのがSNSマーケティングです。フォトジェニックな商品であればInstagram、話題性が多く、変化に富むのであればTwitter、利用者コミュニティなどを作っていくというのであればFacebookなどがあります。他にもLineやTikTokなど次々とECのプロモーションに使えるSNSが登場しています。
SNSは検索の遡上に乗らないユーザーへアプローチすることが可能という点もありますが、やはりこれも初期にはフォロワーが少なく、情報発信の場として機能するようになるまで時間が必要です。それでもインターネットでは一方通行になりやすい環境がある中で、よりインタラクティヴに繋がれるツールとしてSNSの存在感は拡大しています。
SNSの難しさは双方向であること、またフォロワーを確保していかなければ行けないところにあるのは先述したとおりです。ただオフィシャルの情報を発信してもフォロワーは楽しくありません。“楽しさ”などの感情を刺激する部分にポイントがあるSNSは業務で担当者が取り組む難しさもあります。
また、YouTubeを使った動画でのプロモーションはここ数年影響力が強くなってきました。YouTubeはGoogle傘下ということもあり、SEOにも影響してきます。技術の進歩で、動画コンテンツはより検索アルゴリズムとの深度が高くなりそうです。
専門の事業者が持つノウハウの活用が効率的なこともある
個人でECサイトを持つというのであれば、無料ASPなどが向いていますが、企業で「自社サイトを持とう」となると、ブランドのイメージにも関わりますのでそうもいえません。そうなると初期投資にもそれなりの費用が発生し、それを回収するということも考えなければいけなくなってきます。
そうした場合、コストがかかるからと社内でできる範囲で治めるケースも少なくありませんが、それが必ずしも費用対効果に優れているかとも言い難い現実があります。また時には予算を確保してしっかりと技術的に必要な処置や施策を実施した方が結果的に効率的な場合もあります。
いずれにしても一度決定してしまうと、リンク構造などカスタマイズすることが難しいような項目もありますので最初の段階で適切な助言を専門家からうけることができれば大きな力になることは間違いありません。
これはECサイトの構築をウエブ制作会社に依頼するというだけでなく、運営でも同じことがいえます。ECサイトでのビジネスは実店舗と共通する部分もありますが、オンラインショップ特有のWEB技術が絡んだ専門的な部分も少なくありません。それに加えて相手の顔が見えない分、いかにデータを分析し活用するかということが重要になってきますが、ノウハウがなければ、その活用も難しいものがあります。
専門的な事柄も多く、社内のスタッフが全てのことを横断的に行うには限界があるのも事実です。実際のところ、初期のプランニングの場面から、もし専門家の助言を取り入れることができれば効率的に資金投入しながらサイトの構築から、運営に移行していくことができるようになるでしょう。
ただし、制作会社や運営会社はしっかりと選ばなければなりません。商売である以上、高い買い物をさせようと考える事業者は必ず一定数います。また、看板だけは立派でも中身の伴わない業者もいます。
逆に実力はあっても必ず全てを完全にこなせるというものでもありません。そう行った場合はさらにサポートを受けられる関係をその事業者が、制作会社と持っているかといったことも重要になってきます。つまりコミュニケーションをしっかり取れているかどうかということが重要です。いくら相手が優秀な技術者であったとしても、しっかりと意図を汲み取って貰わなければ、要望するサイトは完成しません。
運営は継続的なものであり、状況に合わせて最適な解は変化し続けてていきます。その度に事業者を変えることもできますが、そうなると全てゼロスタートになる可能性もあります。結局のところ、制作会社・運営会社といかに信頼関係を結び、パートナーシップを持ってECサイトを動かしていけるのかが、ECサイトにとっては重要だということです。