ECサイト業界はAIの活用が普及~機能と搭載について解説する
2020.07.07
ここ数年のAIの普及は目覚ましいものがあります。ECサイトでもこうしたAIを接客機能や分析に活用する事業者も増えました。どんどん実用可能な新たなAIが登場し、既存のものもアップデートを重ねています。
ここでは今一度、改めてAIについて、どういったものなのかといった基礎的なことから、ECへの応用までを含めて解説していきます。
CONTENS
ECへの導入は準備はしておく
ここ数年のITテクノロジーに関するニュースのトップトピックはなんといってもAIです。AIは「Artificial Intelligence(アーティフィカル・インテリジェンス)」の略で、日本語では「人工知能」と訳されています。
このAI関連の市場には豊富に資金が投入されており、IT大手はすでに積極的に利用し始めています。また、GoogleやAmazonはAIとビッグデータを利用したアプリケーションを外部に有料のサービスとして提供しています。
今までは人間の手で処理されていた作業をAIに置き換えることで、分析やその結果から求める解を出す大きな助けになります。ECに関連する事業はテクノロジーと強く結びついています。そのためAIの導入が進んでいる業態のひとつがECとされています。
それを示すように、もっとも積極的にAIを導入して活用しているのもEC最大手のAmazonと言われています。在庫や価格、輸送、マーケティング、サービスに至るまで、さまざまな分野にAIを導入して効率化を計ろうとしています。
もし私たちがAIを導入し有効に活用するためには膨大なデータベースが必要です。そのため、すぐに導入しても効果を生まない可能性があります。ですから導入についてまだ、慌てる必要はありません。ただし、適切に動作させるためにはデータを蓄積していく必要があるため、すでに導入に向けてよく検討はしたほうがいいという状況ともいえます。
また、そうした中で実際にEC用のAIが一般に供給されるようになってきました。その活用方法としては主に以下のようなものです。
- レコメンド機能の強化
- チャットを利用した接客ツール
- 分析のジャンルに関連する項目
などです。
例えば実際の事例としては、ファッション系のサイトではコーディネートの例を提案するために積極的にAIを用いるサイトが出て来ています。また、チャットボットのAIを利用して接客に用いてサービスを向上しようというサイトも少なくありません。
実際にAIの力を借りること自体は難しくはありません。自社のWEBサイトのシステムへ導入するには、簡単なコードをサイトのソースに貼付けるだけで完了するものがほとんどです。また、中には無料で利用出できるようにしているAIを活用したサービスもあります。
しかし実際のところ2021年現在では、必ずしもすべてのECサイト運営に積極的に導入する必要性やメリットがあるのかわかる状況かと問われれば、そうともかぎりません。
AIは売上をあげることに対し成果があると言われてはいますが、参考例はまだ多くはありません。しかし、そうも言ってはいられない状況は突然やってくるかもしれません。
今のAIは人工知能というよりデータベース演算処理ツール
導入を検討する前にAIに対する誤解を解いておかなければいけません。
日本ではAIは「人工知能」という言葉から、「自ら考えを持って動くコンピューター」というイメージが強くあります。よくニュースで話題になる「コンピューターが人間の職を奪う」といった論調からもこうした傾向は一般的に強いと思われます。こうした職業の問題は、論旨が外れるのでここでは論じませんが、AIについて大きな誤解があるということは間違いがありません。
AIにはいくつかのバリエーションがありますが、最近取り上げられるAIはデータベースを読み込んで、その結果に基づいて回答を導き出していくものです。
つまり、正解を自ら考えて発見しているのではなく、高速でデータベースを演算処理して、その結果のパターンを蓄積し、成功例に近いものを導きだしてているのです。そのため、豊富にデータベースを読み込んでいくほど精度が上がっていきます。こうしたデータの読み込みをわかり易いように「機械学習」と読んでいます。つまりこれは人間の行う学習と完全に同じものではありません。
コンピューターが人間より優れているのは計算の正確性とスピードです。時々、コンピューターより計算が早いなんていう人もいましたが、最近ではこうしたビックリ人間的な話はすっかり聞かなくなりました。それだけコンピューターの処理技術が進んでいるということです。
これと同じように囲碁や将棋では膨大なパターン分析をコンピューターが行い、囲碁では完全にコンピューターが強く、将棋でもそろそろ完全に人間はコンピューターに勝てなくなると考えられています。こうしたAIは膨大な手数をコンピューターがパターンとして記憶し、勝率の高い手を選択していくことで強化されています。そのパターンの蓄積が膨大になり人間のひらめきを超えて選択出来るようになったからです。
実際にこうした結果を出せるようになるまで、数えきれないほどのパターンを蓄積するため、実は長い年月をかけています。また、その処理を短時間で行える技術的進歩も必要でした。しかし、こうしたことはコンピューターが自ら考えているわけではないのです。
いわゆる一般的にイメージする知能とは違い、考えを持っているわけではありません。勝利条件が明確にプログラムされ、それを達成するように指示を出さなければ役には立たないのです。そうした人口知能ではありますが、今や豊富なデータベースを利用して性能が向上し、実用性は格段に上がって来ています。
さて、こうしたことを大前提としても、EC事業でAIの積極導入を進める大手IT企業が増えてきました。ビッグデータとよばれる巨大なデータベースの存在が背景にあります。具体的にはどのように導入し、どんな結果を生んでいるのかのぞいてみましょう。
ECのさまざまな分野でひろがっているAIの利用
ECサイトの運営において、分析は業務の中で重要な項目を占めています。どういった客層、価格帯、配置が適切なのか、ユーザーの行動パターンはどういった傾向があるのか、最大公約数的な解はどこにあるのかといったことを考えなければいけません。
そのため、様々な施策は常に分析結果を見て予測しながら考えることになります。データが増えてくるとそうした分析の作業は膨大になり業務を圧迫します。また、人間には間違いもつきものです。
そのためこうしたデータを処理し分析する分野ではAIの積極的導入が活発化しています。こうした面でのAIの導入効果は決して低くありません。また、分析結果を反映して、何を求めているのかを推薦する機能などを利用するサイトも増えてきました。
AIはユーザーの行動分析を背景にそれぞれのユーザーにあった対応を分析する情報の解析に長けていると言われています。こうした分析結果をもとにそれぞれのユーザーにあった動作をAIが行う「パーソナリゼーション」が可能になってきました。その結果、サイトに訪れるユーザーに対しAIを利用してウエブ上で接客する時代に入って来ています。
また、画像認識の分野でもAIの性能向上は目覚ましくなってきました。そのためこうした接客の中で、先ほどのアパレル系におけるコーディネートの推薦を行うAIだけでなく、ユーザーが探す商品をスマホで撮影した写真から探し当てるなどが可能になってきました。これらの精度がさらに高くなれば今後、ユーザーの行動に変化が現れるようになると言われています。
パーソナライゼーションでCVをアップできるかも
AIによるパーソナライゼーションの実現で接客が可能になってくることで以下のような影響が現れると考えられています。
- 接客による離脱率の低下
- 売れ筋商品の確定
- 効率的な優良顧客の獲得
- レコメンド機能の精度上昇
- 在庫の適正化
などです。
例えば一見データとあまり関係のなさそうな優良顧客の獲得について見てみましょう。優良顧客とデータはイメージとして、直接結びつきそうにありません。
しかし、優良顧客のデータを分析することで、どのようなプロセスで優良顧客になっていくのかを知ることができるという理論がなりたちます。レポートを確認し、実際にどういったことが購入へと結びついているのかといったことは資料が増えてくることで精度も上がっていきます。
優良顧客が増えればもちろん売上があがりますので、もしこうしたことが可能であれば、ぜひ行っていきたい施策です。
音声入力への対応
AIの活用に伴って存在感を増しているのが音声認識です。スマートスピーカーは登場依頼、どんどんいろんな生活の中に入り込んでいます。また、スマホによる音声認識による検索を行う人は右肩上がりにどんどん増えているという調査結果もあります。
こうした音声入力による検索によって、検索の内容が変わっていくのではないかということが言われています。
一つは今までは単語による検索でしたが、一文による検索も効果があるのではないかということが言われています。「〜が〜する〜」というようないわゆるロングテールワードというものです。しかし、実際のところ、こうした音声認識は学習によって単語を抽出して検索結果を返してきます。考慮する必要はあると思いますが、全面的に対応する必要性は今後も高くないと考えられます。
それ以上に音声認識の普及で深刻になるのはサイトの表示速度かもしれません。音声での検索者はサイトの表示速度を文字入力での検索者より重要視するといわれています。なぜなら彼らの多くは実際に何か別の行動をしている時に検索を行っているからです。そのため、検索結果の上位であっても表示に時間のかかるサイトは飛ばして別のサイトを開くといった行動を取る可能性が高いといわれています。サイトの表示速度を適正化させることは、今後より重要な項目になっていく可能性があります。
また、サイト構造の問題点を探るなどといったことには実際にすでに活用が始まっています。
ただし、多くのECサイトやユーザー自身も同じようにAIを導入していくと結果的にどういったことになるのかは簡単に想像がつきます。みなが平均化していき、結局は根本的な商品の魅力や必要性などをアピールすることで勝負するというシンプルな状況になっていく可能性が高いということは理解していただける未来像でしょう。
アーカイブをたくさん持てるほど、結果が期待できる
実際のところ、「AIを導入している」と喧伝している企業のなかには、その導入効果があまりなく、AIの導き出す回答に振り回されているような話も聞きます。あくまでAIは道具に過ぎないというのが、現時点での見解です。
それでも、多くの情報を利用して目的に合わせて適切に学習したAIの効果は侮りがたく、判断を補助、補強するのに役に立つことは間違いありません。
実際に私たちはすでにAIに触れ合っている部分も少なくありません。モールへ出品している事業者であれば、AIによるレコメンドの影響を受けます。またGoogle AnalyticsなどもAIによる産物といえます。
すでにリリースされているAIを搭載したプログラムも精度をどんどんあげています。AIは生活を変えるだけでなく、ECサイトの形態を変える可能性もあります。一説にはいろんな人の生活がどんどん平均化して、同じような行動様式を辿るようになると考えられています。
しかし、実際にはどういったゴールに向かっているかはまだわかりません。
結果的にECで生き残るのは、有用なコンテンツを根拠を持って発信できることがますます重要になっていくということは間違いなさそうです。テクニック的なことはAIの導入が進むことで、どんどん一般化していくことで決着がついていくかもしれません。そこではどういったブランドを打ち出していくのかがより重要になっていくということになりそうです。
AIの導入は先にも書いた通り、実は比較的簡単に行えます。しかし、ブランディングはそうは行きません。AIの精度が向上すれば向上していくほど、今後のECの生き残りはブランディングをどれだけ進められているかということになって行きそうな気配です。
AI導入を考える前にDX向けのプラットフォームの検討を
今後、ECサイトの運営の中で得た様々なな情報をどのように活用していくかで、それぞれの企業の事業に差が出てくると考えられます。
決まった動作をするAI単体のAPIで何かの業務をするよりも、もっと全体的に活用できるようになんらかのプラットフォームと連携させるといったことが重要になってきます。
最近はDXの推進についてよく言われますが、ECの分野こそ活用するメリットが高い分野です。AIというと少し敷居が高く感じるかもしれません。そうではなく、いかにデータを有効に活用するかということが重要です。
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CRMを業務の中で最適化していくためにはMAが重要です。そうでなければ業務が膨大になるからです。こうしたポイントはAIの活用とよく似ています。豊富な購買にかかわる情報を有効に活用することで、より強いECサイトを作り上げていくことができます。