ECサイトの「カート」のポイントとシステムの選び方の基本と比較

2020.06.09

ECサイトの構築を検討していると必ず「カート」という言葉に出会います。このページにそうしてたどり着いたという方も実際に多いのではないでしょうか。

カートはECサイトの基本的な機能です。「どのカートで構築するか」など、という言い方を業界内ではすることもあり、そのまま構築方法を指す言葉にもなっています。

ここでは選定する際の参考になるように、カートの概要など基本的なことと、比較する際の選び方のポイントについて解説します。

カートとは買い物機能のこと

「カート」は英語でカゴを意味する言葉です。つまりショッピングカート、日本語でいえば“買い物かご”の意味があります。

ECサイトでいうカートは「商品を選んで購入する機能」のことです。ネットショップに関するもっとも基本的なシステムのひとつといっても過言ではありません。ECサイトは購入ボタンをクリックしてカート内に保存し、注文できるような仕組みを持っています。実店舗でいうならばまさに買い物カゴの機能がなければ、ECサイトとしては十分とはいえません。この機能の有無がECサイトの定義という人もいます。

カートの機能があることで、ユーザーは気軽にショッピングをネットを通じて楽しむことができます。

この機能を備えた構築方法やサイトのことを「ECカート」という言い方をすることがあります。実際のところ、ECサイトの概念は拡張しています。

単純にECサイトに設置された買い物カゴのことを指す場合もありますし、プラットフォームそのものを指す場合もあります。そのためいろいろな意味合いを含んではいますが、もし会話の中でECカートという言い方をしていた場合は、ほぼECサイトと同じ意味と捉えて問題ありません。

カートの基本機能は買い物ができる仕組みを持っていること

  • 商品の説明文や写真などがあり、購入ボタンのある商品ページ
  • 選択した商品を保存する買い物かご
  • 配送の方法や宛先指定する機能
  • 決済方法の指定やクレジットカードや電子マネーなどの決済の実行
  • 顧客情報管理、会員登録機能
  • メールなどによる顧客への連絡機能

こうした機能を持つことでECサイトでユーザーが商品を選び、その商品が手元に届くまでのプロセスをサポートします。そして、こうした機能を備えることによってウエブサイトがショップとしての機能を持つことになります。

ECカートはこうした基本機能だけでなく、構築方法によっては定期購入に対応したり、買い物カゴまで商品を入れたユーザーが、サイトを決済前に離脱するような場合に通知したり、関連商品の同時購入を進めるレコメンド機能などを持っている場合もあります。

こうした機能の多くは最初からシステムに搭載されているのではなく、プラグインで付加したり、あらたなプログラムを加えたりして拡張されたものです。オプションとして簡単に付加できるかは利用するカートの構築方法などに依存します。

他にもシステムによっては設定した金額以上購入した場合に送料を無料している場合には、「あと○○円で送料無料」などと通知する仕組みもあります。

こうした機能を追加していくことで、サービス度を高めたり、客単価をあげるための対策の一つになります。実際にカゴ落ちと呼ばれるカートまで入れてはいるけれど最終的に決済しないユーザーを減らすよう工夫することは購入率(コンバージョン率)をあげるのに重要な対策です。

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ECサイトの役割とモールの住み分け

ECサイトと通常のコーポレートサイトをしっかりと分類する場合、はっきりした違いはカート機能の有無にあります。「コーポレートサイト」や「ブランドサイト」に分類されるサイトはあくまで企業や商品の紹介を目的にしています。実際にサイト上で商取引をするための機能には注目せず、あくまで宣伝や告知を目的にしています。

どちらも最終的な目的は販売量の増加を目指していますが、ECサイトはサイト上で商取引が可能になっているものを指しています。

2021年の今、実際にECサイトで販売できる商品の幅も広がってきました。また、そのあり方も画一的なものではなくなっており、多様化しています。そのためE-コマース、つまり電子商取引の場に当てはまれば、必ずしも全てがカート機能に集約されるものでもありません。しかし、「カート機能をもったサイト=ECサイト」という理解でまったく問題はありません。

ECサイトの機能を大手のオンラインショップで担う選択肢

Amazonや楽天市場、Yahoo!ショッピングなどではたくさんのアイテムが販売されています。それぞれの事業者がアイテムを出品するためにこうした大手のECサイト内に商品ページを作って販売しています。

こうした大型のECサイトを「モール」や「モール型ECサイト」といいます。中でもモールという意味では楽天が特にショッピングモール的なECサイトかもしれません。販売者がショッピングモールにテナントとして出品する状況によくにており、その状況を模した表現として「モール」という呼ばれ方が普及しています。

特にカート機能を持ったECサイトを自前では用意せず、モールへ出品することでインターネット上の販売窓口とする方法で、EC事業を展開するという方法があります。

モールのメリットとデメリット

モール内の出品用ページは必要なテキストと写真を揃えることで、それほど難しいことはなく作ることができます。そのため自前でサイト構築をする場合の初期費用や作業時間と比較すると格段にこうした部分でのコストを抑えることができます。

また、モールのサイト自体にすでに買い物客がついています。適切な商品カテゴリを選択して販売するだけで、それほど苦労せずに販売する機会を作ることが可能です。

これに対し、自社サイトでは、売上を生み出すには買い物客がまずそのECサイトにたどり着く必要があります。その事業者の商品そのものを必要としてダイレクトに検索しているのではなく、ぼんやりと大きな目的をもった買い物客を惹き付けるのには、それなりに対策が必要です。

そのため広告やSEO対策をしっかり行って目につくように露出していくことからがスタートになります。関連したキーワードで検索結果の上位にそのECサイトが入ってこなければ、売上を十分に出すには至りません。そうした点を比較するとモールの利用には圧倒的にメリットがあります。

しかし、モールにはデメリットもあります。同じ規格のページで商品の魅力などを伝えることになることです。また、競合する商品がある場合には隣り合わせで並んで表示されることとなり、差別化が難しくなります。その結果、価格競争にも巻き込まれやすくなります。これは特にメーカーではなく卸販売で、同一の商品がある場合には避けられないことになってきます。

また、ルールについては各モールで定めたものに従う必要があります。もし、特定のルールが運営の妨げになったとしても、それを守る必要があります。また販売手数料が売上に応じて発生します。配送無料の基準や手数料基準もモール側で改訂が行われれば、それに合わせる必要があります。

そのため、永続性を持って展開したいと考えている場合には、マイナスポイントも少なくありません。

手数料などは収益に影響しやすく、そういった点では自社ECサイトにメリットが多くあるといえるでしょう。また、モール側でトラブルがおこると、無関係でいることも難しく、影響を受けやすいことも問題です。

実際のところモールの運用と自社サイトは必ずしも一本に絞る必要もありません。感覚的には自社でコントロールが可能な卸の窓口ということに近いかもしれません。

モールについては参考に以下の記事もお読み下さい。

【参考】自社ECサイトはモールに出店していてもやるべき3つの理由

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自社ECカートの特徴

独自のサイトとして、カート機能をもったECサイトの構築方法には大きくは3つの種類、またそれぞれをさらに分類すると合計で5つの方法があるといわれています。

大きな3つは以下の通りです。

  • すべてカスタマイズして構築する「フルスクラッチ」
  • ECサイト向けに組まれた既存のプログラムを組み合わせる「パッケージ」の利用
  • ASP事業者に用意された素材を利用しECサイトにする「カートASP」

「パッケージ」の中にはWordPressやEC-Cubeなど、プログラムを利用する料金設定がなく、誰でも使えるようになっている「オープンソース」で開発する方法あります。「オープンソース」はパッケージとは分けて考えることもあります。しかし、この二つは手法としては同じといえます。それでも初期コストとランニングコストの面で差があり、オープンソースはプログラム上に何かトラブルがあってもあくまでそのすべてが自己責任という違いがあります。

「カートASP」は単にASPと呼ばれることもよくあります。ASPの事業者が用意したシステムを使う方法です。テンプレートを選択し、必要な項目を埋めることで自社ECサイトが出来上がります。月額の利用料が決められており、なかには無料で利用出来るASPもあります。一般的には利用料が低いほど自由度がなく、画一的になります。カラーミーショップやBASEなどがよく知られています。

代表的なASPとしては以下のようなベンダーが有名です。

  • カラーミーショップ
  • BASE
  • STORES
  • MakeShop
  • Futureshop
  • Ebismart
  • Shopify

一方でASPのような仕組みでありながら自由度の高い「クラウドEC」とよばれる形態も登場しています。ASP自体がそれぞれのベンダーで特徴を打ち出すので、それによってできることは幅広くなってきています。そのため、「ASPだからこの程度」と判定することも難しくなってきています。

また、どういった方法であってもスマホでの閲覧を意識したレスポンシブな仕様であることは必須です。もしフルスクラッチでの構築であれば両方に対応したサイトづくりを必要とします。また、上記であげているASPは問題ありませんが、ASPではスマホとのレスポンシブでない事業者は選択肢から外すべきです。

スマホ対応は現在、Googleの検索エンジンとしては対応を必須としています。

以下ではオープンソースやクラウドECも含めて今一度構築方法の特徴を確認してみましょう。

大規模サイト向きのフルスクラッチ

フルスクラッチは、すべて自前でオーダーメイドで作り上げていく方法です。デザインやページ遷移、顧客情報のデータベースなどまで全てをオリジナルで作る方法です。

他の構築方法では想定していない自由度の要求がある場合や規模のサイトであれば、フルスクラッチでの構築を選択せざるを得ません。

デメリットは予算規模も大きくなることと納期です。構築の費用は桁違いで、数千万〜億単位で予算が必要になります。また、アップデートも労力が必要です。かなり事業規模の大きな企業が、本格的にEC事業に予算を投じていく計画で、この方法を選択するイメージがあります。

また、開発についての知識も必要なので初心者がこの方法で始めることは困難です。エンジニアの力を借り作り上げていくことになりますが、工期も他の方法より格段に長い期間が必要になります。

【参考】ECサイトをフルスクラッチで構築する理由が大規模ECサイトにはある

ECサイトをフルスクラッチで構築すべき理由は多くない

多くの要求を満たせるパッケージ

ある程度、ECサイトに対して要望が多くあるようなケースでパッケージが推奨されることがあります。フルスクラッチほどではありませんが自由度も高く、ある程度用意されているプログラムを組み合わせてカスタマイズして使うため手間も軽減されます。そのため、通常の規模のECサイトであれば問題なく要求に応えることができます。

オープンソースは誰でも無料で利用出来るように組まれたプログラムです。代表的なECパッケージでもあるEC-Cubeもオープンソースです。

もし社内にエンジニアがいるのであれば、オープンソースで構築することで、外注する必要も無く驚くほど安価で構築できる可能性もあります。プログラムをECに特化したECパッケージは利用料は割高ですが、カスタムも可能なので精度の高いECサイトを構築できます。

この方法はいずれにせよ、初期構築だけでなく、メンテナンスやアップデートに手間がかかります。オープンソース出なければサポートが受けられますが作業自体は自分たちで行う必要があり、なくなるわけではありません。予算規模はオープンソースでなければ数十万〜数百万程度と考えておく必要があります。

月額でサーバーレンタル代などの固定費が別途で発生します。メンテナンスについて、ある程度ランニングコストも含めて考えておく必要はあります。

初期から売上見込みを立てて成立するのであれば、射程範囲に入ってきます。費用的なことを考慮するとリニューアル時に乗り換えで選択されるのが現実的かもしれません。

【参考】ECサイトをEC-Cubeで構築するメリットとリスク

幅広いユーザーに対応するASP

ASPは言うなれば分譲マンションに近い存在と言えるかもしれません。カートの機能は一通り揃っており、基本的なECサイトに必要な機能はついています。

また、システムのアップデートについては基本的にASP事業者が対応するので、ECサイト運営側では特に必要ありません。アップデートがいくら大事になったとしても、せいぜい、アップデートを承認するくらいのことしか起こらないでしょう。

ASPによってプランがあり利用料金に違いがあります。選択出来るデザインテンプレートや取り扱い可能な決済方法、SNSへの連携が可能な機能など、細かい仕様にも違いがあります。なかには特定のモールと連携出来る機能を持つASPもあります。

ASPというと代名詞的に「自由度がない」と呼ばれますが、選択するASPによってはかなり自由にデザインを組めるケースもあります。また、ある程度の事業規模でEC運営を行っている企業でもASPを利用しているケースも実際には少なくありません。

最近ではパッケージのプログラムごとインターネット上に置いて利用しているような感覚の「クラウドEC」もあります。自由度という点ではまだパッケージには及びませんがかなり近づいて来ています。大抵の要望は果たすことができると思われます。

いずれにしても月額での利用料が必要で、無料のものから、数十万までと幅があります。また、無料のASPは売上に対して手数料が発生します。これはクレジットカードなどの決済手数料とは別に販売の手数料として発生します。

デメリットは、新たな機能がトレンドになった場合は事業者が対応するまではどうやっても導入できないことです。また、運営上不都合があって改修したくても難しいといったケースもあります。

ただし、管理にかかわるコストについては他の方法よりもかなり抑えることができます。

ASPについては企業向けのベンダーを比較しながら説明した記事も参考にしてください。

【参考】ECサイトのASP〜いろいろあるけど、企業向けならどう選ぶ?

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選択のポイントは規模

ECカートの選択、つまりどういった方法でサイトの構築を行うかということですが、選択のポイントはずばり「サイトの規模感」といえます。

個人でちょっとしたものを販売し、事業規模の拡大も考えていない、生産量を伸ばすのも難しいということであれば、BASEやSTORE.jpなどの無料ASPでかまいません。

状況が伸展していくことを期待するのであれば、ある程度の初期投資は必要です。少なくともある程度月額の発生するASPを選択する必要があります。無料のものでは、なかなか検索流入を増やす施策を打ってサイト自体を構造的に強くしていく集客対策や、リピート率向上を目指した施策がしにくくなってきます。

また、企業で利用しようと考えている場合は、せめて独自ドメインが利用出来るものを選択したいところです。

どういった方法で作るかということは重要です。それでも結局のところ、まずは集客できるサイトにならなければ意味がありません。運営する中で集客できるサイトを作ることができるかが売上をあげるために非常に重要です。ECサイトを自社で作っても、誰もこないということでは、初期投資に見合いません。

そして、初期の構築にいくら費用を積んだとしても、最初からサーチエンジンに評価されることはありません。そのため、集客という点では、どういった方法でもある意味スタート地点は変わりません。

もし、背伸びして初期の構築費用を積んでいる場合は、今一度事業規模を検討してみたほうがよいかもしれません。それであれば、充実したコンテンツを継続して制作するサイト作りにその予算を当てた方が効果的な可能性が十分にあります。

その後の運営が、多くの部分でEC事業の正否を担っています。運営を意識したサイト作りについての記事もぜひお読みください。

【参考】ECの作り方は運営も意識しよう

始めて見てからわかることもある

残念ながら、企業それぞれ事情が違います。いくら実績の多い運営サポートができるWEB制作会社と組んでいても、ハプニングを最初からすべて予測してサイトを作っていくことは困難です。リスクは減らすことはできても、ゼロにすることは難しいといえます。ただし、通常の建築物などと違って、ウェブの場合はある程度、後から変更することができます。

ASPを選択する場合にはもちろん選んだASPによって、また変更したい事柄によっては難しいということもあります。もし、構築時のパートナー企業があれば、それぞれの企業の事情をしっかりと開示して十分に相談し、数多くあるASPの中からよりあった事業者を選ぶサポートを積極的に受けるべきです。

ECサイトの耐用年数は5年といわれていますが、ASPを変更して引越しをするのはなかなか大変な作業です。できれば最初からベターな選択肢を取っておきたいところです。

また、実際にサイトが公開されてから、必要になってくる事柄も少なからずあるでしょう。こうしたことは規模が大きくなればなるほど発生する可能性があります。そうしたことに対処しながら、運営でもサポートを得られる環境作りができるかどうかもECサイトの成功にとっては重要なことです。

こうした相談にも構築や運営・運用で実績を積んできた弊社で対応が可能です。初期のECサイト導入から導入後の困りごとまで気軽にお問い合わせください。

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