ECサイトの種類は構築方法ではなくユーザーとの関係性で決まる
2020.10.12
ECサイトの構築方法の種類などが話題になることは多くありますが、そのECサイトがどういった種類に分類されているかはあまりECサイトを開設する側は話題になることは少なく、あまり考慮していません。しかし、サイトに訪れるユーザーはどういった構築方法で作られたかを問題にすることはなく、どういったサイトなのかということを考え、意識します。どういった商品がどのように提供されているのかを考えることはユーザー目線でのサイト構築にとってとても重要ですが、初めてECに取り組むような事業者の場合はそこまで目が行き届かないことも多くあります。
サイトを構築するとき、どういったサイトを作りたいのかは、作ろうとしているECサイトの分類を考えると明確に答えが出てきます。ここではECサイトの種類について解説します。
CONTENS
ECサイトの分類は大きく2種
ECサイトの種類という場合、どういった点で決まるかというとユーザーとそのサイトの繋がりがどういったものなのか、どう見えているのかということになります。
構築方法でECサイトを語ることも多いですが、その場合の種類分けについては実際のところあまり意味をなさないかもしれません。例えば、同じ種類にあるECサイトであれば、予算と時間が必要なフルスクラッチで大きな費用をかけた構築であっても、月額数千円でASPカートを利用したものであっても、「その企業のECサイト」という認識は同一です。
もちろん、作り込みについてユーザーが感じる印象や操作感などの部分には違いがでます。それでも大きな分類としては同じで、運営担当者がやるべきことの方向性も一緒です。構築方法としては他にもパッケージやクラウドEC、そしてパッケージの中ではオープンソースで作るというものもありますが、どれも「独自の自社ECサイト」という枠からは逃れません。
構築方法はあくまでECサイトの導入方法の分類であり、ECサイトそのものの種類に言及しているものではありません。カスタマイズのしやすさやセキュリティへのメンテナンスの必要性などはECサイトの認識としての種類とは別のところにあります。
構築方法の種類については以下の記事に説明しているのでこちらを参考にしてください。
【参考】ECサイトの作り方〜初心者ほど開設後の運営を意識して作ろう
あくまで大きく「ECサイトの種類」と考える場合はユーザーとサイトの関係性か、あるいはユーザーにどのように捕らえられているサイトかに分けられます。扱う商品のジャンルによる分け方をされることもありますが、これは主にどういったサイトにみられているかに分類されます。つまり食品を扱うサイトであればユーザーはデザインがどうであれ「このオンラインショップは食品を扱っているサイトだ」と認識するわけです。
サイトの構築を専門にするWEB制作会社の人でなければ、どういった構築方法で作られたかについては関心はあまりありませんが、その一方で、どういった構築方法で作られていたとしても、会社のイメージをつけることになりますし、使い勝手には一定以上のレベルのものを要求してくることには変わりありません。
そして、むしろその「要求されるもの」こそがある意味では構築方法よりも重要です。もし独自の自社サイトとしてECサイトを始めた場合は、いかにそのサイトの利用に対する不安を無くせるかという点を考えながら、集客をしていくことが運営の課題になります。
ユーザーとサイトの関係での分類分け
ユーザーとサイトの関係がどうあるかで分類する方法もあります。どういったユーザーを対象にするかで構築方法や必要な機能は影響を受けます。そして、もちろんそれによって運営の方法も変わってきます。
まずはどういったユーザーが相手なのかでサイトを分類します。こうしたこと自体は元々の企業の業態によるところも大きく関係します。よく「EC=オンラインショップ」という認識で想像されるのは「BtoC」というものですが、顧客との関係はこれに限らず他の形でのECサイトも多くあります。
分類ごとにそれぞれの種類をポイントを押さえながら少しのぞいてみましょう。
BtoCのECサイト
BtoCとは「Business to Customer」の略です。企業が消費者へ販売する商流を指しています。市場の規模全体ではEC化率は2020年に発表された数字としては、日本全体のBtoCの7%です。業界によって進んでいる商品ジャンルと遅れているジャンルには差があります。日本語でいえば小売業という場合は多くはこのBtoCに含まれることになります。。
いわゆるネットショップやオンラインショップという場合には多くの場合、Bto Cを指しています。 ECサイトの存在が、今までは卸売しかしていなかったようなメーカーの販売経路を変え、直接消費者へ届くようになってきている側面もあります。直販はDtoCなどと言われます。
今までBtoCをしてこなかったメーカー企業では、個別の顧客対応を行った経験がないことも少なくありません。ECサイトの整備に合わせて、そうした面での体制の補強も必要になるかもしれません。しかし、そうした投資的な部分だけでなく、消費者の直接の意見や感想なども得やすくなり、メリットも少なくありません。
BtoBではEC化率自体は高い
BtoBは会社間でのビジネスのことです。BtoBで集客をして新たな顧客を獲得するようなビジネスモデルのECサイトは多くはありませんが、EC化率自体は、実はBtoCよりも高く、その取引金額も3割はECによるものです。ただし、この場合のECはあくまで「電子商取引」という意味で使われていることに注意する必要があります。そもそも、一回の取引金額が大きく、BtoCとは比較になりませんので、市場規模も大きくなります。
BtoBでのEC自体は90年代から政府が推進して進めてきた部分もありましたが、ECサイトという位置付けでビジネスの場所とすることは、最近増えてきているというのが現状です。
しかし、今後、BtoBでのECサイト自体も拡充されていく流れがあります。まだブロードバンドが普及する前から行われていた電子化ですが、その当時、企業が主流で使っていたISDNという電話回線を利用したシステムの廃止が2024年に決まっています。そのため、これを期に一気にECサイトとしての機能性をさらに高くしていこうと考える企業も増えるのではないかと思われます。
また、アスクルやモノタロウなどBtoBに向けて強い効果を発揮しているECサイトも存在しています。市場のメイン舞台が今後さらにインターネットに移っていく流れは太く描き出されています。
また、BtoGという考え方も登場しています。この場合のGはGovermentを指します。つまり、政府や地方自治体などの官公庁を販売の相手にしたECサイトのことです。捺印の廃止などが進めばこのジャンルが一気に広がってくる可能性は高いです。
インターネットが活発化させたCtoC
インターネットの普及期にYahoo!オークションやe-Bay、そして今はもうなくなりましたがBiddersなどのオークションサイトが普及しました。こうした市場は消費者同士がやりとりをする「Customer to Customer」の市場です。CtoCでの専用サイトは大手が多く取り仕切ることになり、個人でのサイトは費用対効果からあまり活発ではありませんでしたが、こうしたオークションサイトやメルカリなどのフリマサイトは市場規模が拡大を続けています。
また、無料で利用できるBASEやStoresの登場が今後、この流れをもっと活発化させる可能性があります。ECサイト運営を考える上では、消費者の動向としても無視できないものがあります。
越境ECという枠組み
対国内でのECが一般的なECの在り方ですが、国外のユーザーへターゲットを向けたECというジャンルも存在します。それが「越境EC」です。アジア地区での日本の食品への人気や期待度などの高まりもあり、ECをやるのであれば無視できない存在です。また、国内の消費が停滞気味な昨今、期待も大きなジャンルです。食品だけではなく、コスメや家電も人気が高いです。
一方で言語の整備だけでなく、輸送の体制やどのように集客するかといった課題もあります。
【参考】国際的なECサイトづくりには準備が必要〜越境ECのメリット・デメリット
出店方法での分類
この分類は、ユーザーにとって「そのサイトはどういったサイトなのか」という視点での分類です。大きくは自社かモールかに分けられます。自社サイトで独自のURLを持っている場合と、楽天市場内ではユーザーに受け取られるニュアンスが全く違います。また、ユーザーは自社サイトで購入すれば「〇〇で買った」と固有名詞でその企業を認識しますが、楽天で変えば「楽天で買った」と多くの場合、そのモールでの購入の印象が強くなり、ブランドとしての印象は薄くなります。
また、食品を販売するサイトを食品EC、サービスをメインに取り扱うECサイトをサービスECと呼ぶこともあります。これは商品ジャンルでの話と同一といっていいでしょう。
自社ECサイトで購入に結びつけるのは実は難しい
ASPであれ、パッケージであれ、フルスクラッチであれ、それぞれ独自のURL、ドメインで運営しているECサイトは全てこの「自社サイト」というジャンルにユーザーの中で分類されています。
自社サイトの問題点は須く、その会社のECサイトへの信頼感にあります。モールでの買い物と違い、ECサイトへの信頼感がないところからユーザーとの関係が始まります。企業の知名度などが高く、商品の魅力も事前に知っていればハードルはどんどん下がっていきますが、多くのユーザーはよく知らないサイトでの商品の購入を熟考します。ある調査では中小企業の自社サイトからの購入について96%のユーザーが購入をためらうという調査結果もあります。
そのため、自社サイトでの販売では集客とブランディングをいかに行うかが重要になってきます。逆にブランディングを進めるためのツールとしてECサイトそのものを位置付けて、事業展開全体を考えるといったことも考えられます。
それぞれへのテクニックが必要になるモールへの出店
モールとはショッピングモールのように大型のECサイトのことです。一つの大型店舗に店子として出店するような状態のため、モール型ECや、EC業界では単にモールと呼ぶことも多くあります。
世界の勢趨を握るとも言われている巨大ECサイトAmazonや、日本では楽天市場、そして利用料を無料にして販売者を増やしているYahoo!ショッピングなどがあります。それぞれのECサイトにはそれぞれのルールがあり、それに合わせてどうやって売り上げを伸ばすかといったノウハウも蓄積されています。それぞれがテクニックの必要なECの一つのジャンルと言ってもいいかもしれません。
モールではそのモールそれぞれに集客力があるので、そのモールのユーザーに、提供している商品を必要としている人がいれば販売の可能性が上がります。ただし、問題はモール内で商品の認知度を高めたり、根本的なブランディングを行うのが困難な点にあります。
【参考】Amazonで分析するモール型ECサイトのメリット・デメリット
オムニチャネルという在り方
オムニチャネルとは、ECサイトだけでなく、実店舗、SNS、メール、広告などを組み合わせて包括的にユーザーを囲い込み、顧客を購入者から優良顧客にしていくというマーケティング手法のことです。
オムニチャネル化するということはECサイト自体の分類を飛び越えていきます。モールと自社サイトなどインターネット上でも複数の販売チャネルを持ち、境目なくユーザーをフォローしていくビジネス手法です。
実店舗を持っている企業では、今後こうした手法をいかに活かしていくかが課題になっていくと考えられます。逆にECで先行していた場合は、さらに多くのマーケットニーズを取り入れるために実店舗を開設してオムニチャネル化にトライするケースも登場しています。
【参考】ECサイト売上ランキングから見るオムニチャネルの可能性
正解はそれぞれのECサイトで変化する
こうしたECサイトの種類はあくまで、博物学的、学習的な要素といえます。どの分類にあるから、問題があるとか優劣があるとかそういった話ではありません。しかし、実際に自社でのECの取組が今、どういったところにあるのかは把握しておく必要があります。
例えばBtoBであればそれに向いた決済方法なども存在していますし、どういったところにコンバージョンを置いて企業間の関係を作っていくかなどはBtoCとは少し違う側面があります。
とはいえECサイトは商品と金銭のやりとりを通してユーザーといかにコミュニケーションを図る場所ということには違いありません。構築だけでなく運営も含めて商品に合わせて適切な構造を持って、スムーズにやりとりのできるサイト作りを目指すことが重要です。
そういった面では正解への道筋はそれぞれのサイトで異なって当然といえます。その上で、どのようにユーザーに考慮できるかがECサイトの共通解といっていいでしょう。